著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.185-197, 0000

岩手県久慈市とリトアニアのクライペダ市は、琥珀を産出する小規模な沿岸都市という共通点から1989年に姉妹都市提携した。当時、ソ連邦離脱による独立回復を目指すリトアニアは、ソ連政府と対立して制裁を受けていた。久慈市は、日本政府に先んじてクライペダ市の支援活動に踏み切り、大胆な自治体外交を展開する。その結果、両市民間に友情と連帯が生まれ、両市は距離や体制の差異を超えてユニークな交流を育んでいる。
著者
細谷 昂 米地 文夫 平塚 明 佐野 嘉彦 小林 一穂 佐藤 利明 劉 文静 山田 佳奈 吉野 英岐 徳川 直人
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-73, 2004-01-16

中国河北省〓台市〓台県の前南峪村は、1995年以来「前南峪経済試験区」となって、模範村として全国的にも注目されるにいたっている。その理由は、(1)「生態農業」を、(2)集体経営で実施し、成功を収めたからである。つまり、(1)村を取り囲む山地に、栗やりんごなどを植林して緑化し、洪水を防ぎながら、果樹作によって経済的にも村を豊かにしたのである。しかも(2)これらの事業を、村全体の集体経営としておこなっている。人民公社時代の集体農業の非効率性を解決するために、中国では生産請負制を導入した。その具体的なやり方はさまざまであったが、一般的には、土地を個人に分配して請け負わせるという、個別化の道であった。しかし前南峪では、村民のきびしい議論を経て集体経営の道を選び、成功したのである。現在では、この集体経営のなかに工業をも導入し、その収入が畑作や果樹作を上回るにいたっている。しかし、(1)環境保全と生活の向上との両方を追求してきた「生態農業」が、経済発展のいっそうの追求のなかで環境破壊に至るのではないかという問題、そしてまた(2)集体経営におけるる「個と集団」の問題が、生活水準の向上、とくに学歴水準の向上によって「個の」自己主張という形で顕在化するのではないかという問題を抱えていることを見逃すわけにはいかない。
著者
ISHIBASHI Keitaro
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.19-24, 2006-03

トマス・ドゥルー作『サフォーク公爵夫人の生涯』(1623-1624)に関する批評は多くない。その批評史は、アーヴィング・リブナーのものを要約するだけで十分である。リブナーによれば、本劇はカトリックの主教を批判するだけのエピソード主体のメロドラマで、1620年代のものとしては「アナクロニスティック」な伝記劇にすぎない。それにしても、なぜ劇作家は、そのような流行遅れの伝記劇を再現したのだろうか。この疑問に答えるために、イングランド国王ジェイムズ一世の義理の息子で、大陸のプロテスタント主義の指導者として期待されたパラタイン選挙候フレデリック五世とみなされている、劇中のポーランド国王パラタインに着目したい。この人物に注意を払うのなら、当時のイングランドが抱えていた政治的状況が明らかになる。すなわち、カトリック主義の女王メアリの権威に公然と反対するパラタインの挑戦的な姿勢には、ジェイムズのスペイン融和政策に反対し、武力でカトリック勢力を根絶しようとする、イングランドの好戦的なプロテスタント主義者の政治的主張が映し出されているのである。
著者
富澤 浩樹 阿部 昭博
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,OPACで管理された震災関連資料(以下,資料)の利用活性を目的としている.具体的には,資料の収集・保存・公開活動とその利活用を一体的に捉えたシステムデザインに基づいて試作システムを研究開発するとともに持続可能なシステムの在り方について検討し,その運用モデルを構築していく.昨年度は,震災学習・スタディツアーの知見整理と現地調査を行った.そして,それらを踏まえて試作システムの機能改善を行い,新たな課題を抽出した.今年度は,これまでの成果を総合的に検討した上で,主に以下の2点を進捗させた.1.試作システムの改善と新資料作成WSの詳細設計昨年度新たに見出された試作システムの主な課題として,(1)現地調査時に撮影された複数画像データのアーカイビング,(2)資料へのタグ付けの効率化,がある.(1)については複数画像をスポット毎にアーカイブ可能とする改善を施し,(2)については行政資料の多くがPDF形式で公開されていることに着目し,PDFを対象としたメタデータの半自動付与機能を研究開発した.そして,新資料作成WSの詳細設計を行った.2.新資料作成WSの試行と評価及び課題抽出関係者及び対象層へのヒアリングを踏まえ,「震災を通して学ぼう!テーマ発掘プロジェクト」と題して市民及び学生参加者を募り,新資料作成WSを実施した.その結果,参加者の調べ学習の成果の他,岩手県山田町と陸前高田市を対象としたスタディツアーのレポート(行程,参加者の意見・感想,画像データ)が試作システムにアーカイブされ,同WSの最終回(振り返り)で用いられた.本試行について,参加者及び関係者からは概ね肯定的な評価を受けたが,システムを効果的に用いるためにより多くの参加者を巻き込む必要があることが明らかとなった.
著者
芝田 耕太郎 岩田 智
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.17-26, 2004-09-30

