著者
木村 恵子 西村 弘行 木村 いづみ 岩田 伊平 水谷 純也
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.343-347, 1984-08-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 4

タマネギを油で炒めると非常に香ばしい風味を生じるが, タマネギをシリコーンオイルで炒めることによっても, よい香りが生じた。そこで, 種々の夾雑物を避けるために, タマネギをシリコーンオイルで炒め, 生じた香気成分をGC-MSによって同定した。そして, 生タマネギの香気成分と比較した。さらに, 炒めたタマネギの香気成分をカラムクロマトグラフィーで分画し, よい香りがどのフラクションに溶出されるかを検討した。1) シリコーンオイルを入れ, 140℃に調節した電気鍋の中に, みじん切りにしたタマネギを加え, 25分間炒めた。急冷後, エーテルを加え, ナイロンゴースで搾った。搾り汁はエーテルを除去し, 4時間水蒸気蒸留して, 炒めたタマネギの香気成分を調製した。収率は, シリコーンオイルの熱分解物も含めて4mg%であった。2) GC-MSから, 炒めたタマネギの主成分は, 2, 4-dimethylthiophene, methyl propyl trisulfide, propylpropenyl trisulfide (cisおよびtrans) であったが, これらの化合物はネギ臭がし, 香ばしい匂いではなかった。3) 生タマネギの香気成分 (エーテル抽出物) では, 2, 3-dimethylthiophene, propyl propenyl disulfide (cisおよびtrans), dipropyl disulfide, dipropyltrisulfideが主成分であった。生タマネギに比べると, 炒めた場合は, より安定なtrisulfide類が増加した。4) 炒めたタマネギの香気成分を, カラムクロマトグラフィーによって分画すると, 単独では香ばしい匂いのするフラクションは見あたらなかった。しかし, いくつかのフラクションを混ぜ合わせると, 香ばしい匂いに近づいた。
著者
村田 卓士 久野 友子 穂積 正俊 玉井 浩 高木 雅博 上脇 達也 伊東 禧男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.165-171, 1998-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
23
被引用文献数
4 7

卵殻カルシウムを添加したチョコレートおよび卵殻カルシウムを含まないチョコレートをヒトに投与し, 糞便中総脂質, 脂肪酸, カルシウムを測定するとともに, その安全性について検討を行った。1) 卵殻カルシウムを添加したチョコレート摂取群(Ca添加群) は, 卵殻カルシウムを含まないチョコレート摂取群 (コントロール群) に比して糞便中総脂質が有意に高値であった。2) 糞便中カルシウム濃度と糞便中総脂質濃度は, 有意な正の相関関係にあった。3) 脂肪酸分析の結果, Ca添加群は, コントロール群に比してパルミチン酸およびステアリン酸の吸収率が有意に低値であった。4) 試験期間中, 2群間で血清中各種脂質, カルシウム, リン, 脂溶性ビタミンに有意な変動はなかった。5) いずれのチョコレートの摂取期間中も重篤な副作用は認めなかった。以上より, ヒトにおいて卵殻カルシウムはチョコレート中に含まれる脂質の吸収抑制効果を示すことが示唆された。
著者
梶本 五郎 村上 智嘉子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.209-218, 1999-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
49
被引用文献数
10 11

緑茶, 麦茶を含めいわゆる健康茶として市販されている15種について, これらの熱水抽出物量, 抽出物の抗酸化性およびバナバ茶中の抗酸化成分をTLCとHPLCの組み合わせで検索を試みた。1) 熱水抽出量の最も多いものはローズヒップ茶で, ついで, キダチアロエ茶, 麦茶, ギムネマ茶, 緑茶, 甘茶の順であった。抽出量の少ないものは, ハブ茶, バナバ茶, 柿の葉茶であった。2) ランシマット法による油脂の酸化に対する防止効果は, イチョウ茶, ルイボス茶, 緑茶などで高く, ついで, ヨモギ茶, 麦茶, バナバ茶, 甘茶, 柿の葉茶, びわ茶の順であった。一方, キダチァロエ茶, ローズヒップ茶では抗酸化性は認められなかった。3) 緑茶, 麦茶, イチョウ茶, バナバ茶およびびわ茶は, いずれも添加量が増すにしたがい油脂の酸化防止効果は高くなった。しかしながら, 柿の葉茶やびわ茶は0.1%添加濃度以下では防止効果はみられなかった。4) DPPHラジカル消去能は, 緑茶, バナバ茶ともに認められたが, バナバ茶は緑茶に比べてやや弱いものであった。5) 緑茶, バナバ茶にスーパーオキシド消去能が認められた。消去能は緑茶で高く, バナバ茶でやや低い。6) バナバ茶中に没食子酸, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの存在とプロトカテキュ酸, アピゲニン, ルテオリン, シリンガ酸, バニリン酸, t-シナミン酸などの存在が推測された。7) バナバ茶中には没食子酸が最も多く含まれ, ついで, ゲンチシン酸, カテコール, レゾルシノールの順であった。これらのうち, ゲンチシン酸が最も抗酸化活性が高く, ついで, 没食子酸レゾルシノール, カテコールの順で, ルテオリン, ケルセチンにも認められた。
著者
守 康則 西山 幹子 諸冨 節子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.12-16, 1969-01-20 (Released:2009-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 2

