著者
鈴木 昌治 小泉 武夫 野白 喜久雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.367-373, 1986-06-15 (Released:2011-11-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1

吟醸香の生成機作, 特に発酵条件との関係については未だ不明な点も多く, 本稿でも, これから解明されるべき問題とされているところも多いが, 実験事実に勝るものはない。著者らは吟醸もろみの芳香生成の動的変化を適確かつ詳細に分析した。吟醸造りに与える示唆も非常に多い。関心ある読者の方々に一読をおすすめする。
著者
秋田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.621-625, 1992-09-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
25
被引用文献数
1 3

香気の高い清酒の創出のために, これまで長い年月をかけて酵母菌株のスクリーニングが行われてきたが, 近年ではバイオテクノロジーの進展により遺伝子レベルでの香気生成のメカニズムの解明がなされ, 新しい育種技術がもたらされている。そこで本稿は酵母の香気生成について最近明らかにされた知見をとりまとめ, 今後の展望を解説していただいた。
著者
稲橋 正明 吉田 清 蓼沼 誠
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.1006-1015, 1999-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

窒素源の種類によつては培養条件により, 高頻度にTTC染色性のないコロニーが現れることを見出した。それらTTC染色性のない酵母の性質及び醸造特性について調べた。セリン, チロシン, アスパラギン及びアスパラギン酸を単独添加した培地を用い35℃ 以上で培養した場合に, TTC Whiteのコロニーが高頻度で出現した。これらTTC Whiteのコロニーの出現は特にアスパラギン酸及びアスパラギンを用いた場合に著しかった。TTC White株はグリセリン培地に生育せず, チトクロームa+a3の吸収スペクトルが消失していることから呼吸欠損菌であった。これら呼吸欠損菌を用いて小仕込みを行い, 小仕込み酒の成分結果を親株 (TTC Red) と比較したところ, 発酵の遅れ, 酸度の上昇 (リンゴ酸, 酢酸の増加), 香りの低下を招いた。
著者
梅本 勝博 遠藤 温
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.10, pp.707-710, 2002-10-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

企業活動において, 俊敏な意思決定と迅速な行動は, 企業の発展や生き残りにかかわる重要な要件であり, 種々の情報や知識を踏まえて的確に行う必要がある。そのためには普段から知識の収集・分析・意思決定などを柔軟かつ機動的に行えるように組織力を引き上げておく必要があり, そのような知的機動力の視点から見たナレッジ・マネジメントの概念が明瞭に解説されている。
著者
本郷 信郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.402-409, 1995-06-15
参考文献数
2
被引用文献数
1

フレッシュで明るい, 近代的なイメージを特徴とする生酒が需要を伸ばしている一方で, 伝統的, 落ち着いた, 重厚といった対極的イメージを特徴とする長期熟成清酒に対する需要も少しずつではあるが増えてきている。<BR>長期熟成酒研究会を主催されている筆者に, その現状と今後の展望等について解説していただいた。
著者
江村 隆幸 岡崎 直人 石川 雄章
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.9, pp.726-732, 1999

243年前 (宝暦6年, 1756年) に仕込んだ古酒が新潟県関川村, 渡邉家で発見され, 官能評価及び成分分析を行った結果, 以下のことが明らかになった。<BR>1.官能評価の結果, 外観等の性状は濃暗褐色で濁りはなく粘度が高く, 強い酸味と甘味及び若干の苦みを有し, 香りは強い老香様を呈していた。<BR>2.現在の清酒に比較して, 酸度およびグルコース濃度は高く, pHは低く, また, 酸度の割にアミノ酸度は低かった。<BR>3.有機酸は, コハク酸及びクエン酸を除き測定した全ての成分において多かった。また, リン含量が多かったがその理由として, 当時の製法が玄米または低精白米を使用したことが推察された。<BR>4.アミノ酸含量は, 測定した20アミノ酸全てについて現在の清酒に比較して少なく, 特に塩基性アミノ酸及び含硫アミノ酸が少なかった。<BR>5.酢酸エチル, 酢酸イソアミル, イソアミルアルコール, イソブチルアルコール及びn-プロピルアルコールの香気成分が同定された。<BR>6.アルコール濃度は約2%と低く, 貯蔵開始時の容積の約35%が蒸発したためと考察した。<BR>7.以上の結果から, 当初詰められた酒は糖分と酸の多い現在の酒母に近い酒であったことが推察された。<BR>最後に, 243年古酒を提供していただいた渡邉家保存会理事長渡邉和彦氏に厚く御礼申し上げます。また, 本報告にあたりご協力賜りました大洋酒造 (株) 平田大六氏に深謝いたします。
著者
佐藤 圭吾 鍋倉 義仁 青木 俊夫 金桶 光起 渡辺 健一 月岡 本
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.377-381, 2002-05-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
14

市販の低アルコール, ソフトタイプ清酒27点について一般成分分析, 糖組成および有機酸組成の分析を行い結果を得た.1.一般成分の分析を行ったところ, 酸度, アミノ酸度, 日本酒度およびアルコール分は幅広い成分値を示していた.また, 日本酒度および酸度に直線関係がみられた.2.糖組成は, その主たる成分はグルコースであった.3.有機酸組成は, 乳酸が主体であったが, いくつかの試料はクエン酸またはリンゴ酸の含有量が比較的高いものがみられた.4.官能評価において香味の不調和を指摘する意見が多かった.また, ピルビン酸を前駆体とするダイアセチル臭やアルデヒド臭の指摘が散見された.
著者
藤谷 健
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.104-107, 1967-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
17