長期的地価動向によれば、バブル経済崩壊以降13年間、大都市(政令指定都市以上の都市)と地方都市(人口50万人以下、中でも人口20万人以下の都市)との地価は、力格差 ^<(1)>を反映し、住宅地、商業地ともその格差が拡大している。また、東京と地方都市を比較すると、東京では、中心部ほど商業地地価が回復しているのに対し、地方都市ではむしろ中心部の方が地価下落が激しい。地方都市は東京に比較して、景気回復が遅れているだけでなく、中心部の空洞化という共通の構造的問題を抱えている。バブル経済崩壊後の大幅な地価下落を経て、現在の不動産市場は、投機需要から実需^<(2)>中心の市場へ構造的に変化した。この結果、利便生や収益性の差により、地価形成され、商業地では特に土地利用による収益力を反映し地価形成される。したがって、今日、不動産投資の主体であるREIT^<(3)>やグローバル化による外国資本は、まさにキャッシュフローによる収益性、利回りで投資判断する。東京などの大都市圏の収益性の高い物件中心に投資が行われ今後、東京とその他の大都市、さらに地方都市との地価格差は、ますます拡大しよう。 規制緩和をより促進する方向と地方への権限移譲の方向性は大いに歓迎すべきであるが、一方・経済効果のある大都市、中でも東京中心の政府の都市施策は、今一度再検討すべきであるといえる。
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.53-69, 2007

The territorial dispute has prevented Japan and Russia from signing a peace treaty for six decades after World War II. Today the Japanese government claims "The Northern Territories" as inherent Japanese territories, though for about 20 years after the war there had been no consensus in Japan on what lands the Soviet Union should give back. Some demanded all of the Kuril Islands ; others sought only the southern Kurils. Japan's first postwar claim to the Kurils came in the form of a petition, submitted by the Mayor of Nemuro to General MacArthur in December 1945. Until 1951, five more petitions were also submitted to the GHQ from Nemuro, where 90% of the former inhabitants of the Kurils had lived. This article analyses the logic of the territorial claim by the people of Nemuro on the basis of these petitions. It also analyses the Japanese official position toward this issue and clarifies how the national policy of the return of "The Northern Territories" had been formed.
著者
黒岩 幸子
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.95-103, 2015

This is a report of a research trip from August 3 through August 9, 2014 to borderlands of Northeast China. Starting from Changchun, the author made a round trip of approximately 1,700km via Jiamusi, Mudanjiang and Yanji by railway. Historical places of Manchukuo (Japanese puppet state, 1932-1945) still remain along the railway lines. Both Heilongjian and Jilin Provinces have borders with Russia, and Yanbian Korean Autonomous Prefecture in Jilin Province has a border with North Korea.Railway construction in Northeast China was started by the Russian Empire at the end of the 19th century and was continued by the Japanese Empire in the first half of the 20th century. In the period of Manchukuo, South Manchuria Railway Company (Mantetsu) performed an important role for the Japanese domination over Manchuria. After the establishment of the People's Republic of China, the whole railway was nationalized.Being connected to Russia by land and having good access to the Japanese See, border regions of Northeast China have possibilities for further economic, social and cultural development.
著者
泉山 若菜 金澤 奈津美 小濱 広子 篠木 千佳 摂待 詩織 千葉 さゆり 川崎 雅志
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-30, 2015-03

異なる種類の食餌摂取の血清および肝臓脂質レベルに対する影響をラットにおいて検討した。ラットには,実験食として日本料理,西洋料理,中華料理を,ヒトが一般に摂取している食事を組み合わせてメニューとし,カロリーを等価として与えた。副睾丸脂肪組織の絶対重量は,3 食の間で有意な違いはみられなかったが,相対重量が,日本食摂取に比べて洋食摂取によって有意に増加し,中華食摂取によって増加の傾向を示した。血清トリグリセリド濃度ならびに肝臓トリグリセリド含量が,洋食摂取によって日本食摂取に比べて有意に増加し,中華食摂取に比べて増加の傾向を示した。肝臓コレステロール含量が,洋食ならびに中華食摂取によって日本食摂取に比べて有意に増加した。日本料理,西洋料理,中華料理から調製した異なる種類の食餌摂取により血清および肝臓脂質レベルに対して異なる作用がみられ,こうした異なる作用は,少なくとも一部としてそれぞれの食餌の成分組成の違いによるものであることが示唆された。食品の作用は様々な成分の栄養的多様性により現れることが考えられ,バランスのとれた食事を摂ることが重要である。
著者
窪 幸治
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.213-222, 2014-03

