著者
板垣 竜太 太田 修 高 榮珍 水野 直樹 喜多 恵美子 谷川 竜一 森 類臣 呉 永鎬
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、冷戦期(1945年~1980年代)の北朝鮮において、国内外での人口や情報の流動性を背景として、いかに文化の諸領域が歴史的に形成され変化を遂げてきたのかを学際的に明らかにすることを目的とする。研究に際しては、社会の流動性、北朝鮮外の人口の相互影響、個人の能動性、文化の諸領域の相互関係(収斂)という4つの視点を一貫して導入する。その遂行のために学際的な研究体制を組織し、海外に散在する豊富な北朝鮮資料を共同で調査・分析するとともに、インタビュー調査も併用する。
著者
板垣 竜太
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究を通じて、20世紀前半の朝鮮半島北部の地域社会におけるプロテスタント教会の役割の大きさが分かったとともに、北米の宣教師文書が詳細に地域情報を残していたことが明らかになった。それらと公文書・新聞資料やインタビュー等を組み合わせることで、1945年以前の地域社会史の多面的な復元が可能となった。また1945年以降についても新聞記事や米軍の鹵獲文書などのほか、北朝鮮の民俗学等によって地域社会が照明できることも分かった。
著者
板垣 竜太 SHAPIRO MICHAEL SHAPIRO Michael マイケル シャピロ
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度の研究目的は、現在までの研究をシャピロ氏が書籍にまとめることにあった。その内容は、日本帝国とグローバル規模のキリスト教伝道事業を代表するキリスト教青年会(YMCA)との二重の枠組みのなかで、日本と朝鮮におけるキリスト教徒がどのような関係を結んだのかを解明しようとするものである。この目的に向けて、2冊の出版企画書をまとめた。一つは日本・朝鮮・中国のYMCA運動の起源と相互関連を取り上げ、それらが植民地朝鮮においてどう交差したのかを問うものである。これまでの研究では、この過程を単に<非キリスト教勢力 対 キリスト教勢力>の衝突として扱うことが主流であったが、この研究ではキリスト教青年会(YMCA)に焦点を当て、このグローバル規模のキリスト教伝道団体と日本帝国における天皇制という二つの異質的な制度が、いかに植民地朝鮮において妥協点を探りながら共存しようとしたのかという観点に基づき二者の関係の解釈を試みる。もう一つの企画書は、プロテスタント教徒で有名なジャーナリストだった徳冨蘇峰が朝鮮総督府の御用新聞であった『毎日申報』の監督として果たした役割を取り上げる書籍の出版企画書である。1910年代の毎日申報を取り上げている先行研究では、監督の徳富蘇峰の編集方針を度外視してきたが、この発見によって朝鮮における最初の近代小説家とされる李光洙(イ・グァンス)との意外な思想的関係が明らかになる、というのがこの本の主張である。これをもとに、現在、出版企画が進んでいる。
著者
北村 陽子
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.55-75, 2010-05

第二次世界大戦後のドイツにおける戦争障害者をめぐる状況を確認することは,大変困難な作業となる。なぜなら,第二次世界大戦直後のドイツは,四つの国によって分割統治されており,それぞれの占領地区では戦争障害者を含む戦争によって損害を被った犠牲者への対応が全く違っていたことに加えて,こうした違いに起因して,1949年に成立した二つのドイツ国家の政策が異なっていたためである。これらの方針の違いを理解するには,それ以前の,戦間期における戦争犠牲者(おもに第一次世界大戦の戦争障害者・戦没兵士遺族)をめぐる援護政策や彼らの置かれた境遇をふまえた上で精査し評価することが必要である。本稿では,第二次世界大戦後の戦争障害者をめぐる状況を理解するための準備作業として,戦間期の戦争障害者の社会的な位置を描き出すことを課題とし,先行研究の成果を整理することとする。その際には,戦争障害者援護を規定する法令,戦争障害者の意見を代弁する組織,戦争障害者の自己意識と他者からの認識という三つの分野に限定して行なう。
著者
田附 俊一
出版者
同志社大学
雑誌
同志社保健体育 (ISSN:02864118)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.37-54, 2006

