著者
近藤 滋 渡邉 正勝
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

動物における自律的なパターン形成の基本原理がTuring波であるとの仮説を検証するため、ゼブラフィッシュの模様形成機構を分子レベルで解析した。その結果(1)ゼブラフィッシュの模様は、Turing波と一致する動的な性質を持つこと、(2)色素細胞間の相互作用がTuring波形成の条件を満たすこと、(3)Turing波形成にかかわる分子が、ギャップジャンクション、Notch-Delta, Kirチャンネルであることを突き止めた。目標の90%は達成されており、Turing波形成の完全解明も、目前に迫ったといえる。
著者
近藤 滋 芳賀 永 秋山 正和 松本 健郎 上野 直人 松野 健治 武田 洋幸 井上 康博 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

28年度の総括班では、既に、班としてのシステムの構築がほぼ終わっているために、既存の共有装置の維持管理が主なものになる。2機の3Dプリンターは、全班員の研究に有効に使用されている。28年度に、総括班費で購入した機器は、顕微鏡用の共焦点レーザーユニット(北海道大学:999万円)と、ズーム顕微鏡(基礎生物学研究所:299万円、原子間力顕微鏡の一部として購入)である。いずれも、他の資金で購入したパーツと組み合わせることで、購入金額の節約をしている。両装置とも、3D形態の計測に必須であり、共同利用が進んでいる。班会議は北大で、5月23,24日に行った。理論系と実験系の交流を目的とする夏、冬の合宿は、9月4,5,6日と、3月28、29日に、淡路島、琵琶湖で行った。いずれも、学生の旅費の補助を総括班費から支出している。これまで、合宿は主に比較的少人数で行ってきたが、2016年度は、公募班員からの希望が多かったために、冬の合宿では会場を変えた。非常に活発な議論が行われたが、参加者が多くなりすぎたため、プロジェクトごとの議論の時間が逆に短くなり、やや、食いたりない面もあった。この点の解消が、今後の課題として残された。北海道大学の秋山は、定期的に、数学と3Dソフトの講習会を行っており、そのための実費(交通費、宿泊費)の支援を行った。その他、HPの更新に約30万円を支出している。
著者
近藤 滋 後藤 寛貴
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

研究はカブトムシとツノゼミの2つを対象にして、原基折り畳みと成虫の3D形態との関係の解明を目指している。カブトムシ:28年度の主な進展は、角原基の折り畳み構造が、蛹角の完全な3Dを内包していることを証明できたことである。実験は3通りの方法で行った。まず、終齢幼虫の頭の殻を取り除き、腹に圧力を与えることで、原基が膨らみ、蛹角の形状になることを証明した。次に、その変形に細胞シートの伸展が関与していないことを証明するため、原基を切り出し、ホルマリンで固定したのちシリコンチューブに固定し、空気を送り込んで膨らますことで、正確な蛹角ができることを示した。最後に、連続切片から取得した原基の折り畳み形状を、計算機の中で膨らませることでも、同じ変形が起きた。この結果から、蛹角の完全な3D構造は、角原基の折り畳みにコードされていることが完全に証明された。(論文審査中)ツノゼミ:コスタリカに研究員を派遣し、最も注目しているヨツコブツノゼミの採集に成功している。また、羽化直前の幼虫も少数ながら確保しX線CTにより、折り畳み形状のデータを取得できた。まだ、解析は十分ではないが、多種多様の形状を見せるツノゼミのツノが、基本的には似た折り畳み様式を持っていることが示唆され、今後の研究の指針が得られた。技術的な進展:カブトムシ、ツノゼミともに、原基の3D形状のデータ取得方法の試行錯誤に多くの時間を費やしたが、その成果は十分にあり、今後の研究の加速が期待できる。
著者
近藤 滋 船山 典子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、「細胞の積み上げでなく、剛性の高い材料の組み立てで形ができる」という新しい概念を形態形成学の分野に確立することを目的とする。カワカイメンと魚のヒレ骨形成は、それを示唆する最初の、そして極めて典型的な例である。いずれの実験系でも、それぞれの役割を果たす細胞が、どのように建築資材(骨片・AC)と相互作用するのか、を明らかにすることが目的である。棒状構造の動態を記録できる3Dイメージングの装置と、細胞との物理的な相互作用を計算するシミュレータにより、細胞による体の「建築」原理を解明したい。
著者
近藤 滋 武田 洋幸 上野 直人 松野 健治 松本 健郎 芳賀 永 井上 康博 秋山 正和 大澤 志津江
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-11-06

