著者
藺牟田 洋美 安村 誠司 阿彦 忠之 深尾 彰
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.483-496, 2002 (Released:2015-12-07)
参考文献数
51
被引用文献数
3

目的 寝たきり予防を積極的に推進するため,在宅高齢者における自立度の 1 年後の変化と自立(ランク J)と準寝たきり(ランク A)の高齢者の自立度の改善・維持と悪化の予測因子の相違を初回調査の身体・心理・社会的側面から総合的に検討した。方法 1997年に山形県内の65歳以上の高齢者に個別面接調査を実施した。1998年,同一の対象者に追跡調査を実施した。自立度の基準とした「障害老人のための自立度判定基準」(以下,判定基準)の自己評価と他者評価が一致した165人(ランク J:自立112人,ランク A:準寝たきり53人)を分析対象とした。調査項目は判定基準のほか,身体・心理・社会的項目20項目であった。なお,予測因子の分析では自立,準寝たきりともに改善・維持,悪化の 2 群に分類して検討した。成績 1. 1997年の自立度別にみた 1 年後の転帰:死亡は自立が0.9%,準寝たきりが7.6%であった。女性,または75歳以上である場合,自立度が低下するほど,死亡者は多かった。 2. 自立度別にみた 1 年後の自立度の変化:自立高齢者の23.1%で自立度が悪化した。準寝たきりで自立度が改善した者は35.4%,悪化した者は14.6%であった。性・年齢階級による自立度変化への影響は認められなかった。 3. 自立高齢者の自立度変化の予測因子:身体的項目では,過去 1 年間の入院あり,心理的項目では自己効力感が低いこと,主観的健康感が悪いこと,社会的項目では老研式活動能力指標得点が低いことが自立度低下と関連していた。 4. 準寝たきりの自立度変化の予測因子:身体的項目では排尿が要介助であること,心理的項目では自己効力感の得点が低いことが自立度の悪化に関連していた。結論 在宅高齢者では,自立度の悪化にともない,女性,または後期高齢者の場合,1 年後死亡になりやすいことが示された。また,1 年後の自立度変化では,準寝たきりで自立に改善した者が,寝たきりに悪化した者よりも多かった。在宅高齢者の 1 年後の自立度は可逆的であることが示された。 自立,準寝たきりともに自立度の悪化と心理的項目の自己効力感が結びついていることが明らかとなった。簡単な掃除など身の回りの行動に対して自信が持てないことを意味する自己効力感が低いことが,自立・準寝たきり高齢者の 1 年後の自立度を予測する上で極めて有効であることが明らかになった。
著者
佐方 信夫 奥村 泰之 白川 泰之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.303-310, 2017 (Released:2017-09-09)
参考文献数
21

