著者
三宅 禎子
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.33-44, 2013

国連を中心とする女性差別撤廃の取り組みに、欧米フェミニズムの新しい女性解放の視点、ラテンアメリカ・カリブ地域女性たちの視点が加わり、世界の女性差別撤廃運動は大きく前進した。しかし、それは、当初から相互理解によって進められてきたわけではなく、各地域の女性たちが置かれている状況の相違による対立、対立によって生じたそれぞれの概念の変容を通して達成された。そこには、国連主導の世界女性会議、ラテンアメリカ・カリブ地域フェミニスト集会などのNPO団体活動の活発化によって、互いに影響し合いながら、フェミニズムのグルーバル化のメカニズムが働いた。
著者
三浦 修
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.115-136, 2011-07

宮沢賢治の作品研究や読解には、岩手県の風土の研究や理解が不可欠といわれる。童話「虔十公園林」は、この風土を主要な舞台とし、当時の都市公園の景観が背景に描かれている。風土は自然環境と社会環境で捉えられる。ここでの論考は、次の3点にまとめられる。1)この短篇に出現した人口林の種スギと自然林の種ブナについて、作品にどのように描かれているかを分析し自然景観の植生景観を復元した。ここで復元されたスギ優占の屋敷林、社寺林などは、地域の人々が生産や生活のために造った、人文景観の集落景観でもあった。一方、宮沢賢治が、自然林のブナをどのような生態学的特性をもつ植物と捉えていたかは解明できなかった。2)短篇の題名にもなった術語「公園林」は、1912年に出版された林学者本多静六著『造林學本論』に由来し、農村のスギ植栽林を都市の児童公園の緑地に変換するこの物語において、重要な役割を果たす科学的内容をもっていた。しかしながら、その概念を作品に適用した宮沢賢治には、科学的中身の吟味や用法の適否を検討することなどの関心が薄かった。3)「虔十公園林」は児童公園の機能を付与されている。このアイディアは、日本の都市公園成立に関わる文献と報道情報や、東京などの都市公園から構築された。とくに、1924年の関東大震災復興事業案に提示された小公園は、この短篇成立に重要な役割を果たした。
著者
志柿 禎子
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.35-44, 2002-09-30

プエルトリコ(Puerto Rico)では1929年に,読み書き能力があることという制限つきであったものの,初めて女性の参政権が認められた。これは,1929年にラテンアメリカ・カリブ地域の中で最も早く女性参政権が成立したエクアドルに次いで2番目に早く,世界的にみてもかなり早い時期に女性参政権が成立している。 1975年メキシコで開催された第一回女性世界会議以降も,女性たちを取り巻く状況は大きく前進し,70年代以降,家族法の改正,教育の場における男女差別の解消,セクハラ禁止法,ドメステック・バイオレンスを犯罪とする法律成立など,女性の状況は大きく改善された。これらの法律が制定されていく過程では,政党の運動とは別に形成されていた女性運動からの政府,行政側への働きかけが極めて重要な役割を果たしている。この課題解決に当たっては,多くの女性組織が思想の違いを超えて,また,以前から女性運動の障害として指摘されていた党派主義の問題を乗り越えて連帯してこの課題に取り組み,成果をあげた。現在も数多くの女性団体が活発な活動を続けている。
著者
牛山 素行
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)2005年豪雨災害の特徴解析2005年に発生した豪雨災害のうち,特に台風14号による災害(9/4-8)に注目し,被害の大きかった宮崎県を中心に現地調査,資料解析を行った.豪雨災害が多発した2004年の事例と比較しても,大きな被害を生じた事例であり,数年に1回程度発生する規模の事例と判断された.宮崎県日之影町においては,長年の地域の取り組みにより早期の避難が行われ,20世帯以上が全壊する洪水・土砂災害にもかかわらず人的被害を生じなかった事例を確認した.また,宮崎市においては市による電子掲示板上で市民・市役所間の災害時における迅速な情報交換が行われ,わが国におけるほぼ初めての形態であることを示した.これらの成果は災害後1週間以内にweb公開し,数万ページビュー/日の参照があり,報道機関からも多くの問い合わせを受けた.(2)台風0514号災害時の死者の死因に関する検討台風0514号による人的被害(29名)に関し,台風0423号の際に開発した手法を適用して,死亡状況に関する解析を行い,そのほとんどが,「土砂災害により,高齢者が,屋内で死亡」であったことを指摘した.これは,洪水による青壮年の死者が目立った台風0423号の事例とは異なり,近年整備されている災害情報の活用による救命の可能性がある犠牲者が中心であったことを指摘した.また,この解析手法の有効性を示した.(3)豪雨時の自治体の対応に関する調査2004年度末に調査票を配布した,2004年の豪雨災害時および災害後の被災,非被災自治体における災害対応状況についての調査を解析した.その結果として,(a)豪雨災害の頻発は防災担当者の豪雨災害に対する関心を高める事は確かである。たとえば,リアルタイム豪雨情報の参照頻度が高まる,豪雨災害による避難勧告の可能性を予想する市町村が増加するなどの変化が見られる.(b)関心の高まりは具体的な対策にはつながらない.たとえば,災害前39%の市町村が指定避難場所の選定に浸水の影響を考慮していなかったが,災害後,見直しを行ったのはそのうち12%にすぎない.(c)2003年水俣市土石流災害の教訓は,ほとんど他の市町村に波及していない,(d)防災ワークショップが1割程度の自治体で実施されているが,その半数程度が住民だけで行われている,などを指摘した.
著者
藤井 義久
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

