著者
香川 裕之 岩崎 雄一 木村 啓 犬飼 博信 佐々木 圭一 安田 類 保高 徹生 山縣 三郎 河村 裕二
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.115-124, 2021 (Released:2021-07-10)
参考文献数
50
被引用文献数
1

飛騨川上流の支流に設定した, 鉱山廃水の流入前後の計11地点で金属等の水質と底生動物, 付着藻類の流程に沿った変化を調べ, 金属濃度が低い別の支流に設定した対照地点との比較により鉱山廃水流入による生態影響を評価した。鉱山廃水流入直後の調査地点では, 亜鉛等の金属濃度が高くなり (亜鉛は最大0.94 mg L-1) , 底生動物及び付着藻類の種数等は大きく減少し, 金属濃度が高い河川でも出現する分類群 (底生動物はコカゲロウ科等, 付着藻類は珪藻類のAchnanthidium属) が優占した。金属濃度は流程に沿って減少し, 当該調査の最下流地点で底生動物群集は対照地点と類似していた。底生動物と付着藻類の種数や群集組成の流程変化は類似していたが, 付着藻類では鉱山廃水流入直後に総細胞数が顕著に増加していた。金属類に対する水生生物の変化を包括的に理解するためには, 複数の生物グループを調査する必要がある。
著者
中西 弘
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.14, no.11, pp.766-771, 1991-11-10 (Released:2009-09-10)
参考文献数
9
被引用文献数
3 2
著者
篠原 陽子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-7, 2014

これまでの研究で,非イオン界面活性剤水溶液を土壌を充填した層に吸引ろ過すると,非イオン界面活性剤(NPnEO)を捕捉・回収することができ,回収したNPnEOは再利用可能であることが明らかになった。このことは非イオン界面活性剤単独系で成り立つが,他の成分が共存する混合系の場合は成立するのかという課題が見出された。そこで,本報では,多成分系における捕捉率,回収率を調べ,それらの影響の有無を把握することを目的とし,非イオン界面活性剤(NP10,NP15,NP20)に,陰イオン界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムSDS),無機ビルダー(硫酸ナトリウム),有機ビルダー(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を混合した系で実験を行った。その結果,NP10(30 ppm)単独系の捕捉率95.6%に対して,硫酸ナトリウム(1.0%)を混合した系の捕捉率は93.1%,SDSを0.1%混合した系の捕捉率は90.5%,SDS 0.5%を混合した系の捕捉率は6.7%となり,単独系とSDS 0.5%混合系に有意差が認められた(Bonferroni,p<0.05)。捕捉率・回収率は,ビルダー混合よりも,陰イオン界面活性剤混合による影響が大きく,混合する濃度によって差がみられた。特に,NPnEOとSDSの濃度が臨界ミセル濃度(cmc)以上になると捕捉率・回収率が著しく低下し10%程度となり,SDSがNPnEOの捕捉を阻害していることが考えられた。以上のことから,混合系においてNPnEOの捕捉率を高めるためには,捕捉処理の過程で成分ごとに分離除去する必要があることが示唆された。
著者
鬼倉 徳雄 中島 淳 江口 勝久 乾 隆帝 比嘉 枝利子 三宅 琢也 河村 功一 松井 誠一 及川 信
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.837-842, 2006 (Released:2010-01-09)
参考文献数
22
被引用文献数
14 16

The populations of Japanese bitterlings and unionid mussels and the land use of the watershed were investigated in 36 sampling sites in the Tatara river system in northern Kyushu, Japan. Five bitterling species were found in 11 sites in the system. Although Rhodeus ocellatus kurumeus was found to be distributed in 23 sites in 1983, this species was found in three sites in this study. The population of the bitterlings decreased in the sites with a high urbanization rate, although the populations of several other fish species showed no dependence on the urbanization rate. The population of the mussels showed a negative correlation with urbanization rate. In addition, the mussels populations showed positive relationship with the bitterling populations. These three relationships indicate that the decrease in the bitterling population due to the urbanization of the watershed was responsible for the decrease in the mussel population.
著者
甲斐田 泰彦 犬養 吉成 安田 誠二 山下 武広 迎 勝也 境 正志 津留 壽昭
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 = Journal of Japan Society on Water Environment (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.547-552, 2002-09-10
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

