著者
中村 祐司
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

新聞報道等のメディア情報や現地調査をもとに、2008年北京オリンピック大会を対象に、競技場の建設や交通基盤の確立、ボランタリー活動の浸透、五輪スポンサー企業の活動、政府広報、諸外国との調整、治安の確保など、開催に至るまでの中国内外における関係組織間の相互作用の動態を、ガバナンス(統治ないしは協治)の視点から把握すると同時に評価類型からの分析を行い、国内外における中国の協治の可能性について論じた。
著者
小笠原 正幸
出版者
宇都宮大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

リンゴでは,伐採跡地に植えた苗木の生育は劣り,樹冠の拡大が悪いため思うように園地を充実できないことが多い.本研究では,改植障害を回避し樹勢をコンパクトに生育させ,省力的で高品質な果実生産のできる新たな栽培技術の可能性を検討した.供試品種は'ふじ'とし,伐根後定植5年目の地植区,伐根後植穴に遮根シートを埋設した定植5年目の遮根区,伐採後伐根はせず株間の中間に植穴を掘り,そこに不織布ポットを埋設した定植4年目の不織布区を設けた.調査方法は,生育特性,生育中の果実品質,収穫果の果実品質,収量,剪定時間および剪定枝重を調査した.生育特性についてみると満開時期は遮根区・不織布区で4月22日,地植区で4月24日,収穫時期は遮根区・不織布区とも満開後202日目,地植区においては満開後204日目であった.生育中の果実についてみると,果色は遮根区が優れた.収穫果実についてみると,硬度は遮根区で14.4ポンドと高かった.糖度は全処理区において15.3%前後,酸度においては,遮根区で0.227%と低かった.収量,剪定時間および剪定枝重についてみると,総収量は地植区で37.3kg,遮根区で22.9kgおよび不織布区では19.4kgとなったが,上物率からみると地植区で94%,不織布区で71%および遮根区50%と地植区が優れた.剪定枝生体重は不織布区で2,767gと多く,遮根区では140gと少なかった.剪定時間は地植区で19分24秒,遮根区で13分37秒と短くなった.以上の結果から地植区と比較すると,遮根区は遮根により根の伸長が抑制され,新梢長の早期停止による葉数の減少と葉面積の減少が着色を向上させたと思われる.不織布区はポットの側面は根が貫通する不織布のためか,地植区と同等の果実品質を示しており,樹勢の衰弱もなかった.以上のことから,根域の違いの影響は地上部の生育に顕著に現れたためであり,今後更なる検討を行い,本農場リンゴ園における改植更新からの早期成園化の適切な技術を明らかにして行く予定である.
著者
柄木田 康之
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究はミクロネシア連邦ポンペイ島,米国グアム島のヤップ出身者のアソシエーションの民族誌調査に基づき,移民と母社会が国家を超えた脱領域的公共圏を構成していると指摘し,アソシエーションの活動による民族アイデンティティの生成,リーダーシップの生成,募金活動による社会的連帯の生成について報告した。
著者
今野 裕昭
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

震災後の生活再建過程に関する真野地区の被災者への面接聞き取り、アンケート調査の再分析、避難所避難者の属性分析、および、まちづくり推進会(復興まちづくり事務所)による地区復興の推移を総合した結果、次のような知見を得た。(1)震災そのものの被害に、高齢者、障害者、母子家庭、低所得者、貸貸家屋居住者など社会的弱者への集中という階層性と、彼らが多く滞留するインナーシティヘの集中という地域差別性とが確かめられたが、その後の生活再建の過程はこの階層間の格差をさらに増大するものであった。(2)[住の再建]避難所→仮設住宅→災害復興住宅という、行政が用意した復興プランにのり比較的自立的に再建できたものおよびぎりぎりのところで再建できたものと、最初から貸家に留まりこのルートにのれなかったものとの間の格差が拡大してきている。政策的な配慮から漏れた中高年層も、社会的弱者の立場に立たされてきた。(3)[職の再建]仮設工場、災害復興工場のメニューを行政は用意しているが、こうしたルートにのれるのは大きい企業者のみであり、中小零細自営業主は、家族・親戚、得意先の助力で再建しても、その後の不況もあって、運転資金にすら困る状態が続いている。(4)[社会的環境]被災者を被災した場所にという方針が最初からとられなかったために、従前のコミュニティは消失し、災害復興住宅でもコミュニテイが形成されていない。(5)行政が用意した生活再建のルートにのれない人にとって、行政と住民の間を仲介する中間集団の支援が必要であることが明らかになった。
著者
小林 幹夫
出版者
宇都宮大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