本稿は、復興過程における土地の利用調整のための制度の今後の発展可能性を探るため、現行法制上の限界がどこにあるかを導き、立法上の指針を示すため、憲法上の制約、現行各法制とのバランス、東日本大震災における都市法制の刷新について概観した。まず、憲法29条は公共の福祉への適合という制約の下、財産権の形成の自由を立法府に与え、それを具体化した土地基本法は、土地の特性を踏まえた適正・計画的利用、開発利益の社会還元や受益者負担を土地に関する原則として掲げており、未だ抽象的ではあるが、土地利用調整の可能性は相当広いものと言える。さらなる具体化には、従来の法制における規制の目的、程度、手続保障等との均衡をとる必要があり、各法制から今後の検討素材を抽出した。都市法制の刷新としては、復興特区法により都市計画がない地域、農業利用が中心となる農業振興地域も含め、復興ニーズを起点とした復興整備計画の下、土地の計画的利用の途を開いた点が評価されよう。もっとも、復興まちづくりを住民主導で果たすための集団的な自己決定や、個人への直接的な支援をもたらすための生存権の論理(憲法25条)の強調など、残された課題が浮かび上がった。
著者
高橋 英也
出版者
岩手県立大学
雑誌
リベラル・アーツ (ISSN:18816746)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-20, 2013

This paper is an attempt to provide a morphosyntactic analysis of resultative constructions in Japanese within the current Minimalist framework proposed in Chomsky (2008). Specifically, we argue that resultatives in Japanese are not to be analyzed as predicates, in spite of the tradition in the literature; rather,they are morphologically, as well as functionally, adverbial modifiers, which is considered to be valid in light of the fact that Japanese is an agglutinative language. In particular, we first argue for Mihara's (2008) proposal that Japanese resultatives are to be divided into two types (PPs and APs), and then propose that the syntactic and semantic differences between them can be given a natural and unified account in terms of the application of labeling algorithms on External Merge. We show in the second half of this paper that the proposed adverbial analysis of Japanese resultatives has an additional empirical advantage in that it can correctly predict various facts which emerge from the comparison of English and Japanese resultatives, including those which would even be mysterious under previous analyses, solely based on the apparent structural parallelism between the two languages.
著者
米地 文夫
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.289-302, 1999-07-31

「東海」は多義的な地名である。現在では,東海道,東海地方,東海工業地帯など,本州中部の地名として用いられることが多い。いうまでもなく本来の「東海」は,日本列島の東側の海域の名である。歴史的には,日本をとりまく海を東海,南海,西海,北海とした4区分が明治維新まで用いられていた。「東海」の範囲は伊勢湾沖から津軽海峡まで,もしくは北海道南西岸沖までであった。現在の「東海」の用例は,本来の「東海」の西半に偏っている。筆者は本来の「東海」の東半,北東日本の海岸や沖合を環境重視型の「新東海国土軸」とすることを提唱したい。
著者
細江 達郎 佐藤 嘉夫 青木 慎一郎 細越 久美子 小野澤 章子 糸田 尚史
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

引退期における高齢者の非適応問題を、(1)団塊世代の追跡調査、(2)高齢者万引きへの集中的調査で確認した。(1)は、深刻な非適応への移行が予想される対象者の状況が確認された。周辺者の保護的受け皿・出身地への回帰可能性の有無が大きな要因であった。(2)については、高齢万引き犯の大半は孤独な高齢者による偶発的なものであり、高齢者を支援する仕組みの脆弱さによるものが多い。総じて、高齢者の非適応問題として、孤独死など重篤な状態や常習犯罪者に移行する前段階・中間形態などがみられる。こうした問題への対応は、行政施策のみならず、一般市民が高齢者と関わる手段の可能性の発掘が必要である。
著者
山岡 由美 安藤 寛美
出版者
岩手県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究で明らかになったことは、在宅勤務を希望する精神障害のある人たちは増加しているが、在宅勤務の対象者としての社会的認知は低く、先駆的な取り組みはあるものの支援の方法については模索段階であると言える。早急の課題として実現可能なことは、在宅就業障害者支援制度における登録支援団体の位置づけを明確にし、少なくとも福祉施設と同等な財源的保障を行うことである。さらに、地域の福祉施設との交通整理の役割を担う機関の必要性である。障害者就業・生活支援センターは、医療、教育、福祉そして雇用に関係する機関の連絡調整および総合的援助を行うものであり、本業務が遂行できるよう機能強化を図ることであろう。
著者
ラジェンドラン ムース 白石 雅紀
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:13448528)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-22, 2007-03

