著者
Kobayashi Yoshitsugu Tomida Yukimitsu Kamei Tadao Eguchi Taro
出版者
国立科学博物館
雑誌
National Science Museum monographs (ISSN:13429574)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.i-121, 2006

中期更新統の大阪層群から発見されたマチカネワニ(Toyotamaphimeia machikanensis)の模式標本について,本論文で詳細な再記載を行った.系統解析は,48分類群(2外群)の165形質を使って行った.その結果,420ステップで323個の最節約樹が得られた.厳密合意樹は,マチカネワニが明らかにマレーガビアル亜科(Tomistominae)に含まれることと,同亜科の唯一の現生種(マレーガビアルTomistoma schlegelii)の姉妹群であることを示している.さらに,系統樹の樹形は,マレーガビアル亜科がヨーロッパで起源したあとマチカネワニとマレーガビアルの分岐群が40万年前までに東アジアに拡散してきたことを支持し,これまでの研究と整合性を持つ.マチカネワニの定義についても改定した.従来は上顎の最大の歯は7番目と言われていたが,実際には12,13番目の方が7番目より大きい.上顎の7番より後方の歯はそれより前方の歯に比べてより密に並ぶ.上顎の8番から12番の歯は,かみ合ったときに下顎の歯の外側に位置するが,13番から16番の歯は対応する下顎歯と噛みあうことから,後方の歯は破砕の用途に使われたと考えられる.岸和田市から発見された類似のマレーガビアル亜科のワニ化石は,以前にはマチカネワニと考えられていたが,マチカネワニとは異なる分類群で,より原始的な種の可能性がある.
著者
上野 輝弥 坂本 一男
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum Ser. C Geology & Paleontology (ISSN:0385244X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.p109-117, 1994-09

A fossil slender mola from the Middle Miocene Hiranita Formation, Chi-chibumachi Group, Saitama Prefecture, Japan is described as a new species Ranzania ogaii in the family Molidae (Tetraodontiformes). This new species is characterized by having closely attached, long neural spines in the caudal vertebrae and unique scale plates that have a single prominent tubercle at the center of each regularly-shaped, polygonal scale plate in the middle of the body.
著者
藤山 家徳 加瀬 友喜 上野 輝弥 植村 和彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

本研究は, 日本における第三紀初頭より現在に到る昆虫発達史を, 植生の変遷と関連させて明かにすることを目的としている. 今年度においては, 日本とアジア大陸南西部, 東南アジアをむすぶ重要な位置にありながら化石資料が皆無であった南西諸島に重点をおき, 昆虫化石の探索と地層の観察を行った. しかし, 奄美大島笠利町の平層, 沖縄本島の許田, 粟国島の眞鼻毛ともに新資料を得ることに成功しなかった.新生代の昆虫発達史を編むには, 各時代の化石昆虫ファナウの詳細な分析が必要である. 古第三紀については, 始新世の北海道夕張地域, 漸新世では北海道北見若松沢の研究が進行中である. 新第三紀については, 今年度の研究もふくめ研究はかなり進展した. 中新世の古植生より推定される気温の変遷は, この時代の昆虫相にも認められ, その影響は植生よりさらに鮮明に見られる. すなわち, 前期中新世は現在の日本の昆虫相に近似するが, 中期には一変して亜熱帯〜熱帯の様相を呈する, 後期には再び温暖気候となったが, 前期と異なり, 現在の中国南西部からヒマラヤ方面の昆虫相との類似が認められる. 鮮新世の昆虫化石相は現生のものに近く, 属レベルでは共通であるが, 種レベルでは一致するものが少ない. 鮮新世より第四紀にかけての化石昆虫相は, 現生昆虫相の形成を考える上で重要な材料であるが, 中新世の資料にくらべ少なく, さらに資料を追加した上での検討が必要である.
著者
林 正美
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.187-194, 1982

