著者
小畑 美穂 Miho Obata
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2022-03-20

近年の医療ソーシャルワークのマネジメント重視=内向き姿勢への疑問を呈し、(1)業務のマネジメント化への背景を探り、(2)歴史的資料の検討や医療従事者への質的調査を通し,それを克服する方途を探った。知見として,共感的対話,対象認識の重要性を得,①【業務を超えたつながり】が組織化への一歩,②【ソーシャルワーク経験・体験、覚悟】ができる環境と仕掛けづくり、③患者と【外来での継続的関わり】の三方法を示した.
著者
村田 晃嗣 阿川 尚之 小島 誠二 中谷 直司 山口 航
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

グローバル化を背景として、国際政治における都市をめぐる外交の重要性が増している。本研究は、「都市からの外交」と「都市への外交」の2つの方向を軸として、①自律的プレイヤーとしての都市による外交の実態を把握し、②都市外交研究の基盤となる分析枠組を構築し、③国家を始めとする他のアクターとの相互作用を分析し、「都市」が世界政治で果たしつつある役割を明らかにしていくことを目指した。都市をめぐる外交を2つの方向から事例を研究し、都市の経済活動の結果ではなく、世界政治の構成要素としての「都市外交」研究を目標にした。本年度は、これまでの成果を踏まえた上で、「世界政治における都市外交」(潜在的役割の評価と政策提言)について研究を進めた。都市が今後「世界政治」のなかで発揮すべき役割について、検討をしていった。とくに①新しい「国際規範」の発信者としての都市と、②国連や地域機構と協力して紛争後地域の「平和構築」に貢献する都市の姿に着目をした。①については、国家主権の制限に必ずしもしばられない都市が、規範(新たな理念)の意識的な発信者として行動を活発化させれば、すでに実績があるNGOや多国籍企業を上回る影響力を発揮することが可能ではないかと予測した。②については、停戦監視や武装解除の初期段階ではなく、その後の自治機構の整備や地域コミュニティーの安定化に、都市が組織的に関与できる「国際制度」の構築を想定した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による国内外の情勢に影響を受けたため、国内外での資料の収集や、研究メンバーによる機動的な行動が困難となり、研究に遅れが生じた。
著者
能口 盾彦
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.43-71, 2007-08

英国版『親指トム』とグリム童話の内容は大差無いが、グリム童話の『蛙の王様』や日本の『一寸ぼうし』の様に、蛙を叩きつけたり打出の小槌を振るとかで魔法が解ける展開にはつながらない。親指トムはハッピー・ーエンドに終わるが、フィールディングの原作や改訂版は悲劇或いは悲劇中の悲劇と題されている。英国版親指トムが狼の胃袋に収まる前段階、即ち雌牛に干し草もろとも飲み込まれる逸話を捉え、フィールディングは『悲劇中の悲劇』で巨人達を撃破した凱旋将軍トムを、赤雌牛に飲み込ませて彼の末路とする。『親指トム一代記』でも英雄トムの不慮の死として同様の場面が挿入されているが、『悲劇中の悲劇』同様に乳搾り女や狼が介在することもなく、ゴーストとなった親指トムが再登場し、トムのゴーストが刺殺されることを契機に、登場人物の死の連鎖が繰り広げられる。一方、『悲劇中の悲劇』第三幕第一場に預言者マーリン(Merlin)に姿を変えたゴーストが現れ、親指トムは婚儀を終えた幸せの絶頂期に、ゴーストの予言通りに赤牛に飲み込まれて頓死する。親指トムの死を契機に前作同様、登場人物は次々と凶刃に倒れる。旧来の親指トムでは夢想し得ぬ結末に、フィールディング劇の真骨頂がある。何故フィールディングはハピー・エンドに終わる童話の体を借りて悲劇化を目論んだのか。この課題は劇作家フィールディングの野望と18世紀英国演劇界の状況を把握せずして理解は覚束ないだろう。「きき台詞」の多さや多様さは、芝居通や文芸批評家の衒学さへのフィールディング流諷刺の一端で、専門家気取りの演劇関係者への痛烈な皮肉として、周到に練られた策ではなかったか。前世紀のコングリーブ(William Congreve)等による『風俗喜劇』(Comedy of Manners)が急速に廃れた現実を前に、ホメロス、ウェルギリウス、ルキアノス等の古典に慣れ親しんだフィールディングは、演劇界で糧を得ようとして道化劇や英雄悲劇の形式を踏襲するのも、その紋切り型の手法を揶揄する折衷案、即ち英雄悲劇を茶化す笑劇に活路を見出した。
著者
米井 嘉一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

我々は「『睡眠の質』向上によってメラトニン分泌が増加し糖代謝が改善する」という仮説を立て、その検証試験を行った。基礎実験ではメラトニンがAGEs架橋切断作用を有するが、プロテアソーム活性、酸化蛋白分解酵素(OPH)活性にに影響しなかった。メラトニンはマクロファージから破骨細胞への分化を促進した。臨床試験ではメラトニン摂取により食後高血糖が緩和されること、「睡眠の質」向上によりメラトニン産生が高まること、「睡眠の質」指標として6-sulfatoxy-melatoninが有用であった。『睡眠の質』向上による糖代謝改善の機序においてメラトニンが重要な役割を果たすこと示唆された。
著者
原 誠
出版者
同志社大学
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.78-84, 2001-09