ホームページによると,小学生の50m走では,靴を履いて走るよりも裸足で走る方が速かったという報告がある.また,世界のトップスプリンターを対象とした研究では,脚の接地直前最大振り下ろし速度と走速度に相関があると報告されている.本研究では,靴を履いて走った50m走と裸足の50m走について,ランニングタイム,走速度,そして脚の接地直前最大振り下ろし速度の観点から検討した.68名の小学生を対象とした50m走の実験で,裸足で走った方が靴を履くよりも速い結果を得た(p=.000).12名の男子と12名の女子の計24名の中学生と高校生の陸上競技部員を対象とした50m走の実験で,被験者はそれぞれ裸足で,靴を履いて,そしてスパイクを履いて3回ずつ走り,その30m付近の走動作がNAC社製のハイ・スピード・ビデオカメラで撮影された.撮影された各被験者の裸足,靴を履いて,スパイクを履いて走った50m走の最高タイムの走動作が新大阪商会製の動作解析ソフトウエアDYNASで解析された.分析の結果,裸足で走る50m走のタイム (p=.011) と走速度 (p=.006) は,靴を履いた50m走よりも速かった.また,裸足のランニングは,靴を履いたランニングよりも脚の振り下ろし速度が速くなることが示唆された (p=.006).In the previous study in a website, students in elementary school ran 50m faster barefoot than with shoes. The relation was shown the swing-back velocity of the driving leg and the sprint velocity in the world-class sprinter. The purpose of this study was to examine the 50m running with shoes and barefoot from the viewpoint of running time, running velocity and swing-back velocity of driving leg immediately before foot contact on the ground. In the experiment with 68 students in the elementary school, it was shown that the 50m running time barefoot was faster than with shoes (p=.000). In another experiment the subjects were 24 track-and-field athletes, 12 girls and 12 boys in junior and senior high school, the running motion at the 30m surrounding in 50m running of athletes who ran each 3 times barefoot, with spikes and running shoes were filmed with high-speed video camera by NAC. The VTR of the each fastest running barefoot, with spikes and running shoes in all subjects were analyzed with motion analysis software DYNAS by Shin Osaka Shokai Co. Ltd. It was shown that the 50m running time (p=.011) and running velocity (p=.031) barefoot was faster than with shoes. It was suggested that the running barefoot increases the swing-back velocity of driving leg than with running shoes (p=.006).
著者
松川 真美 細川 篤 長谷 芳樹 長谷 芳樹 柳谷 隆彦 星野 裕信
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

MHzの超音波照射により骨中に生じる誘発電位について実験的検討を行った。その結果、10 kPa程度の超音波照射でも誘発電位が観測され、圧電性の存在が確認された。この結果は骨折治療に使用される低強度超音波法による治癒メカニズムに、圧電による電荷生成が関与する可能性を示唆している。またこの誘発電位は湿潤した骨でも観測されたほか、HApの配向量に依存しないこと、誘発電位の極性は部位に依存することを見出した。また、圧電FDTD法を用いて、超音波伝搬による骨中電界の空間分布推定を試み、骨折の有無によって、分布が大きく変化することを確認した。
著者
柴田 広志
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.93-114, 2014-11

セレウコス朝の第6代国王アンティオコス3世(位:前223〜187年)は,その治世初期に多くの内憂と外患への対処を迫られた。そのひとつが,小アジアで反旗を翻した王族小アカイオス(以下アカイオス)の反乱である。この有力王族は,アンティオコス3世の兄セレウコス3世の暗殺時の混乱収拾後に王に推戴されたが辞退,後に反乱を起こした際には麾下の軍の反対によって頓挫した。同時代に類例をほとんど見ないこの事例から,以下の事実が指摘できる。まず,王族による王国統治の分担という,セレウコス朝の支配体制が抱えていた問題である。このため,傍系の王族であっても,王家直系の男子の経験や年齢が不足とみられた時,他の王族が推戴される,あるいは反乱を起こす可能性があったのである。推戴直後にアカイオスが王位を辞退したのは決して忠誠心のあらわれではなく,王家直系のアンティオコス3世に取って代わる意志を当初から有し続けたものと思われる。後の王位宣言は,その現れである。これに対して,王位を継いだアンティオコス3世の軍事能力,とりわけ北方の蛮族に対する軍事的功績は,アカイオスが獲得し得なかったものであり,若い王の権威確立を可能にするものだった。アカイオスとアンティオコス3世の決定的な差は,セレウコス朝王家内における直系・傍系の差のみならず,バルバロイすなわち蛮族とされた集団に対する戦果の有無にあったことを推測し得るのである。
著者
川島 健
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の成果として以下の三点がある。(1)ラジオドラマに描かれる、ウェールズやアイルランドなどのイギリスの境界に位置する国々が、新たに打ち建てられるEnglishnessに収まらない差異を表していることが判明した。(2)モダニズムのエリート主義にとって大衆は忌むべき問題であったが、ラジオが大衆に語りかける新しい言語を模索する手段として、ラジオドラマがあったことが分かった。(3)第一次世界大戦が多くの戦争詩を生んだが、第二次世界大戦に詩的表現を与えた作家は少ない。それに対して、BBCラジオは、戦争にたいする、より複雑な感情を代弁するメディアになったことが分かった。
著者
黃 馨儀
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2014

