著者
吉行 瑞子 今泉 吉典
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.185-193, 1986-12
被引用文献数
2

A new species of red-toothed shrew belonging to the caecutiens-arcticus section of the Sorex minutus group is described from Sado Island, under the name Sorex sadonis, The species is similar to Sorex arcticus KERR, 1792 in having a large skull and massive teeth, but the 2nd lower tooth has a secondary cusp and the lateral pelage is much darker than the ventral. This species is easily distinguished from Sorex shinto shinto THOMAS, 1905 from Honshu, Sorex shinto saevus THOMAS, 1907 from Hokkaido, and Sorex shinto shikokensis ABE, 1967 from Shikoku, Japan, by the much bigger claws of the forefoot and the decidedly darker coloration.
著者
菅原 十一
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.27-35, 1982-03

1979年の台風第20号の影響によって発生した被害樹木を指標に強風地域分布の推定を行なった。その結果, 推測の域を出ないが, 次に示す傾向がうかがえた。(1) この台風の最接近時には, 近年にない最大級の強風となった。風向 : S及びSW風速 : 平均27.0〜31.Om/s, 瞬間最大38.5m/s(2) 被害樹木は, 総本数92本におよび, 近年にない最大級の被害例となった。(3) 被害樹木の分布には, 局地性がみられるとともに, その主な要因として地形, 植生, 道路などが考えられた。(4) 被害樹木分布及びその要因などを考慮にいれ強風地域分布図を作成した。(5) その結果, 数ヶ所に強風の収束地域の存在が推定された。特に, 水鳥の沼よりイモリの池にかけての谷筋付近では, 風速が強く, 収束域の幅が広くなると考えられる。(6) 風下側に面した傾斜地及び森林内では, 強風が著しく弱まる傾向がみられた。
著者
邑田 仁
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.43-50, 1990
被引用文献数
1

国立科学博物館の「日本列島の自然史科学的総合研究」に参加する機会を得て, 奄美大島においてツチトリモチ属植物の現地調査を行った。ここではその結果をもとにして,日本産の本属植物のうち無配生殖を行うものについて比較検討の結果を報告する。ツチトリモチ属で無配生殖を行うものはジャワ島と日本列島にのみ知られている。日本産のものにはツチトリモチ, ミヤマツチトリモチ, ヤクシマツチトリモチおよびキュウシュウツチトリモチが記載されている。本研究ではキュウシュウツチトリモチを除く3種について, 走査型電子顕微鏡を用いて, 担棍体上の雌花のつき方および担棍体上部のクチクラの表面模様を観察し比較検討した。この結果これら3種は以下の特徴を持ち, 形態的に区別できることが明らかとなった。なお, ヤクシマツチトリモチはこれまで屋久島と種子島の固有種と考えられていたが, 本研究により台湾南部にも分布することが判明した。ツチトリモチ : 雌花は黄色で主に花序の主軸上につく。クチクラ表面の隆起条は短く, 担棍体上部の一部に認められる。ミヤマツチトリモチ : 雌花は黄色で主に花序の主軸上につく。クチクラ表面の隆起条は著しい網目状で担棍体上部全面をおおう。ヤクシマツチトリモチ : 雌花は紅色で花序の主軸上および担棍体の下部につく。クチクラ表面の隆起条は短く, 担棍体上部の一部に認められる。担棍体上部の辺縁にある細胞はしばしば親指状となりやや開出する。
著者
佐々木 勝浩
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series E, Physical sciences & engineering (ISSN:03878511)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.31-40, 1981

The Foucault's Pendulum in the National Science Museum was replaced by a new improved model in January-April 1981. Before that, some theoretical investigation and experiments, such as measurements of the damping rate and elliptical motion were carried out. We have compared two kinds of suspension. One is the "bolt type" in which the upper end of the wire is simply fixed by a bolt. Another is the "knife edge type" in which the wire is suspended by a ring equipped with double knife edges. The measurements of both the damping rate and the elliptical motion of the pendulum showed that the knife edge type is slightly better. In consideration of the result of the experiments, the bob and the wire changed in size and material, and the suspension ring was improved. The length of the new pendulum is 1950 cm, about 50 cm than before, and the new bob was made of stainless steel instead of lead. Stainless steel is less dense than lead but it is more suitable for the precise shaping and fine finish. The new bob is 23 cm in diameter, 3 cm longer than the old one. The writer designed a new suspension ring to increase the rigidity as shown in Figure 4. The formance of new pendulum is almost satisfactory but no remarkable decrease of damping rate and elliptical motion were observed.
著者
Bonaparte Jose F. Ferigolo Jorge Ribeiro Ana Maria
出版者
国立科学博物館
雑誌
National Science Museum monographs (ISSN:13429574)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.89-109, 1999

