著者
徳田 献一 似内 映之 衣笠 哲也
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,自然災害などにより発生した脆弱な地盤の上をロボットが移動する際の問題を解決する手段として足探りを切り口として,(1)脚ロボットによる足探りスキルの記述,(2)地盤と脚の関係性のモデル化,(3)柔軟全周囲クローラの不整地踏破の取り組みを行った.研究成果として,表面が固く内部の状態がわからない脆弱な地盤を対象に足探りスキルのロボットへの埋め込みを実現し,シミュレータで獲得した強化学習結果を実環境で実現することができた.また,脆弱な地面についての考察の中で,ロボット脚と地面の関係性に着目することによる能動歩行と受動歩行の比較システムを用いて環境推定システムの構築を行うことができた.
著者
米田 頼司
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究の課題は景観保全運動の成立機序及び社会運動としての特質を祉会学的調査研究によって解明することであるが、事例(和歌山市和歌の浦、和歌山市雑賀崎、奈良県吉野町、福山市鞆の浦)に即した研究から次のようなことが明らかになっている。1.景観の改変を容認する立場と保全運動との間で"景観論争"が生じるのは、景観評価における主観性に起因するとも考えられるが、むしろ生活歴や文化的背景を異にする集団や利害を異にする集団間における景観の把握の相違によるところが大きいと考えられる。2.景観把握の多様性及び重層性に関わっているのは景観体験の相違であると考えられる。景観体験は一面では個々人のものであり主観的なものであるが、他面では共通・共有の体験として集団のものでもあり得る。景観保全運動の成立機序の重要な一環は、共通・共有の景観体験の想起・創出であり、景観体験の共通・共有化である。従って、景観保全運動は、「景観体験を母体とし景観を再発見する集合的活動」として捉えることができる。3.保全運動が、保全すべきとする景観は、対抗関係にある集団(行政など)の言説や提示された計画(景観の改変を伴う計画)との関係で言語化され、フレイミングされるが、根底におかれているのは、生きられる景観である。即ち、言語化される前の感応的で体験的な、言わば一次的な景観である。この一次的景観の感応性・祝祭性が景観保全運動の成立機序の核心部には伏在していると考えられる。4.景観保全運動の中心メンバーには、互いに理解し合える景観意識が共有されており、こうした景観意識がメッセージとして他の住民や市民に伝達されることにより、共感を誘発し、また、影響を及ぼしている様相が見られる。こうしたことが運動成立の不可欠な過程となり、運動にダイナミズムを与えている。5.景観保全運動の展開方向には、地域づくりというテーマが見通される。
著者
萬戸 克憲
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.165-171, 1995-08-20

This paper discusses the English proficiency of Japanese students on the basis of 1991〜1993 TOEFL Tests. The concept of the TOEFL Test, its validity as a proficiencytest, and the comparative position of Japanese students are examined. The poor performance of Japanese students is often attiributed to the lack of the linguistic affinity to English, but this is partly negated by the studies of the performance of students from European and other Asian countries, leading to the conclusion that there are some serious deficiencies in ELT itself in Japan.
著者
森下 正康
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13425331)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.33-41, 2006-02-28