富士・箱根・伊豆地域には13種のセミ類が分布し, これら3地域間で種構成の顕著な差異は認められない。各種の分布を, 近隣の丹沢山地, 赤石山地, 秩父山地と比較して, 表1に示す。 富士山地域では, 富士山をはじめとして, 北や西をとり囲む御坂山地や天子山地などのセミ類の分布を調査した。その結果, 山地性のエゾゼミ類 (Tibicen spp.) では, エゾゼミ japonicus とコエゾゼミ bihamatus が生息標高帯の樹林に広くみられるのに対して, アカエゾゼミ flammatus は御坂山地や天子山地などの一部から知られるにすぎないことがわかった。青木ケ原樹海, とくにウラジロモミの優占する所にはセミはほとんど生息していないが, その上部のブナ林, 自動車道路傍のアカマツ林には, エゾゼミ, コエゾゼミ, エゾハルゼミ Terpnosia nigricosta などが生息する。一般に, 富士山でのセミの垂直分布上限は, 温帯性落葉広葉樹林上限とほぼ一致する。 箱根火山は400,000年前に活動を開始した新しい火山であるが, セミ類の分布では他地域とほとんど差異がない。箱根カルデラには, 山地性のコエゾゼミ, エゾゼミ, エゾハルゼミなどが知られる。古期外輪山の一部である金時山∿乙女峠にはアカエゾゼミが知られる。一方, 小田原から早川沿いの地域には, 常緑広葉樹林に生息するクマゼミ Cryptotympana facialis やヒメハルゼミ Euterpnosia chilbensis が分布する。 伊豆半島の南部や海岸地帯は気候が温暖で, シイ・カシなどの常緑広葉樹林が発達する。このような地域にはクマゼミやヒルハルゼミが生息している。とくに後者は, ふつう東日本などではその産地が局所的なのに対して, 伊豆半島では普遍的に産し, 東海岸では熱海から下田にかけて多くの産地が知られている。半島中央部に位置する天城山系は, 第四紀火山から成り, 標高1,000m を超える。この地区には山地性のセミが知られるが, アカエゾゼミは未発見である。その他の山地については未調査である。 富士・箱根・伊豆地域に分布するセミ類の中では, アカエゾゼミがもっとも注目される。富士山地域では, 富士火山には産せず, 北側の御坂山地や天子山地などに局所的に知られ, その産地は大平山(高橋, 1981), 烏帽子山, 竜ケ岳の3ヶ所にすぎない。一般に, 本種の産地は局所的で, 関東地方においても1都県あたり1∿数ケ所である(林, 1981)。関東地方の各産地について, そこの地層と時代をみると, ほとんどが新第三紀あるいはそれより古い地層から成る地域ばかりであり, しかもそのような地層分布域の周辺部にアカエゾゼミの産地が多い(表2)。富士山, 丹沢の産地はいずれも新第三紀(中新世)の御坂層から成る地域である。唯一の例外は箱根・金時山で, 地質的には第四紀の新しい地域である。しかし, 金時山のすぐ北, 矢倉岳付近には御坂層が分布するので, この産地も他の例とまったく異なるものではないように思われる。植生がこのセミの分布形成に大きい影響を与えただろうと思われるが, 地質的な要因も少なからず関係していることは確かであろう。また, 富士山地域でのミンミンゼミ Oncotympana maculaticollis の分布には, 富士火山の新期溶岩流がおそらく大きく関与していることであろう。改めていうまでもないが, セミ類はその幼虫期を土壌中でおくるので, 土のない, たとえば新しい溶岩流の上などでは, 正常に生育することができないと考えられるからである。
著者
西城 惠一 中島 隆
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館研究報告 E類 理工学 (ISSN:18819095)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.33-84, 2008-12

We are currently studying the history of Japanese Binoculars for several years. In the course of this study, we have published some papers related to the first domestic production of binoculars in Japan and show the genealogy of propagation of manufacturing technology at that time. In this paper, we review chronologically the technological development of Japanese binoculars and show the influence of technology innovation of other optical instruments. This paper is somewhat a preliminary work but become a base of the future more comprehensive and more detailed studies. The chronological tabele of Japanese binoculars and related technology is attached.
著者
Bonaparte Jose F.
出版者
国立科学博物館
雑誌
National Science Museum monographs (ISSN:13429574)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-12, 1999
被引用文献数
32

