著者
宮崎 まゆみ
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平安時代および鎌倉時代に記された楽譜等の文献解読を基に、平安時代の宮廷箏曲の内の独奏曲の復元を試みた。平調、盤渉調の調絃音は左手の「推し」の奏法を伴う独特の方法だったこと、「連」や「かかげ合せ」の奏法は、現行の楽箏とは異なる奏法だった可能性があること、「かき合せ」や「調子」と称される楽曲は、現行の楽箏とは異なり、親指だけではなく中指、人差指を駆使して弾くことと、左手を活用させての余韻装飾から、全体的に中国の琴(きん)曲に類似した音楽であったこと等が判明した。
著者
菅 裕
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 芸術・保健体育・家政・技術 (ISSN:1345403X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-10, 2007-09-30

附属中学校で音楽科教育実習を行う学生とその指導教員に対してインタビュー調査を行い, 教育実習期間中に実習生が発見する課題や指導教員の実習生の評価についての発言内容を分析した。その結果, 音楽科実習生が実習中に抱える課題として「プログラム遂行型授業観の脱却」「統制的集団維持と受容的・親和的集団維持の総合的遂行」「生徒の演奏の診断と指導の手立ての案出」の3つが浮かび上がった。これらの課題は, いずれも音楽科教師が状況との対話の中で発揮する手続き的知識と深く関連していると考えられる。さらにこれらの課題は, 音楽の授業中に生起するさまざまな教師の意思決定場面において, 相互に密接に関連していると推測される。特に音楽的診断力と生徒とのコミュニケーション能力や集団調整能力の統合的発達は, 今後, 音楽科教員養成カリキュラムを再検討していく上で最も重要である。
著者
伊佐敷 隆弘
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-24, 2005-09

出来事個体の同一性に関するデイヴィドソン説(因果基準)とクワイン説(時空基準)について検討する。因果基準は「同じ時空領域に複数の出来事が生じる可能性」を,時空基準は「4次元主義的存在論(出来事と物体の同一視)」を,それぞれ主な根拠としている。デイヴィドソンはクワインからの批判を受け,因果基準を捨て時空基準を採るに至った。しかし,どちらの基準も循環を含み,また因果基準はデイヴィドソンの単称因果言明分析と相性が悪く,時空基準はデイヴィドソンの非法則的一元論と相性が悪い。それゆえ,デイヴィドソンの転向は早計過ぎた。彼は他の可能性を探るべきだった。
著者
伊佐敷 隆弘
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-11, 2008-09-30

出来事の同一性の基準に関する代表的な3つの提案はいずれも難点を抱えている。即ち,クワインの時空基準は,複数の出来事個体が同一時空領域に存在する可能性を確保できず,他方,キムの性質例化基準は,同一の出来事個体に複数の記述を与える可能性を確保できない。デイヴィドソンの因果基準は,両方の可能性を確保できるが,個別のケースがこれら2つの可能性のうちのどちらであるかを決定する根拠を提供できない。### 出来事の同一性が問題となる微妙なケースの検討から判明するのは,「出来事個体が物個体と事実との中間的な存在性格を持つ存在者であること」,および,「出来事の同一性はそれを記述する我々の視点に或る程度依存していること」である。我々は,各出来事個体の間に「重複」「修飾」「因果」「評価」などの多様な関連付けを与え,出来事のこのネットワークを頼りに各出来事個体への指示を行なっている。我々によるこのような指示の営みを通して出来事個体のネットワークは作り上げられ維持されていく。出来事の同一性の基準は単一ではなく,また,出来事に関する同一性基準は同一性判断に常に先行するとは限らない。
著者
椋木 香子 西田 幸代 鈴木 由美子 田岡 由美子 森川 敦子 工藤 道子 野崎 秀正 松野 仁英 松野 蓮香 松木 朋子
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、乳幼児期の道徳性の発達に即した幼児教育・保育のカリキュラムや指導方法のプログラムを保育現場と協働で開発することを目的としている。そのために研究期間において、乳幼児の道徳的認知発達に関わる諸要素を明らかにするとともに、海外の保育実践と比較して、我が国の社会的・文化的背景に即した道徳性育成について示唆を得ることを目的とした。1歳から5歳までの積み木遊びにおける遊びの発達と他者関係認識について調査した結果、幼児の道徳性は認識能力や身体能力の発達と関連があることが示唆された。また海外の実践事例との比較から、カリキュラムについての考え方の違いが指導方法に影響していることが示唆された。
著者
松井 隆尚 松下 洋一 菅本 和寛 宮窪 建児 藤本 英人 落合 克紀
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大學工學部紀要 (ISSN:05404924)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.23-26, 2005-08

Abstract ###From the quantitative analysis of steam-condensed solution which was obtained by the ###steam-dried treatment of Sugi wood at 90-120 ℃ (dry-bulb temperature) for 54-93 hours, the ###amounts of phenolics were found to be very small. The total extracts of organic solvent ###extractions (hexane and ethyl acetate) of steam-condensed solution were 0.16 w/v %. The ###adsorbate amount from steam-condensed solution using HP-20 adsorbent were the same as ###that of the solvent extract. The analysis of solvent extract and HP-20 adsorbate by capillary ###gas chromatography-mass spectrometer (GC-MS) revealed eight sesquiterpene compounds in ###the steam-condensed solution from Sugi wood.
