著者
上田 浩史
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成15年度は、平成14年度に明らかにした知見(緑茶に炎症性サイトカインの産生抑制作用がある事、TPA誘導耳介浮腫等の炎症モデルに対し抗炎症作用を示す事、それらの活性物質がカフェインである事)を元に、新たに発癌抑制作用を明らかにし、抗炎症作用および発癌抑制作用の機作の検討を行った。前年度の抗炎症実験において起炎剤として用いたTPAが発癌プロモーターとしても使用されている点に注目し、緑茶が、DMBAをイニシエーター、TPAをプロモーターとする多段階発癌も抑制出来る事を明らかにした。次に、炎症あるいは発癌におけるサイトカインの関与を明らかにするため、炎症あるいは発癌部位の皮膚をホモジェナイズし、ELISAにより局所性サイトカインを測定したところ、IL-1α、IL-1β、IL-6、IFN-γ、TNF-αの増加が認められ、しかも、それらは緑茶による抗炎症・発癌抑制時には抑制されていた。したがって、炎症・発癌過程に炎症性サイトカインの局所産生が関与し、緑茶は、それらの産生を抑制する事により抗炎症・発癌抑制作用を発揮している事が示唆された。次に、サイトカイン抑制の機作を検討した。緑茶およびカフェインは、LPSで誘導されるサイトカイン産生を蛋白およびmRNAレベルで抑制した。ヤクロファージをLPSで刺激すると、30〜60分にかけて1κBがリン酸化されたが、緑茶およびカフェインはこのリン酸化を抑制した。また、緑茶およびカフェィンは、p44/42MAPKのリン酸化を抑制した。JNK/SAPKのリン酸化は、緑茶により抑制されたが、カフェインでは抑制されなかった。したがって、緑茶およびカフェインは、1κBやp44/42MAPK系のリン酸化の抑制によりサイトカインの局所産生を抑制し、抗炎症・抗アレルギー作用や発癌抑制作用を発揮していることが推測された。
著者
狩野 方伸
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

小脳の障害が自閉スペクトラム症や統合失調症の発症に関わるという多くの報告があるが、発達期小脳のシナプス刈り込みの異常とこれらの精神神経疾患との関連は不明である。本研究では、これらの精神疾患の関連遺伝子をプルキンエ細胞特異的に欠損させたマウスを対象に、発達期小脳の登上線維シナプス刈り込み、前頭前野のシナプス伝達、精神疾患関連行動を精査し、さらに、プルキンエ細胞の活動を変調してシナプス刈り込みを正常化した場合の効果を解析する。これらにより、発達期小脳の登上線維シナプス刈り込みの異常な亢進や障害が、如何にして前頭前野のシナプス機能に永続的な影響を及ぼし、精神疾患類似の行動異常を起こすのかを追及する。
著者
栃木 衛 桑原 斉 垣内 千尋 佐々木 司 池淵 恵美 赤羽 晃寿
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

統合失調症、双極性障害、パニック障害などを含む精神疾患、および自閉症、トゥレット障害などを含む発達障害などの精神科領域の疾患について、多発家系、孤発例家系や一卵性双生児不一致例についてDNAサンプルの蓄積を図った。また、これらのサンプルについて、次世代シークエンサーを利用したエクソーム解析や、マイクロアレイを利用した解析を行うことにより、統合失調症およびトゥレット障害の有力な候補遺伝子の同定に至った。
著者
清水 裕也
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

今や国民病とも言えるアレルギー性鼻炎や高齢者に多い血管運動性鼻炎は鼻過敏症の代表疾患であり、外界からの刺激に対し鼻閉、鼻汁、くしゃみなどの病的反応が惹起されることが特徴である。この反応には知覚神経を介した鼻粘膜の過剰な応答が関与していると考えられているが、詳細は未解明な点が多い。近年の研究によりTRP(Transient Receptor Potential)チャンネルという体内で刺激センサーとしての役割を持つ分子が鼻腔の知覚神経にも存在することが明らかとなってきた。本研究ではその中でも冷刺激を感知するTRPM8に着目し、TRPM8が正常鼻腔や鼻過敏症でどのような役割を持つか明らかにする。
著者
磯野 渉
出版者
帝京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