A new genus and species of Aptian sauropod, from the Lohan Cura Formation, is briefly described. It is based on an incomplete sequence of fragmentary dorsal, sacral, and caudal vertebrae, a tibia, a fibula, left metatarsals, and osteoderms, representing four morfo-types. The peculiar morphology of the osteoderms and of the top of the neural spines where the osteoderms were fixed, is considered sufficient characters to support setting up a new family of the Sauropoda the Agustinidae nov.
著者
土屋 公幸 若菜 茂晴 鈴木 仁 服部 正策 林 良博
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.227-234, 1989
被引用文献数
5

We studied twelve individuals of Ryukyu spiny rats, Tokudaia from Amamioshima Is.(T.o.osimensis). and Tokunoshima Is.(T.sp.). Each individual was examined for chromosome, serum protein, mitochondrial DNA and ribosoma1 DNA polymorphism. The karyotypes were analyzed by the G-banding staining method. The diploid chromosome number of Tokudaia obtained from Amamioshima and Tokunoshima were 25 and 45 respectively in lung tissue culture preparation. Agarose-gel electrophoretic analysis of the serum protein was used to document relationship between two species. Totally three bands of transferrin (Tf) protein were observed on agarose ge1. Tf^a and Tf^b type were seen in T.o.osimensis and Tf^t and Tf^b type in T.sp. The serum albumin patterns of these rats were not identical. The cleavage patterns of mitocondoria1 DNA (mtDNA) from two Tokudaia species were investigated using several restriction enzymes. The sequence divergence between T.o.osimensis and T.sp. about 16.2% was estimated. Genetic differentiation of ribosomal DNA (rDNA) non-transcribed-spacer sequences was analyzed in the two species. Southern blot analysis with a mouse rDNA probe and some restriction enzymes revealed that the major restriction fragments of these Tokudaia species had a unique pattern in the spacer region. The divergence time between T.o.osimensis and T.sp. was calculated about 2∿4 million years. Based on the significant genetic divergence shown we conclude that T.sp. is a taxonomically from T.o.osimensis.
著者
濱尾 章二
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.63-69, 2008-03

自然教育園において,2002〜2007年の間,ラインセンサスや観察では記録されず,捕獲・拾得・保護によってのみ発見された種を報告した。ノスリ・アオバズクは近年記録が少なく,またオオコノハズクは3例目となる希少な記録であった。また,ミゾゴイは今まで記録のない種であるが,今回片方の翼の主として骨格のみの拾得であり,他所から運ばれた可能性もあるため,参考記録にとどめた。観察が困難な夜行性の種や稀に飛来する種の生息を明らかにするためには,捕獲調査や保護・拾得情報の蓄積が重要であると考えられる。
著者
上野 俊一
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.163-198, 1985