目的 本研究では急性期病院を退院した後期高齢者の経済状況と退院先の関連を明らかにすることを目的とした。方法 本研究は,厚生労働省の老人保健健康増進等事業として実施された調査の情報を二次利用することで,症例対照研究を実施した。調査では関東圏,関西圏の全急性期病院(1,092病院)に調査票の回答協力依頼が行われた。病院の退院調整を担当する職員に,退院先が自宅の者(以下,自宅退院)を直近2人分,退院先が自宅と異なる者(以下,施設入所等)の直近2人分について,調査票の回答が依頼された。調査票では経済状況を把握する項目として,「1か月に負担可能な金額」が質問された。この調査票の回答を自宅退院群と施設入所等群に分けて,患者背景を示す項目について記述統計量を求めた。また,従属変数を自宅退院,主な独立変数を経済状況として,自宅退院と施設入所等を医療機関でマッチングした条件付ロジスティック回帰分析を実施し,オッズ比と95%信頼区間を求めた。さらに,施設入所等群については経済状況別に退院先を集計し,退院先の施設類型に違いがあるかについて検討した。結果 本研究の適格基準を満たした解析対象は565人(自宅退院293人,施設入所等272人)であった。条件付ロジスティック回帰分析の結果,自宅退院のオッズは,1か月に10万円以上~15万円未満負担可能な人と比べ,15万円以上負担可能な人では70%低いこと(OR: 0.29, 95% CI: 0.12-0.69),10万円未満の人では6倍高いこと(OR: 6.48, 95% CI: 2.50-16.79)が示された。また,施設入所等群のうち,1か月に負担可能な額が15万円以上の人では,介護付き有料老人ホームを選ぶ人が最も多く,10万円未満の人では特別養護老人ホームを選ぶ人が最も多かった。結論 急性期病院からの後期高齢者の退院において,毎月負担可能な金額が少ない患者ほど自宅退院する可能性が高いことが示された。経済的にゆとりがないために自宅退院を選択している可能性が示唆されているため,国や地方自治体は,高齢者施設の確保や自宅での療養,介護,生活を支えるサービスの拡充を検討する必要がある。
著者
曽我部 夏子 丸山 里枝子 中村 房子 土屋 律子 井上 美津子 五関-曽根 正江
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.641-648, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的 乳幼児期の栄養摂取は,個々の子どもの成長•発達段階に合わせて適切に対応することが大切である。そこで,今回,乳幼児期の食生活状況について,乳歯萌出状況と調理形態•調理方法などとの関連について検討を行った。方法 東京都 K 区保健所および各保健センターにおいて,1 歳 2 か月児歯科健診を受診した455人に,歯科医師による歯科健診と保護者への自記式調査票を用いて,離乳食の開始時期,離乳食の進行の目安,現在の食事の調理形態などについて調査を行った。記入漏れがあった18人および在胎期間が36週未満の出生児17人を除く420人を解析対象とした。結果 離乳食の開始時期は,生後 5, 6 か月齢頃が81.4%と最も多く,離乳の進め方の目安は,「月齢」と回答した者が最も多かった(71.2%)。乳歯萌出状況により,前歯上下 8 本(乳中切歯 4 本と乳側切歯 4 本)が生え揃っていない段階(ステージI:27.4%),前歯上下 8 本が全て生え揃っているが奥歯(第一乳臼歯)がまだ生え揃っていない段階(ステージII:61.9%),奥歯(第一乳臼歯)が上下 4 本すべて生え揃っている段階(ステージIII:10.7%)の 3 段階に分類した。「おかずの固さの目安」は,ステージI,II,IIIすべてにおいて「歯ぐきでかみつぶせる」がそれぞれ53.5%, 54.4%, 40.0%と最も多かったが,まだ第一乳臼歯 4 本が生え揃っていないステージI,IIにおいて,「奥歯でかみつぶせる」と回答した者が,それぞれ14.0%, 15.1%も認められた。さらに,「大人と同じ固さ」と答えた割合が,ステージI,II,IIIで,それぞれ7.0%, 9.7%, 24.4%であった。また,調理の味付け(塩味,しょうゆ味)については,「大人と同じ」と答えた割合がステージI,II,IIIで,それぞれ13.2%, 17.3%, 22.2%であった。結論 今回の調査結果により,乳歯萌出状況は個人差が大きく,個々の口腔の発達段階•咀嚼機能を把握せずに,調理形態•調理方法が進められていることが推察され,今後の食育支援の必要性が示された。
著者
勝田 早希 福島 若葉 近藤 亨子 松永 一朗 撫井 賀代 廣田 良夫
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.447-456, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
26

目的 基本健康診査による健診情報を活用し,都市部住民における喫煙習慣と生活習慣病の関連を検討する。方法 複数年度の健診情報を連結した縦断研究である。2001年度に大阪市全24区の保健センター(現:保健福祉センター)で基本健康診査を受診した63,704人のうち,年齢40~74歳であり,医療機関で疾病治療中でない者を抽出した。さらに,当該年度の健診情報に基づき,以下のいずれかの項目に該当する者を除外した。(1)Body Mass Index≧25 kg/m2,(2)空腹時血糖≧126 mg/dl または随時血糖≧200 mg/dl,(3)HDL コレステロール<40 mg/dl または non-HDL コレステロール≧170 mg/dl,(4)収縮期血圧≧140 mmHg または拡張期血圧≧90 mmHg,(5)問診票の既往歴欄で,「糖尿病•脂質異常症•高血圧•脳卒中•心筋梗塞•狭心症•その他の心臓病」のいずれかについて既往「あり」と回答。曝露要因は,2001年度の健診受診時の喫煙状況,1 日の喫煙本数,Brinkman Index である。結果指標は,2004年度あるいは2005年度の基本健康診査情報(保健福祉センター実施分)に基づき,新規に確認された(a)肥満,(b)糖尿病,(c)脂質異常症,(d)高血圧,とした。解析には多重ロジスティック回帰モデルを用いた。結果 2001年度の健診情報に基づき定義した対象者15,639人のうち,2004年度あるいは2005年度に健診を受診し,各結果指標の有無を追跡できた者は,肥満:9,327人,糖尿病:9,273人,脂質異常症:9,273人,高血圧:9,323人であった(追跡率:約60%)。(a)肥満:喫煙状況,1 日の喫煙本数,Brinkman Index について有意な正の関連を認めた。(b)糖尿病:男性でのみ,喫煙状況と Brinkman Index について有意な正の関連を認めた。(c)脂質異常症:喫煙状況,1 日の喫煙本数,Brinkman Index について有意な正の関連を認めた。(d)高血圧:喫煙との有意な関連を認めなかった。結論 都市部の基本健康診査受診者において,喫煙が肥満,脂質異常症のリスクを高めるという結果を得た。また,男性で喫煙による糖尿病のリスク上昇が示された。本結果は,今後の特定健康診査において,喫煙に関する保健指導の基礎資料となると期待される。
著者
小田 正秀 大角 直行 中林 邦子 宮城 昌治 森本 進 坂木 慎司 有馬 隆 今田 愛子 遠藤 邦彦 土江 健也 森本 克廣 小松 昭紀
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.694-705, 2002-07-15
参考文献数
34
被引用文献数
2