加齢によっておこるヒトの生殖能力の低下(生児獲得率の低下)、卵子数の貯蔵量の低下と卵子の質の低下が原因と考えられていて、前者を定量化するマーカーとしては血清AMH値が存在する。しかし、後者に対する有効で簡易的なマーカーは存在しないため、①臨床データの解析、②マウスモデルの作成、③細胞培養と解析、という手法によって、それの同定を行うことを最終目的とする。
著者
佐賀 典生
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、運動後に生じる筋損傷・筋痛を軽減するため、自律神経活動に着目したコンディショニング(温浴、水浴または交代浴)方法を明らかにする研究を行った。その結果、筋損傷・筋痛時に行う交代浴は、処置の前後で副交感神経活動を高め、日々の自律神経機能全体の働きを高める可能性が示唆された。また、筋損傷・筋痛時に行う交代浴は、抗酸化と酸化ストレスの比率である潜在的抗酸化能の低下を抑制する可能性があり、筋損傷に伴う炎症反応の悪化を抑制する可能性が示唆された。本研究で用いた交代浴は、自律神経活動をコントロールし、筋損傷からの回復の方法として有用である可能性を明らかにした。
著者
中井 智也
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-01-04

本研究では、数学能力の神経基盤を、以下の段階を経て明らかにする:(1)数学能力の脳機能モデルとしてのニューラルネットワークモデルを構築する。(2)実験参加者が数学課題実行中のMRI計測を行う。課題内容からニューラルネットワークにより抽出した特徴量と脳活動の多変量線形回帰により符号化モデルを構築し、各特徴量の脳情報表現を検討する。(3)脳活動の予測精度を元に、複数のニューラルネットワークモデルのうちヒトの脳機能に最 も近似したモデルを調査する。(4)構築した符号化モデルの一部の構造を崩すことにより、仮想的な脳機能への影響をシミュレートする。
著者
松岡 美里
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

This project reveals the role of think tanks and other involving actors in forming policy recommendations that may exert their political influences informally on foreign and security policymaking. It closely examines think tanks' discursive contribution for shaping foreign and security policymaking.
著者
長瀬 洋之 杉本 直也 小林 このみ
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

気管支喘息では、白血球の一つである好酸球が関与した気道炎症によって症状が出現する。現在の治療薬の主軸をなす吸入ステロイド薬は優れた抗炎症作用を持つが、いまだにコントロール不十分な重症喘息が2万人以上存在する。気道炎症は免疫系で調節されているが、ストレス等を媒介する自律神経系も免疫系を調節することが示されつつある。我々は、自律神経である副交感神経が分泌するアセチルコリンが直接好酸球を活性化することを見出した。本研究では、神経系によって、好酸球を中心とした炎症がいかに制御されるかを検討し、神経系-免疫系の連関機構を明らかにすることで、自律神経を視野に入れた新たな喘息治療戦略の確立を目指したい。
著者
安藤 崇仁 鹿嶋 小緒里 松本 正俊 井上 和男
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