オニメクラチビゴミムシ群 (group of Trechiama oni) の甲虫類, 主として中国山地の東部と四国北東部とに分布し, 淡路島南部と和泉山脈にもそれぞれ1種が生息する。日本海岸から瀬戸内海の南側まで拡がっているので, この種の昆虫群としてはかなり例外的な分布域をもつことになる。本来は地下浅層にすむものらしいが, 石灰洞など自然の洞窟や鉱山の廃坑からも見つかっている。既知種は17あり, 新たに6種を追加記載した。これら23種のすべてを文献とともに列挙し, 区別点を検索表を検索表で示すとともに, 既知種のうちで原記載の不完全な2種の再記載も行った。 この種群は3亜群に大別され, そのうちのふたつはさらに2∿3の系列に次のように区分される。 1) サトウメクラチビゴミムシ亜群 a) ゾウズサンメクラチビゴミムシ系 ムラカミメクラチビゴミムシ T. murakamii S. UENO, ゾウズサンメクラチビゴミムシ T. instabilis S. UENO b) サトウメクラチビゴミムシ系 フジワラメクラチビゴミムシ T. fujiwaraorum S. UENO, オノコロメクラチビゴミムシ T. onocoro S. UENO, サトウメクラチビゴミムシ T. satoui S. UENO, シロトリメクラチビゴミムシ T. tenuis S. UENO 2) オニメクラチビゴミムシ亜群 a) フジタメクラチビゴミムシ系 フジタメクラチビゴミムシ T. fujitai S. UENO, ワカスギメクラチビゴミムシ T. moritai S. UENO, キンショウメクラチビゴミムシ T. spinulifer S. UENO, マチオクメクラチビゴミムシ T. cuspidatus S. UENO, トノミネメクラチビゴミムシ T. crassilobatus S. UENO, ヒウラメクラチビゴミムシ T. hiurai S. UENO, ユキコメクラチビゴミムシ T. yukikoae S. UENO(この種は別系列のものである可能性が強い) b) オニメクラチビゴミムシ系 オニメクラチビゴミムシ T. oni S. UENO c) コスゲメクラチビゴミムシ系 タンゴメクラチビゴミムシ T. tangonis S. UENO, シュテンメクラチビゴミムシ T. shuten S. UENO, イチジマメクラチビゴミムシ T. silicicola S. UENO, コスゲメクラチビゴミムシ T. kosugei S. UENO, ムコガワメクラチビゴミムシ T. expectatus S. UENO, イズミメクラチビゴミムシ T. dissitus S. UENO, テンガンメクラチビゴミムシ T. yoshiakii S. UENO, ノトメクラチビゴミムシ T. notoi S. UENO 3) タイシャクメクラチビゴミムシ亜群 a) タイシャクメクラチビゴミムシ系 タイシャクメクラチビゴミムシ T. insolitus S. UENO これらのすべてが同一の祖先から分化したものかどうか, という点には多少問題があるが, いずれもヨシイメクラチビゴミムシ群 (group of T. ohshimai) のうちから派生したことは確かなので, ここでは単一の種群の亜群として取り扱った。 最初の亜群は, 四国の北東部と淡路島南部とに分布し, 吉野川本流の右岸には侵入していない。このことからみて, 中国山地の東部から瀬戸内海を渡って四国へ移住した祖先型のチビゴミムシは, おそらく讃岐山脈を中心に分化したものと推察される。次の亜群は, 主として中国山地の東部に分布し, 東からコスゲメクラチビゴミムシ系, フジタメクラチビゴミムシ系, オニメクラチビゴミムシ系の順に拡がっている。系列間の相互係は複雑で, 分化の過程を追跡するのも容易ではないが, 少なくともオニメクラチビゴミムシが, 2番めの系列のうちから分化したことは確かだろう。最後のタイシャクメクラチビゴミムシ亜群は, 上翅の剛毛式がほかの亜群の場合と大きく異なり, 分布の様子も遺存的なので, かなり古い時代から隔離されてきたものであるにちがいない。 この種群の甲虫類の調査はまだ不十分で, とくにオニメクラチビゴミムシ亜群に属する系列間の空隙を埋める地域の様子がよくわかっていない。将来, 千ヶ峰山地, 西丹山地西部, 播但高原北部, 津山盆地周辺の山地などからこの亜群メクラチビゴミムシ類が発見されれば, 系統関係も分布の過程も, より高い信頼性をもって解析できるようになるだろう。
著者
北山 太樹
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.65-70, 2002

伊豆諸島神津島において褐藻類相を調査した結果,4科12種を確認した.神津島は暖温帯性のアミジグサ科藻類の豊かな群落と,多年生のコンブ類がみられないことで特徴づけられる.Halopteris filicina (Grateloup) Kutzingカシラザキ(カシラザキ科),Spatoglossum latum J. Tanakaヒロハコモングサ(アミジグサ科),Sargassum crispifolium Yamadaコブクロモク(ホンダワラ科)は神津島新産となる.S. crispifoliumは,神奈川県沿岸の打ち上げ藻や流れ藻として知られているが,神津島に自生することが確認された.
著者
富樫 一次
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.71-80, 2001-03

Three new species of the sawfly genus Rhogogaster, R. shinoharai, R. rishiriana, and R. nishijimai, are described and illustrated, all belonging to the viridis group and all from Hokkaido, Japan. Rhogogaster convergens Malaise, 1931,is recorded from Japan (Honshu) for the first time. A key is given for the Japanese species of the viridis group and collection data are given for R. convergens and R. kudiana Rohwer, 1925.