著者
平田 雅之 佐藤 雅昭 依藤 史郎 加藤 天美 神谷 之康
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

(1)MEG、皮質脳波(ECoG)を用いた脳律動計測ECoGとMEGとで同一課題施行し、解析ソフトBESAを用いて時間周波数解析、coherence解析を行った。詳細な脳内処理過程が明らかになるとともに、言語領野に共通の律動帯域と特有の律動帯域があることが明らかなり、現在論文投稿準備中である。(2)脳磁図(MEG)での言語優位半球の評価、言語機能局在の評価単語黙読課題を用いた場合、アミタールテストとの比較で85%一致、電気刺激によるマッピング法との位置の差は6.3±7.1mmであり、非侵襲的検査法として優れた方法であると証明された。アミタールテスト、脳表電気刺激の結果と比較し、成果を論文に投稿した。(3)脳信号解読まず、言語機能解読の基礎となる運動機能についてもsupport vector machineを用いて運動内容解読を試みた。運動内容推定については3種の運動内容弁別が80-90%の正答率でリアルタイムに弁別できることが明らかとなり、英文誌Neuroimageに発表した。言語に関しても時の皮質脳波を計測し、support vector machineを用いた脳信号複号化により発語内容推定を行った。カテゴリー別語想起課題にたいするカテゴリー識別は有意差のある結果が得られなかった。ピ、ポ、ギ、ゴなど単純な発語課題の識別率は運動内容解読には及ばないものの、本方法で言語内容解読がリアルタイムに可能なことが明らかになった。今後さらに性能向上のために計測・解析方法に工夫が必要であると考えられた。
著者
小川 道雄 中口 和則 柴田 高 宮内 啓輔 NAKAGUCHI Kazunori
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

従来、膵分泌性トリプシン・インヒビター(PSTI)は膵臓にのみ存在し、膵管内におけるトリプシンの活性を阻害する役割を担っているとされてきた。われわれは血中PSTI測定のためのRIA系を確立し、血中PSTIが膵疾患以外にも外科手術後や重度外傷後に著明に上昇すること、その上昇が血中の急性相蛋白の変動と有意の正の相関をなすことを明らかにした。また悪性腫瘍患者でも進行例では血中PSTIが上昇していた。このような事実から血中PSTIは侵襲に対する生体の反応として血中に増加しており一種の急性相蛋白であると考えられる。PSTIは膵臓以外の各種臓器に存在していた。また各種悪性腫瘍組織にはPSTI陽性細胞が存在し、培養細胞系の免疫組織学的検索やノザン・ブロッティングの結果から、このPSTIは腫瘍細胞において産生されていることが証明された。PSTIの構造は上皮成長因子(EGF)のそれと類似していた。このことから急性相蛋白としてのPSTIの作用がEGF様の作用ではないかと考え、PSTIを線維芽細胞に作用させ、そのDNA合成に対する効果を検討した。その結果PSTIにはDNA合成促進作用のあることがわかった。ひきつづいて、培養細胞系にはPSTI受容体が存在すること、その受容体はEGF受容体とは異なることを明らかにした。血中PSTIは侵襲に反応して血中に増加する。そして血中PSTIの作用は組織の損傷に対して再生あるいは修復のための情報の伝達に関連していると考えられた。これらの結果から、悪性腫瘍細胞において産生されたPSTIにもこのような成長促進因子としてのPSTIと共通した作用があることが示唆された。
著者
中塚 和希
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

これまでの研究によりフラーレンC60を光応答性分子として触媒に組み込むことでアンモニアボランなどの水素キャリアからの脱水素反応に有効な触媒設計を試みてきた。また、フラーレンC60を用いた研究の知見を生かし、炭素材料に担持したCo(salen)を金属前駆体として、金属ナノ触媒の調製法を開発した。既報の方法でCo(salen)を調製し炭素担体に含浸後、熱処理を施すという簡便な方法で触媒活性点の制御を実現してきた。当該年度は、更なる研究の発展を求めて、有機金属化合物であるCo(salen)に代わり、Ni含有金属有機構造体(Ni-MOF)を前駆体として用いることで、ナノ構造制御された金属活性種を有する炭素触媒材料の開発を行った。既報のNi-MOFに適切な熱処理を施し、Ni-MOFを部分的に分解することで、多孔質炭素上に均一な粒子径のNi粒子が高分散に担持されることを見出した。また、本触媒が残存したMOF構造によりオレフィンの水素化反応に対して基質のサイズ選択性を発現することを見出した。得られた触媒の構造について、高輝度光科学研究センター(SPring-8)での放射光XAFS測定やTEM観察、XRD測定などの分析手法をうまく組み合わせることで解析し、その構造と触媒性能との関係性を明らかにしている。また、当該年度において計1報の論文投稿および国内外学会の5件の発表を行うなど、多くの研究成果を出している。これらの研究成果をフィードバックすることで、将来的に研究の更なる発展が期待される。
著者
伊集院 直邦 宮内 睦美
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

