著者
行武 潔 HAVNES R. 吉本 敦 寺岡 行雄 加藤 隆 尾崎 統 HAYNES Richard TORRES Juan 伊藤 哲 EVISON David 庄司 功 斯波 恒正 CERDA Arcadi PAREDES Gonz BROOKS David HAYNES Richa 古井戸 宏通
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本年度は、これまでの研究成果を踏まえて37カ国からなる国際研究集会を開催した。1) まず、国産材は低廉・均質な外材に押されて市場競争力を失ってきていること、また、日本の造林費が他国の5〜10倍にも達していること、その結果、利用可能な林齢に達してきた人工林の伐採が遅れ手入れ不足となってきていること、国産材の生産増加が期待できず持続可能な経営が非常に困難となってきていることが指摘される。2) 近年の環太平洋地域の木材貿易をめぐる変化に、(1)世界的に環境保護の動きが強まる中で天然林材あるいは2次林材を主な原料基盤としてきた国々が、環境規制の強化による伐採量の大幅な減少や原料コストの上昇により丸太や製品輸出に占める比率を大きく後退させ始めたこと、(2)対照的に、チリやニュージーランド、南アフリカなど外来樹種の導入による短伐期の人工林資源の造成を進めてきた国々からの加工製品の輸出が、原料供給力の拡大と加工部門への積極的投資を背景として急速に増加し始めていることがあげられる。3) 国内8地域の製材市場と海外の輸出入モデルによる空間均衡モデルを構築してシミュレーション分析を行った。まず、輸送費用削減効果をみたが、国産材の供給増加はみられない。これは、国内各地域の国産材供給関数が全て価格に対して極めて非弾力的であるため、輸送コストを下げてもその効果が現れないことによる。次に、米材丸太輸入減少効果をみると、国産材製材の供給増加よりも製材輸入の増加をもたらす。これは環境保護等の影響で米材丸太輸入規制があっても、国産材供給の増加は期待できないことを物語っている。4) 森林セクターモデルの課題として、まず林業政策の性質を熟知して政策決定に関わる因子を結合し、モデルを修正・拡張することがモデル構築に必要不可欠であること、今後マルチ市場レベルでの空間均衡モデルの開発などが中心になってくることが示唆される。
著者
三浦 知之
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度は従来の研究を文献的に整理し、潜水探査機を用いた生物採集を実際に行うと共に、研究材料となる標本の収集を行った。特に、インド洋ロドリゲス三重合点に関しては、本申請と同時に別途共同調査を申請していた潜航調査に、平成14年1〜3月に申請者も参加できた。平成15年度は1989年に新科として発表したヤドリゴカイ科Nautiliniellidaeに関連して、日本海溝に生息するNautiliniella calyptogenicolaとよく似た、大西洋産種が新種であることがわかり、米国の雑誌に発表した。平成16年7月5日から9日にかけてスペインマドリッドで開催された第8回国際多毛類研究者会議において、シボグリヌム科多毛類すなわちハオリムシ類の生態について発表し、その体系分類のあり方についても外国人研究者との共同研究を発表し、ほかの研究者との情報交換を行った。これまでさまざまな深海調査により、採集してきた資料には、相模湾初島沖1170mで得られた、Nereis surugaense, Euclymene uncinata, Maldane cristata, Lumbrineris japonica, Eunice mucronata, Paraonides nipponicaなど既知種も多数含まれていたが、沖縄トラフ南奄西海丘で採集されたイソメ科多毛類は未記載種であることがわかり、新種として記載することとした。また、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船「よこすか」および「しんかい6500」による南西太平洋熱水生態系の全貌解明に向けた調査が、2004年9月23日から11月24日に実施され、その採集正物の中にハオリムシ類の未記載種が含まれていることがわかり、急遽記載の準備を進めている。採集されたハオリムシ類の一つは、Brothers Caldera (34°51.652'S,179°03.536'E;水深1604m;Oct.26,2004;Shinkai 6500 Dive 851)で得られ、今1種もBrothers Caldera (34°51.671'S,179°03.463'E;水深1598m;Oct27,2004;Shinkai 6500 Dive 852)でえられたものである。年度末ぎりぎりでの入手でもあり、最終報告には間に合わないが、米国の追随調査も予定されており、新年度には入り次第成果の発表に向かいたいと考えている。
著者
矢野 武志
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

