著者
神渡 巧 瀬戸口 眞治 高峯 和則 緒方 新一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.520-526, 2005-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
7 8

芋焼酎のMTAについて, 香気特性及びストレス芋と含量との関係について検討し, 次の結果を得た。1.閾値の最も低い成分はリナロール, 次にゲラニオール, 最大はα-テルピネオールであり, 最低と最高では大きな濃度差が示された。2.MTAの香りの評価は, α-テルピネオールにおいて不快な表現が見られたが, その他の成分には好意的な印象を受けた。同時にネロール及びシトロネロールには,「芋イタミ臭」が指摘された。3.ストレス芋には多量のMTAが存在したが, 健全芋には痕跡量しか確認できなかった。なお, ストレス芋にMTAが存在する理由として, サツマイモが自己防御反応により生産しているものと推測した。4.ナンプ芋に生じる「芋イタミ臭」にMTAが大きく関与しており, さらにシトロネロールとネロールがその主要成分であることを明らかにした。5.市販芋焼酎はマスカットワインと比べてMTA濃度が著しく少ないことから, 芋焼酎の香りに及ぼすMTAの影響はマスカットワインより小さいことがわかった。6.芋焼酎のMTA濃度は, ストレス芋を原料とすることで極端に増加することが示された, また, MTA濃度と芋焼酎の香気には密接な関係が認められた。さらに芋焼酎で指摘される「芋イタミ臭」にMTAが大きく関与していた。7.ナンプ芋を原料に用いることで, マスカットやライチの香りを有する芋焼酎の製造が可能であることが分かった。
著者
岩下 敦子 高橋 裕司 河村 幸雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.869-872, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

日本人の国民的な食品の味噌あるいは味噌汁の生理的機能については, 1986年平山の味噌汁摂取頻度と胃がん死亡率の疫学的調査を始めとして多岐に亘る多くの研究が進められ, それらの初期のものについては本誌85巻に解説がある。本稿では最新の諸研究, 特に著者らの専攻する血圧調節機能を中心に解説していただいた。
著者
中田 久保 手口 宏子 識名 顕司 穂坂 賢
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.133-136, 1991-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

Aroma compounds in Awamori (one of Japanese traditional distilled spirits produced in Okinawa district) were analyzed and compared on samples distilled in 1989 and ones distilled in 1960-4965. In 12 samples distilled in 1989, the ratio of i-amyl alcohol/i-butyl alcohol (A/B) was lower than 1.99 (average 1.92) for 6 samples, and higher than 2.01 (average 2.62) for other samples. The latter group contained large amounts (average 6.17 ppm) of i-amyl acetate. These differences were largely accounted for by difference in fermentation temperaure of Awamori mashes. In samples distilled in 1960-1965 and stored in glass bottles, the A/B ratio was higher than 2.01 (average 2.25). But the concentration of i-amyl acetate was low (average 2.42 ppm) in these Awamori. These differences were considered to be due to the difference in Awamori yeast used in 1989 and 1969-1965.
著者
菅間 誠之助 西谷 尚道 河内 邦英
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.739-742, 1975-10-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
9

本格焼酎の貯蔵過程での成分変化を調べた結果, 次の知見が得られた。1. 貯蔵年数を異にする泡盛の成分を調べた結果, 高級脂肪酸数が貯蔵中に減少し, 数種の成分が増加していた。2. 室温で7カ月間びん貯蔵した甘藷製および米製焼酎24点について油臭のつよさを官能試験により比較し, 油臭の強い試料と弱い試料にわけ, それぞれの香気成分のガスクロマトグラムを比較した結果, 油臭の強い試料はリノール酸エチルが相対的に少なくジある成分ピーク (e成分と称す) が増加していることを認めた。3.高級脂肪酸類を使ったモデル系について, 日光照射, 加熱, 酸化剤処理による変化を調べた結果, e成分の前駆物質はリノール酸エチルであることがわかった。4. e成分の生成条件を検討した結果, リノール酸ニチルが空気中の酸素により, 比較的温和な条件で酸化された場合に生成することを確認した。5. リノール酸エチルの酸化物をTLCで分画し, これを焼酌に添加して官能試験をした結果, 油臭のつよさは添加量にほぼ比例した。したガミって, e成分が油臭物質を代表する一成分であると推定した。
著者
岡本 匡史 山内 徹 矢野 駿太郎 黒瀬 直孝 川北 貞夫 高橋 康次郎 中村 輝也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.10, pp.827-832, 1999-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4

