著者
堀田 香織
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、離婚母子家庭の子どもの成長における、別れて暮らす父親との関わりについて、調査研究を行った。父親との関わりの有無と時期によって3群に分けられ、父親との有効な関わりを続ける群の心理的特徴として、子どもが肯定的な父親像を有していること、父子の良質な関わりの継続、精神的な独立とともに、父母の関係や父親の存在を再評価し、父親との関わりを選び直せること、子どもと共に父親が成長していることなどが重要であることが見出された。
著者
川嶋 かほる
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

さまざまな調理済み食品、半調理済み食品が、外食や中食などのかたちで日常食の一端として広く使われるようになっている。これらの家庭外で調理された食品については、栄養バランスの悪さや添加物の多使用とともに、呈味の画一化と濃厚化が問題点として指摘されている。本研究は、家庭外で調理された食品の呈味の実態を化学分析を通して明らかにする一方、これら食品の利用の実態と意識を調査紙調査により、また嗜好・味覚を官能検査によって調査し、これらの実態を把握するとともに、食生活のありかたと味覚・嗜好の現状の関連をみることを目的とするものである。1:調理ずみ食品の呈味市販調理ずみ食品のうち、主食類、主菜、副菜、汁ものについて、手作り品と対比しながら、その呈味の特徴をみるために、塩分、糖、グルタミン酸、有機酸の分析を行なった。一般に市販の調理済み食品および半調理済み食品では、手つくり品に比べてはるかに高い塩分含量を示し、グルタミン酸含量も高かった。糖は、含量の変動が大きかったが、市販品で高い傾向を示した。2:利用意識市販調理ずみ食品は、その利便性で多く利用されていた。味に対しては濃いと考える人が多く、手作りのもののほうを好むとする回答が多かった。3:人々の嗜好一般にうす味より濃い味を嗜好する者が多かった。手つくり品との対比の官能検査では、調理ずみ食品より手つくり品の塩分を高く感じる者が多かった。意識調査の結果とはことなり、圧倒的に調理ずみ食品が好まれた。
著者
木村 雄一
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「両大戦間期のLSEにおける経済学の生成と発展」について、(1)LSEにおける大陸経済学の受容と展開-「ロビンズ・サークル」の役割、(2)LSEとケンブリッジ-対立と協調、LSEのケンブリッジ疎開(3)LSEにおける「ケインズ革命」の群像-カルドア、ヒックス、ラーナー、(4)「プラント・グループ」(プラント、コース)による企業組織・企業理論の研究(5)国際的な経済学研究機関-講義科目、LSEの施設拡張、招待講演、特別講義の調査、(6)Academic Assistance Councilの創設-ベヴァリッジ、ロビンズ、ミーゼスによるユダヤ学者救出、(7)LSEの知性史-ドールトン、キャナン、ロビンズ、ラスキ、カルドア、ヒックスらの知的交流、の観点から明らかにした。
著者
木村 雄一
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の成果は、ポスト・ケインジアンの一人として、現代経済学の形成、イギリス労働党の政策実施、開発経済学等に多大な影響を与えたニコラス・カルドア(1908-1986)の経済思想を、以下の諸点から明らかにしたことである。(1)LSEにおける理論形成、(2)第二次世界大戦後の福祉国家構想、(3)発展途上国の開発経済理論・政策、(4)EC加盟論争とポンド切り下げ、(5)支出税構想や選択的雇用税に関する政策、(6)ケンブリッジ学派の経済成長・所得分配に関する理論的貢献と政策、(7)成熟化したイギリス経済への処方箋、(8)フリードマンのマネタリズムや均衡経済学批判、(9)社会民主主義のヴィジョン。