A boron adsorption material for treating wastewater containing boron was synthesized from various types of saccharides and polyallylamine resin. The adsorption properties of boron were investigated by the batch and column methods using model wastewater. In the synthetic reaction for the D(+)-mannose-type polyallylamine resin, the optimum mole ratio of D(+)-mannose to one unit of polyallylamine was 1.0. Furthermore, the optimum reaction time and temperature of the synthetic reaction were found to be 24 hours and 35&deg;C, respectively. The amount of boron adsorbed on the D(+)-mannose-type polyallylamine resin exceeded 0.5 mM&middot;g<sup>-1</sup> in the pH range of 2-12, and boron could be effectively adsorb onto the D(+)-mannose-type polyallylamine resin from model wastewater. At the optimum pH of 8.5, the maximum quantity of boron adsorbed was 2.06 mM&middot;g<sup>-1</sup>. The adsorption isotherm of boron on the D(+)-mannose-type polyallylamine resin follows Freundlich's equation in the equilibrium concentration range from 0.045 mM&middot;<i>l</i><sup>-1</sup> to 15.0 mM&middot;<i>l</i><sup>-1</sup> at 25&deg;C. When a feed solution containing 2.0 mM&middot;<i>l</i><sup>-1</sup> boron was pumped into the D(+)-mannose-type polyallylamine resin column, the volume of effluent containing less than 0.02 mM&middot;<i>l</i><sup>-1</sup> boron was about 311 times the bed volume, which was about 3.3 times the column of Amberlite IRA-743. The boron that was adsorbed on the D(+)-mannose-type polyallylamine resin column was easily eluted with a 1.0 M&middot;<i>l</i><sup>-1</sup> hydrochloric acid solution, and the elution ratio was 100.6% of the adsorbed boron on the column.
著者
諏訪 裕一 豊原 大樹 岡田 達治 漆川 芳国
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.261-265,232, 1991-04-10 (Released:2010-01-22)
参考文献数
8

膜分離リアクターによる,有機性模擬廃水中全ケルダール態窒素(TKN)の最大硝化速度を検討した。模擬廃水中に徐々に硫酸アンモニウムを加えることでTKN負荷を増加した。比較的小さいステップ増加率でTKN負荷を上げた結果,前回の実験で得られた最大アンモニア酸化速度の約2倍の速度(0.59gN・l-1・d-1)が得られた。本実験での結果と前報での同じ条件の実験結果とをまとめて解析した結果,負荷のステップ増加率と負荷を増加する時点でのアンモニア酸化速度が,次なる負荷での運転の成否に影響しており,リアクターのアンモニア酸化速度が高くなるにつれてステップ増加率を小さくしてゆかなければアンモニアの残存がおき,リアクターの硝化速度が高くならない場合のあることが考えられた。
著者
ホワン ティー マイ 渡部 徹 福士 謙介 小野 あをい 中島 典之 山本 和夫
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.153-159, 2011 (Released:2011-10-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 4

衛生環境が貧しい途上国都市では,洪水時に,住民が病原微生物に汚染された水に接する機会が増えるため,感染症のリスク上昇が懸念される。本研究では,ベトナム国フエ市を対象に,洪水時と平常時における主要な感染経路からの大腸菌感染症の発症リスクを定量的に評価した。平常時における年間リスクは,最大で0.026(38人に1人が発症)と見積もられた。特に,家や店で生野菜を摂取することによるリスク(0.024)が高かった。一方,洪水時には,洪水中での家具の移動や掃除,料理,水遊び等の不衛生な行為によりリスクが0.45にまで大幅に上昇した。年間でわずか6.5日に過ぎない洪水時のリスクが平常時の年間リスクの17倍に相当することから,インフラ整備による洪水制御には大きなリスク削減効果が期待できる。しかし即時のインフラ整備は難しいことから,上記のような洪水中での不衛生な行為を控えることがより現実的な対策と言える。
著者
大久保 慧 小野 健 中野 和之 宇城 真 藤原 建紀
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.233-240, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