我々はこれまで科研費の補助のもとに、内毒素の歯週組織破壊に及ぼす影響をラットを用い実験病理学的に検索し種々の知見を得てきた。それらの知見の一つとして、内毒素は歯根膜線維芽細胞によるコラーゲン原線維の貧食作用の著しい亢進をきたす可能性を示唆する所見を得た。そこで、そのことをさらに組織化学及び組織計測的な検討を加え確認することを試みた。その結果、歯根膜線維芽細胞は生理学的状態においてもコラーゲン原線維の貧食能が高く、さらに、内毒素によりその作用が有意に亢進される事が明らかになり、辺縁性歯周炎における歯周靱帯の破壊に大いに関与することが示唆された。また、このことをラット臼歯歯根膜より線維芽細胞株を樹立し培養歯根膜線維芽細胞を用いin vitroの系でも証明することを試みた。その結果、顎骨より抜去したラット臼歯歯根より、4種類の歯根膜由来継代可能な培養細胞を得ることが出来これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をし、いずれも歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状であるアルカリホスファターゼ陽性を示す細胞を含み、免疫組織学的にビメンチン、ケラチン、オステオカルシンに陽性を示すと共に、アリザリンレッドS染色により石灰化能を有することが示された。しかしながら、これら細胞をコラーゲンゲル中で立体培養したところ、細胞内へのコラーゲン原線維の取り込み像を認めたものの本研究の遂行の為には不十分な所見しか得られなかった。コラーゲンゲルの濃度培養条件、観察方法を検討したがin vitroの系で内毒素が歯根膜線維芽細胞のコラーゲン原線維貧食能の亢進を来すことまで証明することは出来なかった。引続き、ラット尾部より調整した生のコラーゲンを用いる事や、培養液中にコラーゲン形成や石灰化等に重要な因子であるアスコルビン酸、β-グリセロリン酸、テキサメサソン等の添加も考慮しながらさらに検討する予定である。
著者
神谷 亘
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