著者
出口 近士 吉武 哲信
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成22年の宮崎県での口蹄疫では403箇所の消毒ポイントが設置されたが、消毒による交通渋滞の誘発が懸念され、その発生抑制を考慮した消毒ポイント設置法が課題として残された。本研究では、川南町、えびの市、都城市の口蹄疫発生地点から半径0.5,1,3,5,10,20㎞の円周を切断する道路の地理的分布状況を分析し、半径5km付近の道路交通センサス対象道路の混雑度や交通量等を検討した。その結果、交通容量に余裕がある道路区間の存在が把握できるなど同データの利用性を確認した。また市町では10箇所程度の消毒用資材の備蓄があり、5km圏内で交通規制を実施しながら消毒ポイントを設置できることの可能性を確認した。
著者
柳澤 一男 橋本 達也
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

古墳分布南端域における古墳の出現過程の解明を目指した本研究では、(1)宮崎市檍1号墳、(2)西都市西都原81号墳の2基の前方後円墳の発掘調査を実施した。調査内容とその成果は次のとおりである。(1)宮崎市檍1号墳は調査の結果、墳長52m、後円部直径35〜38m、同高4.5m、前方部長約17m、同高1.7〜2m、前方部前面幅約20mの規模が確定し、規格性の低い墳形が想定された。後円部から確認された埋葬施設は国内最大級の木槨と判明した。木槨は長方形のプランで、長さ6.8〜7.2m、幅4.0〜4.2m、高さは約1.5m程度と推測される。木槨内には短小型の刳抜式木棺の埋置を確認した。また前方部平坦面から長さ17mにわたる開削墓道の一部を検出した。檍1号墳の築造時期は後円部墳頂から出土した土器から4世紀前葉と推測される。(2)西都原81号墳は調査の結果、墳長53.7m、後円部経37.5m、同高3.7〜6.9m、方部長20m、同高1.2〜1.6m、前方部前面幅約20mの規模と、奈良県纒向石塚とほぼ等しい比率をもつ墳形を確認した。墳丘は後円部のみ2段築成、鍵穴形平面形の周堀は前方部隅角で収束する形態と判明した。後円部背面側に接続する突出部は、後円部墳丘下段と同時に形成され、上部平坦面外周に石組みが全周することが確認された。また突出部上面、くびれ部、後円部上段墳丘斜面から4基の小型陪葬遺構を確認した。本墳の築造時期は3世紀後葉と推測される。以上の調査により、(1)南九州における前方後円墳の出現が3世紀にさかのぼること、(2)前方後円墳の墳形と墳丘構築法の多様性、(3)埋葬施設の独自性と多様性(木槨・短小型刳抜式木棺)が明確となった。なかでも檍1号墳の木槨構造と西都原81号墳の調査成果は、畿内中枢部の前方後円墳形成過程と、前方後円墳の列島的規模の拡散研究に寄与するものである。
著者
立山 晋 SRI Lespari DARNAS Dana SRI Utami Pr HERNOMOADI H EMIR A.Sireg GATUT Ashadi SINGGIH H.Si 内田 和幸 三澤 尚明 飯田 貴二 山口 良二 延東 真 後藤 義孝 掘井 洋一郎 HERMONOADI Humit A.GANI Asike EMIR A Sineg SRI Utami Rr SINGGIH H Si 村上 昇 AGKA Sri Les 玉井 理 HUMINTO Hern DANA Darnas PRAMONO Sri RUMAWAS Will ASHADI Gatut SIGIT Singgi 吉田 照豊 青木 宙
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究は、インドネシアにおける家畜及び魚類疾病の発生状況の実態調査と各々の疾病の解析を目的に、宮崎大学とインドネシア・ボゴール農業大学の大学間協力研究として行なわれた。平成5年〜7根の3年間で得られた研究成果の概要について大別して下記に述べる。1.インドネシアと宮崎における家畜疾病の発生状況の比較・検討。インドネシアの家畜がおかれている環境を知る目的で、宮崎大学とボゴール農業大学で1990年から1994年の過去5年間に剖検されたイヌの主要疾病について比較・検討した。その結果、ボゴール農業大学で剖検されたイヌ、548例中、もっとも頻繁にみられた疾病は、腸炎(63.5%)、滲出性肺炎(50.6%)、胃炎(48.7%)、間質性腎炎(36.3%)であり、宮崎大学で剖検されたイヌと比較して、これらの疾患の発生率は極めて高かった。