著者
井原 基
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、タイ東北地方のウボン・ラーチャターニーにおけるハイパーマーケット進出が、地域経済、特に地域の消費者及び流通業者にどのような影響を及ぼしつつあるのかを調査した。人口約10 万人のウボン市街地におけるハイパーマーケット(類似業態であるC&C 含む)進出店舗数は3 店に上り、これらの同地域の市街、流通、消費に与えた影響は広い範囲に渡っている。流通業者の廃業は統計上では必ずしも明示されなかったが、アンケート調査やインタビュー、視察などの定性的調査から、一部では共存可能な状況にあるものの、個人商店の事業機会圧迫と中心市街の空洞化という影響を与えつつあることが示された。消費に関しては、必ずしも高所得ではない世帯月収5000 バーツ以上(年収約5400 ドル以上)のほとんど(85.7%)がハイパーマーケットでの購買を実際に行っており、ハイパーマーケットが同地域のボリュームゾーンの顧客層を捉えていること、さらに典型的な顧客のプロフィールとして子供のいる家族、若年層、耐久消費財の購入や自家用車の利用の進捗、住宅・医療等基盤インフラへの支出の少なさ等が明らかになった。
著者
中井 淳一
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

多くの動物は眠るが、睡眠の分子メカニズムはまだ良くわかっていない。この状況は、Hypocretin/Orexin(Hcrt)とその受容体が発見され大きく進展した。本研究は、ゼブラフィッシュを用いて動物の睡眠と覚醒の分子機構を明らかにすることを目的としている。そこで蛍光カルシウムプローブG-CaMPを神経細胞に発現させ神経細胞の機能とゼブラフィッシュの行動との関係を探ることを計画した。本研究において蛍光カルシウムプローブG-CaMP2を改良したG-CaMP-HSを新たに開発した。G-CaMP-HSはG-CaMP2と比較して高感度であるとともに、細胞内でのタンパク質の安定性が増しており、安静時の蛍光強度が高いという特徴を持つ。これに関連して、蛍光カルシウムプローブの性能向上に関する特許を申請した。次にG-CaMP-HSをGal4-UASの下流につないだコンストラクトを作成し、ゼブラフィッシュに導入することにより遺伝子改変ゼブラフィッシュを作成した。このゼブラフィッシュと運動ニューロン(Caudal primary neuron : CaPニューロン)にGal4を発現するゼブラフィッシュ(SAIGFF213A)とを掛け合わせることによりCaPニューロンにG-CaMP-HSを発現するゼブラフィッシュを作成した。CaPニューロンの活動をイメージングにより解析したところ、CaPニューロンのバースト発火に伴い、G-CaMP-HSの蛍光強度が変化することが観察された。この成果はProc Natl Acad Sci USAに報告した。ゼブラフィッシュの神経細胞からG-CaMP-HSを用いて神経活動をイメージングにて解析することが可能となったことにより、今後HcrtニューロンにG-CaMP-HSを発現させ解析することにより睡眠覚醒のメカニズムの解明が進むと考えられる。
著者
武井 和人 三村 晃功 矢野 環 末柄 豊 小川 剛生 久保木 秀夫
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)以下の機関・個人に所蔵される十市遠忠・実暁自筆古典籍の実地調査・写真撮影を行った。財団法人前田育徳会尊経閣文庫蔵自筆詠草類(再調査)東京大学史料編纂所蔵『一人三臣詠鈔』(天文8年遠忠書写奥書本ノ転写本)国文学研究資料館蔵遠忠関連典籍マイクロフィルム(陽明文庫蔵『五社百首』他)(2)報告書に翻刻を収載する予定の資料を選定し、担当者を決め、翻字作業に入った。新たに翻刻する資料として、以下の典籍を定めた。