主な活動は以下の4点である。1:7月10,11日にアメリカ合衆国カリフォルニア大学アーバイン校と合同で、3D形態形成に関するシンポジウムを開催し、同時に、今後の技術協力体制の拡大に関して話し合いを行った。アメリカ側の主催者であるKen Cho博士は分子発生学の世界的な権威であり、今後も、交流を続けることを確認した。2018年の本研究班の班会議にKen cho博士を招き特別講演をお願いすることが決まっている。また、上野研究室との共同研究も現在進行中である。2:河西通博士をHarvard Medical School のSean Megason研究室へ派遣し、ゼブラフィッシュ胚における組織の3次元構造の発生機構の研究を共同研究で行っている。これは前年度からの継続である。昨年度より、細胞レベルでの挙動を定量的に解析しており、特に、In toto imagingなどの観測技術を武田研究室に移植している。河西通博士の派遣は、2018年度で終了する予定。3:近藤班の3名が、前年に引き続き、コスタリカでツノゼミサンプルの採取を行った。今年度は、プロジェクトの目的がはっきりしており、特にヨツコブツノゼミの幼虫、ヨコツノツノゼミの幼虫、の2種に絞り、採集を行った。結果として、それぞれ70匹、200匹のサンプル採集に成功し、エタノール固定ののち、コスタリカ大学ポールハンソン教授の仲介で、日本に送付していただいている。今後の近藤班の研究は、このサンプルの解析が中心となる。4:近藤研究室の学生、松田佳祐を3D形態の計算で世界的に有名なプルシェミック研究室に約2か月滞在させ、原基の折り畳みソフトの高速化技術を学び、昨年作った展開ソフトを改良した。
著者
天野 敦雄 秋山 茂久 森崎 市治郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