欲求不満傾向の強い児童生徒ほどキレやすい傾向が見られる。そのようなキレやすい児童生徒を生み出しやすい母子関係は国によって異なっており、日本においては特に母親の愛情不足が、北欧諸国においては特に母親によって自分の自由が束縛されることがキレやすい児童生徒を生み出す大きな原因になっていることがわかった。そして、キレやすい子供に特徴的な甲高い声に反応してキレやすい母親が多く、そのような母親は特に外部に対して様々な子育て支援を求めていることが明らかになった。
著者
岩渕 光子
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

住民対象の検診受診者で睡眠健康教室参加希望者35名に、調査内容を説明し同意を得て、昼寝レクリェーション、ミニ講義、グループワーク、軽運動を週3回、2週間実施した。教室初回には睡眠に関する習慣を振り返り各自目標を設定し、教室開催の度に達成状況を確認した。教室は冬期間の開催であり雪や道路の凍結が心配されるため、不参加でも自宅で取り入れるよう習慣の継続を促した。教室終了後はフォローアップ教室、支援レターの送付を行い、教室終了2年後までの睡眠状態と生活習慣の変化を追跡調査した。実施前、直後、1年後、2年後のすべてに回答のあった11名(男性3名、女性8名、71.18±6.08歳)を分析対象とし、介入の効果及び留意点を検討した。1 睡眠に関する困り度は、実施前「非常に困っている」1名、「少し困っている」3名であったが、2年後は、1名は「少し困っている」のままであったが、3名は改善が見られた。2 「朝の気分」(五肢択一法)は、実施前と直後、1年後及び2年後との間で改善の効果が見られ維持されていた(p<0.05)。「起床時刻」は2年後と直後、1年後の間で差があり、時間の経過と共に早くなっていた(p<0.05)。3 入眠にかかる時間は2年後16±13分と実施前30±28分、直後25±22分との間で短縮する傾向(p<0.1)がみられ、改善には長期的な視点が必要であると考えられた。4 「時間の規則性」(四肢択一法)は、不規則であった人も全員、直後には規則的な時間に改善するが、起床時刻では直後と1年後、入眠時刻では実施前と1年後、睡眠時間では直後と1年後、2年後の間に不規則になる傾向(p<0.1)がみられた。規則的な生活の理解について、もっと、支援内容に追加していく必要があることが示唆された。
著者
志柿 禎子
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.23-31, 2001-03-30