この原因として、通常これらの炎症性疾患は、ウイルスや細菌を中心とする伝染病していることを反映しているものと考えられる。日本ではこの様な感染症、特にパルボウイルス、ジステンパーウイルス、伝染性肺炎ウイルス、レプトスピラ等のワクテン接種により、これらの疾患が有効に低減しているため、インドネシアにおいても、同様な防疫対策を図ることにより、これらの伝染病の低減が期待できるものと考えられた。2.インドネシアの家きん疾病の解析。ニワトリ、ハトなどの家きんは、インドネシアの主要な産業動物である。本研究では、ニワトリの伝染性ファブリキウスのう炎(ガンボロ病)とマイコプラズマ感染症について、各々病理学的、微生物学的に調査した。ガンボロ病は鳥類特有の免疫系繊維であるファブリキウスのうを選択的に侵態するウイルス性疾患であり、本症に罹患したニワトリは免疫不全に陥いり、種々の細菌・ウイルスなどに感染しやすくなる。インドネシアにおける本病の漫延状況を知る目的で、インドネシアのニワトリを業収・剖検し、肉眼的にガンボロ病が疑われた36例について病理組織学的に検討した。この結果、36例中24例のファブリキウスのうに著明なリンパ球の減少、細網内及系細胞の増生、線維化などがみとめられ、伝染性ファブリキウスのう炎ウイルスの抗原が12例で検出されたこのことからインドネシアのニワトリには広く強毒のウイルスが漫延しているものと推察された。一方、マイコプラズマ症はニワトリの上部気道感染症であり、本病自身は重大な病変を引き起こすことは稀れであるが、種々の細菌・ウイルス感染症が併発しやすい。本研究では、インドネシアの5つの農場より、ニワトリの血液を採取し、合計49例についてELISA法により、マイコプラズマ・ガリセプティカムの抗体価を測定した。その結果、1農業では抗体陽性率が15.4%と低くかったが、その他の農場では70%〜100%と極めて高い陽性率を示し、マイコプラズマ症が広く漫延している現情が把握された。3.インドネシアの魚類疾患に関する検討。インドネシアのグラミ-養魚場における疾患の発生情況を知る目的で、瀕死のグラミ-50例を剖検し、病理学的に検討した。その結果もっとも高率に認められたのは抗酸菌感染による肉芽腫性皮フ炎であったが、その他、肝や脊づいの変性・壊死など何らかのビタミン欠乏症に起因すると思われる病変が多発していた。これはインドネシアの養魚場では鶏フンをエサとして使用していることから幼魚が種々とのビタミン欠乏症に陥りやすいものと予想された。従って、インドネシアの養魚場における疾患防止のためには、伝染病に対する防疫と同時に飼養形態の改善を図る必要があると思われる。以上今回の大学間協力研究で得られた実績の概要を示した。本研究では、インドネシアの寄生虫病についても若干の知見を得たがここでは省略した。得られた知見については、インドンシアの関係者と協議し、問題点などを指摘した。今回の研究の成果は、今後、インドネシアの家畜・魚類の疾患を低減するうえで貴重な基礎データとなりうるものと期待している。
著者
長谷川 珠代
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日頃、誰かをケアし、ケアされている人が、お互いにアートを通して身体的・精神的なストレスを軽減することを目的としたヘルスケア・アートプログラムを実施した。平成19年度は『吹き矢』をプログラムに取り入れ、『呼吸』という生命活動をより効果的に行うことに加えて、アートの視覚的な楽しさ、身体的な爽快感を体験することを目的に行った。ボランティア16名を含めた62人の参加があった。吹き抜けの空間いっぱいに垂らした大きな布に絵の具の入った風船をぶら下げ、吹き矢の的にし、参加者が吹き矢を放つと風船が割れ、中の絵の具がはじけて布に様々な色彩や形が描かれたアート作品ができるようにし、視覚や聴覚を刺激しながら楽しめるよう工夫した。吹き矢は単純な動きではあるがゲーム性が強く、子どもから大人まで夢中になっていた。また障害の有無に関わらず、子どもから高齢者と幅広く楽しめ、プログラムによる開放感を高め、参加者からは「日常では経験できないような大きな作品を創り出すことで楽しさと爽快感が得られた」という意見が得られた。また、対象者同士の世代を超えた交流みられ、「他の家族とゆっくり話す時間が出来た」、「次も交流をしながら楽しみたい」等、人と人とがつながりを求める原動力になる効果も示された。また第11回日本在宅ケア学会にて、ケアする人へのヘルスケア・アートプログラム(HCAP)の実践報告を行い、参加者との意見交換などを通してケアする人へのケアやアートプログラムについて知見を得ることができた。平成18年度は最終年度にあたるため、平成16年度から平成18年度の科学研究費補助金にて行った『ケアする人を支えるヘルスケア・アートプログラムの開発と地域ケアシステムの構築』研究活動をまとめた報告書を作成し、関係者に配布した。