1 マダケ属モウハイチクPhyllostachys meyeriの花成促進遺伝子ホモログPmFTの全4コピーをクローニングし、塩基配列を決定し、95%以上の相同性を有する550塩基の断片をマーカーとしたイネ科27分類群の系統類縁関係を解析し、進化傾向を検討した結果、この遺伝子が小穂耕造に関わり、連の分類単位の識別に有効であること、これまで帰属をめぐり論争のあったStreptogyna連の亜科への昇格の可能性を示唆した。この結果は8月にコペンハーゲン大学で開催されたMonocots IV第4回単子葉植物の比較生物学/第5回イネ科植物の分類と進化国際シンポジウムにおいて口頭発表し、日本植物学会欧文誌に表紙写真付きで掲載された。2 モウハイチクおよびオカメザサ属トウオカメザサShibataea chinensisのそれぞれの一斉開花過程におけるPmFTおよび花成抑制遺伝子PmCENの発現パターンをリアルタイムRT-PCR法で解析し、両種ともにPmFTは一斉開花桿の葉で最も高く、再生竹の花序ではPmCENがより高く、実生や幼若個体ではPmCENのみが高く発現し、タケ類の一斉開花過程において、モデル植物で解明されたのと同様な花成遺伝子発現の制御機構の介在を示唆した。また、トウオカメザサの一斉開花過程と花序の形態を記載した。3 リョクチクBambusa oldhamiより単離したタケモザイクウイルスBaMVの全6,365塩基の配列を決定し、ベクター化に必要な完全長cDNAクローンを構築中である。4 花成遺伝子群の未開花個体への導入による発現系とサイレンシング系の基礎実験に必要なタケ類の葉からのプロトプラストの調整法ヲ確立した。
著者
平井 英明 関本 均 斎藤 高弘 一前 宣正 伊谷 樹一 平井 英明
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

植物根圏はある土壌環境に生育する植物の個有の領域であり、いわばいろいろな表情を見せる植物と土壌の顔である。根圏のpHは植物の栄養条件の嗜好性や選択性によって独特のパターンを示す。また、根圏pHの変化はある栄養環境にさらされた時の植物の一つの応答でもある。したがって、根圏pHは、因果関係の特定はできないが、植物の栄養状態を把握するためのマクロな指標、いわば根圏の「顔色」と位置づけられる。そこで根圏pHに着目し、その変化のパターンを画像として観察し、土壌一植物系の栄養状態を評価する方法を考案した。作物、雑草、緑肥用植物などの硝酸態窒素とアンモニア態窒素の嗜好性を調べた。また、アミノ酸やタンパク質を窒素源とした場合の植物根圏pHの変化、鉄欠乏植物の植物根圏pHの変化、リン酸欠乏および難溶性リン酸塩に対する植物pHの変化について観察した。コムギは硝酸態窒素が多い培地にあってもアンモニア態窒素などのカチオンの吸収能力が高いため、コムギの根圏pHは水耕液供給後、一旦低下した後に再び上昇する。一方、ハクサイは窒素源として硝酸態窒素が多い培地におけるアンモニア態窒素などのカチオンの吸収能力はコムギほど高くないため、根圏pHは常に上昇すると解析した。検定した植物の多くはコムギと同じタイプであること、マメ科植物の根圏pHは低いこと、鉄欠乏やリン酸欠乏によって根圏は酸性化されること、難溶性のリン酸塩に遭遇すると根圏pHは低下することを明らかにした。従来、根色などを「定性的」に評価して、根の健全性を判断してきたが、画像処理を用いることによって[定性的」な判断を「定量化」することができる。画像には多くの情報が含まれるので、画像処理法は現場での土壌・作物の栄養診断技術への活用が期待される。
著者
鈴木 勲 川島 芳昭 石川 賢
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-10, 2007-07-01

