著者
松尾 達博 路 暢
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.401-403, 2011-07-25

D-プシコースはD-フルクトースのC-3エピマーであり,自然界に非常に僅かしか存在しない希少糖の一つである.これまでに動物実験やヒト経口糖負荷試験において,D-プシコースの食後血糖値上昇抑制作用が報告されている.本研究では,日常生活条件下におけるD-プシコースの食後血糖値上昇抑制作用について,健康な成人男性15名および成人女性29名を対象として検討した.実験食として予め各被験者に日常的な昼食(男性:636kcal,炭水化物量87.6g,女性:513kcal,炭水化物量18.9g)を設定させた.実験当日,各被験者に実験食とともにD-プシコース6gあるいはD-フルクトース6gを市販無糖紅茶に添加した飲料を摂取させた.摂取前および摂取開始後30,60,90,120分に小型血糖測定器で血糖値を測定した.全体および男女別のいずれの場合でも,被験者の食後血糖値はD-フルクトース飲料を摂取した場合に比べて,D-プシコース飲料を摂取した場合で有意に低値であった.日常的な食事とともにD-プシコース飲料を摂取した場合でも食後血糖値上昇抑制効果が確認されたことから,D-プシコースが2型糖尿病や肥満の予防・解消に有効な機能性食材である可能性が示唆された.
著者
今中 忠行 海江田 豪児 田口 久治
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
醗酵工學雑誌 (ISSN:03675963)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.423-430, 1973-06-25

前報で, 菌体増殖および酵素生産に関する動力学モデルを提出した.本報では, まずgalactose取り込みの制限条件を検討した結果, glucoseの添加によりgalactoseの細胞内への取りこみはon-off方式でただちに完全に阻害されること, およびgalactoseの細胞膜透過系は構成的であることが判明した.またこれらの事実より, 酵素誘導に長時間を要する主因は, galactoseの膜透過系にあるのではなく, 細胞内の諸反応と細胞内での物質移動であると考えられる.さらに本モデルを用いて酵素誘導とその抑制, glucoseとgalactoseを含む回分培養および連続培養の非定常過程の実験結果をすべて十分に説明すつことができた.以上のことから, 本モデルと解析に用いた諸定数を最適化の計算に用いる妥当性十分と判定した.
著者
新家 一男
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.453-454, 2008-09-25

就職氷河期が終了し,企業での雇用が広がっています.ポスドク過剰といわれる現状と相まって,現在大学に在籍している学生たちは,進学あるいは博士研究員となるか,それとも企業への就職かという人生の岐路において,おそらく大きく悩んでいることと思います.私は大学の助手(現在の助教)を離れ,現在,基礎研究とも言えるアカデミック研究と,応用研究である企業研究との,ちょうど境界線上にいる立場です.現在推進中の創薬を目指したプロジェクトでは,多くのアカデミック機関および企業の研究者と共同研究を行っています.創薬リード化合物探索研究者としての立場から,本研究を通じて感じているアカデミック機関と企業における研究の相違などについて,現在若手中堅として,企業で活躍している研究者からいただいた意見も織り込ませながら,私見を述べさせていただきます.是非,これから進路を決める学生をはじめとする若手研究者の次のステップアップの参考にしていただければ幸いです.