L-アスコルビン酸D-アラボアスコルビン酸 (エリソルビン酸) デヒドロアスコルビン酸および2.3-ジケトグロン酸の光分解性を比較検討し, さらにL-アスコルビン酸の光分解におよぼす気相 (O2, N2ガス), 酸化安定剤 (チオ尿素, EDTA), 光増感色素 (リボフラビン, エナシン, フルオレッセイン) の影響をしらべ, さらに光分解生成物の検索を行なって, 次の結果をえた。1. L-アスコルビン酸, D-アラボアスコルビン酸水溶液は光によりいちじるしい光分解をうけ, 後者の光分解度は前者より高い。2. デヒドロアスコルビン酸および2.3-ジケトグコン酸水溶液は光に対してL-アスコルビン酸溶液に比較してはるかに安定である。3. L-アスコルビン酸水溶液の光分解はN2ガスの通気により完全に抑制され, 酸素の存在下においてのみ光分解を惹起する。4. チオ尿素およびEDTAはL-アスコルビン酸の光分解をいちじるしく抑制する。5. リボフラビン, エオシン, フルオレッセインなどの光増感物質はL-アスコルビン酸の光分解をいちじるしく促進する。6. L-アスコルビン酸水溶液の光分解生成物として, デヒドロアスコルビン酸および2.3-ジケトグロン酸がみとめられる。
著者
藤巻 正生 鈴木 敦士 宮崎 基嘉
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.161-166, 1966-09-30 (Released:2010-02-22)
参考文献数
7

無蛋白飼料で5週間飼ったシロネズミとスレオニン欠乏飼料で4週間飼ったシロネズミの筋肉並びに肝臓の水溶性蛋白質のアミノ酸組成は, それぞれの正常区に比べて明らかな差は認められず, またカゼイン飼料区と完全アミノ酸飼料区の両正常区間, あるいは無蛋白飼料区とスレオニン欠乏飼料区の両欠乏区の間にも差は認められなかった。セルロースホスフェイトを用いるカラムクロマトグラフィーにより水溶性蛋白質を分画した結果, 筋肉の場合, 各画分の量比, 蛋白質中のトリプトファン含量には正常区, 無蛋白区, スレオニン欠乏区の間で差はみられなかった。しかし, 肝臓については, 無蛋白区, スレオニン欠乏区ともに正常区に比べてpH 5.0の緩衝液で吸着されない蛋白質が増加し, pH 7.0で溶出される画分の蛋白質は減少し, 各画分の蛋白質中のトリプトファン含量も正常区に比べてやや減少する傾向がみられた。アルドラーゼ活性は, 筋肉, 肝臓ともに無蛋白区の場合は, 正常区に比べてやや減少したが, スレオニン欠乏区の場合には, その差はみられなかった。スレオニン欠乏飼料および完全アミノ酸飼料で飼ったシロネズミの場合, カラムクロマトグラフィーで分画後pH 7.0の緩衝液で溶出される蛋白質画分のアミノ酸組成を分析した結果, 筋肉, 肝臓ともにスレオニン欠乏区と正常区の間に全く差はみられなかった。
著者
安本 教傳 岩見 公和 吉田 宗弘 満田 久輝
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.511-515, 1977-04-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
18
被引用文献数
7 13

種々の食品のセレン含量を, 比色法また螢光法で測定した。魚, その他の海産物, およびニンニク中に著量のセレンが検出された。しかし, 問題となるほど過剰にセレンを含んだものはなかった。さらに, 将来の食糧源としての微生物菌体, 藻類中のセレン含量を測定したが, 全般に低い値であった。今回の分析結果, ならびに分析値および食糧需給調査資料をもとにして, 日本人が1人あたり1日に摂取するセレン量を求めたところ207.7μgであった。この摂取量はカナダ人, アメリカ人とほぼ等しく, 各国とも同等のセレン栄養の状態にあると推察された。
著者
小柳 達男 千葉 茂 鷹觜 テル 及川 桂子 赤沢 典子 常松 澪子 木村 武 小山 寛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.65-70, 1984-02-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
16