重症急性呼吸器症候群の原因ウイルスであるSARSコロナウイルスnsp1タンパク質が、宿主のRNA分解と翻訳阻害をすることで宿主遺伝子の発現抑制を行っていることが知られている。このnsp1タンパク質による宿主遺伝子の発現調節機構は、他のウイルスでの報告がない、新しい調節機構であると考えられている。しかしながら、その具体的な機序は、いまだ不明である。nsp1タンパク質によるRNA分解に関しては、nsp1タンパク質単独では、RNAを分解しないとの知見を得ている、このことより、nsp1タンパク質によるRNA分解には、RNA分解に関わる宿主因子が関与していると考えられる。そこで、当該年度は、nsp1タンパク質と相互作用する宿主因子の検索を行い、その相互作用を明らかにするとともに、相互作用の意義を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、nsp1タンパク質と結合する宿主因子を同定するためにYeast-two hybrid法を試みた。しかしながら、酵母内においてnsp1タンパク質は非特異的にプロモーターを活性化させるために、酵母を用いた宿主因子の同定は困難であると分かった。今後、Tandem Affinity Purification法を用いて宿主因子の同定を行う予定である。
著者
古林 太郎
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本研究の目的は、生命の起源で想定されるような単純な自己複製系においても避けがたく発生してしまう寄生性分子(ウイルスのようなもの)が宿主との生存競争を通じて複製系に及ぼす進化的影響を、実験と理論の両面から追求することであった。理論では、区画化された単純な宿主・寄生体複製系の数理モデルの構築と解析を行った。広いパラメータ空間上での網羅的な計算機シミュレーションの結果、原始地球でも実現可能であろう単純な区画ダイナミクスのみによって複製系が安定に持続可能な条件を見出した。また、複製系が安定に持続可能となるためには区画が多数あること、区画の融合分裂頻度が大きいこと、栄養量が適度な範囲にあることなどが重要な要件であることが明らかになった。これらの知見を用いれば、宿主と寄生体の相互作用の程度を段階的に変化させた新しい進化実験の条件設定を行うことができると考えられる。この成果は、平成29年度内に論文化した。実験では、自己複製能力を持つ宿主RNAと寄生体RNAの長期的な実験進化を実施し、その進化ダイナミクスを次世代シーケンサと生化学的なアッセイにより解析した。配列解析の結果、宿主RNAは多系統に分岐進化を起こしていたこと、寄生体の側では新たな分子種が進化途中で発生していたことが判明した。生化学アッセイにより宿主と寄生体の関係がいかに発展したかを解析した結果、宿主RNA側での寄生体RNAの複製を防ぐ適応進化と、寄生体RNA側での進化後宿主への新たな寄生能力の適応進化が繰り返し起こっており、寄生体が宿主の継続進化と多様化に貢献していることを示唆していた。これらの結果は、単純な複製子集団がダーウィン進化を通じて自発的に宿主・寄生体の関係がダイナミックに変動する複雑な生態系へと発展したことを示しており、生命の初期進化について重要な知見が得られたと言える。この成果は、平成31年度に出版予定である。
著者
荒堀 仁美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ダウン症候群では成長障害を高頻度に合併するが、その機序は不明である。本研究ではダウン症候群児の疾患特異的ヒトiPS細胞を樹立し、軟骨細胞系へと分化誘導を行いその解析を行うことによって、成長障害の原因を明らかにする。出生前に診断されたダウン症新生児の臍帯血をもとにセンダイウイルスを感染させダウン症iPS細胞を作成、さらに軟骨細胞へと分化誘導することができた。一方で、トリソミー症候群の患者から得た皮膚線維芽細胞ではいずれも酸化ストレスの増大と細胞早期老化現象が認められ、染色体トリソミーがもたらすRNA/タンパク合成亢進により酸化ストレスが増大していることが引き金となっていることが示唆された。
著者
栗原 大輔
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究ではヒストンH3リン酸化の可視化により、染色体構造構築メカニズムの解明を目指したが、平成20年度は植物におけるヒストンH3 Thr3をリン酸化するHaspinのシロイヌナズナホモログの細胞分裂期における機能解析、またヒストンH3 Ser10およびSer28をリン酸化するAtAUR3について植物体における機能解析を行った。昨年度までにAtHaspinがvitroにおいてH3 Thr3およびThr11をリン酸化することを明らかにしていたが、タバコ培養細胞BY-2において、AtHaspinを過剰発現したところ、分裂期にH3 Thr3のリン酸化パターンがより広がることが明らかになった。このことはAtHaspinが少なくとも細胞内においてもH3 Thr3をリン酸化することを示唆している。またAtAUR3の機能を明らかにするために、RNAi法を用いてAtAUR3を発現抑制したシロイヌナズナ形質転換体を確立し解析したところ、野生型と比べて根の伸長速度が遅くなっていた。また根の細胞を顕微鏡観察したところ、細胞分布が野生型とは異なっていた。また、AtAUR3は胚においても発現が見られることが予想されたため、胚において染色体が可視化できるH2B-tdTomato形質転換体を構築し、Auroraキナーゼ阻害剤によってAtAUR3を機能阻害したところ、全ての染色体が正常に赤道面に整列する前に染色体が分離するという染色体分離異常が認められた。このように本研究では、遺伝情報を均等に分配するという,生命の根幹をなす過程である細胞分裂において重要な染色体動態に、ヒストンH3をリン酸化するAtAUR3およびAtHaspinが植物において重要な役割を担っていることを明らかにした。
著者
三浦 麻子
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
2002