大阪湾をはじめとする閉鎖性海域では, 夏季の底層水の貧酸素化が問題となっている。貧酸素が環境や底生生物に与える影響には, 貧酸素の持続時間が重要な指標となる。国土交通省近畿地方整備局が公開している大阪湾水質定点自動観測データ配信システムの毎時データを用いて, 大阪湾の底層貧酸素の変動状況及び貧酸素状態の持続時間を2011年から2013年まで整理した。その結果, 多くの地点で夏季の底層DO (溶存酸素) の日変動幅は平均1 mg L-1以上, 月内での標準偏差は1 mg L-1以上を示した。大阪湾南東側の地点では, 強風時に貧酸素から回復する事例が多くみられ, 貧酸素が最も強くなる8月を除き, 貧酸素状態から頻繁に回復し, 貧酸素の持続時間は24時間未満となることが多かった。一方, 大阪湾北側の地点では, 強風に対する応答が南東側の地点より弱く, 貧酸素の持続時間も長い傾向にあった。
著者
中村 泰男 金谷 弦 小泉 知義 牧 秀明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.127-134, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

東京湾にある京浜運河は夏期に貧酸素水塊が卓越し,底泥中には硫化水素が発生する環境劣悪な水域である。この京浜運河に位置する大井干潟において,2010・11年の春~秋に二枚貝(アサリ,シオフキ,ホンビノスガイ,ハマグリ)のケージ飼育実験をおこない,貝の生残を調べた。これと併行し,貝の生残を左右する可能性のある環境因子(水温・塩分・底質・溶存酸素・硫化物など)についてのモニターも行なった。両年とも夏場に貝の斃死が生じたが,いずれの貝の場合もその生残とそれぞれの環境因子の変動の間に明瞭な関係を認めることは出来なかった。
著者
岩崎 雄一 本田 大士 西岡 亨 石川 百合子 山根 雅之
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.201-206, 2019 (Released:2019-09-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

水生生物保全を目的とした水質環境基準が設定された直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 (LAS) の濃度が高い河川地点の特徴を評価するために, 2015年度の水質測定結果を用いて, LAS濃度が0.02 mg L-1 (淡水域の水質環境基準の最小値) を超過する河川地点 (LAS高濃度地点群) とLAS濃度が0.02 mg L-1以下の地点において, ①水面幅 (河川規模の指標) , ②周辺の土地利用, ③有機汚濁 (生物化学的酸素要求量:BOD) の程度を比較した。その結果, LAS高濃度地点群は, ①水面幅の変化が少なく小規模の河川, ②周辺に森林や農地が少なく, 住宅地や市街地が密集している都市域, ③BODが高く有機汚濁が進行した河川, に割合として多くみられることが示唆された。着目する化学物質について高濃度地点の特徴を把握することは, 水生生物の保全効果という観点から管理方策を検討する上で有用な判断材料となるだろう。
著者
浅見 真理 小坂 浩司 島崎 大 武井 佳奈子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.189-195, 2014 (Released:2014-09-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

塩水電解における次亜塩素酸の生成における塩素酸,過塩素酸の特性を把握するための検討を行った。6種類の異なる電極(主たる成分A:RuO2-TiO2,B:RuO2-IrO2-TiO2,C:IrO2-SnO2,D:IrO2-Pt,E:Pt,F:PbO2)を用いて塩水電解を行ったところ,生成装置の電極の材質により反応時の電位が異なり,次亜塩素酸の生成にともなって生成する塩素酸,過塩素酸の生成量が異なることが分かった。電流値が一定の条件では,端子間電圧が高い電極で電圧が高く,塩素(次亜塩素酸)の生成量が少なく,塩素酸,過塩素酸の生成量が多くなった。特に,白金電極(E)や二酸化鉛電極(F)において,次亜塩素酸あたりの過塩素酸の生成が顕著であった。電解における電位の違いにより,塩素酸,過塩素酸の濃度が高くなるため,次亜塩素酸を生成する工程,工場における電解等でも注意が必要である。
著者
小熊 久美子 小塩 美香 Lohwacharin Jenyuk 滝沢 智
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.59-65, 2017 (Released:2017-03-10)
参考文献数
23
被引用文献数
3