不法移民労働者の問題は主に国家間、国内間の不平等な富の分配によって引き起こされる地球規模の現象である。アジアにおいても不法移民労働者の問題は(特に先進国にとって)国の社会経済、政治、社会福祉に大きな影響を与える問題である。本論文では日本を中心として、アジアの不法移民労働者問題の課題、今後の展望を考察する。本論文は(1)単純労働者、セックスワーカーを中心とした、アジアにおける不法移民労働者の労働形態とその現状。(2)日本やNIEs諸国へと不法移民労働者が流入してくる要因。(3)不法移民労働者に対する政府の法律と政策。(4)不法移民労働者の劣悪な労働状況や、雇用主による搾取。(5)アジア諸国の政府の対応。(6)この問題に対する国際社会とNGOの取り組みを論じ、続いて日本における不法移民労働者の現状と課題を考察する。不法移民労働者の問題に対しては柔軟な対応が必要となる。政府は不法移民労働者を斡旋するシンジケート、並びに不法移民を雇う雇用主に対する監督を強める必要がある。また、移民の労働形態や人権に関する多国間同士の協定を結ぶことも、不法移民を緩和するための有効な政策である。不法移民を軽減するために、もっとも重要なことは政府の政治的意思である。しかし、現時点ではそれは不十分なものであり、その結果この問題を助長させてしまっている。アジア各国の政府は不法移民の問題を真正面から捉え、取り組む必要がある。
著者
高田 豊雄 ビスタ B.B. 吉本 道隆
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近年、フィッシングやパスワード推測、不注意によるマルウェア感染といった人間を糸口とするセキュリティ被害が増えている。本研究では、ユーザビリティ工学や教育工学、認知科学といった人間を取り扱う学問の最新成果をとりいれたセキュリティ向上の方策を考案する。具体的な課題としては 1) 最新の認知科学の知識を導入した記憶容易性と安全性を両立させたパスワード認証方式、2) 最新の教育工学の知見を導入したセキュリティ教育システム設計方法論の確立、3) 可用性を重視した一般ユーザ向けセキュリティ対策ツールや対策システムの確立である。
著者
安保 寛明
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学看護学部紀要 (ISSN:13449745)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.135-143, 2004-03
被引用文献数
2

近年,わが国でも精神障害者に村する治療的介入の評価指標として生活の質 (Quality of Life: QOL) が注目されている.本論文は,本邦におけるQOL介入研究の傾向を概観すると共に,地域に暮らす精神障害者のQOL向上を評価対象とした海外の研究動向を概観し,QOLに対する介入研究の一助となる事を目的とするものである.精神障害者に対する地域での支援体制は国によって大きな違いがあるため,系統的レビューではなく介入方法などにより研究結果を分類し俯瞰した.結果,地域に暮らす精神障害者のQOLの向上には,支援サービスへの満足度と生活への不安 (陰性症状と関連) が強く影響することが示唆された.また,生活技能訓練などの心理社会的支援が精神障害者のQOL向上に寄与することが示唆された.一方で, QOLの向上は必ずしも再入院の抑止には関連しかいことも示唆された.今後は,地域に暮らす精神障害者支援のアウトカム尺度として再入院率とQOLを重視し,サービス満足度や不安とともに調査することが望ましいと考えられる.
著者
信夫 隆司
出版者
岩手県立大学
雑誌
総合政策 (ISSN:13446347)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.43-90, 2001-07-01

松尾鉱山は、かつて、東洋一の硫黄鉱山であるとか、「雲上の楽園」と言われた。閉山からすでに30年以上が経過し、松尾鉱山の栄華を知る人も数少なくなってきている。今日では、松尾鉱山から出る強酸性の坑廃水の処理問題だけに関心が行き勝ちである。しかし、この問題が登場する背景をわれわれはきちんと理解しておく必要がある。そのため、本稿では、1914(大正3)年に松尾鉱業が創立される由来にまで遡り、松尾鉱山の歴史を紐解いてみた。また、松尾鉱山の生みの親である松尾鉱業初代社長中村房次郎の事跡をたどりながら、第2次世界大戦までの30年あまりにわたる松尾鉱山の歩みを跡づけた。