「理科」は形式的には全学共通教育関係科目・教養教育科目の選択科目としての自然科学系科目の一つであるが、小学校一種あるいは二種を取得するため必修科目でもある。したがって、教育学部学校教育教員養成課程の学生には必修科目であり、多くの教育学部学生が「理科」に履修登録をすることになる。学習指導要領小学校理科の目標には「科学的な見方や考え方を養う」とあるが、後期の文系向け「理科」の受講者約100名のほとんどは「科学的な見方や考え方」とは距離をおいてきた学生である。平成17年度から、率先して後期「理科」にe-ラーニングを試みたのは、授業者の力不足から後期「理科」受講生に「科学的な見方や考え方を養う」ことが機能しなかった現実との溝を多少とも埋めることを期待したからである。
著者
冨田 正彦 広田 純一 隅田 裕明 佐藤 嘉倫 結城 史隆 八木 宏典
出版者
宇都宮大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

低水準ながら高度な生態学的平衡が長期に亙って維持されていた地域生態系が、開発行為によって急変革を余儀なくされている典型例として南アジアの天水田地域の最近の潅漑開発地の村落を選び、その(1)域生態系の構造、特にその自然構造、生産構造および生活構造の相互関係構造(2)潅漑開発に伴う地域生態系構造の変化と、随伴する系要素間の不整合の発現状況(3)前項の不整合の解消過程などを、導入潅漑開発の仕様・機能と併せて調査し、地域生態系に発現した不整合の潅漑開発機能との関係づけを目的として昭和62年に第1次調査を実施した研究の第2次調査である。第1次調査は主として試・資料収集、ヒアリング等により(1)、(2)を実施したが、(3)不整合の解消過程については現象のトレ-スに依る他ないので、観察集落を設定し、現地研究者の協力のもとに経過記録を続けて本年の第2回調査に至ったものである。調査は現地での学際討論を重視して全員が行動を共にし、平成元年8月1日〜9月20日に実施された。調査地域はインドのタミルナドゥ州アランタンギ地区(エガプルマル-村)とネパ-ルのテライ地方チトワン地区(モハナ村)である。タミルナドゥ州調査は昭和62年が本調査で今年は補足調査のため実調査日程は10日間で、Grand Anicut Canal(GAC)の第11支線水路系を選んで行政的なGAC管理と地域農民の水管理との補完関係とその結果としての用水供給実態を把握するとともに、その受益農村のサンプルとして同支線20番スル-ス受益地のエガプエウマル-集落(Egaperumalur Eri)を選んでGAC受益区域に入る以前の50年前にさかのぼって現在までの集落の経済、社会構造の変化を調べた。用水管理実態調査の方法はおもに各関係行政部局からの資料、記録デ-タの収集と、システム各部位の操作・管理責任者からの現地でのヒヤリングによった。エガプルマル-集落調査は集落に保管されている記録類の収集・解続が主で、集落の古老と現在の役員農民の協力のもとの実施した。なお、これらの全てにはコインバト-ル農科大学(Sivanappann教授他)の調査協力を受けた。テライ平野調査は昭和62年度は予備調査的段階に留まっていて、今回が実質的な本調査であったため30日間の実調査日をかけて約600haの受益水田面積を対象として5年前に完成しているPancha
著者
小笠原 勝 竹内 安智
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