<b>目的</b> 高校生の喫煙の実態を把握するとともに,歯科医師による喫煙防止教育の効果を検討することを目的とした。<br/><b>方法</b> 広島市内の某男子校の高校生1,003名を対象とした。歯科医師による喫煙防止教育講演の前後に無記名による自記式アンケート調査を行った。また,歯科医師による歯科健康診査を別途行った。<br/><b>成績</b> 喫煙経験者率,喫煙者率ともに,高学年ほど高い値を示した。<br/> クラブ活動をしていない群では学年が上がると喫煙者率が増加した。<br/> 喫煙が及ぼす健康影響についての知識では,肺がんが最も多く,歯周病がそれに次いで多かった。<br/> 歯科医師による喫煙防止教育講演前後で行ったアンケート調査成績から,「家族がたばこを吸っているのを見てやめた方がいい」と答えた生徒は講演前の55.9%から講演後の62.2%と6.3ポイントの増加がみられた。<br/> 教育講演で印象に残った内容では,がんの写真,歯への影響の話,バージャー病があげられた。<br/><b>結論</b> 高校生に喫煙防止教育を行う場合には,がんの写真,バージャー病の写真と歯への影響の話が印象的であると考えられ,歯科医師による教育の必要性が認められた。
著者
斉藤 雅茂 藤原 佳典 小林 江里香 深谷 太郎 西 真理子 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.785-795, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
30
被引用文献数
2

目的 本研究では,首都圏ベッドタウンで行った調査に基づいて,独居高齢者と同居者のいる高齢者のなかで,孤立した高齢者の発現率とその特徴,および,孤立に関する設問に無回答であった孤立状況不明者の特徴を明らかにすることを目的にした。方法 使用したデータは,埼玉県和光市において,独居の在宅高齢者978人,同居者のいる在宅高齢者1,529人から得られた。社会的孤立の操作的定義には,同居家族以外との接触頻度を用い,別居家族・親戚,および,友人・近所の人との対面接触と非対面接触のいずれもが月に 2, 3 回以下を「孤立」,それ以上を「非孤立」,それらの設問に無回答を「孤立状況不明」に分類した。世帯構成別に孤立・非孤立を従属変数,性別,年齢,婚姻経験,近居子の有無,移動能力,経済状態を独立変数に投入したロジスティック回帰分析,および,それらの諸変数について孤立状況不明と孤立・非孤立間での比率の差の多重比較を行った。結果 分析の結果,1)上記の定義で捉えた場合,孤立者は,独居者では24.1%(独居型孤立),同居者のいる高齢者では28.7%(同居型孤立)であること,2)独居・同居に関わらず,男性,子どもがいない人および近居子がいない人,より所得が低い人の方が孤立に該当しやすいこと,他方で,3)離別者と未婚者の方が独居型孤立に該当しやすく,より高齢の人,日常の移動能力に障害がある人の方が同居型孤立に該当しやすいという相違があること,4)独居・同居にかかわらず,孤立状況不明者はこれらの諸変数において孤立高齢者と類似していることが確認された。結論 高齢者の社会的孤立は独居者だけの問題ではなく,独居型孤立と同居型孤立の特徴の相違点に対応したアプローチを検討する必要があること,また,孤立高齢者をスクリーニングする際には,孤立関連の設問への無回答者を孤立に近い状態と捉えるべきことが示唆された。
著者
小林 江里香 藤原 佳典 深谷 太郎 西 真理子 斉藤 雅茂 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.446-456, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
30
被引用文献数
2