Porphyromonas gingivalis線毛遺伝子(fimA)は核酸配列の違いにより5つの型に分類される.Polymerase chian reaction(PCR)法を用いたプラーク細菌叢の分析により,歯周病患者から分離されるP. gingivalis株と,健康な歯周組織を有する被験者からのP. gingivalis株の線毛遺伝子(fimA)型の相違を検索した.30歳以上の健康な歯周組織を有する被験者380名と歯周病患者139名からプラークと唾液を採取し,P. gingivalisの検出とfimA型の決定を行った.87.1%の歯周病患者と,36.8%の健康被験者からP. gingivalisが検出され,そのP. gingivalisのfimA型は,健康被験者では80%近くは1型fimA株であり,逆に歯周病患者では2型と4型fimA株が優性であった.特に,2型fimA株は歯周病との相関が,オッズ比で44と計算され,これまで報告されている中で最も強い歯周病のリスクファクターであることが示された.また,2型fimA株の分布は歯周ポケット深さと強い相関性を示し,8mm以上の深いポケットから検出されるP. gingivalisは90%以上が2型株であった.歯周炎に高い感受性を示す遺伝的素因を有し,早期に重篤な歯周疾患が併発するダウン症候群成人患者と,プラークコントロールが著しく不良な精神発達遅滞成人においても同様の検討を加えたところ,歯周病の重篤度とP. gingivalisの2型がfimA保有株との強い関連性が認められ,どのような因子をもつ宿主においても2型fimA保有P. gingivalisの歯周炎への密接な関与が示された.上記5つの型の線毛に対応するリコンビナントタンパク(rFimA)を新たに作製し,ヒト細胞への付着・侵入能を比較した.上皮細胞へのrFimAの結合実験では,2型rFimAが他のrFimAと比較して3〜4倍量の付着を示し,さらに細胞内への侵入も群を抜いて顕著であった.一方,繊維芽細胞への結合では型別による有意な差は認められなかった.rFimAの細胞への付着・侵入は,抗線毛抗体,抗α5β1インテグリン抗体により顕著に阻害され,同インテグリン分子が線毛を介したP. gingivalisのヒト細胞への付着・侵入に関わっていることが示唆された.さらに,各線毛型の代表菌株を用いた付着実験を行った結果,2型線毛遺伝子を保有する株は,30%と高い上皮細胞への侵入率を示したが,3,4,5型線毛株の侵入率は2-5%であった.これらの結果から2型線毛遺伝子を保有するP. gingivalisは口腔内上皮細胞への高い付着・侵入能を有し,上皮によるinnnate immunityを踏破し歯周組織への定着を果たすと考えられ,同遺伝子型のP. gingivalisが歯周病の発症に強く関与していることが示唆された.
著者
榊原 佳織
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、ミトコンドリアを選択的に処理するマイトファジーの分子機構解明を目指した。酵母を用いた遺伝学的手法によって、マイトファジー制御に関与する新規分子として、リン脂質PC合成に関与するリン脂質メチル基転移酵素(Opi3)を見いだした。マイトファジーが誘導されると、ミトコンドリアを処理する過程で隔離膜が形成されるが、その膜の形成にはリン脂質PEと結合するAtg8が必要である。我々はOpi3とAtg8との関係を調べ、リン脂質代謝が関与するマイトファジー制御機構の解明を試みた。これまで我々が行った解析では、opi3欠損細胞ではマイトファジー効率が極端に低下し、Atg8の過剰な蓄積を認めていた。そこで、opi3欠損細胞内におけるAtg8を精製し、質量分析よりAtg8に結合するリン脂質を同定した。その結果、opi3欠損細胞ではPEではなく、PC合成過程に産生される中間産物PMEがAtg8に結合していることを見いだした。次に、in vitro解析より、Atg8はPEと同様にPMEとも結合することが確認できた。通常、Atg8-PEはシステインプロテアーゼであるAtg4で切断され、Atg8がリサイクルされることが膜の形成に重要であることが知られているが、我々の解析によってAtg8-PMEはAtg4 による切断効率が極端に低下することが分かった。また、opi3欠損細胞内におけるAtg8の局在を観察したところ、マイトファジー誘導後に液胞に運ばれるべきAtg8が、液胞外に集積していることが認められた。以上の結果から、リン脂質メチル基転移酵素であるopi3の欠損によって、Atg8はPMEと結合することが分かった。PMEと結合したAtg8はAtg4による切断を受けにくくなり、リサイクルされないAtg8は蓄積し、隔離膜形成が効率よく行われず、マイトファジー効率が極端に低下したと考えられる。
著者
細田 耕 浅田 稔
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では,筋肉によって駆動される骨とそれを覆う柔らかい皮膚,そして皮膚に埋め込まれた多種の受容器を持つヒトの手に酷似した構造を持つバイオニックハンドを開発した.このハンドを使った実験によって,ハンドの優れたセンサ特性や柔軟性を利用した観測の安定性が示され,また人工筋によって実現されるやわらかい動作によって経験を通した適応的なマニピュレーションが学習できることが示された.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(1)人工筋によって駆動される筋骨格ロボットアームの試作身体像を学習するロボットシステムに使用する,人工筋によって駆動される筋骨格ロボットアームを,これまで積み重ねてきた要素技術を統合して完成した.人間との筋構造がより似通っているため,人間の表面筋電位の情報をそのまま利用して,ロボットを動かすことにより人間の動作を簡単に模倣することができる.また,筋骨格構造が人間のそれと似通っているために,人間に与えられたタスクを容易に実現できることが期待される.試作したシステムの概要と,それを用いた初期的な実験結果を,2016 International Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science (MHS 2016)などで報告した.(2)使用するネットワークに関する検討連携研究者,津田一郎教授(北海道大学)とともに,使用するネットワークについての検討を行った.その結果を踏まえ,連想記憶の能力を有するμモデルを用いたネットワークについて,簡単なシミュレーションを行った.また,津田教授の提案する自己組織化第二原理について検討し,身体像の学習への適応可能性について検討している.(3)筋骨格構造を持つロボットについての著作筋骨格構造を持つヒューマノイドロボットについて,社会への情報公開をするために,著作「柔らかヒューマノイド」を著した.著作内では,人間の筋骨格と同構造を持つロボットが持つ研究的優位性と,その意味,柔軟性を持つ筋骨格を利用したロボットの性能向上などについて論じている.
著者
細田 耕 池本 周平
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