財団法人前田育徳会尊経閣文庫蔵『千首和歌』『三百六十首和歌』『五十番自歌合』他島原図書館松平文庫蔵『百五十番自歌合』(3)以下の遠忠自筆、および、鳥養流の能書家である鳥飼宗慶自筆短冊資料を蒐集した。鳥飼宗慶自筆短冊(京都・思文閣書店より購入)十市遠忠自筆短冊(軸装、京都・思文閣書店より購入)遠忠、及び鳥養流諸家の書蹟鑑定に際し、基礎的な資料として活用した。(4)下記の如き研究会を開催した。【第1回研究会】平成17年8月19日・於:埼玉大学八重洲ステーションカレッジ武井・石澤一志・高橋育子「<遠忠自筆資料>の筆蹟について」末柄豊「文亀四年二月九条尚経亭月次和歌会懐紙について」井上宗雄「勅撰作者部類の編者藤原盛徳(元盛法師)について」(5)本研究の概要・経緯を、日本歴史学会の依頼により、武井が『日本歴史』(第692号、2006・1)に報告した。
著者
井口 壽乃 井田 靖子
出版者
埼玉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

両大戦間期における中・東欧のグラフィックデザインに関する活動の全貌を実証的に解明するために、ドイツ、チェコ、ハンガリー出身のデザイナーが同時代に英米を訪問、あるいは移民した先の国のグラフィックデザインに与えた具体的な影響について、所蔵先のヴィクトリア・アルバート美術館(ロンドン)、クーパー・ヒューイット・デザイン美術館(ニュー・ヨーク)他にて調査をおこなった。アメリカでは、チヒョルト(ドイツ)とラディスラフ・ストナー(チェコ)、モホイ=ナジ(ハンガリー)の相互の影響関係と交流が浮かびあがった。ニューヨークで活躍したストナーはアメリカのデザイン界に中欧のデザイン理論と方法を根づかせ、1940年代にはアメリカ型のモダンデザインとして新しい造形を推進していった。シカゴでバウハウスの教育を継承したモホイ=ナジは、アメリカの視覚芸術の領域に彼のニュー・ヴィジョン理論を移植し、新しいメディアやテクノロジーと造形表現を融合する芸術作品の創造へと発展されたことが解明された。(井口)ベルリンにてモダン・アートの原理を商業や産業に応用するために開校した私塾「ライマン・シューレ」で知られるユダヤ系ドイツ人アルバート・ライマンは、1937年にロンドンに産業・商業美術学校を設立し、イギリスに商業美術に特化した教育実践を通じて、イギリス・デザイン界においてモダニズムの理論と実践に深く関わったことが解明された。(菅)以上のことから、大陸のモダニズムの流れは英米にて継承され、それぞれ異なる歴史と土壌をもつ土地で、新たな展開を導いたことが実証された。以上の研究結果から浮き彫りにされた国家の文化・産業政策とデザインの関係について、ナショナリズムの視点から研究を行っている研究者デイヴィッド・クラウリー(ポーランド研究)とエヴァ・フォルガーチ(ハンガリー研究)と意見交換を行った。さらにポーランドを事例とした先行研究David Crowleyによる"National Style and Nation-State",1992.を翻訳・出版した(邦訳『ポーランドの建築・デザイン史:工芸復興からモダニズムへ』彩流社、2006年、4月)。
著者
井口 壽乃 伊原 久裕 西村 美香 山本 政幸 井田 靖子 吉田 紀子 エンズレイ ジェレミー
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1930年代の芸術家バイヤー、チヒョルト(ドイツ)、モドレイ、ノイラート(オーストリア)、ストナー(チェコスロヴァキア)の英国および米国への亡命・移住によってニュー・タイポグラフィ、アイソタイプ、写真広告などのグラフィックデザインの理論と技術が移植され、戦後デザインの基盤形成を果たした. その際パーシー・ランド・ハンフリーズ社、スィーツ・カタログ会社が重要な要となった.研究成果はシンポジウム「越境のグラフィズム」開催と論文集『グラフィックデザイン1930』Fuji Xerox(2008)にまとめ、一般に公表した.