敗血症性ショックは、過度の血管拡張がもたらす持続的な低血圧状態であり、血圧の維持に難渋する場合が多い。血管拡張の原因物質は過剰な一酸化窒素であり、これは高度な炎症の結果発現した誘導型一酸化窒素合成酵素によって作り出される。過剰な一酸化窒素存在下ではカテコラミン類の感受性が低下し、有効な昇圧作用を得るためには多量に投与する必要がある。血管平滑筋の収縮と弛緩は、平滑筋構成タンパク質であるミオシン軽鎖のリン酸化および脱リン酸化によって引き起こされる。本研究では、ラットから摘出した大動脈を用いて、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬の血管収縮作用について調べた。ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬は濃度依存性に血管収縮作用を示し、一酸化窒素供与体であり血管拡張物質であるニトロプルシドナトリウム存在下でも血管収縮作用は変化しなかった。また、血行動態への影響を調べるため、ミオシン軽鎖脱リン酸化酵素阻害薬をラット生体モデルに経静脈的に投与したが、血圧と心拍数に変化は生じなかった。
著者
大野 和朗
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

農薬に高度の抵抗性を発達させたアザミウマ類の捕食性天敵であるヒメハナカメムシ類の生存や繁殖にオクラの分泌物である真珠体が重要な働きをすること、露地ナス圃場にオクラを植栽することで、ヒメハナカメムシ類等の天敵ほ働きが安定することを、世界で初めて明らかにした。室内実験により、真珠体そのものは動物質餌と同等の効果はないが、補助的な餌として、動物質餌が少ないとき、天敵の幼虫の体サイズが小さく、餌を捕獲できないときに、天敵の生存を高め、結果的に天敵個体群の持続性の向上につながると考えられた。圃場調査から、ナス上で餌昆虫(アザミウマ)がいなくなっても、ヒメハナカメムシ類の発生は続くことが明らかになった。
著者
藪谷 勤 吉原 法子 井上 公一 濱砂 紳也 黒木 鉄治 松尾 勇一朗
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ダッチアイリスにおけるアントシアニンとフラボンのコピグメンテーション分子機構を解明するために本研究を実施した。その結果、アントシアニン生合成遺伝子として、CHS、CHI(断片)、F3H、DFR、ANS及び3GT遺伝子を単離し、花蕾の発育時期別のこれら遺伝子の発現レベルとアントシアニンやフラボンの蓄積量との関係も明らかにした。さらに、コピグメンテーション発現の鍵酵素、F3Hの基質特異性を解明するともに、F3H遺伝子のペチュニアへの導入にも成功した。
著者
長谷川 信美 西脇 亜也 平田 昌彦 井戸田 幸子 飛佐 学 山本 直之 多炭 雅博 木村 李花子 宋 仁徳 李 国梅 SCHNYDER HANS 福田 明 楊 家華 郭 志宏 李 暁琴 張 涵 李 海珠 孫 軍 宋 維茹 ガマ デチン NAQASH J&K Rashid Y KUMAR Ravi AUERSWALD Karl SCHÄUFELE Rudi WENZEL Richard 梶谷 祐介 小田原 峻吾 平川 澄美 松嶺 仁宏 佐野 仁香 長谷川 岳子 坂本 信介 樫村 敦 石井 康之 森田 哲夫
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

中国とインドにおいて、放牧方式の違いが高山草原生態系へ及ぼす影響について調査を行った。東チベット高原では、暖季放牧地が寒季放牧地よりも植物種数が多く、種数密度と地上部現存量は低かった。土壌成分は、2012年と2004年間に差はなかった。牧畜経営では、ヤクが財産から収入源への位置づけに移行する動きが見られた。また、クチグロナキウサギの生息密度と植生との関係について調査した。インドの遊牧民調査では、伝統的な放牧地利用方法により植生が保全されていることが示された。衛星画像解析では、植生は日射、気温、積雪日数等に左右され、経年的な劣化も示された。ヤク尾毛の同位体元素組成は地域と放牧方式等で異なった。
著者
宮崎 まゆみ
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