著者
中村 豊
出版者
宮崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

【目的】2007年度科学研究費補助金を受け、生鮮食品の品質管理用小型温湿度記録装置が、動物陸送時の微環境温湿度の経時的モニタリングに有効であることを実証した。今回は、この装置を用いて長距離空輸される動物に及ぼす輸送箱内温湿度の影響を検討する。【方法】小型データロガー「ハイグロクロン(Dallas Maxim USA)」を用いて、動物輸送時の空調車内部と空港内荷物保管室、機内貨物室の輸送箱外部、および輸送箱内部の温湿度を測定記録する。動物輸送は静岡県厚木市から宮崎県清武町まで陸送と空輸で所要時間約25時間である。この間車内温度は15℃、機内貨物室は25℃前後に設定し、測定間隔は5分とした。【結果】測定は20年9月2日、9日(夏季)および21年1月13日、27日(冬季)に行った。1.記録された夏季と冬季の荷物保管室、機内貨物室の平均箱内温度は25.4±3.0℃、27.7±1.8℃、および15.3±3.6℃、25.5±5.4℃であった。2.平均箱内湿度は92±3.6%、83.5±3.9%、および85.2±11.7%、72.6±16.2%であった。【考察】空港到着後の平均箱内温湿度を陸送時と比較すると、夏季温度は荷物保管室、機内貨物室で上昇するが、冬季では荷物保管室で降下し機内貨物室では上昇することが示された。陸送中の箱内湿度は高めであるが、荷物保管室の箱内湿度は夏季でさら上昇し、冬季ではほぼ同じ湿度を保ち、機内貨物室では夏季、冬季ともに降下することが示された。動物を空輸する場合、空港に到着した輸送箱が荷物保管室や機内貨物室に置かれている短い時間に、急激な温湿度変化で箱内温湿度環境が悪化し、輸送動物に大きな影響を与えることが示唆された。以上より長距離空輸する際、ウサギ等の高温多湿に弱い実験動物輸送には充分な配慮が必要であることが判った。
著者
草場 ヒフミ 野間口 千香穂 藤井 加那子 永瀬 つや子
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は入院と治療に伴う思春期患児の睡眠状況の調査を行い、睡眠に関する問題、睡眠の特性、睡眠に影響を与えている要因を検討することである。1.入院生活を送っている思春期患児の睡眠に関する実態一般小児の病棟に入院中で、急性症状がなく、入院3日以上の小学4年生から高校生を対象として、自己記入式による質問紙調査を行った。質問内容は、(1)睡眠-覚醒機能のアセスメントに関する睡眠の特徴と睡眠の影響、(2)睡眠を妨げる要因、(3)睡眠をとるための対処、(4)児童用状態不安尺度(STAIC-S)である。入院中のデータは連続2日間の夜間睡眠データとした。3病院(4病棟)に入院中の10歳から18歳の男女から得られた24名の分析の結果は次のようであった。1)睡眠の特徴:病院では50%の患児が21時台に就床し、30分以内に入眠していた。就床時間と入眠に要した時間は病院と家庭とに関連が見られ、病院での就床時間が早かった。夜間覚醒は47%に認められ、回数は1回から3回であった。2)熟眠感の低い児が約17%に認められ、夜間覚醒との関連が認められた。夜間の覚醒している患児の方が状態不安得点は高かった。4)夜間覚醒の理由には身体症状、環境の変化があったが、「なんとなく」が最も多かった。5)睡眠導入への入院児の対処:音楽を聴く・本を読む、部屋を暗くするなどの入眠促進行動が多かった。2.活動・睡眠リズム記録(アクティグラフィ)を用いての睡眠調査アクティグラフに睡眠日誌を併用し、入院中の11歳〜15歳の5名の連続2日間の夜間睡眠パターンを分析した(2名は持続静脈注射中)。総夜間睡眠時間は319分から519分、睡眠効率は74.8%から96.5%の範囲であった。主観的熟眠感の高い時は、そうでない時に比べ、全睡眠時間は長く、睡眠効率は高く、入眠潜時は短く、覚醒回数は少なかった。3名はアクティグラフィが認識した5分以上の覚醒回数より自己報告の回数が少なかった。