(1) 清酒中の溶存酸素の保存中での消費速度はビンの色によって異なり, 無色透明ビンのような光透過量の多いビンに詰めた清酒の溶存酸素は速く消費された。(2) 光透過量が多い容器では, 溶存酸素を低減させることにより日光着色を顕著に抑制できた。しかしながら, 日光臭が強く発生して品質が悪くなった。(3) 光透過量の少ない褐色ビン, 黒色ビンおよび緑色ビンの場合, 初発の溶存酸素濃度が従来清酒と同程度 (3.2ppm) であれば, 保存中に老香, 雑味, 着色が増加した。また, 低すぎる (0.7PPm) と苦味, えぐ味および日光臭が発生した。これらの結果から, その間の溶存酸素濃度の中に品質維持に最適な濃度が存在するものと考えられた。(4) 最適な溶存酸素濃度は褐色ビンと黒色ビンでは2.0 ppm前後, 緑色ビンでは2.0 ppmよりも高いところにあり, この溶存酸素濃度に清酒を調整して詰口を行うことによって, 詰口時の品質を流通段階で長く維持できると考えられた。
著者
磯谷 敦子 宇都宮 仁 岩田 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.374-380, 2004-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
15
被引用文献数
5 9

清酒の熟成香に対するソトロンおよびフルフラールの寄与について検討した。これらの化合物はGC-01-factometryにより熟成酒から強く検出された。また, これらの化合物の定量を溶媒抽出およびGC-MS分析により行った。ソトロンについては, 内部標準物質として3-オクタノールの代わりに13C標識したソトロンを用いることで, 変動係数が10%以下に減少した。熟成酒中のソトロンの濃度は認知閾値を超えていたが, フルフラールは超えていなかった。26年貯蔵酒におけるソトロンのオダーユニットは61であった。したがって清酒の熟成香にはソトロンが大きく寄与していると考えられた。また, ソトロンの前駆物質と考えられているα-ケト酪酸およびアセトアルデヒドとソトロンとの間には相関がみられたが, 他の生成経路の関与の可能性も示唆された。
著者
宇都宮 仁 磯谷 敦子 岩田 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.9, pp.652-658, 2004-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
23
被引用文献数
5 10

清酒の香味特性の参照標準とする物質及びその添加量を定めるため, アセトアルデヒド, イソバレルアルデヒド, ベンズアルデヒド, ジアセチル, フルフラール, ソトロン, エチルメルカプタン, ジメチルスルフィド, ジメチルトリスルフィド, 及び2, 4, 6-トリクロロアニソールについて検知閾値, 認知閾値及び90%認知閾値を求めた。イソバレルアルデヒド, ソトロンの検知閾値は, 既報に比べ10倍以上低かった。
著者
宇都宮 仁 磯谷 敦子 岩田 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.729-734, 2004-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

清酒の香味特性の参照標準とする物質及びその添加量を定めるため,エステル(酢酸エチル,酢酸イソアミル,カプロン酸エチル),アルコール(イソアミルアルコール,フェネチルアルコール)及び有機酸(酢酸,酪酸,イソ吉草酸,カプロン酸,カプリル酸)について検知閾値,認知閾値及び90%認知閾値を求めた。前報で報告したものも含め清酒へ添加した20種類の匂い物質の閾値を,ビールに添加した匂い物質の閾値と比較すると酢酸イソアミル,フェネチルアルコール,イソバレルアルデヒド,DMS,TCA,酢酸,カプロン酸及びカプリル酸では低かったが,他10成分(ソトロン,フルフラールを除く)は大きく異なるものではなかった。
著者
村上 英也
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.889-894, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

東洋と西洋の酒の特色の第一番目に掲げられるのは澱粉の糖化材としてのカビと麦芽の違いであろう。その東洋のカビの代名詞的存在としての麹菌を最初に日本において発見したのがドイツ人学者であるが, 当時の状況はどのようなものであったのであろうか。麹菌の権威である筆者に, その辺を紹介していただいた。麹菌に関する貴重な資料としても意味がある。
著者
上岡 龍一 後藤 浩一 山内 彰雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.11, pp.771-776, 2005-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
17