奈良時代に中国より箏およびその音楽が伝来し、その後、平安時代に隆盛した宮廷箏曲、安土桃山時代に誕生した筑紫箏曲、江戸時代初期に誕生した当道箏曲、明治時代に一部の宮廷箏曲を改変整備した雅楽箏曲、大正時代に当道箏曲から発展誕生した近代箏曲、近代箏曲の延長線上にある現代箏曲の、各奏法の相違点、特徴等を抽出し、それらが各箏曲の音楽的特徴を決定づけた要因の重要な要素となっていることを立証した。
著者
玉田 吉行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

研究の目的は、英語で書かれたアフリカ文学がどのようにアフリカのエイズ問題を描いているかを探ることで、ケニアの2つの小説Nice PeopleとThe Last Plagueを軸に、疫病に映し出された人間のさがを考察しました。政治や経済の局面ではとらえられない人間のさがを知らなければ、アフリカのエイズに対抗出来ません。アフリカの文学作品は、政治や経済の局面ではとらえられない人問のさがを見事に描き出しています。報告書は、以下の5章にまとめました。1章アフリカとエイズ2章アフリカの歴史3章『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』4章南アフリカとエイズ治療薬5章哀しき人間の性(さが)1章では、HIVの特徴を軸に、アフリカのエイズの状況を描きました。2章では、現在のエイズの惨状を生み出したアフリカの歴史を概観しています。3章では、アフリカのエイズの現状を描き出しているケニアの小説『ナイス・ピープル』と『最後の疫病』を取り上げ、ケニアの歴史と作家グギを軸に、二つの作品を分析しました。4章では、南アフリカの歴史を辿りながら、エイズ治療薬を巡る南アフリカの状況を考察しています。5章では、辿ってきた哀しき人間のさがについてまとめました。疎外された状況下での自己意識をテーマにリチャード・ライトの作品の研究を始めました。作品理解のために、アメリカの歴史を辿る過程で、アフリカに辿り着きました。以来、ラ・グーマの文学だけでなく、アフリカ全般、医療についても考えるようになりました。授業でも、アメリカやアフリカの歴史・文学・医療などを取り上げてきました。そうした「アフロ・アメリカ→アフリカ→エイズ」の流れと(1)文学と医学,(2)教育と研究、(3)教養と専門の狭間から、「エイズを主題とするアフリカ文学が描く人間のさが」を考えました。
著者
吉田 直人
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

クリソタイルは天然に産出する水和ケイ酸塩粘土鉱物で、針状の結晶として成長する。多くの工業製品に利用されていが、人が長期間にわたって吸入するような機会に遭遇した場合、健康影響が懸念されている。本研究ではクリソタイルと細胞との間にどのような相互作用があるのか、細菌細胞を用いて明らかにした。溶液中で大腸菌とクリソタイルを混合するのみでは、クリソタイルは大腸菌の生育になんら影響を及ぼさない。ところが弾性体上にて曝露させると大腸菌とクリソタイルに物理的変化が生じることがわかった。寒天等の弾性体上にてクリソタイルと共に曝露させる方法を考案し、曝露装置を開発して実験に供したところ、曝露時間が長くなるに従って生細胞は漸次減少した(弾性体曝露)。曝露後の大腸菌を電子顕微鏡にて観察すると、クリソタイルの細胞膜への穿刺が確認された。本実験条件においてクリソタイルは細菌に対しては変異原となるのではなく、ミサイルのように穿つといった物理的で性急な反応をもたらすと結論づけた。クリソタイルにプラスミドを付着させ、大腸菌をクリソタイルと共に弾性体曝露させたところ10^7/μg DNAの効率でプラスミドを取り込んで、抗生物質耐性に形質転換することを見出した。クリソタイルは溶液中では6-9μmの凝集体あるいは、さらに細かい針状結晶として浮遊している。曝露の過程では、曝露時間に伴って水分が弾性体中に浸透していくので、クリソタイルの濃度が弾性体表面では上昇する環境が生まれる。この過程でクリソタイルは自己凝集し、栗のいが状になることが判明した(いがぐり状化凝集)。その時にすべり摩擦力が同時に加えられので、細菌を付着したいがぐりが滑っていくような物理現象を明らかにした。これら一連の研究において、すべり摩擦力を利用した生物工学の概念を創出し、摩擦生物工学として新たな研究分野を切り開いた。
著者
菅 裕
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部附属教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13478788)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.153-167, 2012-03-31

