著者
酒井 保蔵
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

磁気分離による放射性セシウム汚染汚泥の除染技術を検討した。原発事故による放射性セシウムは最終的に土壌中の常磁性バーミュキュライトに保持され、雨水により下水中に流入し、汚泥に捕捉される。最大磁束密度1Tのマグネットバーを用いた磁気カラムに汚染汚泥を通すことで、カラムに保持される少量の放射性セシウム濃縮汚泥と大部分の除染汚泥に分離できた。実汚泥では0.37Bq/Lから5.4Bq/Lまで濃縮され1/15まで減容することができた。
著者
小宮 秀明 森 豊 黒川 修行
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで内臓脂肪面積(VFA)と肥満関連遺伝子との関連性についての報告はない.今回は肥満関連遺伝子としてB3AR、B2ARやUCP1を用い、VFAの蓄積に及ぼす肥満関連遺伝子の影響について検討した.被験者は男性81名、女性186名である.測定項目はVFA、腹囲、血糖、血清脂質、血圧である.アンケートは生活習慣、食習慣及び運動習慣である.3遺伝子の多型別にVFAを比較した結果、有意差は認められなかった.また、年齢、運動習慣、歩行量を調整した分析においても多型間に有意差は見られなかった.一方、男性においては運動習慣との間に有意差が確認され、運動の実施がVFAの減少に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
高山 慶子
出版者
宇都宮大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、譜代大名である宇都宮藩戸田家と江戸の名主である馬込家が、幕末維新期という激動の時代をいかに生きたのかを、金銭貸借関係をはじめとする両家の社会的・経済的関係に着目して明らかにしたものである。研究成果は以下の通りである。(1)戸田家と馬込家は、藩としての金銭貸借関係の解消後もつながりを維持した。(2)馬込家は現在の栃木県で養蚕製糸業などさまざまな新規事業に着手した。(3)戸田家のもう一人の江戸の金主である豪商川村家の特徴には、馬込家との共通点と相違点がみられた。(4)大名家と特殊な関係を形成した馬込家は、特有の歴史的背景や家の特徴を有した。
著者
飯郷 雅之 宮本 教生
出版者
宇都宮大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

深海は極限環境であり,地球上に残されたフロンティアのひとつである.深海生物の生理や行動が日周リズムを示すかどうかは不明である.そこで,本研究では,深海魚における体内時計の存在とその特性を明らかにすることを目的に研究を進めた.次世代シーケンサーを用いたmRNA-Seqにより網膜,脳の光受容体および時計遺伝子群の網羅的同定を試みた.その結果,コンゴウアナゴでは,2種のロドプシンと非視覚オプシンが網膜に発現することが明らかになった.色覚に関与する錐体オプシンの発現は確認できなかった.Clock,Npas2,Bmal1,Per1,Cry1,Cry2などの時計遺伝子群の部分塩基配列も同定された.
著者
小池 清治
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学国際学部研究論集 (ISSN:13420364)
巻号頁・発行日
no.19, pp.147-153, 2005-03

第1期ナショナリズム 8世紀初頭、国体改革と『古事記』の漢語和語混交体の創造。第2期ナショナリズム 10世紀初頭、国風文化勃興と『古今集』「仮名序」等、和文の創造。第3期ナショナリズム 12世紀末期、律令制度から封建制度へ。漢字カタカナ交り文の発達。第4期ナショナリズム 13世紀後半「元寇」と漢字ひらがな交じ文の発達。第5期ナショナリズム 16世紀末から17世紀初頭、鎖国。写本の筆記体から版本の印刷体へ。第6期ナショナリズム 19世紀後半、「明治維新」と言文一致体の創造。第7期ナショナリズム 1945年終戦、「新漢字・新仮名遣い」昭和言文一致体の開始。このように、日本語の歴史において、ナショナリズムと文体とは不思議な相関性を示す。本稿では、第1期ナショナリズムと文体の関係について述べる。『古事記(こじき)』は国体を誇示するものとして企図された、中国人に示すための歴史書であった。したがって、本文は漢文(中国語)で書かれればよかった。しかるに太安万侶(おおのやすまろ)は勘違いをし、日本人を想定読者としてしまい、漢文(中国語)の中に日本語をはめ込む漢語和語混交体、結果的に漢字だけを用いた「漢字仮名交じり文」を創造してしまった。
著者
奥田 誠一
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