我が国における薬剤師の供給総量は、新しく薬剤師国家試験に合格する薬剤師数調節でなされている。現在、薬学部の新設とともに薬剤師供給は増加しているが、薬剤師の偏在は持続している。薬剤師は勤務場所や業種などの選択において自己決定権があることから、どのような属性(経験年数、性別、キャリア初期の勤務地など)の薬剤師が、将来の薬剤師不足地域での勤務をより多くするかという観察研究による質的情報が必要である。本疑問の解明のため、「薬剤師の属性は長期的な分布状況とどのように関わっているのか」、「薬学部新設は薬剤師偏在を是正したか」、「薬剤師不足地域に勤務する薬剤師の属性は何か」の研究疑問について解明する。
著者
金子 希代子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2020年度は、新型コロナウイルス感染症が拡大したために研究が中断され、継続が難しかった。しかし臨床研究である『尿路結石症患者および健常者における血中・尿中Protein Z濃度の比較』の学内倫理審査が2019年11月に受理され、測定データの見直しを行った。さらに尿路結石の分析に関しては、2019年度からの継続で、ヒトの結石ではないが、イルカとクジラの腎結石について、無機成分分析を実施した。これらがリン酸カルシウム結石であったことから、石灰化との関連に興味が持たれる。さらに検討を進める予定である。
著者
加藤 美生 木内 貴弘 河村 洋子 石川 ひろの 岡田 昌史 奥原 剛
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

保健医療課題を取り扱ったプライムタイムテレビドラマの研究状況を文献調査から把握した。視聴者の医師像の認知および医師への信頼度の影響を分析したところ、医療ドラマの外科医の描かれ方によって信頼度を左右する可能性があることが明らかになった。テレビドキュメンタリー番組に登場した患者の語りについてはその重要性が近年認識されつつあることがわかったが、公害や薬害の番組数は種類によって制作数の偏りが見られた。エンターテイメント・エデュケーション実施団体や医療ドラマ制作者へのヒアリング調査により、制作者の制作動機や課題を収集し、メディアと医療をつなぐ会を設立し医療ドラマ制作教育プログラムを実施した。
著者
咲間 妙子
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

レム睡眠行動障害(RBD)は,約80%がパーキンソン病やレビー小体型認知症などのアルファシヌクレイノパチーに発展する.本研究では,中枢性過眠症であるナルコレプシーへのRBD合併率を明らかにした.また,RBD患者においてレビー小体型認知症の中核症状である幻視と類似現象である錯視がみられることを明らかにした.次いで,錯視誘発検査と嗅覚検査・認知機能検査をナルコレプシーおよびRBD合併型ナルコレプシー患者に実施し,RBD/アルファシヌクレイノパチー関連所見がどの程度みられるのかを検討し,ナルコレプシー合併型RBDは特発性RBD例とは異なり同所見は認められず病態が異なることを明らかにした.
著者
松尾 浩一郎 根本 雅也 小倉 康嗣 清水 もも子 後藤 一樹 土屋 大輔 福山 啓子 岩舘 豊 加藤 旭人 鈴木 雅人 長峯 ゆりか
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、原爆投下日である8月6日の広島平和記念公園という象徴的な時間と空間に着目し、ビジュアル・エスノグラフィの手法を用いてその包括的な記録と分析を行った。本研究から明らかになったことは、8月6日の平和記念公園では、広島における原爆被災とその後の復興の過程が、きわめて多様なやり方で受け止められているということである。原爆という一つの出来事を受け止めるにも、お互いに鋭く対立しあうような複数の立場性がある。それらが一つの時空間のなかで「共存」しているありさまを、映像データを駆使して明らかにした。
著者
北川 裕子
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、自殺リスクの高い若者を特定するための実用的なリスク予測アルゴリズムを構築し、高リスクの対象への早期の適切な支援促進に貢献することである。具体的には、学校・医療機関の両面の多施設共同での研究遂行により次の2点を実現することである。1)自殺企図および自殺に関連するリスクを予測するアルゴリズムの構築:学校・医療現場から収集される多様な情報を活用し機械学習を用いて自殺リスクを有する若者の特徴・パターンを解明する。2)潜在的に自殺リスクの高い若者と接する学校教員(養護教諭)や医療従事者のリスク発見促進とケアの意思決定を補助するツールの開発:データの収集システムは携帯端末およびクラウドを活用する。システムには国際的に評価されている自殺リスクに関する質問項目に加え日常的な事象に関する項目を搭載し、入力後に個人のリスクの程度が可視化されるシステムを構築する。また若者が精神不調を回答しやすい構造の工夫も進める。以上を達成するために、2019年度中に実施したことは次の通りである。・新潟県教育庁からの要請で、県立高校22校に代表者が開発した「精神不調アセスメントツール(RAMPS)」を導入し、保健室での自殺リスクを含む精神不調スクリーニングを実施。学校でのリスク評価と事後対応(保護者・医療機関等との連携)に寄与した事例が複数件報告された。この実施実績が新潟県に認められ、全県へのRAMPS導入が決定しており、2020年度は33校で実施、段階的に実施校を拡大していく。また、東京都内の高校2校、茨城県内の高校1校での導入要請があり実施準備を進めている。得られたデータをもとに予測指標の妥当性・信頼性を確認し、より予測精度の高いリスク評価指標の構築を目指し、データ解析を進めている。
著者
三浦 洋四郎 長井 辰男
出版者
帝京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

