著者
佐藤 丈
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

余剰次元として商空間の構造を持つ理論を考え、素粒子標準理論を超える理論の構築を試みた。より具体的には二つの方法を用いた。一つ目は、商空間次元降下の方法で、標準理論に直結しうる商空間とその理論での物質の同定を行った。二つ目は商空間として最も単純なS2上で模型の構築をいくつか行った。一つは大統一理論的な方法でゲージ群としてSO(12)を考え、標準理論が出うることを示した。もう一つは普遍高次元理論の枠内で、余剰次元をS2とする標準理論の拡張を行い、十分生きている模型であることを示した。
著者
李 潔 作間 逸雄
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

国際基準SNAによって定義されるGDP統計は作成国の既存統計に全面的に依存し、各国が異なる推計方法を確立しているのが現状である。本研究は日中両国のSNAの導入経緯や統計制度、既存統計の相違を整理し、GDP統計の作成方法を考察した。また、帰属家賃の推計方法や実際の統計値を考察し、持ち家率が8割以上の今日でも中国の推計方法は本質的に変更していないことを問題点として提起した。さらに中国実質GDP推計に主に使用されるシングルデフレーション法のバイアスの問題について独自の考察を行った。本研究は中国を含め、発展途上国及びMPS体系からSNA体系への移行国のGDP統計の解明に一助になることを期待したい。
著者
塚原 伸治
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