著者
田代 信 玉川 徹 浦田 裕次 玉川 徹
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ガンマ線バーストは、宇宙でもっとも明るい爆発的天体現象である。遠方銀河中の超新星爆発にともなうジェットを起源とすると考えられているが、超新星爆発では説明がむずかしい例も多数あり、一筋縄ではいかない。本研究では、広視野硬X線望遠鏡でガンマ線バーストを探知するスウィフト衛星と同じ視野を自動的に観測する可視光望遠鏡を開発設置し、所定の性能を確認した。直接の検出例はまだないが、得られた走査観測データの公開をすすめている。
著者
田中 規夫 DAS SHAMAL Chandra DAS SHAMAL Chandra
出版者
埼玉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

バングラデシュ国における側岸侵食の実態と現状で行われている対策方法、堤防被覆に使用可能な植生(草本・木本)を整理した。また、高潮時における被災事例の把握をもとに、堤防や盛土法面を被覆し侵食を防止する植物としてのベチベル草を選定し、水理模型実験の粗度としてモデル化し、堤防を越水する流れに及ぼす草本や低木の効果を定量評価するための実験を行い、せん断力低減効果を評価した。また、側岸侵食防止効果について、高水敷上の水制の長さ・間隔や傾きをパラメータとして、流速低減域と加速域がどのように変化するかについて、水理模型実験を行い、それを表現する数値モデルの開発を行った。さらに、樹木の倒伏限界値の把握に関して、荒川明戸地点・荒川板橋地点・高麗川にて行った樹木引き倒し試験の比較検討を行った。特に、荒川板橋地区にて行った引き倒し試験結果を詳細に解析した.その結果,地上部体積を表すパラメータが転倒限界モーメントMmaxを精度良く表現すること、根茎構造(浅根型,深根型)の相違による根鉢のサイズ(根鉢の表面積および体積)が転倒限界モーメントに大きく影響していること、転倒限界モーメントには地盤の粘着性が大きな影響を与えることなどを明らかにした.樹林帯の高潮減災効果については、数値モデル解析を行い、バングラデシュに存在するマングローブ樹種の効果について、樹林幅・樹種などによる相違を解析した.特に緩勾配条件化では2つの樹種を組み合わせることで高潮に乗っている高波成分の流速の低減には有効であることを示した。
著者
飯村 耕介
出版者
埼玉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

近年,海岸樹林の津波減災効果が注目されており,本研究では樹林モデルの高精度化のためにマングローブ林などの気根を有し,鉛直方向に大きく構造が変化する樹木を対象に,気根層を再現した植生模型を配置して水理模型実験を行い,上下層の密度比がもたらす流速や抵抗力への影響を明らかにした.植生模型は気根層を再現した植生模型(二層林モデル)とそれを鉛直方向に平均した植生模型(一層林モデル)の2ケースで検討した.二層林モデルでは樹高8mのマングローブ林の100分の1縮尺程度を参考に,高さの異なる直径2mmの木製円柱を組み合わせて配置した.下層部分の高さは20mmで円柱の中心間距離は8mm,上層の円柱の中心間距離は24mmとなる.一方,一層林モデルは直径5mmの木製円柱を24mm間隔で配置した.多くの研究,特に樹木抵抗を考慮した解析では,樹木の抵抗は水深積分化されて導入していることが多く,本研究の一層林モデルも二層林を水深積分化して与えている.二層林の下層部分は正三角形配置なので,その投影幅は円柱直径の6倍となり,投影幅を水深方向に平均すると4.5mmとなる.一層林ではこれとほぼ等価の幅を持つように5mm円柱を使用した.植生模型が無い条件に比べて,二層・一層林ともに植生帯前面で反射や堰上げにより最大水位が大きくなり,植生帯の背後で水位が低減した.二層林では下層部分に植生が偏って存在するため,一一層林に比べて植生帯前面での反射・堰上げの効果が小さくなった.二層林の場合は下層部の植生帯の密度が上層部に対して大きく,上層部で流れが加速し,下層部で流速が低下する.上層の流速は下層に比べて最大2.6倍となったが,植生帯全体における平均的な抵抗力は一層林のほうがわずかに大きい.そのため,植生帯前面での反射が大きく,抵抗もわずかに大きい一層林のほうが二層林に比べて背後における低減効果が大きくなることが分かった.