In this paper I would like to discuss the identity of Puerto Rican People in the United States. Since 1898 Puerto Rico has been a US territory and since 1917 Puerto Ricans have had US citizenship. This fact has caused many Puerto Ricans to emigrate to the mainland. Now Puerto Rican emigrants' population on the mainland is on a level with the homeland, Puerto Rico. With the growth of Puerto Rican emigrants to the US, the image of being Puerto Rican has been changing. Now, not all Puerto Ricans speak Spanish and love the Puerto Rican dishes. We can say that Puerto Rican identity has been changing as society has changed.
著者
アーメド M.ファリドウヂン ラハマン S.M.ルトフォル アーメド A.S.M.メスバーウヂン アリ M.エムラン
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.239-250, 0000
被引用文献数
1

本研究はバングラデシュ、Gazipur地域(以前はDhaka地域と称していた)の最小行政地区(uapzmas)としてのGazipur,Kapasia,Kaliakairを対象とし、各地区から30戸の農家を選定して調査したものである。調査にあたり、農家菜園の構造、作物構成、作物の多様性、農家の食糧確保に対する貢献、作物種類の維持、作物の生産性の制約、社会経済的な農業森林体系維持上の重要性に着目した。農家菜園の平均規模は8アールで、農家規模が大きくなると菜園も大きくなる傾向が認められた。土地なし農家と小規模農家の菜園では、樹木並びに疎林は狭小である。調査地域平均では、43種類の有用樹木(果樹並びに木材用樹木)が確認された。すべての農家で果樹が最重要であり(Shanonの多様性指数はH=7.25)、ついで木材用樹種となる(H=4.83)。全43樹種のうち28種は園芸用であり、15種は用材、燃料用である。農家経営規模が大きくなると農家所得も多くなる。調査地域では多岐にわたる野菜(32種)が生産されているが、多くは自家消費むけである。ジャックフルーツ、マンゴー、ナツメヤシ、ライチ、マホガニー、ナンバンサイカチの下作としてアマランサス、インド・ホウレン草、アロイド、カボチャ、唐辛子、パイナップル、ウコン、豆類、蕪などが栽培されている。まだカントリー・ビーン、苦ひょうたん、スポンジひょうたん、ささげ、しょうがなどはジャックフルーツ、マンゴー、ライチ、マホガニー、ナンバンサイカチに這わせて栽培している。農家は菜園で生産した樹木、果物、野菜の一部を販売して所得を得ている。大規模農家では樹木からの所得が大きく、この5年間の平均で22,458カタ(バングラデシュ通貨単位:1タカは約2円に相当)に達し、ランドレス・ファーマーでは6,150タカにとどまる。総所得も農業経営規模が大きくなるにつれて多くなる。ジャックフルーツはとりわけ収益性の大きい樹種である。多くの農家は用材、燃料材より果樹を好んで栽培する。樹木の栽植にあたって問題となるのは獣害であり、調査農家の68%に及んでいる。虫害も多く、27%がその被害を報告している。菜園は、より適切な管理、調査、協力体制の整備と普及によって改善の余地がある。また、低生産性の作物を生産性の高い作目に転換することにより改善できる。
著者
米地 文夫一 一ノ倉 俊一 神田 雅章
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.49-63, 2013-11

筆者等は「北上平野にとって、南部北上山地西縁は東方の異界との境界として生き続けてきたという時空間認識」を賢治が持っていた、という仮説を立て検証を行なった。賢治が北上平野に対する南部北上山地を、中国の平野に対するチベット高原(賢治のトランスヒマラヤ高原)に見立てたその背景には、この地域がかつて大和朝廷勢力軍事首長下の西の平野、奥六郡に、東のエミシの地、閉伊が対峙した時代があり、アテルイや安倍貞任などの伝説や、様々な郷土芸能、祭礼などにその歴史が変容し伝承されてきたことがある。たとえば、南部北上山地西縁部に位置する兜跋毘沙門天像を祀る寺社の配列は東方に対する結界であり、その西方は谷権現(丹内社)信仰などを持つ異界となる。しかし西側が設けたこの結界はむしろ、後々東側の西に対する結界となった。賢治もその結界は中立的な境界線というより、むしろ異界の始まりであると感じていた。
著者
三浦 奈都子
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