サイアミン, リボフラビン, ビタミンB6, ナイアシン, PA, トコフェロール, カルシウム, 鉄を玄米に含まれる量に似せて強化した新強化米を岩手県農村の高齢者に与え, 血圧, 血色素, 副腎皮質ホルモン代謝物の排泄量, 暗順応能力などに及ぼす影響について調べた。それまでサイアミンだけを強化した米を食べていた人々がこの新強化米を1年間摂取した結果, 1) 最低血圧が81±3から76±3mmHgに低下し, 2) 血色素が13.2±0.2から14.8±0.3g/100mlに増加し, 3) 尿中17-OHコルチコイドが2.4±0.1から1.1±0.1mg/8hrに減少し, 4) 尿中パントテン酸は0.31±0.08が1.11±0.34mg/8hrに増した。これらの変化は従来の強化米に比べ新強化米にとくに多いパントテン酸による効果ではないかと考えられる。とくに血圧を降下させた効果について著者らは, パントテン酸の不足によって低下していた神経組織のアセチルコリン濃度がパントテン酸の供給増加によって改善され, 血圧上昇作用をもつアドレナリン系ホルモンの作用に拮抗したものと考えている。暗順応は新強化米だけでは9か月間の摂取でも暗順応の閾 (いき) 値は8.6±0.8が7.7±1.1mmへとわずかに改善されただけであるが, ビタミンAを補うと著しく改善されて4.5±0,6mm (やや不良) にまで改善された。これは被験者たちは栄養調査ではビタミンAを十分に摂取していることになっているがビタミンAの補給前はその不足があったものと考えられる。
著者
五十嵐 脩 大関 静枝 仁保 喜之 安藤 寛 毛利 佳世 糸川 嘉則
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.145-150, 1984-04-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
9

A new type enriched rice, “Shingen, ” which contains vitamin B1, B2, B6, E, niacin and panthotenic acid as vitamins and calcium and iron as minerals, was developed and sold first in Fukuoka Prefecture in 1981. When it is mixed with polished rice at the ratio of 1: 200, the levels of those vitamins and minerals in mixture become to be the same levels as those of unpolished raw rice.We examined the nutritional effect of this new enriched rice on young female students of 20 years old living in Fukuoka City and its suburb. At first they were inquired into the intake of the enriched rice for the last six months and then divided into two groups: 1) intake group was consisted of students who ate the enriched rice at least twice a day as staple food (n=26). 2) no intake group of the enriched rice (control group) ate white rice at least twice a day (n=35). After one month survey of food intake their blood was taken in the morning following overnight fasting. The blood was analysed for its biochemical status as follows: 1) general characteristics of blood (counts of erythrocyte and leucocyte, level of hemoglobin, hematocrit, MCV, MCH and MCHC etc.), 2) vitamin B1level, 3) TPP effect in blood and transketolase activity in erythrocyte, 4) α-tocopherol and triglyceride levels in serum. Also, during this survey, we calculated the daily nutrients intakes of subjects on typical three days.The intake of nutrients of two groups was not different significantly except for vitamin B1 and C of which intakes were higher in intake group than control, but vitamin E intake was not calculated. Blood characteristics were normal in both groups. Vitamin B1 level in blood and transketolase activity in erythrocyte of intake group was significantly higher than that of control group (Figs. 3 a and 4). Similarly, in control group TPP effect was higher than that in intake group showing lower B1level in erythrocyte of contol group. The subjects to be marginal vitamin B1 deficiency was found in high frequency in control group (the number of subjects; less than 30ng/ml were 9, 30-40ng/ml 10, 40-50ng/ml 7 subjects), comparing to two subjects in intake group, whose erythrocyte showed less TPP effect, suggesting no marginal deficiency. From these results it is suggested that vitamin B1 intake should be kept higher level in diet for example by the intake of enriched rice.α-Tocopherol level in serum was not significantly different between both groups. But in control group three subjects showed low α-tocopherol level of less than 5.00μg/ml. Also, F distribution ratio was different significantly in both groups for serum α-tocopherol. This shows thatnew enriched rice intake minimizes the individual variation of serum α-tocopherol level. Triglyceride level in serum was not different in both groups.
著者
小林 昭 遠矢 光孝 福西 亮 吉田 愛知
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.263-268, 1974-10-10 (Released:2010-03-26)
参考文献数
14
被引用文献数
2