近年, 味噌の生理活性に関する様々な研究が行われており, 大腸がんの前がん病変 (ACF), 胃腫瘍, 肺腺がんに対して, 大きな予防効果を示すことなど報告されている。しかし, がん抑制成分の特定や制がんメカニズムの詳細については明らかにされていない。著者らは, 麦味噌から有効成分を抽出し, 新たに開発した天然素材の複合脂質膜に含有させ, ヒト肺扁平がん細胞に対する増殖抑制効果を検討された。特に, 脂溶性成分に顕著な抗腫瘍活性のあることを明らかにされ, 味噌中に含まれる脂肪酸および脂肪酸エチル, なかでも, リノレン酸エチルが重要な抗腫瘍成分であることを初めて見い出された。これらについて詳細に解説していただいた。
著者
川上 晃司 越智 龍彦 三上 隆司 藤井 一嘉 谷本 昌太
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.55-65, 2008-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

To elucidate the suitability of unwashed rice for sake brewing, we carried out pilot scale brewing with unwashed rice and ordinary polished rice from Senbonnishiki polished to 50% and Nakateshinsenbon polished to 70%.The activity of acid protease in koji from unwashed rice was slightly higher than that of ordinary polished rice.The fermentation periods of moromi mash from unwashed rice were a fewdays shorter than those of ordinary polished rice.General components, yields, andflavor components in sake from unwashed rice were almost the same as those from ordinary polished rice.Alcohol yield from unwashed rice was slightly lower than that from ordinary polished rice, and the sake cake ratio from unwashed rice was comparatively higher than that from ordinary polished rice. Succinate in sake from unwashed rice was significantly lower than that from ordinary polished rice. Sensory scores of brewed sake from unwashed rice were almost the same as those from ordinary polished rice.These results suggest that not washing can not only save labor in the rice-washing process but also yield sake of the same quality as that from conventional methods.
著者
小泉 武夫 角田 潔和 山本 多代子 鈴木 明治
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.173-178, 1979-03-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

β-フェニルエチルァルコールとβ-フェニルニチルアセテートはバラの香気に似たもので, 多くのアルコール性飲料の香気付与のために重要な化合物である。特にβ-フェニルエチルァルコールは種々のアルコール性飲料の中にかなりの量で存在している。例えば筆者らが分析した種々のアルコール性飲料中の存在量は次の様であった。清酒40~60ppm, ウイスキー10~15ppm, ビール15~20ppm, ブランデー5~6ppm, しょうちゅう30~40ppm。本報告ではこのβ-フェニルエチルアルコールとβ-フェニルエチルアセテートの酵母による生成について検討した。その結果は次のとうりである。1.フェニルアラニンからβ-フェニルエチルアルコールの生成量には, 供試酵母間に差異があり, 清酒酵母はビール酵母, ワイン酵母よりその生成は強い。2.清酒酵母の2, 3, 5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド還元能とβ-フェニルエチルァルコールおよびβ-フェニルエチルアセテート生成能との関連は供試酵母間に大きな差異がある。その順位は赤色コロニータイプ>赤桃色コロ論一タイプ>桃色コロニータイプ>白桃色コロニータイプであった。3.β-フェニルェチルァルコールは, フエニルァラニンが酵母による脱炭酸, 脱アミノ反応にょって生じる。また我々の実験結果ではチロシンが酵母によって分解されるときも少量生じることを知った。
著者
宇都宮 仁 木田 信 牧 則光 磯谷 敦子 岩田 博 西谷 尚道
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.446-457, 2006-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 4

1.ヘッドスペースSPME法による焼酎及びホワイトスピリッツの中高沸点香気成分分析条件を検討した。高級アルコールや脂肪酸エチルエステル等の共通する成分に加えて, 甘藷焼酎にはテルペン類及びサリチル酸メチル, 泡盛には1-オクテン-3-オールといった特徴のある成分が検出され, 本法は中高沸点成分の分析に有用であった。2.一般成分 (pH, 酸度, TBA価), 酵素法で測定したアセトアルデヒド及び酢酸, 直接ヘッドスペース法で測定した7成分, ヘッドスペースSPME法で測定した20成分を合わせた32成分を用いて, 本格焼酎 (28), 花酒 (1), 甲類 (3), 甲乙混和 (2), ウオッカ (3), ラム (3), アラック (1), テキーラ (1), ピンガ (1) のクラスター分析を行ったところ, 酒粕焼酎2点を除き, (1) 本格焼酎, (2) 甲類・甲乙混和・ウオッカ・ラム, (3) その他のグループに類別された。3.ステップワイズ変数選択を行い, 酢酸, 酢酸エチル, イソアミルアルコール, 1-ドデカノールを用いて「本格焼酎 (28)」,「甲類・甲乙混和・ウオツカ・ラム (11)」,「中国白酒 (4)」のカテゴリーの判別分析を行うと誤判定1で判別が可能であった。4.本格焼酎 (28) 間では, メタノール, 1-プロパノール, イソブタノール, カプリル酸エチルを用いて, 誤判定1で甘藷, 泡盛, 米, 麦, ソバ, 黒糖, 酒粕の判別が可能であった。5.本格焼酎の特徴は, 高級アルコール及び低沸点のエステルが多いことであったが, 中国白酒より酢酸, 酢酸エチル, アセトアルデヒドが少なく, 穏やかな香味を持つと考えられた。
著者
篠原 隆 川本 康裕 柳田 藤寿
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.215-223, 1998-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
22

