- 著者
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卯津羅 祥子
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.1, pp.18-28, 2002 (Released:2015-04-08)
- 参考文献数
- 38
- 被引用文献数
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目的 職場および家庭におけるストレス要因が,個人の自覚的健康度,心理学的健康度におよぼす影響について明らかにすること。方法 35歳以上の T 市職員1,652人に対して平成10年 2 月に行った自記式アンケートの結果を用いた(回収率82.6%)。回答者1,364人のうち消防士143人を除いた男性828人,女性393人を分析対象とした。対象者を,仕事や家庭生活に不満を感じている群と,不満を感じていない群に分類した。それぞれの群において,仕事の要求度,裁量度,支援度,家庭の決定権,親しい人間関係,年齢の差について t 検定を,また,職業分類,趣味の有無,性別について χ2 検定を行った。次に,自覚的健康度,心理学的健康度に対する職場および家庭の因果関係について共分散構造分析を行った。結果 仕事や家庭生活に不満を感じている群では不満を感じていない群に比べて仕事の要求度の得点が高く,仕事の裁量度の得点や支援度の得点,親しい人間関係の得点が有意に低かった。また,不満を感じている群では自覚的健康度,心理学的健康度の得点も有意に低かった。職業分類では,事務系,技術系,教員の係長・主任・一般クラスが仕事や家庭生活に不満を感じていた。共分散構造分析では,職場の因子(仕事の要求度,裁量度,支援度,職種,職位,仕事に対する満足感)が個人的因子(年齢,性別,家庭の決定権,親しい人間関係,家庭に対する満足感)に比べて自覚的健康度,心理学的健康度に対して強い因果関係を示した。個々の観測変数の中では,仕事の裁量度,仕事に対する満足感,親しい人間関係,家庭に対する満足感の因果的な影響力が高かった。結論 職場や家庭生活におけるストレス要因が個人の自覚的健康度,心理学的健康度を低くする影響を与えていた。特に,職場の因子,親しい人間関係の影響が高くみられた。職場におけるストレス要因の改善や親しい人間関係の形成が,自覚的健康度,心理学的健康度を改善し,ストレス関連疾患の予防や積極的な健康づくりにおいて重要と考えられる。