ソテツ味噌を試醸し, ソテツの有毒成分であり発癌性の知られているcycasinと, アフラトキシン汚染の有無を検索した。また, 長期間動物に投与する試験を行なった。1) cycasinはソテツ種子自身のもつβ-グルコシダーゼで分解され, 通常の原料ソテツ粉末中には残存しなかった。cycasinが残存するようにして調製した原料では, 麹菌の成育が抑制され麹ができにくいが, cycasinは速やかに分解された。2) Sprague-Dawley系ラットに, ソテツ味噌を10~50%混入した飼料を62日間, または10%混入飼料を190日間給餌した。これらには1年間飼育ののち, いずれの臓器にも腫瘍の発生はまったくみられなかった。3) ここで用いたソテツ味噌の原料ならびに製品, 自家製ソテツ味噌3点にアフラトキシンは検出されなかった。
著者
岩田 久敬 橋野 旻 上田 和典
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.115-117, 1954-10-10 (Released:2010-11-29)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1. ヒガンバナの鱗莖に冬から春にかけて最も充實し粗濫粉含量が多くなつた。2. 生鱗莖の粗澱粉分析値は20%内外であつたが, 澱粉採取量は多くて約7%に過ぎなかった。然し4日間8回の水洗で良質無毒の澱粉を得た。3. 生鱗莖をそのまま薄い鹽酸で分解してカラメル化すれば生原料重の約10倍量の醤油樣液を得, かつ無害であることを知つた。
著者
谷澤 久之 佐塚 泰之 小松-芹田 明子 滝野 吉雄
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.283-289, 1983 (Released:2010-02-22)
参考文献数
12
被引用文献数
8 5

米酢は米よりつくる醸造酢の一種であり, 単なる食用酢としてではなく, 東洋では民間薬として健康維持に役立ってきた歴史を持っている。著者らは, マウスを用い急性毒性と脂質代謝に及ぼす影響を検討した。その結果, 1) マウスでの急性毒性は21.5ml/kg (p. o.) でその死因は含有する酢酸による上部消化管に対する障害作用に基づくことが認められた。2) 通常食および高コレステロール食で飼育したマウスの血清コレステロール値を米酢は 2.5ml/kg (p. o.) 以上で低下させた。また, 4%酢酸水溶液でも, ほぼ同様の効果が認められた。3) 抗生物質アドリアマイシソによる心臓中の過酸化脂質 (LPO) 上昇に対し, 米酢は2.5ml/kg (p. o.) で抑制した。また, 正常マウス心臓中のLPOも5ml/kg (p. o.) 以上で低下させた。一方, 4%酢酸水溶液のこれらLPOに対する作用は弱いものだった。
著者
小石 ナカ
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.420-437, 1962-01-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
34

年齢4~10才の養護施設児童ならびに一般家庭児童392名(男子のみ)の全対象を一群20ないし50名を単位として, DL-トリプトファン, L-リジンあるいはDL-スレォニン各05~0.69/日を1958年10月1日より14ガ月間にわたり連日内服させ, その日常食餌への補足が児童の成長におよぼす効果について検討し, つぎの成績をえた。1.まず6~9才学童にトリプトファンを補足した場傷その補足による14カ月間の体重増加量は, これを実験開始時体重に対する成長比率としてみた場合, 対照群に比べて平均約20%大となり, 有意な補足効果がみとめられた一しかし身長における補足効果は体重の場合ぼど明らかではなかった。2.つぎに8~10才学童にリジンを補足した場合, その14カ月間における体重増加比率は対照に比べて平均約13~19%大であり, これもまた有意な補足効果であったただし身長における効果はトリプトファンの場合同様体重におけるほど明らかな差としてみとめられなかった。なおスレオニンをリジンに追加補足した場合の効果については本試験条件では認められなかった。3.以上トリプトファンあるいはリジン補足の効果は成長速度, ことに体重増加として証明できたが体力検査成績あるいは血液蛋白性状などに影響を与えなかった。4.学童の日常摂取食餌をみると摂取栄養素量はほぼ十分であるが, その必須アミノ酸組成はこれをFAO規。準配合対比としてみると, トリプトファン76~78%, 含硫アミノ酸75~83%でともに蛋白価の制限因子となる。またリジン対比は117~128%となったが, 質的に良好な蛋白摂取にあっては, リジン摂取は約154mg/kg, FAO規準対比約150%であり, この点からはまだ不十分な摂取量であるとみなされた。5. 以上の成績から, トリプトファンあるいはリジン補足はわが国学童の成長促進に役立つものであり, その理由が日常摂取食餌中のトリプトファンあるいはリジンの相対的不足に帰因するものであろうと推論した。
著者
西村 直道
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-19, 2008 (Released:2008-12-19)
参考文献数
35
被引用文献数
2 2