著者
王 青躍 鈴木 美穂 中島 大介 三輪 誠
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

近年、黄砂の飛来とスギ花粉飛散ピークと重なって度々出現し、同時にスギ花粉アレルゲン含有粒子の高濃度現象が観測されているため、都市部において、黄砂がスギ花粉と接触し、スギ花粉アレルゲンの放出や修飾影響、アレルギーの増悪など、花粉症罹患への黄砂や汚染物質の複合影響を評価した。特に、スギ花粉アレルゲンの微小粒径への移行は降雨が影響しており、降雨のイオン成分やpHによるスギ花粉アレルゲンの溶出挙動とその活性変化を検討した。
著者
藤森 厚裕
出版者
埼玉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

疎水性高分子を希薄溶液から,気/水界面に展開するだけで,1桁ナノメーターサイズで極めて高さの揃ったナノ微粒子が形成される.このナノ微粒子を同一面内に二次元集積させた単粒子膜を固体基板上に一層づつ移し取って積層させた,ナノコロイド結晶ライクな,「ポリマーナノスフィア積層粒子層状組織体」を新規に創製した.本課題においては,領域趣旨に従い,このソフトマテリアルが界面にて形成する構造体の形成過程と最終構造の精密分子配列解析を実行した.まず形成物質としては,系統的に側鎖長を変えて新規に合成(直接重合法)した,含長鎖アルキル芳香族ポリアミドを用い,加えて「疎水性」「機能性(発光特性)」という観点から,N-ビニルカルバゾールを含む三元櫛形共重合体をも新規合成し,使用した.これらの固体構造を広角X線回折,小角X線散乱,示差走査熱量測定により評価した.更に水面上におけるin situ測定として,化合物群の表面圧-面積曲線による評価を行い,ナノ粒子形成機構を検討した.更に固体基板上に,Langmuiur-Blodgett(LB)法を用いて一層一層積み重ね,out-of-plane X線回折,in-plane X線回折の測定を行い,特に一層膜については,原子間力顕微鏡(AFM)測定を行った.特に,可視光領域の厚みまで階段状に積み重ねた累積膜に関しては,構造色による発色を確認した.回折方向の異なる2種のX線回折法による解析から,高さ方向に分子鎖が折り畳まれて積み重なった構造を形成していることが判明した.更に紫外-可視分光法,蛍光分光法によって,粒子内でπ共役系部位がスタックした蛍光発光能の増強が確認された.また,気-水界面における"繰り返し圧縮緩和法"により,粒子配列と粒子充填構造が発達した高密度集積化構造が達成されている様子をAFMによって確認し,新規のナノコロイド結晶としての可能性が示された.
著者
水野 毅 高崎 正也 村山 誠
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本課題では,負の剛性を持つ支持機構を利用したアクティブ除振装置の実用化を目指した研究を実施した.(1)負の剛性を持つ支持機構としてゼロパワー磁気浮上機構を利用した装置では,負の剛性の大きさが除振テーブル上の搭載物の重量によって変化するため,直動外乱に対する剛性が低下してしまうという問題がある.この問題の解決方法として非線形補償法を提案し,浮上対象物の1自由度を制御する磁気浮上基礎実験装置において,提案する非線形補償によって負の剛性の大きさが一定に保たれることを実証した.(2)負の剛性を持つ支持機構をリニアアクチュエータを利用して実現することを提案し,そのための制御方法を明らかにした.さらに,空気圧アクチュエータを利用して除振テーブルの垂直方向の3自由度の運動をアクティブに制御する除振装置を試作し,性能の評価を行った.(3)ゼロパワー磁気浮上機構を利用した除振装置のもう一つの問題は,従来の構造では永久磁石の吸引力によって除振テーブルの全重量を支えなければないので,実用的には除振テーブルの大面積化が難しいことである.この問題を解決する方法として,荷重支持機構を導入することを提案した.支持機構によって,除振テーブルに作用する重力より大きな上向きの力を発生するようにすれば,ベース一正のばね-中間台-ハイブリッド磁石-除振テーブルと単純に下から積み上げていく構成が可能となることを示した.(4)荷重支持機構を備えた6自由度アクティブ除振装置の試作を行なった.垂直方向の3自由度の運動に対して,4つのハイブリッド磁石によるモード制御を適用することによって,直動外乱に対する高剛性を実現できることを実験的に確認した.さらに,非線形補償を導入することによって,除振テーブルに大きな直動外乱が作用しても,高い剛性が維持されることを実証した.