吹奏楽, 声楽, ピアノ, フルートの4名の熟練指導者に対して, 演奏表現に関する指導に焦点を当て, PAC分析に基づくインタビューを実施するとともに, レッスンまたは合奏指導場面をVTRに録画し, 指導内容及び指導方法についてカテゴリー分析を行った。その結果, 演奏表現指導において「適切な」あるいは「正しい」知識や技能を習得させることを重視する指導者は, 単純な指示・評価または近似値型隠喩的指導が比較的多く用いているのに対し, 生徒自身の理解に基づく主体的な表現を重視する指導者は, 想像型隠喩的指導を多く用いる傾向が見られた。This research focused on strategies for teaching musical expression used by four expert instructors of a symphonic band, vocal music, piano, and flute. I interviewed them based on PAC analysis, videotaped their instruction and made a category analysis of their contents and method of teaching musical expression. In the result, the instructors who value to make students acquire adequate or right knowledge and skill tend to use simple prescription, simple feedback and approximating type of metaphor. The instructors who value students' independent minded musical expression based on their understanding of music tend to use imaginary type of metaphor.
著者
杵渕 博樹
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 人文科学 (ISSN:13454005)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.15-27, 2012-08-31

本論文は『宮崎大学教育文化学部紀要-人文科学-27号』(2012年8月)、15-27頁に掲載された論文が査読を経て、『研究論文集-教育系・文系の九州地区国立大学間連携論文集-』に新たに掲載されたものである。
著者
藪谷 勤 二宮 裕美子 服崎 佑亮 東 沙樹 野崎 友則 赤岩 ゆみ 水野 貴行
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ダッチアイリスのアントシアニン生合成機構を解明し、その成果を育種に利用するために本研究を実施した。その結果、まずアヤメ属では新規のマロニル化アントシアニンやアセチル化フラボンの存在を推定した。次に、アントシアニン生合成に関与しているDFRおよび3RT遺伝子などを単離・解析し、CHSおよび5GT遺伝子のペチュニアへの導入にも成功した。さらに、DFR遺伝子のプロモーター領域へのレトロトランスポゾンの挿入が外花被の白色化を誘導する可能性を示した。
著者
山口 奈美
出版者
宮崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

膝外側円板状半月は、発生原因は明らかではないが人種によって発生頻度が異なり、特に本邦を含めた東アジア地域で頻度が高いとされている。今回の研究は円板状半月が日常生活動作ならびスポーツ動作に与える影響について3次元動作分析システムを用いて歩行分析を行った。膝外側円板状半月単独損傷群8例10膝、コントロール群9例の歩行分析を行った。現在その結果を元にデータを解析・検討中である。
著者
蒲原 真澄 塩満 智子 長谷川 珠代 大桑 良彰 鶴田 来美
出版者
宮崎大学
雑誌
南九州看護研究誌 (ISSN:13481894)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.29-36, 2012-03-15