著者
本勝 千歳
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではヒュウガナツ枝変わり系統である'西内小夏'の生殖特性を明らかにするために受粉試験、果実の形質調査、胚珠および種子成長の組織観察を行った。まず、普通系ヒュウガナツ(普通系)、'西内小夏'、ハッサク、スイートスプリングを種子親として、'西内小夏'ならびに普通系、ハッサクの花粉をそれぞれ受粉し、結実率、果実成長を調査した。その結果、'西内小夏'を花粉親として使用した場合、全ての種子親について果実が得られた。一方、'西内小夏'×普通系は受粉後10週目までにすべて生理落果を起こした。ヒュウガナツの自家不和合性が雌ずい側と花粉側の複数の因子に関係していると仮定するならば、この普通系と'西内小夏'の正逆交雑の結果から、'西内小夏'は花粉側因子に何らかの異常が発生したと考えられた。また、収穫果の含有種子についてみると、各種子親における'西内小夏'花粉受粉果は、他の花粉受粉果と比較して完全種子数は有意に減少し、しいなの数は有意に多くなった。種子親が普通系および'西内小夏'の場合、'西内小夏'花粉を受粉して得られた果実内の種子はほとんどしいなとなったのに対して、種子親がハッサクおよびスイートスプリングでは正常種子としいなが果実中に混在して確認された。特に種子親がハッサクの場合は、一つの果実内に見られる正常種子としいなの割合が、果実毎によって異なっていた。次に普通系ヒュウガナツおよび'西内小夏'の果実発育中の種子を取り出して観察したところ、種子のしいな化は受粉後8週目〜12週目の間に起こっていた。胚発生の組織観察の結果、'西内小夏'受粉果において胚の初期成長が観察されたことから、'西内小夏'花粉受粉果でも受精がおこるものと推察された。しかし、受粉後8週目〜12週目にかけて胚の異常発達や胚の消失が確認され、このことが種子のしいな化に影響していると考えられた。
著者
佐藤 容子
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

まず、宮崎県内でのLD児についての理解の浸透を図って、学校単位での講義や全県規模での教員対象の講義を行った。同じ教員に複数回の講義をした。また、保護者にも、地域ごとに、LDについての講話を行った。その上で、公立の大規模小学校1校と中規模小学校3校(児童数合計2,230名)に対して、PRSを用いたLD児のスクリーニングを行った。抽出された児童にWISC-III、K-ABC、DAMなどの検査を行い、67名のLD児が確認された。出現率は約3%であった。次に、これらのLD児について、彼らの学級での仲間関係と適応感を査定するために、自己報告による孤独感尺度、社会的コンピテンス尺度、社会的スキル尺度、そして、学級における人気投票を行った。また、担任教師には、子どもの社会的スキルと学校への適応状況について評価してもらった。その結果、LD児は健常児に比べて孤独感が強く、社会的コンピテンスは低く、向社会的スキルが少なく、外面化問題行動と内面化問題行動が多かった。仲間からの人気度も明らかに低かった。教師評価でも、LD児の社会的スキルは低く、学校への適応度も低かった。そこで、小学校2年生と3年生の学習障害児をターゲットにして、3週間にわたって、文脈論モデルに基づいて、学校ベースのソーシャルスキル・トレーニングを実施した。ターゲット・スキルは、「上手な聞き方」、「仲間への言葉かけ」、「集団活動への入り方」であった。トレーニングの結果、ターゲット児だけでなく、学級の仲間達も、孤独感と外面化問題行動、内面化問題行動は低下し、向社会的スキルが増加した。さらに、トレーニングの維持効果をみるために、1年後に再び、ベースライン時と同じ査定を行った。その結果、トレーニング効果は比較的よく維持されていることが明らかになった。
著者
山田 利博
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-10, 2009-03-30

『研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間連携論文集-』Vol.3, No.2(2010/06)に査読を経て受理された修正版あり。