本研究の目的は、幼児について、父母のどのような態度パターンにおいてどのようなモデリングが生じているかを明らかにすることであった。そのために、次のような仮説を立てた。仮説1.受容的な態度や統制のゆるやかな態度を示す親に対して、向社会的行動のモデリングが生じるだろう。仮説2.その反対に、拒否的な態度や統制的な態度を示す親に対しては、攻撃行動のモデリングが生じるだろう。仮説3.リーダーシップを持つ親に対して、向社会的行動や攻撃行動のモデリングが生じるだろう。これらの仮説を検証するために、3,4,5歳児の父親と母親に対して、子どもおよび自分自身について向社会性と攻撃性に関する評定と養育態度に関する評定を求めた。また、幼稚園の担任教師に対して子どもの向社会性と攻撃行動に関する評定を求めた。すべてのデータがそろった244組について分析した。モデリングの指標としての親子間の相関(類似性)と父母の態度パターンとの関連を検討したところ、子どもについて父親母親の評定に共通する次のような結果が得られた。(1)男児について、父親が統制的で母親が統制のゆるやかなパターンの場合、男児の向社会性得点と母親の向社会性得点との間に有意な正の相関があった。また、父母のリーダーシップが共に高い場合、男児の向社会性の特徴は母親の向社会性の特徴と類似していた。(2)女児について、父母共に受容的な場合、女児の向社会性の特徴は父親の高い向社会性の特徴と類似していた。(3)父母共に統制的な場合、男児の攻撃性の特徴は母親の攻撃性の特徴と類似し、全般に高い攻撃性を示していた。また、父親の方がリーダーシップをもつ場合、男児の攻撃性の特徴は母親の攻撃性の特徴と類似していた。以上、部分的に仮説1. 2が支持されたが、仮説3は反対の結果もあった。また、向社会性にしても攻撃性にしても男児は母親を向社会性および攻撃性のモデリング対象としているのに対して、女児は父親を向社会性のモデリング対象としている可能性があるということが示唆された。
著者
加藤 久美
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、海洋資源利用を例に、持続性観念の普遍性・多様性を分析、持続性理論の発展を試みた。特に捕鯨、反捕鯨国である日豪間の政治・社会的対立の本質を現地調査、メディア検証により探った。両国の本質的な相違は、捕鯨の目的、国際関係(豪州と英国・英語圏との繋がり、敗戦後の日本と世界)、環境観(種によって象徴される自然界における)にあることが明らかだった。人為的環境変化への責任を持続性の普遍的価値とすれば、その社会、文化的考察がそこに内包される多様性であり、その相互性が持続性理論の発展に繋がるという結論に達した。
著者
床井 浩平
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年のグラフィックスハードウェアの特徴である高度な並列演算機能とプログラム可能性を形状処理に効果的に応用するための,対象の粒子によるモデル化手法の開発を行った.また,グラフィックスハードウェアの中心的な構成要素であるラスタライザを形状処理における干渉問題に応用する手法の開発を行った.
著者
早田 武四郎
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.109-112, 1994-03-31

「英語の歌」と聞けば,楽しいイメージを持つ人は多い。中学校,高校,大学と続く英語学習の中で,英語の歌を教えてもらった経験のある人は,そう多くはないと思われる。筆者も教えてもらった記憶がない。教えてもらったら,さぞ楽しいだろうなと思ったことがある。そのような思いが,教師になってからの筆者に,英語の歌を授業に取り入れさせることになった。取り入れるといっても,年に1,2回であった。大学生を対象とするようになってから,1983年度,英語の歌をグループ・ワークの課題にしたことがあった。この時は,何もしない群と比べて有意差は現れなかった。8年後の1991年,英語の歌のテキストとテープ(歌詞の朗読,カラオケ付き,米国の女性歌手吹き込み)を受講生全員に購入させ,授業外に自習させた。そして後期の定期テストの前に英語の歌のテストを行った。本稿はこの時のデータによって英語の歌の効果を検討する。
著者
野村 孝徳 沼田 卓久 似内 映之
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

コヒーレントディジタルホログラフィを用いた形状および反射特性の計測手法を提案した.低コヒーレントディジタルホログラム群から試料の形状および反射特性を求める手法を提案し実験的に実証した.さらに計測精度向上のため,精度低下の要因となるスペックル雑音の影響を低減する信号処理的アプローチを提案した.いずれもディジタルホログラム群から得られた再生画像群に対し信号処理を施した.局所統計量に基づく(1)局所平均法,(2)局所分散法と,光源のスペクトル分布に基づく(3)曲線近似法の3種類を提案した.(1)は他の再生画素と比較してスペックル雑音の輝度が極めて大きいまたは小さいことを利用したもの,(2)はフォーカス位置ではスペックルのコントラストが最大となることを利用したもの,(3)はある画素に着目した場合,再生画像群内でその画素の輝度の変化は光源のスペクトル分布に従うことを利用したものである.(3)に関しては光源のスペクトル分布をガウス分布とし非線形最小自乗法により曲線近似をおこなった.これらの手法を適用した結果,適用前と比較して形状計測の精度が向上した.特に(3)の手法が有効であり,適用前は30%程度あった,レーザー変位計による形状計測結果との差を数%以下にすることに成功した.ワンショット位相シフト法を実現する手法として波面分割法を2種類(検光子アレイを用いるものと位相子アレイを用いるもの)を提案した.前者は光学実験データを用いた模擬実験により,後者は偏光イメージングカメラ用いた実験的により,それぞれの有用性を示した.
著者
吉本 富士市 原田 利宣 高木 佐恵子 岩崎 慶
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