静脈注射を行っていく上で少なからず経験するであろう点滴漏れに対するケアは冷罨法や温罨法と様々であり,統一性がないのが現状である.本研究では,点滴漏れ時のケアを確立することを目的に,実験動物(ラット)を用いて抗生物質製剤を中心とする基礎的研究を実施した.静脈注射を行っていく上で少なからず経験するであろう点滴漏れに対するケアは冷罨法や温罨法と様々であり,統一性がないのが現状である.本研究では,点滴漏れ時のケアを確立することを目的に,実験動物(ラット)を用いて抗生物質製剤を中心とする基礎的研究を実施した.その結果,パンスポリン^<【○!R】>(セフェム系抗生物質製剤,pH5.7〜7.2,浸透圧比1)が漏れた直後に冷罨法(16〜20℃)を30分間施行すると,皮下組織への炎症性細胞の浸潤が抑制され,温罨法(40〜43℃)を30分間施行すると,炎症性細胞の組織浸潤,筋壊死が促進されることを明らかにした.また,パンスポリン^<【○!R】>が漏出した際の組織傷害の種類は,表皮の壊死を伴わない真皮層の炎症(以後,起炎症とする)であることが明らかとなった.次に,pHの違いによる組織傷害の程度と種類,罨法の効果を明らかにするために,異なる薬剤を用いた実験を行った.その結果,セフェム系抗生物質製剤であるファーストシン(8)(pH7.5〜9.0,浸透圧比1)とグリコペプチド系抗生物質製剤である塩酸バンコマイシン^<【○!R】>(pH2.5〜4.5,浸透圧比1)による組織傷害の程度に違いは認められなかったが,パンスポリン^<【○!R】>と同様,起炎症性の薬剤であることが明らかとなった.これらの薬剤が血管外に漏出した場合,温罨法を実施することにより,皮下組織の炎症性細胞の浸潤が促進されることを明らかにした.全ての実験において罨法を実施するために用いた素材は,吸水ポリマーを使用した凍結タイプの保冷剤であり,皮膚へ密着しにくい特徴があったため,現在不凍タイプの素材にて同様の実験を行い検討中である.また,薬剤漏出直後に実施する罨法の適切な継続時間を10分から60分の間で検討中である.
著者
川崎 雅志 坂本 拓子 高橋 留美子 西田 友美子 狩野 美穂 昆 良枝 菅原 千晶
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-12, 2006-03

血漿および肝臓脂質レベルに対するソバ茶摂取の作用をコレステロール無添加食(実験1)およびコレステロール負荷食(実験2)を与えたウイスターラットにおいて検討した。コレステロール無添加食摂取時,標準濃度(2g/100ml)ソバ茶の摂取により,血漿超低密度リポたんぱく質(VLDL)+低密度リポたんぱく質(LDL)コレステロール濃度が有意に低下した。しかし,コレステロール負荷食摂取時には,標準濃度ソバ茶の摂取による血漿(VLDL+LDL)コレステロール濃度に対する有意な差はみられなかった。コレステロール負荷食摂取時には,標準濃度ソバ茶の摂取により,肝臓トリグリセリド含量が有意に減少した。これらの結果より,標準濃度ソバ茶の摂取によって,コレステロール無添加食摂取時に血漿(VLDL+LDL)コレステロール濃度を低下させることによる血漿コレステロール濃度低下効果がみられ,また,コレステロール負荷食摂取によって蓄積された肝臓トリグリセリド含量を抑制することが示唆された。
著者
高橋 英也 江村 健介
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、「ラ抜き言葉」や「レ足す言葉」、岩手県宮古市方言で用いられる能力可能形式「エ足す言葉(例:読めえる)」といった、日本語の可能動詞の形式に見られる「方言多様性」と、それを実現させる日本語母語話者の「文法知識の獲得」を、日本語の膠着性の理論的定式化という観点から考察する。特に、語彙の形態分解と文法構造の階層性の間に一定の対応関係が存在することを標榜する分散形態論(Marantz 1997他)の枠組みを用いて、日本語の可能動詞化を具現するラレ/rare/が2つの独立した形態素(r)arとeに分解されるとの作業仮説に立脚し、可能動詞の諸相に広く目を配った、多角的かつ統合的な研究を実施する。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.179-196, 1999-07-31