空気圧人工筋によって駆動されるヒューマノイドによって,局所的反射の機能を解明するために,人工筋の状態を計測する人工筋紡錘を開発した.人工筋紡錘は,筋の状態を計測する局所的な受容器と,その信号から生体の細胞の応答をエミュレートし,出力を計算するための局所的な計算機からなる.この人工筋紡錘によって,実際のロボットに局所的なフィードバックを実現できることを示し,たとえば,跳躍の際に,このような伸張反射の側抑制が,運動の安定性に寄与することを実験的に示した.
著者
細田 耕 浅田 稔 高橋 泰岳
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,多数の未分化なモダリティの受容器を持つロボット指を開発し,把持,操りなどの技能を発達的に獲得する方法を検証することである.得られた主な成果を以下に示す.1.多数の受容器をランダムに内蔵した柔らかい指の作成シリコンゴムの内部にひずみゲージとフッ化ポリビニリデンフィルムを検出素子としてランダムに埋め込んだ指先センサを構成した.この指先センサをロボットハンドに搭載し,ハンドシステムを構成した.2.試作したセンサの性能評価試作したセンサの性能を,さまざまな対象をこすった際の弁別能力によって評価した.その結果,押し付け,こすることにより数種類のテクスチャを弁別できることがわかった.3.視覚・すべり覚連合学習法の提案視覚によってすべりを観測する初期状態から,経験を通してすべりに関する情報を獲得するニューラルネットワークを構成し,視触覚統合によってロボットを動作させる学習則を提案した.この学習則を用いると,学習初期にはすべりを視覚で捉えているのに対し,学習が進むことによって,視覚・すべり覚による冗長かつ頑健な表現を獲得することができた.4.はめあい作業の学習実験対象物を持ち,クリアランスの少ない穴にはめ込むはめあい作業を対象として,学習初期には視覚に頼って作業を実現し,その作業を通してすべり感覚を学習,作業後半では,視覚を用いなくてもすべり感覚のみで作業の遂行確率を上げられることを実験的に示した.5.持ち上げ動作の学習実験持ち上げ動作を学習することによって提案するネットワークの有効性を検証した.その結果,視覚のみを用いるよりもすべり覚を組み合わせたほうが,すべりの発生を迅速に検出することができ,すべりを防ぐ動作をさせることができることを確認した.また,持ち上げる対象の質量を変化させた場合にも,すべり検出によって把持を継続できることができた.
著者
細田 耕 古川 英光 吉田 一也 池本 周平
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では,イオン液体・イオンゲルを媒体としたネットワーク構造を持つ生物模倣ソフトセンサを開発し,多感覚モダリティ間の学習を行うことで,人間と同等の適応性を持つロボットハンドの実現を目的とする.イオン液体・イオンゲルを用いたネットワークは,近年の3次元プリンタ技術を駆使することで実現可能であり,進展に強く壊れにくく,回路が破損した際も,ネットワークに圧力をかけることで自律的に再構成し,治癒する.このような生物型ネットワークセンサを開発し,構造がもたらす多感覚モダリティを学習する方法を提案,人間と同等の適応性を持つロボットハンドを実現する.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

