著者
佐野 竹彦
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告 教育科学 (ISSN:0587260X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.p237-248, 1985-02

本研究は,関係固定型の真偽反応形式のアナロジー推理のプロセスについて,正答表象形成モデルと関係比較モデルのデータに対する適合度を比較することを目的とした。被験者は,大学生32名であり,彼らに2種類のアナロジー推理課題(人物画アナロジー推理課題と幾何図形アナロジー推理課題)を実施した。正答表象形成モデル,関係比較モデルともに,符号化の方法,写像の有無,属性比較の方法,の3つを組合わせて,12個の下位モデルを作成した。個人データについて,各項目タイプでの各コンポーネントの実行回数を独立変数とし,反応時間を従属変数とする重回帰分析を行い,2つのモデルの各々について,最適下位モデルを同定した。4つの観点から2つのモデルを比較した結果,以下のことが明らかになった。人物画アナロジー推理課題では,正答表象形成モデルの方がデータによく適合した。正答表象形成モデルにより,31名について,最適下位モデルを同定することができ,最適下位モデルの重相関係数の中央値は,.941であった。幾何図形アナロジー推理課題でも,正答表象形成モデルの方がデータによく適合した。しかし,正答表象形成モデルにより,最適下位モデルを同定することのできた被験者は,18名にとどまった。また,最適下位モデルの重相関係数の中央値は,.844であった。以上の結果から,幾何図形アナロジー推理課題については,ここで吟味した2つのモデル以外のモデルによる吟味の必要性が議論された。
著者
佐野 竹彦
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告 教育科学 (ISSN:0587260X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.p211-220, 1989-02
被引用文献数
1

本研究の目的は,佐野(1982,1985)が行った関係固定型の2種のアナロジー推理課題の解決プロセスについての分析結果と比較しながら,関係変動型の幾何図形アナロジー推理課題の解決プロセスについて吟味することであった。被験者は大学生,および大学院生30名であり,彼らに真偽反応形式の関係変動型の幾何図形アナロジー推理課題を実施した。解決プロセスのモデルとして,正答表象形成モデルと関係比較モデルの2つを仮定し,両モデルとも,符号化の方法,写像の有無,属性比較の方法,の3つを組み合わせて,12個の下位モデルを作成した。個人データについて,各項目タイプでの各成分の実行回数を独立変数とし,反応時間を従属変数とする重回帰分析を行い,2つのモデルの各々について,最適下位モデルを決定した。得られた結果は以下のとおりである。1.関係固定型のアナロジー推理課題の場合と同様に,関係変動型のアナロジー推理課題についても,関係比較モデルよりも正答表象形成モデルの方がデータに対する適合度が高かった。2.正答表象形成モデルによる分析結果に基づいて,佐野(1982, 1985)と本研究で用いた3種の課題を成分レベルで比較した。符号化の方法,写像の有無についての課題差は,課題を構成する刺激次元の差(分離次元が統合次元)に帰因すると考えられた。属性比較の方法については,課題差はなく,3課題ともほとんどの被験者が,すべての属性比較を中途打切り的に行っていた。3.成分の実行時間について3課題を比較した結果,符号化に要する時間では,3課題相互間に差がみられた。属性比較に要する時間は,関係固定型の課題よりも関係変動型の課題の方が長かった。
著者
中村 仁志 中野 真志
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教職キャリアセンター紀要 (ISSN:24240605)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-8, 2017-03-31

本稿では、教科横断的なカリキュラムに関する議論の源流について論じるにあたり、ジョン・デューイ(Johon Dewey)を取り上げ、彼の学際的カリキュラムの思想形成に影響を与えたシカゴ大学付属小学校、通称「デューイ実験学校」での教育実践に着目する。デューイの学際的教育学の検討から導出される、断片化された知識の再接続と諸学問分野間の接続という二つの主題を分析視角とし、先行研究では十分に焦点が当てられていなかった「総合的な歴史」の具体的な学習および活動に検討を加え、その実態を明らかにする。その際、1900~1901年度のグループ8とグループ9の「実験学校ワークリポート」を分析対象とする。本稿の結論は次の2点である。第一に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は、知識の起源の諸発見の再創造および諸学問分野とそれらが対象とする歴史的・社会的事象との関係から「相関」を問い直すことによる各教科内容の選択・組織化という点で意義をもっていることである。第二に、デューイ実験学校における総合的な歴史の実践は知識の起源の諸発見の再創造が強調された結果として自民族中心主義的な側面をかかえてしまっているという課題を指摘できることである。これらの結論が持つ含意は、知識の起源の諸発見の再創造と自民族中心主義的な側面の克服の両立を図りつつ、教科横断的なカリキュラム全体の知識の構造化の基盤となる歴史学習のカリキュラムをいかに創造するかを問うことである。
著者
中田 敏夫 酒井 恵美子
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、従来「気づかない方言」などとして関心が示されてきた「学校方言」について、学校建築用語に絞り、文献資料と方言資料から総合的に検討することで、個々の学校方言並びに標準語の成立と展開を分析し、その一般的な傾向を導き出すことを目的とした。「屋運」という愛知県一宮市に分布する語形を主な事例として、発生から周辺への広がりの実態とその背景である教育関係資料を渉猟し,縦軸と横軸をつなぎ合わせ、立体的に実証した。その結果、従来日本語資料として看過されてきた教育史資料及び各種法令を現代語研究を進める上で必須の資料群として位置づけ、十分な事例研究数とは言えないが、研究課題については達成できたと考える。
著者
塚本 明子 野田 満智子
出版者
愛知教育大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-9, 1998-03-31
著者
中野 真志 太町 智
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-9, 2004-02-27

現在,日本の多くの学校で,総合的な学習の時間を利用して,地域社会に参加する活動が行われている。日本においても,子どもは「権利を行使する主体」であるとする「子どもの権利条約」の理念が浸透しつつあることは明らかであろう。しかし,学校における子どもの参加の中には,教師主導の活動であったり,イベント的で表面的な活動に終始してしまったりする実践も少なくない。地域社会を住み良い環境にするためには,子どもが責任を負い,大人と意思決定を共有する参加が必要である。本小論では,ロジャー・ハートやデヴィッド・ドリスケルの理論を手がかりとして,総合的な学習の時間の事例を分析することも含め,子どもの参加の質を高める方策について論じる。
著者
宇野 民幸
出版者
愛知教育大学
雑誌
教養と教育
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-30, 2011-09

算数および数学の考え方は、ほとんどすべての大学入学生が、初等・中等教育において意味や計算をとおして多くを学んできているといえる。しかし、その考え方は、学んだ割には日常において活用することはあまりなく、自ら考えたり、また計算したりする必要性もそれほど感じていないであろう。そこで、これまでの数学や算数の考え方を、それぞれが持続していくことの意義を実感してもらえるように望み、実践をしている授業の考察案を紹介したい。