形態学的に性差がみられる神経核は性的二型核とよばれ脳機能の性差の構造基盤であると考えられている。マウスにおける性的二型核の性差構築には周生期の精巣から分泌されるアンドロゲンの作用が必要であることが知られているが、近年では、思春期以降の性腺から分泌される性ホルモンの働きも重要であることが指摘されている。本研究では、思春期以降に分泌される性ホルモンの性的二型核の性差構築における役割と作用機序を明らかにするため、雄優位な性的二型核であるSDN-POAとBNSTpおよび雌優位な性的二型核であるSDN-DHを対象とした組織学的解析を実施した。これまでの研究より、雄マウスのSDN-POAとBNSTpのニューロン数は思春期前の精巣除去により減少し、雌マウスのSDN-DHのニューロン数は思春期前の卵巣除去により減少することが分かった。また、これら性的二型核に対する思春期前の性腺除去の影響は性ホルモンの代償投与により回復することも分かった。本年度の研究では、性ホルモンが作用する時期を特定するため、思春期後に施した性腺除去の影響を検討した。その結果、雄マウスのSDN-POAとBNSTpにおけるニューロン数は思春期後の精巣除去により変化せず、雌マウスのSDN-DHにおけるニューロン数は思春期後の卵巣除去により変化しなかった。以上のことから、思春期の精巣から分泌されるアンドロゲンはSDN-POAとBNSTpの雄性化を促し、卵巣から分泌されるエストロゲンはSDN-DHの雌性化を促すことが明らかになった。
著者
小林 亜子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、フランス革命期に採択された公教育組織法が革命戦争による併合地や姉妹共和国にどのように施行されたかを明らかにしようとするものである。これらの問題については、刊行史料が存在しないためフランス本国においても未解明であったが、本研究では未刊行の重要な史料群を発見し、それらの分析から、革命後半期の総裁政府期に成立した公教育組織法が併合地にも施行され、併合地や姉妹共和国の教育状況が本国に詳細に報告されていたことを解明した。さらに、総裁政府期の共和国と革命戦争をめぐる近年の革命史の研究動向とも関わる新たな知見を導き出し、フランスの国際シンポジウムで報告し、日本でも国際研究集会を主催した。
著者
関口 順
出版者
埼玉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究課題の対象である『司馬法』の研究蓄積は従来無きに等しかったが、最近、田旭東氏による成果が中国で出ていることが分った。これは学位論文であるため、現在同氏に内容を照会中である。この論文を作製したのち田氏は『司馬法浅説』という簡単な概説書を著したが(1989年5月出版)、それはその学位論文の成果を反映しているようである。その書によって推測すれば、田氏の研究は書誌学的な考証を主としており、思想史的な研究視角による本課題とは取り組みの傾向を異にすると言える。研究代表者(関口)は思想史的研究の立場に立ちつつ、本年度は逸文の収集に努めた。張〓の『司馬法逸文』一巻;黄以周の『軍礼司馬法攷徴』二巻;〓〓の『司馬法逸文』一巻;銭煕祚の『司馬法逸文』一巻などを基とし、さらに若干の原資料を調査した。それらの逸文は、大体において零細なものであったので、これらの逸文を整理し、資料集を出版する事とした。その計画では、次のようになっている。タイトルは『司馬法資料集成』。内容は1.思想史的分析に基づいた書誌的解題。2.現行本『司馬法』の校勘、注釈と翻訳。3.逸文の網羅的集成と内容に即した整理。現行本は明らかに残欠の文章の集成であり、全体の構成を多少なりとも伺うには逸文を重視しなければならないだろう。逸文および現行本の内容を総合して考えると、『司馬法』の構成は、1.平時における王官(王者の官職)司馬の職務、その主な内容は軍制の整備や軍賦の管掌、2.戦時における王師(王者の軍隊)の軍礼・軍法ーーの二つが大きな柱となっていると思われる。いずれも王者の統治の観点から王官・王師を論じている。このうち、司馬の職務は『周礼』と類を同じくし、軍礼・軍法は、韓信が整備したとされる漢の軍法(沈家本:漢律〓遺巻二十一)の理念形態を開示するものである。
著者
明星 聖子 高畑 悠介 井出 新 松原 良輔 松田 隆美 中谷 崇 納富 信留 矢羽々 崇 伊藤 博明 Pekar Thomas 黒田 彰 近藤 成一 宗像 和重 杉浦 晋 武井 和人 北島 玲子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度の検討を受けて、今年度は昨年度のテーマに若干変更を加えた以下のAからEの5つのテーマについて、さらに今年度からは総合的なFのテーマも加えて研究を進めた。A.ドイツ文献学の成立の事情とその日本における受容および明治/大正期の文学研究の確立をめぐる検討、B.日本文学における現在の文献学的状況を探るケーススタディ、C.再評価の機運が高まっているイタリアの文献学者S.Timpanaroの代表著作の 読解と翻訳、D.英文学研究および教育における編集文献学的方法論の実践、E.独文学研究および教育における編集文献学的方法論の実践、F.人文学テクスト全般における「信頼性」および「正統性」をめぐる総合的な編集文献学的考察。テーマごとの班活動以外に、全体としての研究会も3回、2019年6月16日に慶應義塾大学で、7月31日に放送大学で、また2020年1月26日に慶應義塾大学で開催した。第1回での研究発表は、「編集文献学の可能性」(明星聖子)、第2回は、「古典文献学の可能性」(納富信留)、「注釈の編集文献学」(松田隆美)、第3回は、「南朝公卿補任の真贋判断をめぐって」(武井和人)、「偽書という虚構ー近代日本の小説3つをめぐって」(杉浦晋)。なお、こうした活動が実を結び、2019年9月に刊行された雑誌『書物学』(勉誠出版)で、特集「編集文献学への誘い」が組まれ、そこでプロジェクトメンバーの論考6本がまとめて掲載されたことは、特筆に値するだろう。
著者
中林 誠一郎
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

細胞性粘菌の飢餓集合をモデルにして、単細胞生物から多細胞生物への生物学的変化の熱力学的原因を解明した。二匹の粘菌細胞が接近するに伴ってNADH量が減少し、接触したときに最小値を示し、その後細胞の分離とともに上昇する事が判った。細胞性粘菌集団の総NADH 量を,飢餓による集合体形成前後で測定しても、集合体形成により総NADH量は減少した。これら2つの実験結果は、互いに調和的であり、多細胞化の初期過程は、多細胞化によるエネルギー代謝効率改善に支えられたと考える事ができる。
著者
若狭 雅信
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