わが国では覚醒剤取締法によりその使用や所持が禁止されているが、現在でも不法な密輸があとを絶たない。現在の覚醒剤の事犯は、粉末または粒状の形で密輸されているのがほとんどである。われわれは、覚醒剤の密輸・密売ルートの科学的解明を企図した。1.覚醒剤の光学異性体に着目し、獨協医科大学法医学教室の長井敏明と共同でHPLC分析条件を検討した。acethyl化した被検試料を内部標準物質N-n-Propylanilineとともにセルロース誘導体カラム(40℃に加温)にチャージした。溶媒系はHexane/Isopropanol(19.1)を用いた。これによって、methamphetamineのd体とl体を再現性よく分離出来た。2.韓国ルートの密輸覚醒剤はmethamphetamineの塩酸塩で、融点170〜175℃,光学純度は100%のd-methamphetamineであるが、黄色結晶が混入していた点で薬物移動の追跡指標として利用出来る。われわれが厚生大臣の許可を得,合成し分割したmethamphetamineはl体を除く目的で精製をくり返すごとにd/l比は未精製のもの1.08から3回精製したものは、 d-methamphetamineの標準品に近ずいた。その融点は133℃であった。このd/l比および夾雑物は当該覚醒剤の薬物指紋として犯罪捜査時に個人識別のため使用する指紋と同様の利用価値がある。この薬物指紋を集績することによって、覚醒剤の密輸・密売ルートの科学的解明に利用することが出来る。3.methamphetamineの生体内動態を実験動物を用いて研究した。その結果、d体がl体より強い薬理作用を示し、骨・歯牙・毛髪などの硬組織から当該薬物を検出出来ること及びWaterhouse-Friderichsen Syndromeを誘発することが可能であることを初めて明らかにした。methamphetamine中毒患者および中毒動物の尿は、薬物依存の有無を確認出来るが、当該研究のような密輸・密売ルートの解析には不適である。
著者
押尾 茂
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究費の援助を受けた平成10年度より平成13年2月末(本報告書記述時点)までに東京・九州・四国地区でそれぞれ100名以上、全国で400名以上の調査を終えている。その結果、精液性状に関しては、精子濃度の平均値は1ミリリットルあたり1億個弱と問題のある数値ではないものの、精子運動率が30%未満と世界保健機関(WHO)の基準値である50%を下回っていること、さらに精子濃度には地域差(九州>東京・四国)と年代差(20歳代<30歳代)が存在することなどを明らかにした。また、精液採取条件が精液性状に及ぼす影響を検討し、採取場所は精液性状に影響を与えないことを示した。現在、精液性状の個人変化および季節変動を検討する目的で、10人程度のボランティアから定期的に精液の提供を受けて検討を進めている。さらに、精子の質的変化をとらえる方法として精子染色体の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法による分析に取り組み、X、Y両性染色体性と18番染色体を対象とし染色体異数性と精液性状あるいは妊孕性等との関連を検討し、妊孕性の確認された健常人の精子染色体異数性の基礎的データを求めた。なお、精液性状の変化の要因に関しては、影響を与える因子は、ストレス、温度、食生活、大気汚染、薬物摂取など多く存在すると考えられており、その因子の一つとして、内分泌撹乱化学物質(いわゆる"環境ホルモン")の関与が推定されているのが現状で、化学物質と精液性状の関連については推測の位置をでていない。現在、今回の研究で収集した精漿試料中の各種化学物質の検討を進めており、来年度の早い時期には一定の結果が出るものと期待される。以上の成果について、関連学会の招請講演、一般講演などで発表し、総説を書くことで啓蒙活動を行った。現在、研究成果は外国雑誌への投稿を終えたものもあるが、一部は投稿準備中である。
著者
沢本 修一
出版者
帝京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