14401乙第08504号
著者
畠中 利治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本課題の主題である、競合と協調の作用の両立は、進化計算における重要な概念であるExploitationとExplorationのバランスの実現にとって重要な役割を担うことは、直観的には理解されるが、それらが内在するシステムの挙動は複雑であり、さまざまなパターンを示すことが数理的には調べられている。本課題では、その数理科学的な知見から、進化計算の探索過程をモデル化することを狙っており、具体的には、関数最適化に望ましい挙動を示す数理モデルを与えるとともに、そのモデルに基づく進化計算のインスタンスの提案を行ってきた。その概念を利用した群知能モデルについても研究を行い、昨年度からは、必要とする機能から最適化法を構築するアプロ―チを検討している。今年度は、前年度に発表した一般化群知能モデルの拡張を行った。具体的には、エージェントのランダム要素として、個々のエージェントがランダムウォークする機能を付加し、その状況でのモデルの性質をブラックボックス関数最適化の基本ベンチマーク問題を用いて調査した。この結果は、計測自動制御学会のAnnual Conference で発表した。このモデルは、競合(反発)と協調(走化)をベースにしており、ブラックボックス関数最適化における探査と探索のバランスを実現するものとなっている。また、代表的な群知能モデルの粒子群最適化(Particle Swarm Optimization, PSO)とホタルのアルゴリズム(Firefly Algorithm, FA)の特性を併せ持つことで、探索性能を改善するHybrid Swarm の検討を進めている。両者の探索メカニズムに関する理解から、ハイブリッド型のモデルを提案し、複雑な景観をもつブラックボックス関数の最適化問題のベンチマーク問題における性能調査を行い、ACMが主催する進化計算に関する国際会議GECCO2018で発表した。
著者
加地 信行 湯浅 邦弘 塩出 雅 岸田 知子 中林 史朗 大島 晃 滝野 邦夫 吉永 慎二郎
出版者
大阪大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

平成7年度科学研究費補助総合研究A「類書の総合的研究」(研究代表者・加地信行)は、当初の計画通り、全体研究と個別研究の二方面から鋭意研究を推進し、各々次のような成果を挙げることができた。まず、個別研究の成果は、『研究成果報告書(冊子体)』として発表した。ここでは、まず、類書の基本的性格、概念、成立などの大枠について、加地信行「類書における分類の基本的意味」、杉山一也「類書の概念」、南昌宏「分類にみる中国の世界観」、湯浅邦弘「類書の成立」が考察した。また、これらの総論を踏まえ、代表的な個々の類書について、神林裕子「『玉海』の分類-陳仕華著『王伯厚及玉海藝文部之研究』を通じて-」、岸田知子「『玉篇』と類書 付『玉篇』引書一覧」、佐藤一好「『喩林』の『百喩経』引用について」、塩出雅「『白氏六帖』について-その書誌学的事柄-」、滝野邦雄「紀州藩班『羣書治要』の版本について」、竹田健二「『尉繚子』と類書-類書における引用について-」、中林史朗「『藝文類聚』讀書箚記-巻一から巻五までを中心にして-」、藤居岳人「『群書治要』における古典籍の引用傾向-『論語』を中心として-」、矢羽野隆男「『図書編』成立の思想的背景」、湯城吉信「類書蒙求類について」吉永慎二郎「『爾雅』における雅言と博物-類書的理念の濫觴-」が各々考察し、これまで断片的にしか取り上げられなかった類書について、世界で初めて、中国文化という巨視的な立場から総合的な研究の成果を挙げることができた。次に、全体研究として、日本国内および海外の主要大学・図書館等所蔵の類書調査を行ない、その目録の草稿を作成した。この草稿は、京都大学人文科学研究所、神宮文庫、名古屋市蓬佐文庫所蔵分を初めとして、今後、その詳細な目録を発表し、広く内外の研究に供する予定である。
著者
堀田 聰子
出版者
大阪大学
巻号頁・発行日
2008

22138
著者
蓮 行 松下 佳代 田口 真奈 平田 オリザ 斎藤 有吾 安藤 花恵 芝木 邦也 川島 裕子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

高等教育機関における教育への演劇的手法の活用に関して、特に看護分野での活用事例を分析し、プログラムの設計指針を構築することができた。さらに、事例分析の結果と作成した設計指針から、主に看護分野を対象としたロールプレイの手法を用いた教育プログラムである「模擬健康相談」を提案し、看護学部におけるモデル授業の実施と評価も行なった。その結果、プログラムの有用性の実感には課題が残ったものの、参加者が楽しんでプログラムに参加しており、また、看護師として患者に対応することの難しさを実感したことが示唆された。