(1)人間と相同の筋骨格構造を持つヒューマノイド,実験装置の整備空気圧人工筋を用いて,人間と同じような筋骨格構造を持つ上半身のヒューマノイドロボットを開発した.ロボットは,人間のような肩甲骨,肩関節,上腕構造などを持ち,人間の筋と同じような位置に,空気圧駆動人工筋を装備している.各人工筋には,張力センサと空気圧センサが装備されており,これらから各筋の長さを求めることができる.各筋は空気圧弁から送られる空気によって駆動され,人工筋が持つ柔らかさにより,全体的に柔らかい構造を持っている.各筋の空気圧は,個別に空気圧制御弁によって制御することができる.ROSを用いたシステムによって,これらを制御するコントローラを製作した.ROSを用いているため,たとえばカメラなどほかのセンサを使いすることが容易になっている.(2)学習に基づく運動制御法の開発操作の不変項として身体を見つけ出すためには,与えられたタスクに対し,その操作を実現する方法を学習する必要がある.人間の場合にも,操作を学習することを通して,フォワードモデルを学習し,それによって身体の表現を獲得していると考えられる.筋骨格ロボットは,非常に非線形性が強く,とても複雑な機構を持つ.そのため,力学的なモデルを形式的に作ることは難しい.これまで,このようなロボットを制御するために,制御入力のパターンを設計者が試行錯誤することによって作り出していた.本年度は,このような問題を解決し,ロボットが自身の順動力学特性を学習し,それを利用することによって,ロボットを制御する手法を開発した.
著者
細田 耕 池本 周平
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

柔軟な皮膚を持ち,ヒトと類似した構造を持つロボットハンドを開発し,ひずみ振動を連関学習することにより,滑りを未然に防ぐような把握制御を実現した.ヒータを備えたハンドシステムを開発し,ひずみセンサと温度センサによって,さまざまな対象物を識別できることを実験により示した.センサの信号強度がノイズ強度に比較して小さいような環境で安定なセンシングを実現するための,確率共鳴現象を基にしたひずみ測定の方法を提案した.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成14年度は,昨年度整備した実験装置により実験を行い,提案手法の有効性を確認した,また,センサに自由度がある場合についても検討を行い,実験を進め,その有効性を調べた.実験装置の整備提案する手法を実験的に示すための実験装置の整備を行い,自由度発見機構,および自由度の凍結,解放のためのプログラムを作成した.製作した実験装置は,7自由度のロボットアームに視覚センサを備えたものである.実験による検証視覚センサに与えられた作業に必要な自由度を自律的に発見することができることを製作した実験システムにより検証した.多数のセンサを備えたロボットの作成ロボットの持つアクチュエータの自由度だけではなく,センサが複数つくことによるセンサの自由度をどのようにうまく利用できるかについても,モータの場合と同様に考察するために,多数のセンサを備えたロボットを作成し,基礎的な実験を行うことによって,多数のセンサがある場合についての,その自由度間の拘束を自律的に発見できる枠組みを示した.
著者
細田 耕 木村 浩 辻田 勝吉 井上 康介 田熊 隆史
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

生物のさまざまな適応的行動の中から特にロコモーションに注目し,反射やCPGなどによってもたらされるリズミックな制御系と,振る舞い全体を修飾する調整制御系の相互作用によって適応性の実現を試みた.これらの実現には生物のような筋骨格系が大きな役割を果たしているとの仮説のもとに,二足,四足,ヘビ型とさまざまなロコモーションについて筋骨格からなる新しいロボットを多数試作し,リズミック制御系と調整制御系の役割を実験的に検証した.
著者
細田 耕 鈴木 昭二 浅田 稔
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究では、視覚情報に基づいて生成される脚式移動ロボットの行動に基づく環境表現手法を提案し,実機によってそれを検証することを目的とする.具体的には視覚誘導により基本的な行動を生成する段階と,それを用いて環境表現を構築する段階に分かれる.使用する脚式移動ロボットに,まず「転ばない」,「脚が接地したまま揺れ動く」,「遊脚を利用して移動する」などの基本サーボ系を埋め込む.これを利用して,断続的に提示される視覚目標に対し,これに追従するよう行動し,この間に,環境中の適当な視覚情報を獲得,これとロボットの行動の相関をとることにより,環境表現を獲得する.さらにこの環境表現に基づき行動し,環境表現の更新及び修正を繰り返す.以下のような項目について,理論の整備,及び実験による検証を行った.(a)脚式ロボットにカメラを装着し,視覚・運動系を構築した.(b)環境に対する先験的な知識がない場合にも,「脚が接地したまま揺れ動く」ために,視覚目標に追従するための制御系と,脚間距離を保つための制御系を組み合わせたサーボ系を開発した.(c)ZMPを観測し,バランスを崩しそうになると,それを回復するための方策を検討し,遊脚を決定するアルゴリズムを開発した.(d)「遊脚を利用して移動する」ためのサーボ系を開発した.(e)以上の方法を実機を用いて,その有効性を検証した.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