近年、気管支喘息は、慢性剥離性好酸球性気管支炎とも呼ばれ、気道の慢性炎症において好酸球が重要な役割を演じていると言われている。好酸球が、その機能を十分に発揮するためには、遊走して来た局所における寿命の延長が重要で、気管支喘息の治療戦略においても、遊走して来た局所における好酸球の寿命を抑制することは有用な治療手段である。本研究では、サイトカインのなかで好酸球に対して最も強力に作用するIL-5を用いて、IL-5による好酸球寿命延長効果を確認するとともに、既存の抗喘息薬としてテオフィリンを取り上げ、IL-5の好酸球寿命延長効果に対するテオフィリンの抑制効果の有無を検討し、さらに、そのメカニズムにapoptosisが関与してるかどうかをDNAのfragmentationを指標にして検討を加えた。1.IL-5による好酸球寿命延長効果:末梢血より分離した好酸球に培養液のみを加えたコントロール群と、好酸球にIL-5(10ng/ml)のみを加えたIL-5単独群で好酸球の生存細胞数の推移を検討した。その結果、コントロール群の生存細胞は、day4において24.4%まで急減し、dya7で全ての好酸球が死滅した。一方、IL-5単独群では、day7での生存細胞数は94.2%とやや低下したが、day10においてさえも%生存細胞数は83.8%維持されていた。以上の結果により、IL-5は、好酸球の寿命を著明に延長し、IL-5が好酸球寿命延長効果を有することを確認した。2.IL-5の好酸球寿命延長効果に対するテオフィリンの抑制効果:好酸球に、IL-5を加えたIL-5単独群のday4における%生存細胞数を100%として生存率を計算したところ、IL-5+テオフィリン群のday4における%生存細胞数は、63.1±3.4%(mean±SEM)で両者間に明らかな有意差(t<0.005)を認め、テオフィリンは、IL-5の好酸球寿命延長効果に対して抑制効果があることが判明した。3.テオフィリンによるIL-5の好酸球寿命延長効果に対する抑制機構の検討-apoptosisの関与について:テオフィリンは、IL-5の好酸球寿命延長効果を抑制したが、その機構がapoptosisによるものかどうかを調べるために、IL-5単独、コントロール、IL-5+テオフィリン、IL-5+dibutyryl-cAMP(d-cAMP)、IL-5+デキサメタゾンの好酸球から抽出したDNAのfragmentationを指標にしてapoptosisの関与を検討した。その結果、IL-5+テオフィリン、IL-5+d-cAMP、IL-5+デキサメタゾンでDNAのfragmentationが見られ、これらの薬剤によるapoptosisの誘導が示唆された。IL-5+テオフィリンとIL-5+d-cAMPでDNAのfragmentationが見られたことは、テオフィリンによるIL-5の好酸球寿命延長効果に対する抑制機構にapoptosisが関与し、さらにテオフィリンは、その薬理作用の中で細胞内cAMP上昇を介することにより好酸球に対してapoptosisを誘導していると考えられた。