描画の素人にとって,高品質な絵を描くことは容易ではない.コンピュータの支援により,素人が高品質な作品を容易に製作できれば,多くの人にとって福音となる.しかし,絵の一般的な評価基準を作り,それに基づいて素人の絵を評価・修正することは極めてむずかしい.そこで本研究では描画の初心者が,コンピュータを用いて心地よい手描き風曲線を生成するための支援システムと,それらの周辺の研究を行った.その成果の要点は以下のとおりである.まず,手描き風曲線の形とともに太さを玄人風に表現する,手描き風曲線の生成支援システムを研究した.手描き曲線の輪郭線の骨格から手描きの概形的特徴をフラクタル次元と曲率の符号変化数で抽出する.骨格線から輪郭線の縁までの距離をフーリエ変換して,そのスペクトルの高周波領域から太さの特徴を抽出する.それらについて,素人の特徴を玄人の特徴に近づけることにより,高品質な手描き風曲線を生成する.プロトタイプシステムを開発して評価実験を行った.その結果,玄人が描いた手描き曲線の特徴を用いて,素人が描いたぎこちない手描き曲線の概形的特徴を残しつつ,高品質な手描き風曲線を生成できることがわかった.また,周辺研究として以下の研究を行った.1.モバイル環境で素人が手軽に美しいイラストを作成するシステムを開発した.2.曲率半径と周波数分析を用いた人形の顔を構成する曲線の特徴解析3.VRシステムを用いた自動車コンフィギュレーション印象評価4.日本刀の曲線の性質を解析し,どのような共通点があるかを調べた.5.カーナビの情報デザインを構成する要素とユーザが持つ印象との関係を明確化した.
著者
曽我 真人
出版者
和歌山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

「あの星、なあに?」と、初心者が夜空の下で、知りたい星を指差すだけで、その星の名前や星座名を答えてくれるシステムが、システム全体の中核部分であり,昨年度は,磁気式位置センサーを用いて,その中核部分を完成させた.本年度は,そのシステムに以下の機能を追加した.本年度は,そのシステムに,学習支援機能を追加した.具体的には,システムが,星座を構成している星に関する問題を学習者に提示する.学習者は,その回答に当たる星を,実際の夜空のもとで,指差し動作によって示し,システムに回答を伝える.すると,システムは,その星が,問題の正解に当たるかどうかを診断し,正解であった場合には,つぎの問題を提示する.不正解ならば,その旨提示し,ひきつづき問題の正解となる星を指さすよう,求める.具体的な,インタラクションは以下のとおりである.まず,ユーザはパネルから学習したい内容を選択する.問題出題システムは,ユーザが選択した問題内容と解答するためのヒントをダイアログと音声で伝える.同時に,問題出題システムは,解答添削エンジンに問題番号を送る.ユーザは指差し描画機能を用いて解答を入力し,解答データを解答添削エンジンに送る.解答添削エンジンは,問題内容に応じた解答データベースを参考に添削を行い,結果を描画エンジンに送る.そして,描画エンジンは,送られてきたデータをもとに描画を行う.ここでの結果の提示方法は,仮想プラネタリウムに画像を出力するほか,正解の場合,次の質問か,すべて正解したことをダイアログに表示し,音声でも伝える.不正解の場合,その旨をダイアログに表示し,音声で伝える.
著者
梅本 優子
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