植物カバーマルチを利用した少耕起栽培とは、過度の耕耘による作土の流亡を防ぐための作物栽培技術であり、特に米国において積極的な普及が試みられている。種々の問題を抱えるわが国の農業においても、低投入持続型農業あるいは農薬の総合防除と密接に関連する少耕起栽培の可能性を明らかにする必要がある。そこで、本研究では、「日本における植物カバーマルチを利用した少耕起栽培の可能性」を、ライムギ〜ダイズを例にとり、しかも、実際場面への普及を見据えた実証的な研究として位置づけ、6000m^2の大規模圃試験を実施した。ライムギをカバーマルチとするダイズ栽培の実際は、1)ダイズ収穫、2)ライムギ播種、3)ライムギのマルチ化、4)ダイズの不耕起播種の4つの作業から成る。本研究では、汎用コンバイン、汎用播種機および背負式除草剤散布を用いて、1)〜3)の作業を遂行することが出来たが、4)については、播種精度が牧草地用簡易更新機を用いた場合に著しく低下し、専用の不耕起播種機が開発されない限り、「日本における植物カバーマルチを利用した少耕起栽培の普及」は非常に困難であることが判明した。少耕起栽培の利点は、雑草発生量の低下と、土壌固結の防止において確認されたが、新しい作物栽培技術の導入に際しては、その必要性、意義、経済性を実際場面に則した実証的研究によって評価することの重要性が再確認された。
著者
奥田 誠一 前田 忠信 松澤 康男 稲泉 三丸 福井 糧 菅原 邦生
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.環境保全型農業に関する研究:病害虫防除のための新技術開発のため,有用土壌微生物を利用した土壌病害の防除法を検討するとともに,害虫の生息種及び生態について比較研究した.在来家畜の飼養管理技術に関して,卵用の在来種である紹興鴨種畜場を調査した.飼料は専用の配合飼料と川に生えているホテイアオイなどを用い,排泄物は川に流すという粗放的であるが,立地条件を生かした飼養管理を行い,3人で8000羽を管理していた.現状では環境保全型農業に近い方式であるが,多数羽飼育が求められたときの対応は今後の課題である.2.遺伝資源の開発と利用に関する研究:イネの多収技術,高品質化に関わるハイブリツドライスについて,中国では既に作付の約50%がハイブリッド品種で占められており,籾収量で1t/10a以上のかなりの多収が予想される.採種のために,細胞質雄性不稔維持系統を4列,回復系統を1列の5列-1m幅で繰返し栽植され,種子収量は150〜300kg/10a程度であるので1/100〜1/200の採種圃場が必要と推定される.浙江省から安徽省にかけての河川沿いの中山間地〜山間地では,河川敷から緩やかな斜面における水田と山の裾野部の畑にトウモロコシ,大豆,サツマイモが栽培され,トウモロコシの後に麦を入れ3年4作の輸作体系が取られ,農家の自給食糧を持続的に確保し得る生産方式が認められた.その他,ゴマ,ヘチマ,小菊(薬用茶)などの作付もあり,茶は近年の輸出用茶の需要拡大に伴い新植園が多く,きつい斜面でも開墾されていた.
著者
南 伸昌 伊東 明彦 堀田 直巳
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.153-160, 2006-07-01

理科離れの象徴ともいえる物理の力学分野の理解を助けるために,運動方程式の導出までを指導する教室レベルの実験プログラムを検討した。方法としては,力学台車をバネばかりで一定のカが加わるように押すもの,軽量台車を扇風機の風力で自走させるもの,の二つを用い,それぞれサイエンス・パートナーシップ・プログラムの高校生講座において実施した。
著者
長谷川 まどか 加藤 茂夫 田中 雄一
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,携帯デバイスを対象としたマルチセンソリー認証方式の開発を目的としている.現在,携帯デバイスでの認証には暗証番号やパスワードが多用されているが,覗き見への耐性の面で問題がある.本研究では,画像などの視覚情報,音声などの音響情報,振動などの触覚情報といった複数の知覚要素を組み合わせて認証に利用することで,覗き見への耐性が高く,かつ,ユーザが使いやすい認証方式の検討を行った.さらに,携帯端末を振る動作や空中描画動作などの行動的特徴を認証に利用する方式についても検討を行った.
著者
大森 玲子
出版者
宇都宮大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

成育環境および発達段階を踏まえた食育プログラムを開発するために、食育プログラム実施対象であるモデル施設の子どもの特性を的確に把握する調査研究を実施した。地域特性として、おやつに摂取されるスナック菓子やジュース類の摂取過多が懸念されたため、特に、おやつへの情報を提供できるよう配慮した活動を取り入れた。開発した食育プログラムを通じて、子どものみならず、子どもに関わる大人への波及効果も期待された。
著者
宇佐美 繁
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