著者
茨木 俊夫
出版者
埼玉大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

本研究は自閉症研究の世界的業績のひとつである、ノースカロライナ大学TEACCH(Teaching and Educating Autistic and Communication Handicapped Children and Adults)部のスタッフによって開発された『心理教育プロフィール』を、日本の自閉症や発達障害をもつ子どもの教育上の指針として利用できるように、「日本版」として標準化することを目的としている。研究期間は昭和61年度から昭和63年度にわたる3ケ年である。本研究代表者は、すでに『自閉児・発達障害児教育診断検査』の翻訳版、翻訳改訂版を作成し、検査用具も基本的セットを独自に開発してきたが、このたびの科学研究費補助金により、全国規模の資料の収集と分析を実施することが出来、昭和62年度には、標準化された『自閉児・発達障害児教育診断検査』(日本版)を完成し、出版することができた。さらに昭和63年度には、図版などを含む、標準検査用具も完成させることが出来た。最終年度の課題は、自閉症の鑑別診断に用いられている『自閉症評定尺度(CARS:Childhood Autism Rating Scale)』とPEPの病理尺度を比較し分析することであったが、相互作用の分析などを通じて、PEPの実施場面を利用してCARSの評定を行なう方法を開発することができた。今後の課題としては、次第に多くなっている青年期・成人期の自閉症者のための心理教育プロフィールを作成することがある。これについては、本研究によって作られた全国の協力ネットワークを生かし、新たなプロジェクトを作って、全国規模の養護学校・授産施設などの協力のもとに研究を進めていくつもりである。なお、本研究をすすめるにあたり、ノースカロライナ大学医学部のエリックショプラー教授をはじめとするTEACCH与スタッフが毎年来日し、貴重なディスカッションによってさまざまな刺激を与えていただいたことに、深甚の感謝を表する次第である。
著者
酒井 文雄 江頭 信二 小池 茂昭 水谷 忠良 竹内 喜佐雄 奥村 正文 長瀬 正義 矢野 環
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

(1)研究代表者酒井文雄は射影平面の巡回被覆の第1ベッチ数に関するザリスキーの定理を代数曲面の巡回被覆で被覆次数が素数べきで、分岐曲線が可約の場合に拡張した。また、奇数次の平面曲線で単純特異点のみを持つものの総ミルナ-数の評価を改良する結果を得た。(2)研究分担者奥村正文は複素射影空間に埋め込まれたCR次元(n-1)/2のCR-部分多様体のスカラー曲率について調べ、この部分多様体が奇数次元の球2個の直積のS商多様体であるための十分条件をスカラー曲率に関する不等式で与えた。(3)研究分担者竹内喜佐雄はモジュラー群SL_2(Z)の部分群Γで符号(o;e_1,e_2,e_3)を持つものをすべて分類し、各Γに対して、その標準生成系を具体的に行列の形で与えた。(4)研究分担者小池茂昭は制御集合が状態に依存する場合のBellman方程式の解の意性のための充分条件を示し、その条件が満たされない場合の反例を挙げた。また、退化した係数を持ったHamilton-Jacobi方程式の半連続粘性解の-意性と表現定理を示した。(5)研究分担者江頭信二はコンパクト多様体上のC^2級余次元1葉層の拡大度は典型的な増大度しか取らないこと、およびそれは葉のレベルと弾性葉の存在性によって分類されることを示した。
著者
藤野 毅
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