1.提案する適応型視覚サーボ系の安定性に関する考察をし,その証明をした.2.提案するビジュアルサーボ系の有効性を検証する実験を行った.産業用ロボットアーム(川崎重工業,Js-5)とカメラ(エルモ,UN401)を用いてロボット・カメラシステムを構成し.制御装置としてVMEラックにVxWorksのシステムを構成,高速相関演算装置(トラッキングビジョン,富士通)を用いて,画像特徴量の追跡を行った.3.トラッキングビジョンを用いるための,特徴量の選択について考察し,障害物による隠蔽や,画像ノイズの影響に頑健な方法を提案した.4.提案するビジュアルサーボ系を用いて,未知環境内で障害物を回避する目標値の生成法を考案した.(1)環境やロボットアーム自身の運動学的構成やパラメータを用いず,環境の3次元情報をカメラシステムから再構成することなく,目標値を生成するために,2つのカメラの画像間に存在するエピポーラ拘束を推定した.(2)推定されたエポピ-ラ拘束を用いて,画像内で障害物が背景から分離できるという制限のもとで,ロボットアーム先端の画像内での軌跡を生成する手法を提案した.5.提案した目標値の生成方法を適応型視覚サーボ系に適用することによって,ロボットシステムと環境に関する知識がほとんどない場合にも,障害物回避軌道を生成することができ,また,実際に障害物に回避できることを構成した実験システムにより検証した.
著者
細田 耕
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

昨年度試作した空気圧二足歩行ロボットを用い,床面の変化に伴う行動の変化についての検討,股関節の剛性変化による行動変化の検討を行った.さらに空気圧駆動の肩関節ひじ関節などの試作を行い,弾道学的運動のための制御則を考案した.(1)試作した二足歩行ロボットによる歩行の確認試作したロボットによって,弾道学的な歩行が実現できることを確認し,さらにさまざまな床面でロバストに歩行可能であることを実験的に確認した.(2)床面の変化に伴う行動の変化の観測床面の変化に伴い,二足歩行の歩行周期が変化することがわかったので,床面変化を歩行周期から推定する方法について提案し,床面変化に対応できる制御則を考案した.(3)股関節の剛性変化に伴う行動変化の検討股関節の空気圧を調整することにより関節剛性を変化可能であることを示し,剛性変化によって歩行行動がどのように変化するか,特に歩行周期がどのように変化するかについての調査を行った.この知見は,人間の二足歩行において股関節がどのような寄与をしているかについての重要な知見になると考えられる.(4)空気圧駆動の肩関節・ひじ関節の試作と弾道学的制御則の検討二足歩行ロボットの作成に関する知見を踏まえ,2自由度肩関節および1自由度のひじ関節を試作した.また,肩関節のみのロボットについて,運動開始時と終了時のみに空気圧弁の操作を行い,それ以外ではロボットの動特性に従って弾道学的な運動をする制御則を提案し,この制御則によって終点まわりに大きなオーバーシュートを発生することなく,短時間でスムーズな運動が実現できることを示した.
著者
降籏 大介 松尾 宇泰
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

離散関数解析,変分理論の構成についてわれわれは研究を行い、微積分作用素間関係の離散的対応と差分作用素のなす空間における差分変換行列の概念を提唱、数学的評価を行うとともに、これらの結果を用いて一定の微積分不等式の離散版を統一的に証明するとともに、それらを成立させる数学的条件などについて研究を進めた.証明技法に関する議論により数学的制約の理解を深め、本議論がより広い関数空間で成り立つ強い示唆を得た.また、変分理論で用いる主要な概念の離散定義を拡張する研究も推進した.これにより、グリーン定理などの基本関係式の離散版に基づき離散変分理論概念を拡張し、差分法のさらなる数学的基盤を定義した