農家世帯員である女性達の就業形態が、明確に分化してきた。a農作業に全く関与しない純粋勤労者(または専業主婦)型、b農業以外の勤務先を持ちながら、農繁期だけ手伝う兼業型、c経営主等の下で無償の従業員として農作業に関わる従属的農業専従型、d配偶者等と対等なパートナーとして経営に関わっている自立的農業専従型、e経営の一部門を責任をもって担当する独立的農業専従型の五類型である。cは伝統的タイプで、戦後自作農経営を代表し、三ちゃん農業時代の担い手でもあった。今日最も一般的な類型はbであり、二十代から五十代に及んでいる。二十代から三十代にかけては、a類型が急速に広まっている。d,eは90年代にはいってから注目されるようになった類型であり、家族経営協定、女性による起業は、この類型を中心に進展した。近年農村を活気あるものにしている直売所等のグループ活動も、リーダーはこうした類型の女性達である。若い時から家族に気兼ねすることなく、地域の様々な活動に参加してきた女性農業者に多い。後継者を確保している農家は、絶対数ではc類型におおく、家産価値の大きい農家ほど定着している。d,e類型の農家では大半の農家で農業跡継ぎを確保している。女性が誇りと喜びをもって農業経営に参加している農家は、農業経営自体が魅力的であるだけでなく、家族関係も風通しがよく、若者にとっても就業しやすいためである。しかし職業選択についても寛容であり、長男を含めて他産業を選択する場合も少なくない。そこでの後継ぎ問題は、家族関係の領域を越える。
著者
志賀 徹 斉藤 高弘 芋生 憲司 中島 教博
出版者
宇都宮大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究は環境ガス組成を変化させるCA貯蔵条件下での各種生鮮農産物の呼吸特性及び品質判定因子の変化を測定し、農産物の生理的特性及び品質変化を明らかにするとともに、最適CA貯蔵条件を検討したものである。1.生シイタケは酸素濃度を減少させるか、二酸化炭素濃度を増加させることにより著しく呼吸速度が減少した。環境ガス制御が生シイタケ生体中のpHの減少を抑制することが測定され、低い(酸性が高い)領域で活性を増すPPO活性の抑制効果が確認された。加えて酸素濃度を下げることによりL-アスコルビン酸含量が高く維持された。これらを総合的に評価して、20%の二酸化炭素濃度における10%または5%の酸素濃度のCA貯蔵条件が他の処理条件より生シイタケの品質保持に効果があると判断された。2.イチゴは高い二酸化炭素濃度に対して比較的大きな許容性を持ち、二酸化炭素濃度が高いほど呼吸速度が低下した。二酸化炭素を増加させることは、イチゴ果実の果肉部の硬度の減少を抑制し、果皮色の退化を防止する効果となって現れ、かつL-アスコルビン酸含量の貯蔵中における減少を抑制した。カビの発生に対する防止からも20%の二酸化炭素濃度は効果的であった。アスパラガスは、酸素濃度の減少が二酸化濃度の増加より以上に呼吸速度の減少に与える効果が顕著であった。10%の酸素濃度下では二酸化炭素が高くなるほどアスパラガスの貯蔵中の伸長量が低く抑えられら。また低酸素濃度では硬さの保持効果が見られた。CA貯蔵条件下では空気中におけるよりクロロフィル濃度の減少が抑制され、果皮色が良好に保持された。糖含量はCA貯蔵条件下で20日後まで低下が抑制された。各種農産物の呼吸の温度に対する依存性はアレニスの式及びゴアの式によく適合し、温度により呼吸速度は指数関数的に増加した。また農産物のQ_<10>(温度10°C上昇時の呼吸速度の増加割合)は低温域で高い値を示し、温度が高くなるにつれ小さくなった。アスパラガス、ブドウ及びイチゴの呼吸速度は他の品目に比べ酸素濃度変化への依存性が高く、特徴ある挙動を示した。
著者
黒田 英一
出版者
宇都宮大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