1.ワイン酵母(S.cerevisiae)の有する三種のグリコシダーゼ活性をYM培地,ブドウ果汁培地および栄養源補添ブドウ果汁培地により培養して測定した。供試酵母は25℃で2日間培養した後,あるいは対数増殖期と定常期に集菌し,pH5,0およびpH3.5にて合成基質と反応させて活性を求めた。2.YM培地による培養の場合,供試105株のβ-グルコシダーゼ活性は,pH5.0において159-1539nmolであったが,pH3.5の場合に70-817nmolであり,本酵素活性の低下が示された。供試20株におけるα-アラビノシダーゼおよびα-ラムノシダーゼ活性は,それぞれユ2-53(pH5.0), 9-80(pH3.5)nmolおよび2-24(pH5.0), 1-29(pH3.5)nmolであった。これらのグリコシダーゼ活性は菌株およびpHにより変動が認められたが,いずれも低活性であった。3.ブドウ果汁で培養した場合,βブルコシダーゼ活性は,対数増殖期の菌体が定常期の場合より高活性の傾向であった。しかし,その対数増殖期の活性は, 66-318nmol,pH5.0および19-307nmol,pH3.5であり,低活性であった。また,培養上清液のβ-グルコシダーゼ活性について,対数増殖期および定常期において4-35μU/mlおよび1-10μU/mlと極めて低活性であった。4.ブドウ果汁培地への栄養源補添の効果が,一部の菌株について示されたが,そのグリコシダーゼ活性は低いレベルにとどまった。5.ネオマスカットブドウを用いた試験醸造を1995年度および1996年度に実施した。酵母区について,そのワイン中のテルペノール濃度は果汁より0.2-0.4mg/l増加したが,菌株間の差異が0.1mg/l以下であり,供試ワイン酵母のグリコシダーゼがテルペノール生成に及ぼす効果は小さいと推定した。一方,酵素区ではテルペノールが明確に増加しており,その増加量が0.7-1.6mg/lであった。また,供試ブドウ果汁中には有意のテルペノール配糖体の存在することが示された。最後に,本研究遂行に当たりご助言を賜りました本研究施設高柳勉博士に感謝いたします。また,酵素標品をご提供下さいました明治製菓(株)生物科学研究所高野敏明氏に感謝いたします。
著者
村中 文人 岩間 直子 斉藤 知明 殿内 暁夫 赤田 辰治 武田 潔
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.9, pp.711-716, 2006-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

カプロン酸エチル高生産酵母Sacckaromyces cereuisiae3703-7株はグルコース濃度15%培養温度25℃で培養した時カプロン酸エチル生成が最大であった。糖類ではグルコースよりはシュクロース, フルクトース基質の方がカプロン酸エチル生成が多かった。親株の3703株はカプロン酸エチル生成に対するグルコース濃度,培養温度の効果はほとんどなく, その生成量は3703-7株と比較して1/7-1/10であり, 低かった。これらの結果からフルクトース,グルコースとシュクロースを糖組成とするリンゴ搾り粕を原料として3703-7株をエタノール発酵することによりカプロン酸エチルや酢酸エチルの香気物質を生成することが示唆された。リンゴ搾り粕から糖濃度の異なる2種類の抽出液,×5抽出液(糖分6.4%を含む)および×1抽出液(糖分10.4%を含む)を調製し, 3703-7株を植菌し, 15℃ および25℃ で培養した。カプロン酸エチルは×1抽出液の方が多く生産された。×1抽出液で25℃8日間培養後, エタノールは5.23%生成され,カプロン酸エチル, 酢酸エチルと酢酸イソアミルはそれそれ3.12ppm, 7.13ppm, 0.45ppmであった。この発酵液の蒸留液はリンゴの香りに加えてカプロン酸エチルの甘い香りを有するエタノール32.3%のフレーバーアルコールであった。