磁気共鳴(磁場+マイクロ波)を用いた同位体濃縮を実現するためには,選択的スピン緩和と反応ダイナミクスの制御が必要不可欠である。本研究では,ミセル中での励起三重項ベンゾフェノンの反応などを取りあげ,生成物収量に対する磁場効果を調べた。生成物の収量に大きな(21%増加)磁場効果を観測した。そこで,共鳴パルスマイクロ波を照射して,選択的同位体濃縮に挑戦した。エレクトロスプレーイオン化飛行時間質量分析計(ESI-TOF-MS)を用いて,生成物中の同位体比測定を行なったところ,炭素-13の同位体濃縮が確認できた。しかし,観測された同位体濃縮は小さく,その原因として緩和機構が考えられた。
著者
永井 義美
出版者
埼玉大学
巻号頁・発行日
2009

主指導教員: 教養学部教授 籾山明, 副指導教員: 教養学部准教授 高久健二, 副指導教員: 教養学部教授 梶島邦江
著者
宇田川 元一 黒澤 壮史 佐々木 将人
出版者
埼玉大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究はナラティヴ・アプローチの視点を応用し、イノベーション・プロセスに対して新たな視座を提供し、その解明に寄与することにある。ナラティヴ・アプローチとは、語りに媒介されて現実が生成する過程を描き出す研究視座である。この知見は、医療や臨床心理の領域において展開されている。本研究を通じて、イノベーション・プロセスは、語りに媒介されていることが明らかになると同時に、媒介されることを通じて、次のプロセスがまた生成してくるというイノベーション・プロセスの連鎖的な過程が明らかになった。
著者
BOLT Timothy 田宮 菜奈子
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

A Discrete Choice Experiment (DCE) among the public, older people and caregivers in Japan will be used to measure end-of-life care service feature and health outcome priorities. This includes the difficult trade-offs between direct health outcomes, Quality of Life (QoL) factors and other goals.
著者
浅枝 隆 AMIRNIA SHAHRAM
出版者
埼玉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-11-07