高コレステロール血症を引き金とする動脈硬化症や心臓疾患が増加し,食品成分によるコレステロール代謝の正常化が重要視されている。著者は食物繊維およびタウリンによる血漿コレステロール濃度の低下機構を,それらの消化管内における作用に着目して調べた。その結果,発酵性の高い甜菜食物繊維(BF)で血漿コレステロール濃度低下作用が強く誘導されることを見出した。また,BFの作用発現に大腸の存在が必須で,大腸発酵が関与していることを明らかにした。有効な発酵産物の特定には至っていないが,発酵亢進だけでなく,糞中胆汁酸排泄の増加が同時に誘導されることが作用発現に重要であることを示唆した。タウリンの血漿コレステロール濃度低下作用には糞中胆汁酸排泄の増加が強く寄与していることを明確にした。この糞中胆汁酸排泄の増加がコレステロール7α-水酸化酵素の発現亢進ではなく,おもに回腸末端からの胆汁酸の吸収抑制に起因することを強く示唆した。以上より,血漿コレステロール濃度の低下が,食物繊維では消化管下部における発酵性に,タウリンでは回腸末端以降における胆汁酸吸収の抑制に起因することを示した。
著者
城島 クニ子 堀川 蘭子 浜口 陽一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.325-329, 1970-07-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
9

11種の魚卵について, そのタンパク質源としての栄養価を検討した。1. 各種魚卵のアミノ酸組成はTry, 含硫アミノ酸に不足するが, 他のアミノ酸組成は鶏卵に匹適する優れたものであり, 特にLysを豊富に含む。2. ケミカルスコアは47~62, EAA indexは85~92であった。3. 生鮮魚卵のNPUは56~69, NPRは3.7~4.9でEAA indexとの間にそれぞれ相関があった。またケミカルスコアとも関連が認められた。4. 11種の中ではサワラ, ハモ, ブリ, タラが比較的良く, カマス, カレイ, サバは劣る。5. 加工による影響はそのアミノ酸組成には現われないが, NPUを著しく低下させる。
著者
岡 芳子 桐山 修八 吉田 昭
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:00215376)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.347-355, 1974
被引用文献数
2

34種類の香辛料から抽出した脂質の不鹸化物を薄層クロマトグラフィーにかけ, そのステロール部分をβ-シトステロール (β-S) 相当量としてあらわした。 また, ステロール部分のガスクロマトグラフィーを行なった。 コレステロール (Ch) と相対保持時間 (R. R. T.) の等しいピークについて, GC-MSで同定実験をした。<BR>1) 34種類の香辛料のステロール量は乾燥物1g当たり0.08~2.56mgであった。 ステロール組成ではβ-Sは今回のいずれの試料にも含まれていて, celery, cumin, fennelにスチグマステロール (St) がβ-Sより多いのを除いては今回のいずれの試料にも最も多く含まれていた。 β-S, St, キャンペステロール (C) の3種類のステロールのうち, cloveにCが見当たらず, horse radish, laurel, mustardにStが見当たらないのを除いては, β-S, St, Cはいずれの試料にも含まれていた。 ブラシカステロール (Br) がfenugreek,mustard, onionに含まれていた。 Δ<SUP>7</SUP>-stigmastenolがcelery, coriander, dill, tarragonに見られた。 Chがfenugreek, garlic, onion, paprika, redpepperにあった。 Δ<SUP>7</SUP>-stigmastenolと接近してR. R. T. がβ-S 100に対してOV-17とSE30の両カラムで, ともに1.14の未同定のピークがcuminにあった。<BR>2) 前回未同定の, とくにうり類にかならず含まれていたβ-SのあとのピークはΔ<SUP>7</SUP>-stigmastenolであることがわかった。<BR>3) 前回β-Sとして報告したカボチャ, フダンソウ<SUP>3)</SUP>, カンピョウ<SUP>3)</SUP>, キュウリ, シロウリ, トウガン, ヒョウタン, マクワウリ, マスクメロン, プリンスメロンのピークはα-スピナステロール (Sp) であり, Spのあるホウレンソウをも含め, Spのある試料にはΔ<SUP>7</SUP>-stigmastenolの含まれているものの多いことがわかった。 これまで調べたうり類のうち, スイカを除いてはおもなステロールはSpであり, Δ<SUP>7</SUP>-stigmastenolも含まれていた。 pumpkin seedのおもなステロールはSp (Δ<SUP>7</SUP>, 22-stigmastadienol), Δ<SUP>7</SUP>-stigmastenol, Δ<SUP>7, 24 (28) -</SUP> stigmastadienolであることがわかり, うり類にΔ<SUP>7</SUP>のステロールがあることは生合成上興味のあることと思われる。<BR>4) 今回の試料中のfenugreak, garlic, onion, paprika, red pepperのChとR. R. T. の等しいピークを含め, 前報までに見られたChとR. R. T. の等しいピークはGC-MSの結果, すべてChであることがわかり, Chが植物界に広く分布していること, およびナス, ワケギ, onionなどのある種の植物には, かなり多量に含まれていることがわかった。
著者
讃井 和子 世利 謙二 井上 修二
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.133-137, 1997-04-10
参考文献数
10
被引用文献数
6 14