水中の懸濁粒子が紫外線消毒効率に及ぼす影響を調べるため, 粒径や色の異なるカーボンブラック (CB) またはポリスチレン (PS) 粒子の共存下で大腸菌と大腸菌ファージMS2の紫外線不活化特性を測定した。試料の紫外線透過率の低下傾向は, 粒子の素材や色によらず粒径が同じ粒子で類似していた。一方, 微生物の不活化効率は粒子の素材や色による影響をうけ, CBが高濃度で存在すると大腸菌, MS2とも不活化効率が低下した一方, 白色PSでは不活化効率が上昇し, 白色粒子による紫外線の散乱が不活化に寄与したと推察された。MS2の不活化効率は, 濁度0.6-1.5度, 色度13度以上, 紫外線透過率56-70%の条件でも粒子添加なしと有意差はなかった (p>0.05) 。標準粒子を用いた本研究の実験条件では, 水中に懸濁粒子が存在しても紫外線消毒を阻害しない場合や, 粒子による紫外線の散乱で消毒効率が高まる場合のあることが示された。
著者
本橋 敬之助
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.45-48, 1986-01-10 (Released:2009-09-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

底泥からのリンの溶出に及ぼす微生物活性の影響および酸素消費に伴う溶存酸素濃度と底泥からのリンの溶出との関係についての室内実験を行った結果, リンの溶出に及ぼす微生物活性の影響は, 好気的状態におけるリン溶出の初期段階でみられるが, 嫌気的状態では認められなかった。底泥からのリンの溶出濃度 (Y, μg/l) と上層水の酸素消費に伴う実測溶存酸素濃度 (x, mg/l) の間には, Y=a+b ln x (a, b;係数) で表される実験式が成り立つことを明らかにした。
著者
加藤 寛久 小倉 紀雄
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水質汚濁研究 (ISSN:03872025)
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.449-455,430, 1990-07-10 (Released:2010-01-22)
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

東京北多摩地区の地下水(湧水,深井戸)中の揮発性有機塩素系化合物濃度について2年間測定した。そのうち湧水1地点については1週間に1回の短間隔で採水,分析を行った。その結果,テトラクロロエチレン濃度が減少する傾向を示したが,トリクロロエチレン,1,1,1-トリクロロエタンはほとんど変化をせず,また,トリクロロエチレンを除いて季節変化を示さなかった。次に,近接する湧水について調べたところ,他の化学成分についてはほぼ同じ値を示しているのにもかかわらず,揮発性有機塩素系化合物濃度はそれぞれの湧水で異なった値を示した。一方,2カ所の深層地下水(深井戸)については1カ月に1回の間隔で採水,分析を行ったが,トリクロロエチレンが2カ所の井戸水とも最も高く,飲料水水質基準を超過したものもあった。しかし,季節変化は認められず,検出されない化合物もあった。また,豪雨後の湧水中の揮発性有機塩素系化合物濃度の変化について調べたところ,降雨に伴う湧出水量の増加にかかわらず,ほぼ一定の濃度を示した。
著者
小林 憲弘 鈴木 俊也 小杉 有希 菱木 麻佑 加登 優樹 金田 智 植田 紘行 河相 暢幸 北本 靖子 土屋 かおり 木村 慎一 古川 浩司 岩間 紀知 中村 弘揮 粕谷 智浩 堀池 秀樹 京野 完 髙原 玲華 馬場 紀幸 佐藤 信武 久保田 領志 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.211-224, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
6

水道水中のホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドを迅速・簡便に分析するために, DNPHで誘導体化した試料をLC/UVあるいはLC/MS/MSにより測定する方法を検討した。検討の結果, 水道水に塩化アンモニウムを加えて残留塩素を除去した後, リン酸とDNPHを加えて誘導体化した試料を測定した。いずれの測定機器を用いた場合も両誘導体のピークは短時間で良好に分離し, ホルムアルデヒドの基準値の1/10の濃度 (0.008 mg L-1) まで高精度に分析できた。さらに, 本研究で確立した分析法が全国の水道水質検査に適用できるかどうかを検証するために, 15機関において水道水を用いた添加回収試験を行った結果, いずれの測定機器を用いた場合も両物質について「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たした。以上のことから, 本分析法は水道水の標準検査法として利用可能と考えられる。
著者
小坂 浩司 浅見 真理 佐々木 万紀子 松井 佳彦 秋葉 道宏
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.125-133, 2017
被引用文献数
3

