著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.51-60, 1995-08-20

本論では,米澤(1994)を受けて,学習過程,問題解決過程における「理解」の重要性を指摘することを目的とした。その際,問題解決者が理解の重要性を自覚すること,そして,問題解決者にとっての理解の意味を,学習指導者たる教師が単に枠組み的知識としてではなく,真に認識することの必要性を指摘した。まず,いくつかの具体的な問題解決場面を取り上げ,認知心理学実験の知見をもとに,学習者にとっての理解の意味を問い直す指摘をした。更に,筆者自身の大学における論文理解の授業からの報告も含めて,真の理解のために必要な指導観を指摘し,学習者の視点に立つことの意味を再吟味した。こうした具体的な指摘と考察を通じて,学習者と教材との「かかわり」を規定し,その後の問題解決そのものに多大な影響を与える理解過程の分析を行い,学習者が理解時に,その理解状況と意味,及び自らの理解の視点に「気づく」ことの重要性を指摘した。
著者
山名 仁 筒井 はる香 山名 朋子
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、19世紀前半のウィーンにおいて、フォルテピアノのペダルが6本あるいは7本と増えその後減っていく過程と、ウィーンの連弾楽譜の出版状況の推移との間に密接な関係があることを明らかにした。またウィーン連弾文化の精華ともいえるシューベルトの全連弾作品において上記ペダルの多数の組み合わせを検討し、①ペダルの間隔が狭いのは一本の足で2つのペダルを同時に踏むことを想定していること、②6本のペダルを2本の足で操作することは困難だが、4本の足を使えばペダルの効果を最大限に活かすことができるということを、実際の演奏を通して明らかにした。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13468421)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.75-88, 2002

新学習指導要領の実施に伴い,盛んに指摘される学力低下論の本質的な問題点を浮き彫りにする。米澤(2001b)の議論を受けて,学力低下論者の学習過程への無理解,短絡的な反復学習支持や学習量への信仰的支持の問題点を実証的データを基に分析する。また,日常生活に役に立たない「閉じた学習」の弊害について,非科学的信念を克服できなかった今までの科学教育の失敗を調査データを基に分析する。そして学力低下は今日的な新しい課題ではなく,学力低下論者の学習観こそ,今までの学習の負の成果であることを指摘する。更に,学力とは活かせることであるとの観点から,生きる力につながる学力を育てる教育実践について報告する。
著者
山田 満
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-120, 1998

子どもたちがマスメディアを通して垣間見る国際社会は,サミットの議題となる先進諸国間の経済摩擦やそれをめぐる政治交渉であったりする。そして,発展途上国の貧困や飢餓の問題であったり,あるいは民族紛争や地域紛争を起因とする大量の難民流失や彼らの悲惨な光景であったり,さらには経済的目的のために移民する外国人労働者であったりする。そこで,錯綜化する現代国際社会の諸問題を本質的に理解する能力と解決への糸口を考察する能力を培う揚が求められている。現在の教育現場で推進されている国際理解教育はその意味で重要な役割を負っていると言えよう。しかしながら,日本の「国際理解教育」が予期する理念・目的だけでは現代的諸問題を理解するには不十分であると言わざるを得ない。本稿では国際関係論的視野から「国際理解」や「国際協力」を含めたグローバル教育の必要性を提起してみたい。
著者
佐藤 英雄
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13425331)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.51-57, 2006-02-28

「図形」は中学数学の3本の柱のうちの一つとして位置付けられている。具体的に扱われているのは、平面幾何に限定すれば、三角形の合同と相似、円周角等である。「図形」の指導にあたっては、直観と論理の対応をたしかなものにすることが特に重要である。しかし、三角形の合同条件は決定条件と同値として、それを教育上確認させる手段として採られているのは、実際に作図させてただ一通りだけしか得られないことを感覚的に納得させることである。言わば神秘的な三角形の合同条件を認めさせれば、その後の「図形」の展開はかなり論理的に行える。この展開の仕方は、ユークリッド原論のそれを教育的に工夫はしているものの本質的には変わらない。言い換えれば,ユークリッド原論の欠陥を引きずっている。具体的に言えば、ユークリッド幾何の基本手段である、合同や相似の概念が不明確である。基本量は長さと角(の大きさ)であるが、特に角の概念が不明確である。その結果、高校数学で三角関数が出てくるときに戸惑うことになる。中学数学の段階では、これらについて、教育上、あいまい、かつ神秘的な扱いをすることはやむをえない。しかし、教師としては平面幾何を支える数学的な論理的基盤をわきまえておく必要がある。本稿ではユークリッド原論の問題点を指摘し、それを克服するために、複素数の世界(1)で代数的ないし純解析的な手段で構成・展開した複素数体を基盤として平面幾何を展開する。それをヒルベルトの著名な「幾何学基礎論」と対比させる。