This thesis explores images of women in Japanese television dramas and the social functions these images perform with a focus on the Asadora television show. The results indicate first, the show portrayed most heroines as married, working mothers who worked at home. Second, an examination of five works with historical settings demonstrates that the show depicted most heroines as opposed to the war while emphasizing the “women's home front" as a setting for its storylines. Third, Asadora did not begin from the theme of "biography of a woman". In this way, the thesis surveyed the trends and changes in Asadora from 1961 to 2011, providing an academic and systematic examination of the program as a case study for how women-focused genres address the issue of representing women from a subordinate position.
著者
小出 輝章
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.1515-1533, 2006-09

戦後日本の政軍関係の出発点は再軍備にはじまるが、その特色はアメリカによって規定されることになった。それは制服組を抑制するという日本独自のものであった。
著者
西 直美 ニシ ナオミ Nishi Naomi
出版者
同志社大学
巻号頁・発行日
2017

Thailand, as a Buddhist majority country, has been trying to accommodate its Muslim population in the southernmost provinces in the course of the history over 100 years. Along with the surge in nationalist-separatist discourse, there has been a lack of attention given to the study of Islamic reform and revival in Thailand. This paper shows more diverse and complicated situation based on the existing research through a historical analysis of Thailand's national policies and in-depth interviews conducted in one of the most conservative areas in the southernmost provinces.
著者
小西 行郎 秦 利之 日下 隆 諸隈 誠一 松石 豊次郎 船曳 康子 三池 輝久 小西 郁生 村井 俊哉 最上 晴太 山下 裕史朗 小西 行彦 金西 賢治 花岡 有為子 田島 世貴 松田 佳尚 高野 裕治 中井 昭夫 豊浦 麻記子
出版者
同志社大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

発達障害とりわけ自閉症スペクトラム障害(以下ASDと略す)について、運動、睡眠、心拍、内分泌機能、体温などの生体機能リズムの異常を胎児期から学童期まで測定し、ASDにはこうした生体機能リズムの異常が症状発生の前、胎児期からでも見られることを発見した。それによって社会性の障害というASDの概念を打ち破り、生体機能リズムの異常としてのASDという新しい概念を得ることができた。この研究を通して、いくつかのバイオマーカを選択することが可能になり、科学的で包括的な診断方法を構築すると共に、障害発症前に予防する先制医療へ向けて展望が開けてきた。
著者
柴山 太
出版者
同志社大学
雑誌
同志社アメリカ研究 (ISSN:04200918)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-78, 2001-03

アメリカ研究所セミナー, Seminarアメリカ研究所は、2000年6月30日に朝鮮戦争勃発前後における日米関係をテーマとしたセミナーを開催した。ここに掲載されている2本の論文は、セミナーの発表に使用したものである。博遠館211番教室にて15時に始まった同セミナーは、前半約40分間は柴山太(愛知学院大学助教授)が発表し、後半約40分間はアメリカ研究所助教授の井口治夫が発表した。質疑応答は15分程度行われた。1950年から1952年は、日米の政治経済関係において大きな転換期であるが、両者が発表した論文は、戦後日米関係史の分野で研究されていない内容が多分に含まれている。柴山論文は、日本の再軍備を英米がどのように据え直していったのかを検証し、井口論文は、財界人鮎川義介の活動に焦点をあてながら日米における日本の電源開発構想を検証した。本来ならば2人の講演を2回に分ける方法があったかもしれないが、2人のスケジュール上の都合と、6月30日が朝鮮戦争勃発(1950年6月25日)から50年過ぎた直後にあたることから2人の同日講演を一挙に行った次第である。
著者
名和 又介
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.[85]-105, 2008-08

研究ノート(note)中国の民間芸は豊かで、其の図案のなかによくみられるのは吉祥の図案である。吉祥とは美しく幸福なシンボルであり、王家大院で多くの吉祥図案を目にした。帰国して吉祥図案を学んで、図案が意味しているものを理解できた。例えば「双獅戯球」は、愛しむ獅子の夫婦であり、獅子の間に刺繍をした球があるが、これは愛情の結晶である。一対の獅子が球をもてあそぶ図案は、獅子が愛情豊かに日々をおくり、やがて子供が生まれることを暗示している。この図案は、人間の夫婦もこの獅子のように仲むつまじく暮らし、子孫繁栄するように教えているのである。このように図案の幾つかを解説・紹介した内容である。中国有很多民间艺术。民间艺术的图案之中、我们常常看到吉祥图案。吉祥是美好、幸运的形象。我以前在王家大院曾经看到过很多吉祥图案、但是回国以后查阅了有关吉祥的资料、才知道图案所代表的含义。例如"双狮戏球"——它是一对恩爱的狮子夫妻、在它们中间有一个绣球、象征着爱情的结晶。一对狮子高兴地把玩绣球的图案告诉我们: 一对狮子恩恩爱爱地过日子、它们将来会生下自己的孩子。它象征着人世间的夫妻也和这对狮子一样和睦相处、福蔭子孙。这样拿几个例子来介绍一下。