観測は、研究実施の利便性と自然度の高さを考慮して埼玉県所沢市と入間市の境にある柳瀬川上流で行った。川幅は5〜10m程度であり、平常時の流量は0.02〜0.1m^3/s程度で、丘陵を流下する勾配がなだらかな渓流である。周囲は、主にケヤキやサクラで覆われ、常時日影となるため付着藻類はほとんど見られない。堆積特性を把握するため、瀬、淵、蛇行がある270m区間を対象に、河床形状、川幅等の地形を詳細に調査したのち、落葉分布を作成した。落葉が終了した時期を見て、瀬の礫に引っかかるリター、淵に沈むリター、蛇行する区域の内側に流れの2次流によって集積するリター、遠心によって外側に堆積するリターなど、堆積特性を物理的観点で定義し、それぞれの堆積量を見積もった。さらに、堆積に影響するファクターとして、水深、流速、礫の数、礫間距離など、物理パラメータで整理した結果、水深がもっとも堆積量に影響を及ぼすことを明らかにした。次に、リターの分解の過程を、リターバッグを用いた実験で明らかにした。実験では、サクラとコナラを用いて、瀬、淵、岸などでの分解の速度を求めた。分解速度は淵よりも瀬の方で速く、この理由として、分解に大きく関与するベントスの役割を指摘した。また、実験上の注意点として、ある程度のメッシュサイズのリターバッグを用いると、ベントスの幼生が進入、リターバッグ内でサンプルを餌としながら成長、メッシュサイズより大きくなってリターバッグから出られなくなり、サンプルを食べつくすなど、これまで用いられてきたリターバッグ法の問題点も指摘した。
著者
阿部 茂 金子 裕良
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.「避難救出運転方式」とその輸送能力計算方式の開発エレベータを併用した場合の避難時間短縮効果を明らかにした。非火災時の全館全員避難の場合、ビルを縦に(ゾーン数+1)の区画に分け、最下区画の人は階段だけで避難し、残りの区画の人は各区画の最下階まで階段で下り、その階で玄関階との間を往復運転するエレベータに乗り避難する方式が、最適なことを示した。高層ビルほど短縮効果は大きく、16階ビルでは約1/3の15分程度で避難でき、避難用エレベータの有効性を確認できた。2.停電でも避難運転ができるエレベータの電源方式と運転方式火災時は停電の危険があり、ビルの非常電源では1台程度しかエレベータを運転できないため、停電時に全エレベータを運転できる電源方式が不可欠である。避難時は下方交通のため避難乗客の位置エネルギーを利用すれば、エレベータに小容量の回生電力蓄電装置を設置するだけで、停電時でも運転継続できる可能性がある。このための最適なエレベータ運転方式と電気二重層コンデンサを用いた省エネ率の高い電源方式を明らかにした。3.避難者行動ミクロモデルとそれを用いた避難シミュレーション手法避難時の階段歩行のイベントシミュレーション手法を開発した。エレベータのシミュレータと統合すれば、様々な状況における避難シミュレーションが可能となる。4.避難用エレベータの乗場における車いす利用者の画像認識避難時には身障者を特別に誘導する必要がある。エレベータ乗場の車いすの人を健常者と識別可能な画像認識手法を開発した。移動体の輪郭線と速度を求める性能の良いアルゴリズムで特許を出願した。
著者
飛田 和男
出版者
埼玉大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

歪みのある混合スピンダイヤモンド鎖ハイゼンベルグモデルにおいて次の研究を行った。1.一様な歪みの場合A)基底状態でフラストレーション誘起フェリ磁性相とハルデン相の存在を数値対角化で示した。B)フラストレーション誘起部分フェリ磁性状態では、密度行列繰り込み群により磁化プロファイルを調べ、量子化フェリ磁性相・部分フェリ磁性相の存在を確認した。C)歪みのない場合に得られる厳密解に基づき部分フェリ磁性の低エネルギー有効理論を構成した。2.交互歪みの場合A)並進対称性が自発的に破れたハルデン相の秩序パラメータを定義し、密度行列繰り込み群を用いて、これらの相と一様なハルデン相の間の相転移のユニバーサリティクラスを明らかにした。B)歪みが弱い場合について低エネルギーの有効理論を構成した。3.交替歪みの場合A)歪みのない場合と同様厳密に基底状態を構成できることを示した。B)歪みの強いとき、並進対称性のやぶれを無限回くりかえす相転移を経て一様ハルデン相に至ることを、共形場理論やクラスター展開を用いて示した。