著者
長廣 利崇
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

大学で得られた学びが職業にどのように活かされているのだろうか。比較的データを集めやすい「今」を対象とした研究は多いが、過去にさかのぼってこれを検討した研究は少ない。我々の生きる「今」は、過去の蓄積から成り立っているため、歴史的視点が重要になる。この研究は、第二次世界大戦以前における日本の高等教育(とくに文系の教育)を受けた学生・生徒の学びが職業にどのように結びついたかを検討するものである。この研究によって戦前期のイメージを掴み、「今」をより深く知ることができよう。
著者
米澤 好史
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.159-169, 1994-08-20

本論では,認知心理学の学習観を紹介し,学習指導に認知心理学の知見をどう生かしていくかについて,次の6点から,その意義をまとめた。すなわち,結果ではなく過程を重視すること,方法としてではなく意味を重視すること,対人相互作用の中に位置づけられた学習として捉えること,教師に必要な知識とは何か,状況設定と適切な視点の必要性,メタ認知の効用である。こうした考察と具体的な指摘を通じて,学習者間の「やりとり」や学習者と教材との「かかわり」の大切さを指摘し,「立ち止まり」「気づく」営みとしての知的教育の必要性を指摘した。
著者
森下 順子 森下 正康
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部紀要. 教育科学 (ISSN:13425331)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.43-50, 2006-02-28

母と子の相互作用の中で子育てが進行し、母親が子どもに影響するように、母親自身も子どもから影響されると考えられる。本研究の目的は、子ども自身が持って生まれた気質が、母親の行動や養育態度にどのような影響を及ぼすかを検討することであった。3才児をもつ母親475名を対象に、子どもの気質・母親の行動特徴・養育態度について調査を行い428名のデーターを得た。主要な結果は次の通りであった。(1)パニックになりやすい男児の特徴が、母親の激しい感情表出をひきおこすことが明らかとなった。男児は、パニックになった場合、一般的に動きも激しいため、母親も激しく反応してしまうと考えられる。(2)情緒が安定している男児の特徴が、母親の受容的な関わりをひきおこすことが明らかとなった。育てにくい子どもの場合は、受容的な関わりができずに悩んでいる母親が多かった。(3)パニックになりやすい、あるいは外界に対しての反応が無頓着な女児の特徴が、母親の統制的な関わりをひきおこすことが明らかとなった。一般的に男児と違い女児は、パニックになったとしても、統制的な関わりで対応でき、また、無頓着で反応が鈍い子どもには、母親は、より統制的な関わりになると考えられる。(4)情緒の安定している女児の特徴が、母親の統制的でない関わりをひきおこすことが明らかとなった。穏やかな育てやすい女児から、母親も影響をうけ、お互いに受け入れられるよい関係になると考えられる。以上の結果から、母親の養育態度だけを問題視するのではなく、子どもからの影響も考えられるため、まわりの人たちは母親を受容的にサポートする必要がある。
著者
今井 敏博
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13468421)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.97-103, 2002

本研究では,小学校教員免許取得志望学生である大学生を対象として,小学校,中学校,高等学校での,算数・数学への好き・嫌い,算数・数学の成績の良い・悪いについての意識とその理由を問い,回答の状況を調べることを目的とした。算数・数学の好き嫌いと成績について,好き-良い,嫌い-悪いが統計的にも有意に多かった。人数的には少ないが,嫌い-良いや好き-悪いと回答した人の理由には,算数・数学教育実践上留意すべき点が含められていた。
著者
島津 俊之
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

十九夜講とは、月の十九日の夜に女性(おもに主婦)が当番の家や地域の公民館に集まって、如意輪観音の掛輔に念仏を唱えて安産や健康を祈る民俗行事である。これは一般に近世期に始まったとされ、如意輪観音の彫られた十九夜供養碑が建立されるのが通例である。それゆえこの行事は、ある種の<宗教景観>をつくりだす要因ともなる。講の行事を担う社会集団の規模は、近世の藩制村の構成要素としての、いわゆる村組レヴェルの小地域集団であることが多く、藩制村の枠を超えるケースはほとんどない。十九夜講は関東から東北にかけて盛んであるが、西日本では大和高原の北部地域(「東山中」と呼ばれる地域)に集中的にみられることが、これまでの研究からわかっている。それゆえ全国的にみると、東山中は十九夜講の分布における待異な飛び地をなしているといえる。この研究では、(1)<制度>としての十九夜講が、どの村落からいかなるかたちで空間的に伝播していったのか、(2)十九夜講が伝播した各村落において、いかなるレベルの社会集団が十九夜講の行事を担い行い、かつ十九夜供養碑の宗教景観をつくりだしたのかを、明らかにすることを目的とした。2年間の研究の結果、(1)については、十九夜講が現在の奈良市忍辱山地区からおおよそ同心円状に伝播してゆく過程が明らかになってきた。(2)については、十九夜講行事を担う社会集団は近世の藩制村レベルではなく、それを構成する小地域集団(村組や近隣組など)であるケースが多いことがわかっててきた。そのような小地域集団が、十九夜講伝播の担い手となり、十九夜供養碑の宗教景観をつくりだしたと考えられる。
著者
山本 秀一
出版者
和歌山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

長距離サイクリングにおける自転車の最適走行計画に関する2つの数学モデルを比較検討した.検討するのは,疲労度最小化走行計画モデルと,出力最小化走行計画モデルである.いずれものモデルとも,自転車の乗り手の属性,自転車の種類,道路勾配を考慮して,目的を最適化する走行計画を選択する.理論分析と数値シミュレーションによって, 2つのモデルと最適走行計画の分析を行った.
著者
菅 道子
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦時期の音楽教育実践史の特質として次の点を明らかにした簡易楽器の指導は、1930年代に東京市内尋常小学校の教師たちによって着手された。それらは玩具的楽器による音楽的自己表現という児童中心主義の思想とともに、次第に戦時行事の活性化という意図を含んで拡大していった大阪府堺市の佐藤吉五郎によって推進された和音感教育は、音楽の基礎的能力の育成とともに、敵の飛行機や潜水艦の音の聴き分けるといった国防教育としての新しい位置づけが生まれたこれら音楽教育実践の普及には雑誌の発行やSPレコード、映画などメディアの活用が不可欠な条件となっていた