全国の水道事業を対象に2009~2011年度の原水での農薬の測定計画と検出状況の関連性を水道統計のデータを基に解析した。農薬を測定した水道事業は約650, その約20%で農薬が検出された。農薬を測定した水道事業を水道水源, 農薬の測定回数と測定種類数で分類したとき, 地表水を水源とし農薬の測定回数と測定種類数が多い水道事業のグループは農薬を検出した水道事業の割合 (検出率) や検出された農薬の種類数が多かった。農薬の測定回数が1回のグループは農薬が検出された水道事業の割合は少なく, その多くは1種の農薬を単年度のみで検出していた。地下水を水道水源に使用している水道事業は総じて検出率は低かった。検出された個別農薬は77種, 比較的多くの水道事業 (10以上) で検出されたのは10種程度であった。検出される可能性がある農薬には地域多様性があるが, いくつかは全国の多くの水道事業から検出される可能性が示された。
著者
山口 隆司 原田 秀樹 桃井 清至 曽 怡禎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.499-510, 1995-06-10 (Released:2008-01-22)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

The ecological role of sulface-reducing bacteria (SRB) in anaerobic degradation of a long-chain fatty acid (LFA) was investigated using three anaerobic sludge consorita cultivated at different sulfate loading rates. The three kinds of sludge (referred to as Sludge A, B and C) were cultivated in a fill-and-draw mode for 100 days by feeding with plamitate as a major carbon source (feeding concentration : 1.0g COD·l-1), but with different levels of sulfate, i.e., 600mg-SO42-·l-1 for Sludge A, 300 for Sludge B, 0 for Sludge C.Degradation of palmitate into acetate in the presence of sulfate can be performed by either of the following three trophic groups : 1) symbiosis between palmitate-degrading proton-reducing acetogens (P-PRA) and hydrogen-utilizing SRB (H-SRB), 2) symbiosis between P-PRA and hydrogen-utilizing methanogens (H-MPB), 3) palmitate-oxidizing SRB (P-SRB). Three sludge consortia exhibited different behavior of palmitate degradation, depending on their sulfate loadings. As for Sludge A, the first group, P-PRA+H-SRB had the greatest contribution in palmitate degradation, and the extent of the second, P-PRA+H-MPB and the third, P-SRB were about half of the first, respectively. For Sludge B, P-PRA+H-MPB had the superior contribution over P-PRA+H-SRB and P-SRB. The lowest contributor, P-SRB was only one-tenth of the largest contributor, P-PRA+H-MPB. For Sludge C, palmitate degradation was accounted for only by P-PRA+H-MPB, and the contributions by P-PRA+H-MPB and P-SRB were negligible small.
著者
生地 正人 井上 雄二 末次 綾 奥村 朋子 出濱 和弥 多川 正 中矢 雄二
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.145-153, 2014
被引用文献数
1

傾斜土槽法は,低エネルギ-消費型の好気性浄化法である。この浄化機構を解明するためにスポンジ担体の傾斜土槽で実験を行った。本実験は,20~50分の水理学的滞留時間で有機性汚濁物質と総窒素(T-N)・総リン(T-P)が同時に浄化されることを示した。排水が傾斜土槽を浸透流下すると,水と有機性汚濁物質は分離される。溶解性の有機性汚濁物質は,生物学的吸着作用で分離され,これに要する時間が20~50分である。冬季を除けば槽内の生物学的浄化活性は高く,槽内部に捕捉された有機物は,土壌にみられる生物群によって分解される。槽重量は冬季に増加し,春季に減少した。T-N・T-P浄化は,生物学的な資化による。さらに,T-Nは硝化・脱窒反応で浄化され,T-Pはリンを含む生成土壌が槽内に残留することで浄化される。本法では,水と汚濁物質の分離,有機物の分解,汚泥の減量化,T-NとT-Pの浄化が同じ槽内で同時進行する。