目的 本研究は,高齢者の社会的孤立を同居家族以外との接触頻度の低さから定義し,孤立者が抱える生活•心理面での課題と,そのような課題が同居者の有無や性別によってどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。方法 65歳以上の在宅高齢者を対象とした調査より,独居群948人,同居群1,426人のデータを分析した。社会的孤立状況は,別居親族または友人•近所の人との接触が週 1 回以上あるかで,「対面接触あり」,「非対面接触のみ」,「接触なし(孤立)」に分けた。私的サポートの利用可能性(6 項目),公的サポートの利用可能性(2 項目),抑うつと将来への不安を従属変数とするロジスティック回帰分析を行い,年齢,IADL,社会経済的地位を調整後の社会的孤立状況,独居,性別の主効果と交互作用効果を調べた。結果 独居男性では42%が孤立に該当し,独居女性(17%)と大きな差があった。私的サポート入手不能,サービス相談先なし,地域包括支援センターの非認知,抑うつ傾向あり,将来への不安の高さのいずれについても,「対面接触あり」に対する孤立者のオッズ比は有意に高かった。また,私的サポートについては,孤立状況と同居者の有無の交互作用があり,孤立と独居が重なることでサポートを得られないリスクが一層高まっていたが,独居が独立した効果を示したのは,一部のサポート項目や抑うつ傾向に限られた。結論 孤立高齢者は,同居者の有無にかかわらず,私的•公的なサポートを得にくく,抑うつ傾向や将来への不安も高いなど,多くの課題を抱えていることが明らかになった。
著者
伊藤 ゆり 中村 正和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.613-618, 2013 (Released:2013-10-11)
参考文献数
12

目的 1998年にたばこ特別税が創設されて以来,2003年,2006年,2010年と過去 3 回のたばこ税•価格の引き上げが実施された。我が国におけるたばこ販売数量および販売代金に関する統計データの年次推移を用いて,過去のたばこ税•価格引き上げの影響を評価する。方法 (社)日本たばこ協会による紙巻たばこ統計データより,平成 2 年~平成22年度(1990~2010年)の年度別販売実績(数量および代金)をそれぞれ,Joinpoint Regression Model に適用し,年次推移を分析した。また,過去三回のたばこ税•価格引き上げの影響を平野らの方法を用いて,たばこ価格引き上げ前の販売数量の減少(税•価格引き上げ以外の要因による減少)を考慮した上で,価格引き上げによる販売数量減少効果を推定した。結果 Joinpoint Regression Model により,1998年度以降たばこ販売数量は減少に転じ,2005年度以降は年率平均 5%で減少傾向にあることがわかった。また,2003年度,2006年度,2010年度のたばこ税•価格引き上げ年度における減少効果はそれぞれ−2.4%,−2.9%,−10.1%(震災影響の補正後)であり,価格弾力性はそれぞれ−0.30,−0.27,−0.28(同補正後)であった。2010年度の大幅値上げ時に販売数量の減少効果がもっとも大きくなった。一方,価格弾力性は2003年度,2006年度とほぼ同レベルで,税•価格を大幅にあげても販売代金および税収への影響は小さいことが示唆された。結論 2010年度におけるたばこ税•価格の大幅引き上げは,たばこ販売数量を大きく減少させたが,価格弾力性は2003年度,2006年度とさほど変わらなかった。今後我が国における喫煙の被害を減少させるためにも,さらに大幅なたばこ価格の引き上げが必要であることが示唆された。
著者
川西 康之 Sharon J. B. HANLEY 田端 一基 中木 良彦 伊藤 俊弘 吉岡 英治 吉田 貴彦 西條 泰明
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.221-231, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
45

目的 妊娠中のヨガ(マタニティ・ヨガ)実践の効果について,近年様々な予防的,治療的効果が研究報告されている。それらをランダム化比較対照試験(RCT)に限って系統的に整理した研究報告は認められていない。本研究の目的は,系統的レビューによって,RCT として報告されているマタニティ・ヨガの効果と,その介入内容,介入方法,実践頻度の実態とを明らかにすることを目的とする。方法 文献検索には,米国立医学図書館の医学文献データベース PubMed を用いた。採用基準として,研究デザインが RCT であり,対象者を妊娠中の女性,介入内容をヨガの実践とする論文を採用した。結果 結果54編が検索され,このうち採用基準に合致した8研究10編を対象とした。健常妊婦を対象とした 4 研究において,その効果を報告した項目は,分娩時の疼痛・快適さ,分娩時間,妊娠中のストレス,不安,抑うつ,妊娠関連ストレス,QOL(生活の質),対人関係の一部であった。うつ状態の妊婦を対象とした 2 研究では,抑うつ,不安,怒り,足の痛み,背部痛などが改善するとの報告と,抑うつ,不安,怒りなどの改善は対照群と同等とするものがあった。肥満や高齢等のハイリスク妊婦を対象とした 1 研究では,妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,子宮内胎児発育遅延が有意に少なく,ストレスも減少していた。腰痛妊婦を対象とした 1 研究では,腰の痛みの自覚が改善していた。介入内容・介入方法・実践頻度において,介入内容は,抑うつの妊婦を対象とした 2 研究が身体姿勢のみであったのに対し,他の 6 研究では身体姿勢に加え呼吸法と瞑想が行われていた。介入方法は,講習のみのものと,自宅自習を併用するものとがあった。実践頻度は,報告によって様々であった。結論 マタニティ・ヨガにより,妊婦の腰痛が改善する可能性が示唆された。他に精神的症状(ストレス,抑うつ,不安など),身体的症状(分娩時疼痛など),周産期的予後(産科的合併症,分娩時間など)などが改善する可能性も示唆されていたが,今後もさらなる検証が必要と考えられた。介入内容・介入方法・実践頻度は研究により異なっており,対象者の特徴や各評価項目に沿った,効果的な介入内容,介入方法,実践頻度を検討する必要がある。今後も,RCT を中心とした研究報告が行われることが期待される。
著者
緒方 泰子 和泉 由貴子 北池 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.480-492, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
35