本研究では、集団就職世代の工場経営者・商店主を対象に聞き取り調査を行った。聞き取り調査結果をまとめると、次のようになる。1 集団就職により大都会に出てきた中卒者のうちわずかしか工場経営者・商店主になることができなかった。それ以外の者は、大都会で転職を重ねて雇われ職人や単純労働者になり、あるいは帰郷卸した者、消息不明などである。2 努力してそれなりに工場経営者・商店主になれたのは、勤務した先の経営者に恵まれたことである。良き「社長」「おやじ」に恵まれて、そこで技能を徹底的に修得させられただけでなく、仕事以外の面でも厳しく躾けられた。3 集団就職世代が厳しい就業環境のなかで習得した技能は、職種や産業によって違いがみられた。小売業のように2,3年で習得できる接客・サービスの技能もあれば、10年近くたってようやく身につく大工や旋盤の技能もあった。4 就職先は住み込みであり、経営者と同じ屋根の下で暮らしたことから、集団就職世代にとって、就職先はもうひとつの家庭となった。生まれ故郷に次ぐ「第2の家庭」であった。5 「一国一城の主」になることができなかったものの、集団就職は中学卒業者にとっては大都会に入ることができる最初の一歩であり、その後の人生の入り口ともなった。こうした研究成果をふまえると、集団就職はよきにつけ悪しきにつけその後の人生のひとつの契機となっており、たまたま艮き経営者に恵まれた者だけが、工場経営者・商店主となって「サクセス・ストーリー」を演じることができたといえる。厳しい競争であっても、大都会は技能を磨けば社会階層を移動できる機会を若年労働者に与えていた公正な社会であった。
著者
井ノ口 順一
出版者
宇都宮大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1)2003年に発表した論文Minimal surfaces in 3-dimensional solvable Lie groups, Chinise Annals of Mathematics B24(2003),73-84において3次元ユークリッド空間・3次元双曲空間・双曲平面と直線の直積,これらをすべて含む3次元等質空間の2径数族を構成した。族内の空間はすべて可解リー群である。この2経数族に属する各空間内の極小曲面に対するガウス写像の満たす積分可能条件を求めた.この積分可能条件を用いて,ガウス写像とある複素数値函数の組が極小曲面を定めるための必要十分条件である偏微分方程式系を導出した.その偏微分方程式の解から極小曲面を与える積分表示公式を与えた。この公式はユークリッド空間内の極小曲面に対するWeierstrass-Enneper公式を一般化したものである。論文:Minimal surfaces in 3-dimensional solvable Lie groups IIとしてBullentin of the Australian Mathematical society誌に掲載が決定した。2)極小はめこみ・調和写像の拡張概念である重調和写像・重調和はめ込みの具体例の構成を研究した。3次元双曲空間・3次元ユークリッド空間には極小でない重調和曲面が存在せず,3次元球面には極小でない重調和曲面は特定の半径をもつ小球のみであることが知られている。これらの事実に立脚し,極小でない重調和曲線・重調和曲面を許容する3次元等質空間を考察した。とくに3次元既約標準簡約等質空間内の重調和曲線を分類した。この成果はJong Taek Cho氏,Jin-Eum Lee氏との共著論文Biharmonic curves in 3-dimensional Sasakain space formsとしてAnnali di Matematica et pura Applicata誌に掲載が決定した。
著者
湯上 登 東口 武史 伊藤 弘昭
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

超高強度超短パルスレーザー(ITW,100fs)を窒素ガス(50Pa)に集光し、そこから発生する電磁波の観測を行った.観測された電磁波のパルス幅は、実験条件には依存せず、200ps程度であった.電磁波の周波数は、周波数によって異なる感度を有する4種類のディテクターを用いて行った.電磁波は、レーザー進行方向に対して、30度程度の方向に強く放射され、コーン状の分布を有していることが確認された.また、電磁波の偏向方向は半径方向を向いていることが、すべての周波数領域において確認された.周波数の上昇とともに、放射角度が浅くなる傾向にあった.周波数は最大300GHzが観測されている.この実験結果を説明するために、プラズマ導波路を考えた.つまり、高強度レーザーが集光するとそのポンデラモーティブカによって、電子は排除されイオンだけが残った円筒状のプラズマ柱が形成される.イオンの電場を感じて電子は振動運動をすることになり、それが電磁波の放射を生み出す結果となる.電子の振動は径方向であるので、電磁波のモードはTMO1モードとなり、これは電磁波の偏向が半径方向である事実に適合する.また、数値計算を行ったところ、電磁波の周波数広がりが実験結果とよく一致した.また,高周波数の成分が浅い角度で放射される実験結果と一致する結果を得ている.以上より、レーザープラズマからの電磁波放射に関しての知見が得られ、今後高周波化、テラヘルツ化の実験の指針を得ることができた.
著者
岡澤 慎一
出版者
宇都宮大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

重度・重複障害児3事例を対象として,彼らが表出した行動を確定し,その意味を見出すとともにその際のやりとりにおける関係性のあり方について検討した.その結果,(1)対象児から表出された微弱微細な状態変化を糸口として係わりを展開することが妥当であること,(2)視覚的に確認できないほど微弱な身体の動きが係わり手との共同的活動のなかで拡大すること,(3)重度肢体不自由事例との話題の共有化過程の様相,等が明らかになった.
著者
丁 貴連
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、夏目漱石や島崎藤村、国木田独歩、有島武郎など韓国近代文学の成立に深く関わった日本近代文学者の中でも、とりわけ有島武郎と国木田独歩に注目し、廉想渉や金東仁、田榮澤といった韓国の近代文学者が有島武郎と国木田独歩の何を、そしてそれをどのように受容したのかを解明することによって、韓国近代文学に及ぼした日本近代文学の影響が国木田独歩から有島武郎へ受けつがれていった事実を明らかにした。