本研究は,総合型地域スポーツクラブに参加している40歳以上の地域住民を対象に,体力・体格とロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)との関連をみた。対象者は,男性64名(26.1%),女性181名(73.9%)の合計245名で,40〜64歳107名(43.7%), 65歳以上138名(56.3%),年齢の平均±標準偏差は64.0±10.4歳であった。 ロコモ疑い有は27.3%であり,年代別にみると,40〜64歳14.0%, 65歳以上42.9%であった。体格・体力とロコモの有無との関連をみるためにMann-Whitney検定を行った結果,ロコモ疑い有の人は疑い無の人に比べてBMIが有意に高かった(p=0.004)。 また,65歳以上で,ロコモ疑い有の人が疑い無の人に比べてBMlが有意に高かった(p<0.001)。 体力とロコモの有無との関連では,65歳以上の10m障害物歩行(p=0.010)と6分間歩行(p=0.022)の項目において,ロコモ疑い有の人が疑い無の人に比べて評価得点が有意に低かった。今回,加齢に伴う体力の変化や体格はロコモに関連していることが示され,ロコモ対策として歩行能力の維持,適正な体重管理の重要性が示唆された。 自己でのロコチェック, 体重管理が重要であり,また,体力・体格に応じた運動・スポーツの選択が重要でそのための支援を行っていく必要がある。
著者
木村 素子
出版者
宮崎大学
雑誌
宮崎大学教育文化学部紀要. 教育科学 (ISSN:13454048)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.45-62, 2010-03-30

本稿は、アメリカ通学制聾学校史研究における研究視点とその変遷を整理するとともに、そのような視点から研究が行われた教育的、社会的背景について明らかにすることを目的とする。日米の研究を対象に検討した結果、アメリカでは1920年代〜1950年代の聾教育再編期、特殊教育確立期の研究は沿革史的研究が中心で、その後は、1975年のPL94-142施行の学校措置への影響を検証する視点からの研究が少数見られた。1980年代からは聾教育史を手話・聾者復権的視点から編纂する意図による研究が行われ、しばらく聾児のインクルージョンを強力に批判する研究が行われるが、1990年代半ばからは多様性に寛容なインクルージョン理念の世界的普及を背景に、一次資料、とくに聾者によるメディアの資料等を用いて、通学制聾学校史を捉え直す研究が行われた。一方、日本では、1970年代〜1980年代は、特殊教育分野での統合教育の試行、聾教育分野での口話法の改良の機運を背景として、研究がなされた。1990年代からは、公立学校問題、都市社会問題と関連づけながら、聾の特殊学級として通学制聾学校に着目する研究が着手される。さらに、2000年代に入ると、複数都市の横断的検討によって資料の制約を補完する方法論の下、一次資料を用いた研究が始まる。この時期の研究の背景には、インクルージョンが進展する中で、特殊教育、とりわけ特殊学級の再評価が必要になってきたことが挙げられる。
著者
赤尾 勝一郎 佐伯 雄一
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

植物体内に生息する窒素固定細菌は窒素固定エンドファイトと呼ばれている。窒素固定する植物は根粒菌の共生するマメ科植物とフランキアの共生する十数種の植物に限られている。しかし、ブラジルにおいて、20数年前、サトウキビの中には根粒構造を伴わない共生窒素固定系の存在が示された。窒素固定エンドファイトの生息するサトウキビの中には60〜70%の窒素固定寄与率を示す場合のあることが報告された。その寄与率はマメ科植物-根粒菌の共生系に匹敵する。また、窒素固定エンドファイトは、サトウキビの他にイネ、ムギ、ソルガムといったイネ科の主要作物、バナナ、パイナップル、チャなど、科を越える多くの植物種に内生することも明らかにされた。このことは、マメ科以外の作物にも窒素固定機能を付与することの可能性を示した。しかし、これを実現させるためには幾つかの解決すべき問題点がある。その中で特に重要なことは、有用菌の選抜と、植物体内への定着と増殖である。増殖と定着の指標には窒素固定量の把握が必須であり、本研究では、この3点を重点的に検討した。研究期間は平成16年から19年までの4年間であり、前半では、GFP標識のHerbaspirillum sp.の接種試験、サトウキビとサツマイモから単離した窒素固定細菌の同定と窒素固定活性の測定と、サトウキビとサツマイモから単離した窒素固定細菌へのGFPによる標識を試みた。後半には、GFP標識菌を利用した接種法の検討と、一定の生育期間を通じて窒素固定量を推定する方法を検討した。その結果、サトウキビから12菌株、サツマイモから27菌株の窒素固定細菌を単離した。供したHerbaspirillum sp.、Enterobacter sp.、Pantoea sp.に関する宿主特異性は認められなかったが、菌と植物種や品種との間には親和性の強弱が認められた。また、接種法としてはレオナルドジャーに植えた幼植物の地下部に10^8cells/mlの高濃度が高い効果を示したが、実用技術としては萌芽茎への接種を検討すべきであるとの結論を得た。
著者
前田 ひとみ 高村 寿子 渡邉 至 大石 時子
出版者
宮崎大学
雑誌
南九州看護研究誌 (ISSN:13481894)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.11-18, 2007-03
被引用文献数
2