目的 自分専用の携帯電話を所有している高校生の携帯電話のメール機能(以下,携帯メール)の利用頻度と友人とのネットワークや携帯電話利用における利点や欠点(以下,携帯電話の利点・欠点)に対する認識,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすること,孤独感と携帯メールの利用,友人とのネットワーク,携帯電話の利用状況との関連を明らかにすることを目的とした。方法 関東地区の A 高等学校の各学年 2 クラス計227人を対象に無記名で自記式調査を行った。調査内容は,孤独感,携帯電話の利用状況,1 日あたりの平均メール利用回数(以下,携帯メール回数),友人とのネットワーク(友人数や課外活動への参加程度等),携帯電話の利点・欠点である。孤独感の測定には,UCLA 孤独感尺度邦訳版20項目を用い,「決して感じない」から「度々感じる」までの 4 段階の選択肢を設け,孤独感の低い方から高い方へ 1~4 点を与えて合計した(以下,孤独感得点)。携帯電話の利点・欠点は,先行研究等から20項目を設定し,「全くそう思わない」から「よくそう思う」の 4 件法で尋ね,因子分析を行い,各因子を分析に用いた。結果 回答者220人は,男子57.5%,女子42.0%で,各学年ほぼ同人数であり,携帯電話所有率は94.1%であった。孤独感20項目のクロンバックの α 係数は0.87,孤独感得点の平均値は先行研究に近似していた。携帯電話の利点・欠点20項目の因子分析により 5 因子が抽出された。メール回数を従属変数とした重回帰分析の結果,学年,通話回数,授業中の通話・メールの確認,着信・メールの頻繁なチェック,伝達の困難性,夜間利用による睡眠不足により,メール回数の分散の42.9%が説明された。孤独感に有意差のみられた,性別,友人とのネットワーク(友人数等),携帯メール回数等を独立変数,孤独感得点を従属変数とした重回帰分析の結果,性別,友人数,恋人の有無,携帯メール回数により孤独感の分散の24.4%が説明された。結論 携帯メールの利用は,友人とのネットワークと同様に,高校生の孤独感に低減効果をもたらし,その利用回数は,携帯電話の利用頻度や,携帯電話の利点や欠点を高校生がどのように感じているかによって影響を受けていた。また,高校生が,携帯電話の利便性や限界を認識しつつ,苛立ちや束縛感を感じながらも友人との関係性強化に携帯メールを利用していることが明らかになった。
著者
堀田 和司 奥野 純子 戸村 成男 柳 久子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.863-874, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
45
被引用文献数
2

目的 介護職員の「仕事へのモチベーション」は,施設利用者の生活を左右する介護の質への影響も大きく,質の高い介護が求められる施設にとっては,離職問題だけでなく重要な課題となる。そこで本研究では,介護職員の「仕事へのモチベーション」が,どのような要因と関連し,影響を受けているのかについて検証し,「仕事へのモチベーション」を低下させない職場環境を作るため,どのようなアプローチをするべきかを明らかにすることを目的とする。方法 茨城県に所在する介護老人保健施設25に常勤で勤務する各専門職993人(うち介護職員607人)を対象に質問紙調査を実施。「仕事へのモチベーション」と「仕事の有能感」,「仕事への満足感」,「専門職アイデンティティ」,「連携に関する意識」,「専門職イメージ」それぞれの要因との関連について,因果モデルを想定し,構造方程式モデリングによるパス解析を行った。結果 「仕事へのモチベーション」に対して,仕事の有能感(β=.176)専門職アイデンティティ(β=.352)介護職イメージ(β=.245)の直接効果が認められ,「仕事の有能感」を媒介変数として,連携に関する意識(β=.164)が,「専門職アイデンティティ」を媒介変数として,仕事への満足感(β=.288)と仕事の有能感(β=.332)が,「仕事の有能感」と「専門職アイデンティティ」を媒介変数として,介護職イメージ(β=.188)の,それぞれから,「仕事へのモチベーション」に対する間接効果が認められた。結論 「仕事へのモチベーション」を高めるためには,介護職員が,介護職の仕事に肯定的なイメージを持ち,有能感を持って仕事に望むことや,専門職としてのアイデンティティを確立することが重要となる。そのために,仕事への満足感を得られると共に,看護職・リハビリ職といった他職種を肯定的なイメージで捕らえ,他職種と良好な連携の状態を作ることが出来る環境を整備することが必要である。
著者
上原 里程 篠原 亮次 秋山 有佳 市川 香織 尾島 俊之 玉腰 浩司 松浦 賢長 山崎 嘉久 山縣 然太朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.376-384, 2016 (Released:2016-08-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