Two incomplete specimens of a new genus and species of Saurischia, Guaibasaurus candelariensis, from the Caturrita Formation of Rio Grande do Sul, southern Brazil, offers new data on the basal dinosaurs and a new interpretation of the early evolution of the Saurischia. The new taxon is more primitive than the Herrerasauridae, in the structure of the dorsal vertebrae, ilium, pubis, femur, tarsus and foot. The mesotarsal condition and the outline of the distal section of tibia indicate the saurischian nature of this new form, but the almost unreduced medial wall of the acetabular portion of ilium shows an unrecorded primitive condition within the cited group. These particular characters lead us to propose a new family : the Guaibasauridae. Several features suggesting affinities with both the Prosauropoda and Theropoda, imply that Guaibasaurus candelariensis may belong to the ancestral group for both of them.
著者
朝比奈 正二郎
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.145-"156-2", 1974

世界の熱帯および亜熱帯の洞窟から, 興味深いゴキブリ類が数多く知られている。わが国からは, このようなゴキブリ類は, 従前まったく見つかっていなかったのであるが, 1958年以降, 主として上野俊一博士の努力によって, 琉球列島の島じまの洞窟から, 真洞窟性ゴキブリであるホラアナゴキブリ科Nocticolidaeの種類と, モリゴキブリ属Symploceのうちおそらく好洞窟性と考えられる種類の標本が得られるにいたった。ここに, 成虫が確認されたものについて次のような名称を与え, 記載を行なった。I. ホラアナゴキブリ科Nocticolidae 1a. ホラアナゴキブリ(上野, 1964) Nocticola uenoi nov. (沖永良部島, 与論島, 沖繩本島) 1b. キカイホラアナゴキブリ(新称) Nocticola uenoi kikaiensis nov. (喜界島) 1c. ミヤコホラアナゴキブリ(新称) Nocticola uenoi miyakoensis nov. (宮古島) II. チャバネゴキブリ科Blattellidae 2. エラブモリゴキブリ(新称) Symploce okinoerabuensis nov. (沖永良部島) 3. ミヤコモリゴキブリ(新称) Symploce miyakoensis nov. (宮古島)なお, モリゴキブリ属Symploceのものと思われる幼虫が, 喜界島, 与論島, 沖繩本島, 久米島および石垣島より得られた。また, ツチゴキブリ属Margatteaと思われる1個の幼虫も, 沖永良部島の洞窟より得られている。
著者
スセーラ M. R. トッポ K.
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Museum of Nature and Science. Series B, Botany (ISSN:18819060)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.105-114, 2007-12

The present paper is an exclusive contribution of the desmid flora of Sikkim Himalayas, India. Thirty-one species of genus Cosmarium Corda, two species of Penium and seven species of Euastrum (Desmidiales, Chlorophyceae) were identified from the samples collected during 2000 and 2001 from Sikkim Himalayas. Taxonomic description and some morphological variations of desmid species are discussed in this paper. All the taxa have been reported for the first time from the study area.
著者
小西 達夫
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-51, 1999-12