少人数教育が,従来のシステムよりもどのような優れたカリキュラムや教育方法を生み出せるのか,その可能性とカリキュラム開発の内実を,平成20年4月から平成21年3月まで,定数30名の第1学年3学級と第2学年3学級及び,定数16名の1.2年複式学級の生活科の実践を中心に明らかにしてきた。カリキュラム開発ならびに教材開発の実際は,以下のとおりである。生活科における『附属っ子ミュニケーション"和み"大作戦!』プログラムの設定○ 構内に咲く花を活けたり,煎茶や基礎的な茶道,和菓子や箸袋作り体験等,現代生活の中で消えつつある日本のよき自然・季節感,伝統文化,生活習慣などを取り入れたプログラムを作成し,授業実践した。○ 学習活動の中で,『和歌山城内の茶室での茶会』や子どもたち主催の『夏祭り茶会』等も行った。地域活動参画の一環として,青年会議所主催『秋季茶会』,ならびに『和歌浦万葉薪能』等にも参加した。○ 図工科・食育等,他教科・領域等との関連を図った。菓子皿作りの陶芸カリキュラムの実践も試みた。○ 保護者による"和み"ボランティアを結成し,保護者参画授業のモデルを示すことができた。本研究実践の経過途中(平成20年12月)と事後(平成21年3月)に,児童ならびに保護者に質問紙調査を実施した。その結果,少人数で上記カリキュラムのもと学習してきた児童に,以下のことが明らかになった。○ 『日本のよき生活(衣食住)習慣』とともに『初歩的な礼儀・作法』を身につけ,『好ましい人間関係』を構築することができるようになった。○ 落ち着いた学級集団のなか,他教科の学習にも意欲的に取り組める児童が増えてきた。○ 初めて経験する初歩的な『活け花』や『茶道』が徐々に出来るようになり,成就感・達成感を生み,自己肯定感へと繋がった。また,30人という規模も,互いを認め合える学級集団として適切である。人間関係が希薄になりつつある社会の中で,今後さらに児童のよりよい人間関係の構築していくための学校教育の在り方を探っていく必要がある。また,中・高学年の児童にも教育効果がもたされると思われる。
著者
原田 利宣
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

A)曲線(面),面構造に関する研究今日,ゲームやアニメ作品等で存在する2次元キャラクターを3次元CGや立体造形(フィギュアと呼ぶ)する傾向にある.人の顔を立体造形する技術の需要は増加傾向にあるが,その造形様式は漠然と存在している.そこで本研究では人の顔を表した造形物の中より日本人形,フィギュアおよびリカちゃん人形に着目し,これらを事例として取り上げ,3次元モデルと2次元画像の輪郭線の関係性を調査と事例に基づくキャラクターデザイン支援システムの作成を目的とした.まず,人形の顔の造形にはどのような相違があり,またどのように人の顔を抽象化しているかを明らかにした.次に,日本人形と浮世絵,フィギュアと2次元アニメキャラクターの顔の輪郭線の関係性を調査した.さらに,得られた人形の特徴を用いて,ある任意の人の顔の特徴を付加した人形の顔の断面線を出力するデザイン支援システムを作成した.B)システムの推論部に関する研究自動車の印象に対して,その設計において最も重要である最適なコンフィギュレーション項目を抽出する逆問題を解くことは,従来からいくつかの研究において行われてきた.このような感性に関する問題を扱うためには非線形問題を解く必要がある.しかし,非線形問題を扱うことができるラフ集合を用いた研究例は少ない.そこで,本研究ではこの逆問題を解くための手法としてラフ集合を適用した.また,本研究ではラフ集合を使用することにより非線形最適解の特徴の明確化と,実験計画法による線形最適解と非線形最適解の比較を目的とした.具体的には,C.I.値の高い決定ルール条件部と実験計画法による主効果の値の高い属性値を比較した.さらに,両方の解の特徴を考察し,それぞれの特徴を明らかにすることができた.最後に,両方の最適解の視覚化によりデザイン支援を行うシステムを開発した.