キュウリモザイクウイルス(CMV)感染タバコ葉から全RNAを抽出し,CMVのゲノムRNAあるいはサテライトRNAの配列を基にしてプライマーを作製し,ヘテロな分子が互いに結合していると想定してRT-PCRで増幅してクローニングを行い,塩基配列を決定した。すると,CMVに存在するゲノムRNA1〜3どうしがランダムに直鎖状になったと考えられるRNA分子が容易に検出された。しかし検出されたRNAは(+)鎖どうし,あるいは(-)鎖どうしの結合のみで,(+)(-)という結合は認められなかった。このような結合部分の塩基配列は3'末端側が欠損している場合が多く,一部に挿入も認められた。しかし純化試料からは結合したRNA分子は検出されなかった。さらにサテライトRNAを持つCMVの感染葉からは,ゲノムRNAどうしだけでなく,サテライトRNAとCMVゲノムRNAが結合した分子も検出された。同様な実験をキュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)の感染葉についても行ったところ,やはり(+)鎖どうしや(-)鎖どうしが直鎖状に結合したRNA分子が検出され,RNAウイルスが持つRNA依存RNAポリメラーゼによるテンプレートスイッチングの結果と考えられた。とくにサテライトRNAとCMVゲノムRNAの結合は,ゲノムRNAの増殖阻害を引き起こしていると考えられた。また研究の途中で,容易にウイルスRNAをPCRで検出できる簡易直接チューブRT-PCR法の開発にも成功した。さらに,結合を確認するために,感染性全長cDNAクローンも完成させた。
著者
丸山 剛史 白石 崇人 内田 徹 船寄 俊雄 笠間 賢二 釜田 史 山本 朗登 大谷 奨 井上 惠美子 亀澤 朋恵
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、第二次大戦前日本の小学校・国民学校教員(以下、初等教員)検定制度の府県比較と中央の初等教員検定関係法令制定・改正過程に関する総合的研究である。府県比較に関しては、北海道、鳥取県、長野県、埼玉県、宮城県、山口県の道県を取り上げた。中央法令制定・改正過程の検討には『公文録』・『公文類聚』等の法令起草・成文関係史料等を用いる。本年度は学制発布から小学校教員検定等ニ関スル規則施行下の時期(1872-1900年)に限定し、検討を行った。検討の結果、次のことが明らかになった。1)府県比較に関して。北海道に関しては、資料調査により北海道道立文書館には初等教員検定関係の史料はほとんど残されていないことが判明したが、北海道教育会の機関誌に初等教員検定制度を活用した教員養成講習会に関する記事が掲載されているほか、合否判定基準等を記した検定内規も掲載されていることがわかった。検定関係規則は「小学校教員検定等ニ関スル細則」、「小学校教員検定細則」等の名称により北海道庁令で規定されていたことも判明した。長野県に関しては、資料調査により長野県立歴史館に『長野県報』、検定関係文書が所蔵されており、特に検定関係文書はこれまで非公開文書が多かったが、問い合わせにより非公開文書のほぼすべてが公開されることになった。また、検定関係規則は長野県令により「小学校教員検定等ニ関スル細則」、「小学校教員検定及免許状ニ関スル細則」、「小学校令及小学校令施行規則実施ニ関スル規程」等の名称により規定されていたことがわかった(他県に関しては文字数の制限により省略)。2)中央法令制定・改正過程の検討に関しては、国立公文書館には画期的な史料は見つけ出すことはできなかったが、府県教育会機関誌等に「小学校教員検定ニ関スル規則」制定過程に言及した記事があることがわかった。