最近,野生植物の生存が脅かされ,その繁殖と保存が望まれている。しかしながら,現状は生殖様式など基本的な問題すら不明なものが多く,その解明や保存法の確立が急務である。ヒスイカズラStrongylodon macrobotrys A. Gray (2n=28)はフィリピン諸島の限られた熱帯降雨林にしか自生しないマメ科の蔓性木本植物で,自生地では環境の悪化により絶滅が危惧されている。わが国には1964年頃より植物園などに導入されている。しかし,温室内での自然結莢は皆無であったことから,生殖様式を解明し,人工受粉ならびに組織培養技術による繁殖と保存法を進めた。主な結果は下記の通りである。1.本研究に供試したヒスイカズラは,シンガポールから東京大学理学部附属小石川植物園に導入された苗を母本とする挿し木苗の分譲を受け,筑波実験植物園熱帯降雨林温室内に植栽された株(TGB. ace. no. 33040)である。これまで,毎年開花するが,全く不結莢であった。2.花器構造ならびに花粉稔性などについて詳細に観察した結果,不結莢の原因は生殖器官の形態的異常によるものでは無いことを明らかにした。3.人工受粉を行って,受粉前と後の柱頭について詳細な組織・形態学的調査を行い,その結果結莢に成功した。特筆する点は,(a)開花時の柱頭周辺部には花粉が到達しているが,(b)柱頭先端部にはパピラ間より浸出したと思われるドーム状構造をしたクチクラ層が存在し,花粉のパピラへの接触を妨げている。この観察結果より,(c)柱頭先端部を指で突くことによりドーム状構造のクチクラ層を破壊し,花粉をパピラに到達させたことである。4.受粉が成立するためには,柱頭先端部のドーム状構造の破壊が不可欠であると考え,パピラに損傷を与えずにドーム状構造層を破壊し,花粉をパピラに到達させるトリッピングによる人工受粉法を考案した。この人工受粉法により結莢を得た。5.以上の結果,ヒスイカズラの自然条件下での結莢には,送粉動物が深く関与していると推察された。そこで,比較的自然に近い生態系を再現したミニ生態系モデル施設である長崎バイオパーク園内の熱帯館に,ヒスイカズラを植栽したところ,送粉動物による自然結莢が起こり,莢内の種子は発芽し次代植物が得られた。送粉動物として,同施設内に放飼されているヒインコが関与した可能性が高いと推察された。このことはヒスイカズラの種子繁殖にとって生態系を維持することの重要性を示唆する。さらに,これらの事実は,ヒスイカズラの受粉生態学に員献するものと考えた。6.ヒスイカズラの早期落莢は,胚珠内の胚の発育過程が正常に進んでいたことから不受精による結果ではないことが判明した。7.人工受粉で得られた種子は,採り播きですべて発芽したが,実生個体には約28%の高頻度でアルビノ個体が出現した。このことから,ヒスイカズラが自然にあってヘテロ個体として適応性を高めていたと推察された。したがって,ヘテロ性を維持させるために他家受精を可能とする自然環境下での送粉動物の必要性が強く示唆された。8.人工受粉により得られた個体は播種後4年目に開花し,これまで15株が開花した。花色を調査したところ,親より濃い個体が3,親と同色の個体が8,親より淡い個体が4に分離した。この結果,本実験に供したヒスイカズラが次代で遺伝的変異を生じ得るへテロ個体であることを示した。このことから,種子繁殖により,園芸的にも価値のある個体の選抜育成が可能であることが示された。9.組織培養はヒスイカズラの苗の生産にとって有効な手段であることを明らかにした。胚珠・胚培養では,落莢胚珠内の接合期,球状胚および若い子葉胚を含む胚珠の培養をMS培地(Murashige and Skoog 1962)で培養し,胚珠の発育には成功したものの発芽種子を得るには至らなかったが,落莢胚の救済の可能性を見出した。10.裂開前の莢より得た種子を無菌水のみで培養したところ,すべて発芽し,幼苗を得た。この幼苗は継代培養をしないでも子葉が肥大成長し,蔓も著しく伸長し,2年間以上生存し続けた。このことから継代培養を繰り返すことにより,さらに長期保存が可能であることを示した。以上の方法は短命種子であるヒスイカズラの繁殖と保存にとって,極めて有効であると考えた。また,種子からの幼苗育成法は自生地への復元作業を行う上で,極めて効率的であると考察した。以上,本研究におけるこれらの結果は,ヒスイカズラのみならず,他の絶滅危惧植物の繁殖と保存にとっても多くの情報を与えるものと確信した。
著者
久居 宣夫 千羽 晋示 矢野 亮 菅原 十一
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-13, 1987-03

1. アズマヒキガエルは行動域内で冬眠し, 早春の繁殖期には, そこから池まで移動する。2. 繁殖期には, 大部分のヒキガエルは毎年同じ池に集まり繁殖活動を行う。しかし, 一部は池を変えることがあり, この場合, ほとんどが一度だけである。そして, 移動する池は近隣の繁殖池の間で行われる例がもっとも多い。3. 繁殖活動後は再び行動域にもどる。そして, 行動域にもどる時は, 特に池から離れている場合, 池の付近で1か月以上春眠し, 晩春から初夏になってから移動するものと考えられる。
著者
黒沢 良彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology (ISSN:03852423)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.73-78, 1984-06

A new species of long-armed scarabaeid beetle belonging to the genus Cheirotonus is described from Okinawa, the largest island of the Ryukyus. It is related to the parryi group distributed to Southeast Asia and China.
著者
萩原 信介
出版者
国立科学博物館
雑誌
自然教育園報告 (ISSN:0385759X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-20, 1992-03

固着生活を営む植物も種子散布時には様々な方法で動きを持つ。中でも翼を持ち空をグライダーのように滑空するアルソミトラマクロカルパの種子は特異であり, 生物学のみならず様々な方面での教育的価値が高いと思われる。この種子の構造を計測し, それに基ずいて発泡スチロールの薄片を用いて実物と用様の飛翔する模型が作られた。
著者
武田 正倫
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.135-"184-2", 1989