目的 21世紀の母子保健の主要な取り組みを示すビジョンである「健やか親子21」では,母子保健統計情報の利活用促進が課題の一つである。市町村での母子保健統計情報の利活用促進には都道府県による支援が重要な役割を果たすと考えられるため,都道府県が市町村支援に活用できるよう市町村の母子保健統計情報の利活用の現状と課題を明らかにすることを目的とした。方法 2013年に実施された『「健やか親子21」の推進状況に関する実態調査』(以下,実態調査)のうち政令市および特別区を除いた市町村の「健やか親子21」を推進するための各種情報の利活用に関する設問を分析した。まず,市町村別の母子保健統計情報の集計分析を行っている都道府県および課題抽出を行っている都道府県が管轄している市町村を抽出し,さらに定期的に母子保健統計情報をまとめている市町村とまとめていない市町村に分けて,定期的なまとめをしていない市町村の特性を観察した。結果 実態調査の対象となった1,645市町村すべてから回答を得た。市町村別の集計分析を行っている都道府県は35か所(47都道府県のうち74.5%)あり,課題抽出を行っている都道府県は14か所(同29.8%)あった。集計分析を行っている35都道府県が管轄する市町村は1,242か所あり,このうち母子保健統計情報を定期的にまとめている市町村は700か所(56.4%),まとめていない市町村は542か所(43.6%)あった。母子保健統計情報を定期的にまとめていない市町村においては,妊娠中の喫煙,予防接種の状況,低出生体重児の状況について積極的に利活用している市町村の割合が有意に少なかった(いずれも P<0.001)。また,児童虐待の発生予防対策や低出生体重児に関する対策などは定期的なまとめをしていない市町村において都道府県と連携して実施した市町村の割合が有意に少なかった。結論 母子保健統計情報を定期的にまとめていない市町村では,児童虐待の発生予防などの対策について都道府県との連携が希薄であり,母子保健統計情報の利活用が進まないこととの関連が示唆された。都道府県は管内市町村の母子保健統計情報を集計分析して市町村へ提供することに加え,これらの母子保健事業を市町村と連携して取り組むことによって市町村での母子保健統計情報の利活用を促進できる可能性がある。
著者
小和田 暁子 浜田 有希江 青木 眞里子 郡山 洋一郎 坂野 晶司 寺西 新 黒岩 京子 森 亨
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.434-439, 2007 (Released:2014-07-03)
参考文献数
10

目的 QuantiFERON® TB 検査(以下,QFT 検査)は,ツベルクリン反応検査とは違って,過去の BCG 接種の影響を受けずに結核感染を診断できる新しい検査方法である。この QFT 検査を,2005年 6 月より足立保健所衛生試験所に直営導入し,保健所結核接触者健診における行政検査として実施している。本報告は,その後2006年 3 月までの実施状況を分析し,検討するものである。方法 QFT 検査対象者は,2005年 6 月から2006年 3 月にかけて,肺結核症患者と接触して接触者健診の対象者となった足立保健所管内に住む区民のうち,QFT 検査を受けることについて同意した者67人である。QFT 検査実施時期は,接触者が感染源である肺結核患者との最終接触後 2 か月以降である。すべての QFT 検査は足立保健所衛生試験所細菌検査部門で実施した。また,ツベルクリン反応検査もできる限り同時に実施した。結果 QFT 検査を実施できた接触者総数は67人であった。QFT 検査結果は,陽性が 9 人,判定保留が 5 人,陰性が53人であった。このうち,QFT 検査と同時にツベルクリン反応検査を実施できた接触者は48人,そのうち発赤長径が30 mm 以上の者は22人であった。ツベルクリン反応で発赤長径が30 mm 以上の者で QFT 検査が陽性となった者は 4 人,発赤長径が30 mm 未満であった26人の中で QFT 検査が陽性となった者は 5 人であった。QFT 検査が陽性となった 9 人については化学予防を指示した。このように QFT 検査の導入によって,従来のツベルクリン反応検査に比してより精度の高い潜在結核感染の診断が可能になった。結論 足立保健所では,既存の設備・検査技術を生かして衛生試験所細菌検査部門に QFT 検査を直営導入した。このことにより,QFT 検査の持つ「採血後12時間以内でできるだけすみやかに培養を開始する」という検査制限事項を容易に克服できた。さらに接触者健診の成果としてより精度の高い化学予防対象者の選別が可能になり,保健所の対人保健サービス部門と検査部門の密な連携による保健所機能強化につながった。
著者
近藤 功行
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.p799-808, 1992-10
被引用文献数
1