研究ノート
著者
阿部 千寿子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.1381-1396, 2010-11

判例研究(Case study)東京高判平成20年5月15日。信号無視の道路交通法違反罪の現行犯人として警察官に現行犯逮捕されたXが、本件現行犯逮捕は違法なものであったとして国家賠償請求をした事例。主に現行犯逮捕における逮捕の必要性が問題となった。
著者
ロッテラ カルロ 鳥居 祐介(訳)
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.99-108, 1998-03

シンポジウム, Symposium「第2次大戦後のアメリカ映画とイデオロギー」, "Film and Ideology in Postwar America"訳:鳥居祐介
著者
千 芳紀
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2012-02-23

Doctor of Philosophy in Art Theory
著者
田中 一成
出版者
同志社大学
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.87-108, 2005-03

ヨハネ福音書8 章24 節、28 節、58 節、13 章19 節の「エゴー・エイミ」の訳語と引照に関しては、出エジプト記3 章14 節を用いるものと、イザヤ書43 章10 節を用いるものに大別される。本論文では、近年の研究論文とキーワードτυφλοζ(tuflos)の分析により、全ての箇所に第二イザヤからの影響が強いことを明らかにするが、58 節のみ「存在」の意味に解釈して、出エジプト記とも結び付ける可能性が残ることを示す。さらに58 節に含まれる「子の先在」の概念が、ヨハネ福音書に前後する文献にも見られることを確認し、第二イザヤとヨハネ福音書に共通する歴史的背景を考察して、新たな神的権威の実在化の過程が、「エゴー・エイミ」の思想的背景として、存在したことを明らかにする。
著者
内藤 正和
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2021-03-21

Doctor of Philosophy in Policy and Management
著者
武蔵 勝宏
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-45, 2007-12

研究ノート(Note)2007年参議院選挙は、自民党の大敗と民主党の大躍進という結果に終わった。自民党が国民の支持を受けなかった要因には、社会保険庁における年金記録問題が選挙の際に争点となったことがあげられる。政府は、2004年の年金制度改革法案の審議の際に発覚した社会保険庁の不祥事とそれに端を発する年金保険料の収納率の低迷に対応するために、二度にわたって、社会保険庁改革法案を国会に提出した。最終的に成立した日本年金機構法案は、非公務員型の公法人に社会保険庁を廃止・分割するというものであったが、その内容は、組織設計の具体化を第三者機関に委ねるなど年金業務に対する国民の不信を払拭するものではなかった。こうした法案自体がもつ問題点と政策決定過程における説明責任の不足が、有権者による安倍政権に対する低い評価につながったと考えられる。
著者
在原 幸子
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.127-138, 2009-07

研究ノート(Note)本稿は、昨年来の景気後退による採用内定者の内定取り消しや新規学卒者に対する採用抑制、さらには、近年深刻化する就職超氷河期世代の年長フリーター(非正規雇用者)化等によりその問題性が再び問われ始めている「新卒採用に係る年齢制限の妥当性」について、検討を試みるものである。まず、年齢制限の弊害について、非正規雇用者の正規雇用化が困難な現状だけでなく、生涯賃金に換算した場合の正規雇用者との格差や、低所得(者)ゆえに大方生活保護による支援が必要になってくると思われる老後の試算結果等も示し、弊害の深刻さを知る。続いて、募集・採用段階の年齢制限の違法性が争点となった事案や新卒採用での年齢制限を例外的に許容する雇用対策法の法条文、そこにいたるまでの経緯等を概観し、制限の合理性の根拠とされてきた「長期勤続によるキャリア形成を図る」という雇用慣行の存在を確認する。その上で、募集・採用に係る年齢制限禁止の例外事由としてそうした取扱いが妥当なのか否か、ADEA(アメリカ年齢差別禁止法)の定める例外等と比較することにより、一応の判断を行う。さらに、当該慣行の現場での実効性についても「知的熟練論」の観点から考察を加える。そして最後に、当該例外事由の取扱いを含め、年齢制限による弊害を解決するために今後検討していくべき方向性について私見を述べる。In this paper, the author discusses "the validity of age limit in hiring new graduates". First, under such an age limit, since it's difficult for non-regular workers to move to the regular employee who earns high wages comparatively, they feel uneasy to the future. However, on the other hand, judicial precedents and Employment Measures Law take account of existence of an employment practice which aims to develop employee's career in longer service, and exceptionally accept the rationality of that age limit. So, I think about the validity of that age limit from exceptions which ADEA defines, and "theory of intellectual skills". And finally, I'd like to propose the direction which should be considered in order to solve the evils which are caused by the age limit including the case of such hiring of new graduates.
著者
黃 馨儀 Hsin-Yi Huang
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2014-03-20

本研究は朝の連続テレビ小説(朝ドラ)の女性表象及びその社会的意義を検証したものである。研究範囲となる50年間を5つの時期に分け、テクスト分析を主な研究方法とし、作品の特徴・傾向を分析した結果は以下となる。朝ドラは最初から女の一代記ではなかったこと、全盛期の朝ドラは戦時のジェンダー的構造を、映像を通し、視聴者に再体験させる役割があることと、女性の自立、家庭と仕事の両立が可能な条件は「女性職」、明治大正昭和というテーマに限られていることが指摘できる。本研究は「女性のジャンル」の下位概念から、メディアでの女性文化に関する分析を試みた。