昭和年63年 (1988) 7月, 国立科学博物館の「奄美大島周辺地域の自然史科学的総合研究」の一環として, 奄美大島と加計呂麻島間の大島海峡においてドレッジを用いた底生生物調査が行われた。調査地点は水深15m から 70m にわたる合計27地点で (Fig.1), 得られた力ニ類は10科32属42種に分類された。また, 真珠養殖のために浅海に懸垂したマベの貝殻から掻き落とした付着生物の間から見い出されたカニ類は5科8属12種に分類され, マベの外套腔からカクレガニ科の1種が得られた。その他, プロカメラマンの楚山勇氏がスクーバ潜水中に採集したカニ類(8科18属18種), 昭和45年 (1970年) に鹿児島大学水産学部の学生がドレッジを用いて採集したカニ類(7科16属19種)も含めた。すべてのカニ類は合計14科57属81種であるが, Table 1 に示したように, それぞれのコレクションの間で重複している種が少ないことが特筆される。国立科学博物館と鹿児島大学の採集方法はともにドレッジであるが, 前者の42種と後者の19種とに共通しているのはコブシガニ科3種, ヒシガニ科1種, オウギガニ科1種, ケブカガニ科2種の合計7種にすぎない。これは″ドレッジ″とはいっても器具の形と大きさの違いによるためなのか, あるいは採集地点の海底の状態によるためなのか, カニ類の種構成だけからでは説明が難しい。一方, スクーバ潜水によって得られた18種とマベの付着生物中から得られた12種に共通するのはコブシガニ科の1種にすぎず, また, ドレッジによって得られた種と共通するのもオウギガニ科の1種とサンゴガニ科の1種にすぎない。これは, それぞれの生息環境が異なるほか, 採集方法の違いが主因と考えられる。すなわち, スクーバ潜水によって得られた種は主として岩礁性で, 目につきやすい大型種か, 小型種であっても比較的動きのある種からなっているのに対し, マベの貝殻から得られた種は付着生物の間に潜り込む習性をもつ小型種で構成されている。スクーバ潜水による採集品とドレッジによる採集品にはもっと多くの共通種が期待されるが, 前者には小型種の採集に, 後者では複雑な海底での採集に限界があることから, 採集方法としては両者は互いに補完すべきものである。記録された合計81種には2新種が含まれている。オウギガニ科の Miersiella cavifrons sp. nov. の近縁種は相模湾, インド洋東部のクリスマス島, オーストラリア東部のニューサウスウェールズ州から知られている M.haswelli (MIERS) のみである。一方, エンコウガニ科の Psopheticus megalops sp. nov. の所属にはやや疑問があるが, この属には日本からインドまで分布するナキエンコウガニ P.stridulans WOOD-MASON, 台湾の高雄とビルマ(ミャンマー)のマルタバン湾から記録されているモンツキエンコウガニ P.insignisALCOCK, 日本とフィリピンに産するウスベニエンコウガニ P.hughi RATHBUN およびニューカレドニアから記載された P.vocans GUINOT の4種が知られている。日本新記録種は Table 1 の各種名の前に星印を付して示してあり, カイカムリ科1種, コブシガニ科3種, ヤワラガニ科1種, クモガニ科5種, ヒシガニ科3種, ワタリガニ科2種, オウギガニ科2種, ケブカガニ科2種, エンコウガニ科3種, カクレガニ科1種の合計10科23種に達する。新記録種はいずれも, 従来, フィリピンやミロネシア, マレー諸島などから知られている南方系種である。これほど多くの日本新記録種が見い出されたということは奄美大島の浅海域の調査がほとんど行われていなかったことを示している, 海峡内だけでなく外海に面したサンゴ礁域の浅海の調査が行われれば, さらに多くの種が追加されるものと思われる。また, 従来, 琉球列島南部からのみ記録されていたカニ12種が採集された。それらはコブシガニ科1種, クモガニ科1種, ワタリガニ科2種, オウギガニ科5種, ケブカガニ科1種, サンゴガニ科1種, サンゴヤドリガニ科1種で, 日本新記録種ではないが, いずれも分布の北限が奄美大島まで広がったことになる。一方, 本州中部から九州沿岸にのみ分布するとされていた日本固有の3種, コブシガニ科のゴカクウスヘリコブシガニ Cryptocnemus pentagonus とロッカクコブシガニ Nursia japonica, エンコウガニ科のモールスガニ Xenophthalmodes morsei が今回の調査で採集された。これらはいずれも小型種であるが, 形態的に特徴があるため同定に問題はない。分布の南限が奄美大島まで広がったことになるが, 従来のフィリピンやインドネシア海域の広範な調査において記録されていないことから, 奄美大島よりさらに南方海域に分布している可能性は低い。