琉球列島の終末期医療における伝統的固有宗教の存在とその公衆衛生学的意義を考察するために,与論島における終末期受療行動,沖縄県内の総合病院,民間精神科病院,特別養護老人ホーム(以下,老人ホームと略す)などにおける施設側および患者・遺族側の宗教活動・儀礼について一連の調査を行った。与論島では島外の診療施設に入院して重篤化した場合,死亡間際に島に連れ戻すとしみ特異な終末行動がみられ,自宅死亡が最も理想とされた古来の死生観が保持されていた。沖縄県内の総合病院や精神科病院,老人ホームでは死者が出た場合「ヌジファ」と呼ばれる伝統宗教に従った抜魂儀礼をかなりの遺族が希望し,多くの施設ではそれが認められていて,遺族の心理的安堵感の獲得に大きく貢献していると考えられる。また老人ホームでは,伝統宗教上の祭日に限局した特異な行動をする老齢女性が少なからず存在し,これら女性の深層表象に伝統宗教要素が濃厚に反映していることが推測された。琉球列島では本土化という概念を中心として急速な文化変容が進んでいるが,いまだに伝統宗教的意識が強く支配しており,今後の終末期医療においてもそれらについての十分な配慮が必要であろう。The public health significance of traditional religions in terminal care was studied in the Ryukyu Archipelago. The traditional religious view of life, in which death at home is ideal, is still maintained: while inhabitants seek modem medical care in facilities outside of the island, they are transported back to die in their homes when their condition becomes critical. Most of the general hospitals, special nursing homes for the aged, and psychiatric hospitals of Okinawa allow bereaved families to perform "Nujifa", a traditional religious ritual for transferring soul of the dead from the death to their own home, that functions as a sighificant factor in relieving grief. In many of the special nursing homes for aged, not a few aged women practiced activities uniquely associated with traditional religion on strongly reflecting the fact that endemic religion is deeply embedded in their thinking. Although acculturation is in rapid progress in the Ryukyu Archipelago, such endemic religion still has a significant effect on the people. Therefore these religious factors should be considered in the terminal medical care of these people.
著者
成瀬 昂 有本 梓 渡井 いずみ 村嶋 幸代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.402-410, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的 少子化の進む日本では,健やか親子21などの政策により父親の育児参加が推奨されている。父親の育児参加に関する研究では仕事の影響を考慮する必要があるが,仕事と家庭における役割の関係性(スピルオーバー)が父親の育児参加にどのように影響するのかは,明確にされていない。本研究では,父親の育児参加を育児支援行動と定義して,その関連要因を検討し,父親の育児支援行動と役割間のポジティブスピルオーバーとの関連を明らかにすることを目的とした。方法 A 市内の公立保育園17園と私立保育園14園に通う,1,2 歳児クラスの父親880人を対象に,無記名自記式質問紙による留め置き・郵送調査を行った。父親・家庭・多重役割に関する変数を独立変数とし,「母親への情緒的支援行動」,「育児家事行動」を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。父親に関する要因,母親の職業を独立変数として投入した後(モデル 1),さらに仕事と家庭の両役割間のポジティブスピルオーバーを追加投入(モデル 2)した。結果 189人の有効回答を得た(有効回答率21.4%)。重回帰分析の結果,母親への情緒的支援行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,平等主義的性役割態度の高さが有意に関連していた。育児家事行動の実施にはポジティブスピルオーバーの高さ,母親が会社員・公務員であることが有意に関連していた。結論 父親の育児支援行動は,父親の持つ特性や経験などの背景要因よりも,仕事と家庭の両立におけるポジティブスピルオーバーとの関連性が強かった。また,ポジティブスピルオーバーが高いほど母親への情緒的支援行動,育児家事行動を行っていた。父親の育児支援行動を促進するための働きかけや政策を検討するためには,父親が仕事と家庭をどのように両立しているか,それによる影響を本人がどう捉えているかを考慮する必要性が示された。
著者
赤間 由美 森鍵 祐子 大竹 まり子 鈴木 育子 叶谷 由佳 細谷 たき子 小林 淳子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.342-353, 2014 (Released:2014-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