今までバラバラに研究されていた酵母の無機成分組成とその要求性とを結びつけ, 特に必須成分であるリン, マグネシウム, カリウムをとりあげて解説。本稿で述べられている “基底含量” という考え方は, 酵母の無機成分組成と増殖との関連性を究明する際の一つの, 新しい見方として注目されよう。
著者
平野 博之 佐野 芳雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.613-617, 1993-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
24

日本で好まれる米はジャポニカ米だが, 海外ではインディ力米が好まれる。前者は粘りがあるのに比して, 後者はパサパサである。この米の品質はアミロースの含量によっている。そのアミロースの合成はWaxy (wx) 座と呼ばれる遺伝子座の働きによって調節されている。イネwx座の遺伝子産物 (Wxタンパク質) はアミロースの合成を触媒するスターチシンターゼ (EC2.4, 1.21) である。米の品質を左右するwx座の性質と機能についての先端的な遺伝学的, 分子生物学的研究をわかり易く解説していただいた。
著者
佐藤 仁一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.498-502, 1982

独創的発想により, 全世界に先駆けて粉末酒を発明された著者に, 粉末酒の酒税法上の位置付け, 製造方法, 性状, 生成機構から用途にいたるまで解説いただいた。<BR>酒類を含め, 食品全般にかける著者の情熱が紙面からひしひしと伝わってくる一編である。熟読をお推めしたい。
著者
本藤 智
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.453-459, 1989-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
73

米味噌の一般成分の中で水分を除けば最も多いのは炭水化物である。その主要構成成分をなす糖類の種類はま複雑多岐に亘っている。それらは大豆と米に由来し, 原料処理, 製麹, 発酵工程を経る間にダイナミックな変化を見せ, 製品の色, 香り, 味, 物性などに著しい影響を及ぼす。味噌製造中における糖類の果す役割に視点をおいて, これまでに得られた知見をまとめていただいた。
著者
舘 博
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.251-256, 1998-04-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
28

醤油中にはジペプチドとして幾つかのX-Proが認められている。ペプチドのアミノ末端よりX-Proを特異的に遊離させるX-プロリルジペプチジルーアミノペプチダーゼ (XPAP) を筆者は麹菌から初めて見出した。またこの酵素は熟成の呈味形成に大きく関与することも明らかにした。本酵素の作用機作と呈味形成の役割を詳しく解説いただいた。
著者
堀江 修二 土佐 典照 細谷 達夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.57-61, 1992-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

A method for evaluating the quality of koji from various analytical data was proposed. Koji was digested in a solution containing acetate buffer, pH 5.0, at 55°C for 5 hr, and the filtrate of digestswas analyzed for specific gravity (Bé degree), glucose and amino acids. Moisture content (KM) of koji was also determined. From these results, true digestion value (SS), true saccharification value (ST), total potency (TR=SS×ST), true amino acidity (S A), saccharification ratio (1/SS), amino acid ratio (SA/TR), and true glucose (SG) were calculated by equations respectively defined. When values of koji for highly ranked sake (ginjo-koji) and for common sake were compared during the process of koji making, changes in measured values other than SA were smaller for the former koji than for the latter at the time of shimai-shigoto (2 nd mixing operation) and thereafter. When properties of koji were plotted in a 3-axle radar chart prepared from axles of TR, SA/TR, and ST/TR, koji for highly ranked sake showed lower TR and higher SA/TR than koji for common sake. A 5-axle radar chart prepared from axles of SS, ST, SA, KM and SG showed that koji for highly ranked sake gave almost regular pentagonal shapes, while koji for lowly ranked sake gave irregular pentagonal shapes having high KM and SG.
著者
塩谷 育生 築山 良一 古林 万木夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.768-774, 2003-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
11

醤油は単に調味料というより素材を活かす天然の消臭素材であり, 醤油麹抽出物もまた消臭活性を有する食品素材である。ここでは, 醤油麹抽出物の消臭活性と食品加工への利用について解説していただいた。
著者
海老根 英雄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.102-108, 1985-02-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
73

味噌はしょう油とともにわが国を代表する発酵調味料である。原型は古く中国大陸から伝来し, 日本各地で数多くのバラエティーを生んできた。その製造工程では, 呈味成分生成のための麹由来の酵素による加水分解作用に加えて, 各種酵母及び細菌の混合培養状態での発酵による複雑な香味成分の醸成があり, 微生物の作用は極めて複雑である。ここでは味噌醸造に関係する微生物についての知見を解説していただいた。
著者
諏訪 芳秀
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.376-383, 2006-06-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
12

レストラン等で「とりあえずビール」と注文されるように, ビールはアペリティフとして食欲を刺激し食事を美味しく感じさせて, 我々の食生活を豊かにしてくれる。本稿では, 食物認知としての食物刺激ではなく, 飲用後のビールが消化管内に到達した後の普遍的な生理特性としてのビールのアペリティフ効果のメカニズムと関連成分について解説していただいた。
著者
小林 統
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.465-471, 1996-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

酵母の凝集に関しては, 清酒酵母でも泡なし酵母でも種々研究され, 細胞壁の構造が関与していることが解明され, 実用化が進んでいる。ビール酵母でも酵母の凝集は発酵に大きな作用を及ぼすことは昔から知られていた。ここでは, 凝集に関与する遺伝子について筆者の研究をも紹介しながら, 分かりやすく解説していただいた。