1992年4月、ビザ無し渡航が始まり、根室花咲港がロシア船に対し解禁になると、根室と四島の交流は急速に進んだ。相互訪問の中で、四島の現状が明らかになり、現島民であるロシア人との親交も生まれた。根室に上陸するロシア人船員の数は年間延べ2万人に達し、海産物の水揚げとともに根室経済の活性化の新しい要因となっている。1997年11月、クラスノヤルスクで行われた日露非公式首脳会談で、2000年までの日露平和条約締結を目指し、双方が全力を尽くすとの合意が達成された。根室住民は、四島との自由往来や一体化した経済圏としての繁栄など、現実的な利益をもたらす領土問題の解決を望んでいる。領土問題の解決に不可欠と考えられている、信頼醸成、経済関係の強化、さまざまな協力関係の促進などの要因は、根室と四島の間で、日露国家間に先行して進んでいる。
著者
吉田 仁美
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度は、第一に、主に内外の文献収集につとめた。その際には統計情報も収集し、現在、文献を整理し分析を行っている。また、統計情報に関しては国連統計委員会などの情報がウェブ上に掲出されており、常に動向をチェックする必要があったので、インターネット上の情報も参考にした。第二に、障害統計やデータに関して重要だと思われる関連文書、国際的文書、データを収集して分析・考察を行った。中でも、障害統計の整備に向けて重要だと思われる「ワシントン・グループ」の活動に着目して研究を進めた。同時に国連統計委員会を支える「シティ・グループ」への理解を深めることも意識的に行った。第三に、障害測定に関してワシントン・グループが開発した「短い質問セット」が世界各国でどのように使用されているか(国勢調査、全国調査、障害モジュール、事前テスト等)文献資料やインターネットからの情報をもとに調べた。このことと関連して、障害測定の枠組みの基礎となるWHOのICF(国際生活機能分類)の形式について検討を行った。第四に、これらの研究に関して、自主的な研究会や英語文献学習会を開催するなどして継続的に研究を続けられるように工夫をした。本研究は外国語文献に依拠することが多く、専門用語の翻訳等は注意深く行う必要があった。その場合は適宜、専門家の指導・助言を受けながら進めた。第五に、日本の高等教育の障害者のニーズを把握するために先進的な取り組みをしている大学数校にヒアリングを実施することができた。なお、今年度の成果の一部は岩手県立大学社会福祉学部紀要に投稿し、掲載された。
著者
千田 睦美 水野 敏子
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学看護学部紀要 (ISSN:13449745)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.11-17, 2014-03

目的:本研究の目的は,認知症高齢者の看護を実践する場面における困難について明らかにすることである.方法:認知症高齢者の看護を行っている看護師26 名に半構成的面接を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:認知症高齢者を看護する看護師の困難は,29 のサブカテゴリーから,【認知症の症状への対応】【認知・コミュニケーション障害】【患者の自律性と看護の両立】【患者同士の関係性】【患者の症状・状態の理解】【看護方針と看護の継続】の6 カテゴリーとして表された.特に,BPSD に関連した困難の内容が目立った.結論:認知症の症状に関連する困難,患者と看護師のかかわりに関連する困難,認知症患者への看護に関連する困難という,認知症看護に特有の困難が抽出された.今後は早急に認知症の理解と看護方法の模索,看護態勢の充実など,困難を乗り越える取り組みを検討する必要性が示唆された.
著者
許 福子 李 秀英
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-25, 2003-09-30

With the rapidly graying population in China in the late 20<th> century, elderly support and care has become a serious social problem in the urban communities, especially for those over 65. The problem is acute among the elderly who had worked and retired during the "Economic Planning Era" and also among the low income category as well as those with poor health or without any kin and kith to provide such care and services for this group of senior citizens. This paper examines the various issues and solutions of community-based in-home care for the elderly in Minquan JieDao, Dalian, China including an innovative approach for the care of the elderly poor in China.