Objectives: In order to develop a peer counseling program as a new strategy for youth-to-youth sex education, we examined whether the program modified cognition and behaviors of high school students regarding sexuality.###Methods: We administered a questionnaire about sexuality to high school students who participated in a peer counseling program under the auspices of the health centre from December 2003 to July 2004. The questionnaire contained Questions about sexually transmitted diseases, contraception, decision-making related to sexual behaviors, self-efficacy and self-esteem. This peer counseling program provided information about sexuality and negotiation skills in face of sexual pressures, was provided for hig-h school students by university students who had finished the peer counselor course using an empowerment-evaluation approach. The data were collected before and three months after the peer counseling program.###Results: 125 high school students were enrolled the peer coungeling program. The data from all students were collected before the peer counseling program. Follow-up data from 86 high school students were collected three months later. We were able to analyze 77 paired data on the pre-to post-intervention questionnaire.### 94.1% of the high school students had a favorable impression of the peer counseling program. They learned communication skills, and they reported an improved ability to form good human relations after the program. In addition, they reported an increase in knowledge and recognition about their sexuality. Scores of self-efficacy and self-esteem were higher after the program compared with scores before the program. As a result, it was suggested that their decision-making about safer sexual behaviors was improved.###Conclusion: Peer counseling, which is a new strategy of youth-to-youth sex education, was effective###in providing information and empowerment about sexuality for high school students.
著者
清水 高正 永友 寛司
出版者
宮崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

Dot-immunobind(DIB)法による鳥系マイコプラズマの簡易同定法及び鶏のマイコプラズマ感染抗体の検出法を検討し、次の成績を得た。1)DIB法には、先人が使用したニトロセルロース膜や最近開発されたニトロプラス2000膜よりも、Durapore膜が染色性,弾力性の点で優れていた。2)マイコプラズマの液体培養を抗原とする家兎抗血清を用いたDIBでは交差反応が著明で、同定は不能であったが、培養液を遠心洗滌して得た菌体を抗原とした場合;ホモ抗血清はヘテロ血清より遙かに高いDIB力価を示した。従って、この方法もしくはモノクローナル抗体を用いたDIB法は、マイコプラズマの簡易迅速同定法になることが示唆された。3)SPF鶏の血清の多くは1:20以下、稀に1:40の弱いDIB力価を有することが判明した。一方、実験感染鶏では1週後から1:160以上の高いDIB力価が産生され、11週まで高い抗体価が保持された。4)実験感染鶏及び自然感染鶏の血清では、HI陽性(【greater than or equal】10)とDIB陽性(Greater Than or Equal80)及びHI陰性(<10)とDIB陰性(【less than or equal】40)がよく一致し、自然感染鶏175羽のうち両反応陽性の鶏78例では、両抗体価の相関性は、r=0.81(P<0.01)であった。5)M.gallisepticum(MG)とM.synoviae(MS)の両抗原を用いたDIB抗体価の測定成績と、これらの両抗原を同一の膜片に固定させ、血清の定点希釈法で実施したDIB反応の成績は、い一致率を示し、後者の方法は野外で感染抗体の有無を調べる際の簡便法になるものと考えられる。以上の成績から、マイコプラズマ以外の病原体についても本法の応用が検討され、それらの抗原が同一膜片上に固定されたキットが市販されるなら、DIB法は各種鶏病の簡易・迅速診断〓〓〓