昨年度までに、シャジクモによる有害金属を除去することを目的に研究を行ってきており、マンガンが存在することで、ヒ素の取り込みが増加されること等を得てきた。ところが、その際に、シャジクモ自体にも大きなストレスがかかっていることが考えられ、本年度は、植物体におけるストレスの評価手法の研究に着手した。植物体に掛かるストレスに関しては、これまで光合成蛍光を用いる方法が一般的に用いられているが、これはチラコイド膜のPSIIにおける光エネルギーの吸収量を評価するものであり、必ずしも、他の組織に掛かるストレス全体を評価しているわけではない。そのため、ここでは、ストレスが負荷された際に、細胞内の様々な場所に生成される活性酸素そのものを評価することを考えた。ストレス負荷下で生成される活性酸素の多くはスパーオキシドであり、これは抗酸化酵素の働きで比較的安定な過酸化水素に変化する。そのため、過酸化水素量からストレス強度を評価することを考え、様々なストレス下で実験を行い、植物中に含まれる過酸化水素量を測定、ストレスの強度との関係を求めた。一般性を求めるために、ここでは様々な沈水植物を用いた。その結果、光ストレス、流速ストレス、有害金属ストレス、貧酸素ストレス等、様々なストレスに対し、実用的な範囲であれば、ストレス強度に対し過酸化水素量は、同一の種であれば時期等にかかわらず、ほぼ一定の増加関数で表されることが示された。また、多くの複数のストレスにおいて、全体の過酸化水素濃度は、個々のストレス強度で得られる過酸化水素濃度の和で表されることが得られた。これは過酸化水素濃度で、それぞれのストレス強度を個別に評価できる可能性を示したものであり、非常に有効な指標になる可能性が示された。
著者
伏見 譲 鈴木 美穂 西垣 功一
出版者
埼玉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.進化分子工学において、ウイルス粒子は、遺伝子型と表現型が一つの結合体になっているので、表現型の評価が即遺伝子型の選択に結びつくため、クローニング操作なしに人為淘汰が行える。これを模擬する試験管無いプロセスとして、無細胞翻訳系でmRNAと新生タンパク分子が結合体となるような系(これを以下in vitroウイルスと呼ぶ)を開発しつつある。in vitroウイルスは、逆転写、PCR増幅、転写という、レトロウイルス様のライフサイクルで増殖する。mRNAと新生蛋白の結合法として、2つの方法を試みた。一つは、その蛋白に組み込まれたビオチン様ペプチドと、mRNAに付加されたアビジンとの結合による。もう一つは、mRNAをtRNAとみなすことができるように改変する方法である。このmRNAの3'末端CCAにシンテターゼを用いて、アミノ酸をチャージする事には成功した。2.進化分子工学は生命の起源のモデルと表裏一体をなす。われわれは、進化分子工学において、遺伝子型と表現型を対応づける戦略としてのウイルス型戦略が、細胞型戦略よりも進化速度の点で有利であることに着目した。RNAワールドから、蛋白質合成系が進化してくる機構として、in vitroウイルス様の生命体があったとするモデルを構築することに成功した。すなわち、RNAワールドに登場する最初のコード化された蛋白質はRNAレプリカーゼ(当然リボザイムである)の補因子に違いないが、その蛋白質補因子はそれがコードされているリボザイムRNAに結合していたとする。すると、RNA複製系と翻訳系が、速やかに安定に漸進的に共進化してくることが、コンピュータシミュレーションで明らかにされた。それは、ウイルス型メンバーを持つハイパーサイクルである。
著者
小池 裕子 西田 泰民 岡村 道雄 高杉 欣一 中野 益男
出版者
埼玉大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

〈目的〉貝塚からは古代人の食事に関する直接的な情報を内包する糞石、あるいは土器、石器付着物が出土している。これらの遺物から残存している脂肪酸を非破壊的に抽出し、その脂肪酸組成を基に動植物を同定して、先史時代人の全般的な食糧組成を直接復原しようとするのが本研究の目的である。〈研究結果〉 61年度は、糞石等の材料のほか、旧石器遺跡から出土する焼石および縄文時代以降の土器付着物を分析対象に加えた。1 現生動植物のスタンダード作成:今年度は栽培植物を含め約60点を追加し、また文献による検索を進め、古代人の利用した動植物をほぼモウラした。2 糞石資料の分析:60年度に行った東北地方のほか、縄文後晩期の田柄貝塚、同大木囲貝塚、縄文後期の古作等の貝塚出土資料を加え、合計58点を分析した。ステロール分析を行ない、糞特有のコプロスタノールを検出した。脂肪酸組成、ステロール組成から推定すると、陸棲哺乳類のほか、水産動物や植物など多様な食糧組成が含まれることがわかった。3 焼石資料の分析:60年度の多摩ニュータウンの他、野川中州北遺跡において系統的なサンプリングを行ない、合計20点分析した。4 土器資料の分析:60年度の曽利・寿能遺跡のほか、縄文時代草創期の壬遺跡,早期の鶴川遺跡、前期の諏訪台遺跡、中期の曽利遺跡、後期の宮久保遺跡,晩期の亀ケ岡遺跡,古墳時代の式根島吹之江遺跡,北海道オホーツク期の北大構内遺跡,近世の東大構内遺跡の合計180点を分析した。5 それらの結果を、飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸,高級脂肪酸/中級脂肪酸,コレステロール/植物ステロールの比を軸にした3次元座標上にプロットしてみると、それぞれの遺物の植物,陸上動物,水産動物の組成を知るのに有効であることがわかった。