小腸スクラーゼ活性を選択的に阻害するL-アラビノースを<SUP>14</SUP>C-スクロースとともにラットに投与し, 6時間までの呼気<SUP>14</SUP>CO<SUB>2</SUB>排出量および消化管内<SUP>14</SUP>C-残存量を測定した。その結果,<BR>1) <SUP>14</SUP>C-スクロース摂取後6時間までの呼気<SUP>14</SUP>CO<SUB>2</SUB>排出量は, 同時に投与したL-アラビノースによって有意に抑制された。L-アラビノースの作用は用量依存的であり, 50mg/kgおよび250mg/kg投与群の抑制率はそれぞれ31.7%, 45.6%であった。<BR>2) ラットにおけるスクロース負荷後の血糖上昇も同時に投与したL-アラビノースによって有意に抑制された。<BR>3) 呼気<SUP>14</SUP>CO<SUB>2</SUB>排出量および血糖上昇に対して, L-アラビノース50mg/kgは作用比較物質アカルボース1.5mg/kgと同等の抑制作用を示した。<BR>4) L-アラビノース投与群では<SUP>14</SUP>C-スクロース摂取から6時間後において盲腸および結腸部に多量の残存<SUP>14</SUP>Cが認められた。<BR>以上の結果から, L-アラビノースはスクロースとともに摂取した場合, スクロースの消化吸収を抑制し, そのエネルギー利用を低下させると結論された。
著者
石井 智美 鮫島 邦彦
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.173-178, 2004-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
11

モンゴル遊牧民の食は, 家畜由来の乳・肉に依存する割合が高く, 野菜の摂取がほとんどない。連続した雪害は家畜に大きな被害を与えた。雪害が食に及ぼした影響を検討するため, 1997年に調査を行った世帯と同一の世帯で, 食に関する調査を行った。その結果, 夫のエネルギー摂取量は1997年夏季で平均2,191±589kcal, 2002年夏季で平均2,108±618kcalと, 顕著な差はなかったが, 2002年夏季では雪害前に比べ乳製品の摂取量, 種類が減少し, 小麦粉を使った料理が多くなっていた。小麦粉の消費量は雪害以前より3倍に増加していた。夏季のエネルギー摂取量の半分近くを賄っていた馬乳酒の飲用もなかった。この馬乳酒から充分な量のビタミンCを摂取していたことが明らかになった。自家製乳製品は各種微量成分が豊富であった。乳製品の摂取不足が続くことで健康に影響の出る可能性が考えられた。近代化の波が押し寄せる草原で, 遊牧民の食は大きな岐路に立っている。
著者
馬嶋 安正 蔵田 智恵子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:00215376)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.397-401, 1967

白ネズミに種々の脂肪および脂肪酸を摂取し貯蔵脂の脂肪酸組成を分析し次の結果が得られた。<BR>1) 飽和脂肪酸を摂るとそれが貯蔵脂肪に貯蔵されるが, それと一緒に炭素数の同じ一不飽和脂肪酸も同時に合成され貯蔵される。<BR>2) 摂取する脂肪および脂肪酸によって貯蔵脂肪の脂肪酸組成は変動するが全飽和脂肪酸と全不飽和脂肪酸の比率は一定で常に1: 2に近い値を示す。