目的 生活保護現業員のメンタルヘルスの実態を把握し,メンタルヘルスと関連が予測される労働状況,研修講習会の参加状況,生活習慣,疾病の有無,ソーシャルサポート,自己効力感との関連を明らかにする。方法 全国の福祉事務所(1,230か所)を,設置主体,地域別に降順に並び替え,等間隔抽出法により20%,246施設を抽出し,各施設 5 人ずつ計1,230人の生活保護現業員を調査対象とする無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,基本属性,労働状況,ソーシャルサポート(家族・友人,上司,同僚),研修会・講習会への参加,疾病の有無,生活習慣,生活保護現業員としての自己効力感,生活保護現業員のメンタルヘルス(GHQ28)とした。GHQ28得点を従属変数とし,区分点で GHQ 5 点以下を GHQ 低群,GHQ6 点以上を GHQ 高群として 2 群に分け,独立変数との関連を t 検定,χ2 検定または Fisher の直接確率法により確認した。 単変量分析の結果,性差が認められたことから,男女別に GHQ28得点の高群,低群の 2 群を従属変数とし,有意性が認められた変数を独立変数とする,多重ロジスティック回帰分析(変数増加法ステップワイズ尤度比)を行った。結果 有効回答数は506人,男性410人,女性96人で,GHQ 高群は66.0%,低群は34.0%とメンタルヘルス不調の者の割合が高かった。 分析の結果,生活保護現業員男女ともに,10時間以上の労働時間の者は 9 時間以下の者に比べて,また自己効力感の低い者は高い者に比べてメンタルヘルスが有意に不調であった。男性生活保護現業員では,適度な睡眠時間が取れている者,同僚および,家族・友人のサポートが得られている者,社会福祉士資格を有する者のメンタルヘルスが良好であった。女性生活保護現業員では,年齢が高くなるほどメンタルヘルスが悪化していた。また家庭訪問を最多業務としている者のメンタルヘルスが良好であった。結論 以上のことから,残業時間への配慮,サポート的なコミュニケーションや自己効力感を育む環境づくりが求められる。男性では,適度な睡眠時間の確保,女性ではワークライフバランスを意識した働き方等,性差を考慮したメンタルヘルス対策が示唆された。
著者
市川 伸一
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.p253-257, 1985-05
被引用文献数
2
著者
渡邉 純子 渡辺 満利子 山岡 和枝 根本 明日香 安達 美佐 横塚 昌子 丹後 俊郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.113-125, 2016 (Released:2016-04-02)
参考文献数
36

目的 本研究は,中学生におけるライフスタイルと愁訴との関連性の検討を目的とした。方法 2012年 5~11月,同意を得た熊本県内10校の中学校 1, 2 年生,計1,229人(男子527人,女子702人)を対象とし,愁訴(12項目)および体格,食事調査(FFQW82),ライフスタイル(18項目),食・健康意識(9 項目)に関する自記式質問紙調査を実施した。回答を得た1,182人(回収率96.2%,男子500人,女子682人)を解析対象とした。愁訴は(いつも・ときどき)を愁訴ありとして,12項目のありの個数を「愁訴数」として取り扱った。要約統計量は男女別に,連続量は平均値と標準偏差または中央値(25%点,75%点),頻度のデータについては出現頻度(%)を求めた。男女間の比較には前者では t 検定,またはウィルコクソン順位和検定を,後者ではカイ 2 乗検定により比較した。愁訴については因子分析で因子構造を確認した。ライフスタイル等と愁訴との関連性は,主成分分析およびステップワイズ法による変数選択により検討した。有意水準は両側 5%,解析は SAS Ver9.3を用いた。結果 本対象の体格は全国平均とほぼ同レベルであった。エネルギー摂取量の朝・昼・夕食の配分比率は,2:3:4 を示し,とくに朝食の摂取不足の傾向が認められた。ライフスタイルでは,男女ともに朝食を十分摂取できていない者 2 割強,夜 9 時以降の夕食摂取者 3 割程度,TV・ゲーム等 2 時間以上の者 5 割程度認められた。愁訴の出現頻度は,「いつも疲れている感じがする」,「集中力がない」,「やる気がでない」がそれぞれ男女ともに 40%以上を示した。 多変量解析の結果,「愁訴数」の少なさと関連するライフスタイル項目として,男女ともに「バランス食摂取」,「睡眠 6 時間以上」,女子の「3 食規則的摂取」,「食欲あり」,「リラックス時間あり」が示唆された。「愁訴数」の多さと関連する項目として,男女ともに「早食い」,「TV・ゲーム等 2 時間以上」,男子の「料理・菓子をつくる」,女子の「間食・夜食をとる」,「夜 9 時以後の夕食摂取」,「弁当は自分でつくる」が示唆された。なお、食事摂取量は「愁訴数」とはほとんど関連が認められなかった。結論 中学生の「朝食を落ち着いてしっかり食べる」および「食事は 1 日 3 回規則的に食べる」などの食事摂取状況やライフスタイルが「愁訴数」の少なさと関連することが示唆された。