著者
坂本 祐二 桒原 聡文 藤田 伸哉
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-05-17

東北大学が主として開発または協力した3衛星、DIWATA-2、RISESAT、ALE-1が2018年10月からの3か月間で、立て続けに打ち上げられた。東北大学構内に設置している2.4m口径パラボラアンテナを有する地上局を用いて、3衛星を日々観測している。本講演では、2009年より継続・発展してきた運用システムをハード・ソフトの両面で解説する。また、フィリピン、スウェーデン、函館、福井など、連携中または準備中の地上局ネットワークについても紹介する。 本地上局は、東北大学の1号機衛星SPRITE-SATのために整備され、超小型衛星を対象として使用を開始した。基本的に低高度地球周回衛星が対象であり、約10~12分のパスにおいて、アンテナ指向方向を制御し、送受信機の周波数を制御して、通信を確立する。衛星追尾は対象衛星を登録するだけで、自動的に最新の軌道を収集し、上空通過時に自動追跡を開始・終了する。運用者は、衛星との通信に集中し、地上局の管理に気を払う必要はない。 現在、前期の最新3衛星に加え、DIWATA-1、RISING-2、SPRITE-SATとの通信も不定期に実施している。本地上局が対応できる通信仕様は、ITU国際通信連合にJCUBES-Bの群衛星として登録されており、今後も兄弟衛星が打ち上げられる予定である。国際機関への電波申請には申請準備も含めて、1年以上の時間を要する。企画から打上まで1年半以内で実現できる現状において、電波申請作業はプロジェクトにおいてトラブル要因となりうる。本地上局を使用する衛星ネットワークの輪が広がることで、衛星開発者に大きなメリットをもたらすと考えている。
著者
小口 高 西村 雄一郎 河本 大地 新名 阿津子 齋藤 仁
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日本地理学会が運用しているツイッターアカウント(@ajgeog)は約1万5千人がフォローしており、諸学会のアカウントの中でも知名度が高く、一定の影響力を持っている。このアカウントは多くの学会のアカウントとは異なり、地理学に関連した一般的なツイートを多数リツイートしたり、フォローを返したりすることが多い。アカウントの運用は同学会の広報専門委員会が担当しており、過去5年間以上にわたり地理学に関する情報の伝達に継続的に寄与してきた。本発表では、2012年9月の同アカウントの開設と、その後の初期運用において中心的な役割を担った5名が、当時の経緯と背後で行われていた議論の内容を紹介する。
著者
丸橋 暁 丸橋 友子 丸橋 美鈴
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

ホワイトチョコレートはダークチョコレートよりも融けやすいと言われる.ホワイトチョコレートとダークチョコレートとの融解温度の差を利用してミグマタイトをつくってみた.【材料】・ホワイトチョコレート・ダークチョコレート【方法】ホワイトチョコレートとダークチョコレートとを容器に詰め,湯煎をして融解させた.【なぜそんなことを?】家族で肥後変成帯のミグマタイトを見に行った.その振り返りにキッチン変成岩岩石学として,ミグマタイトチョコレートをつくってみた.【結果】ミグマタイトの構造を再現したミグマタイトチョコレートをつくることができた.ミグマタイトがどのようなものかがこの振り返り実験で実感できた.
著者
田村 笙 岩本 南美 東森 碧月 田島 晴香 中野 勝太 中野 美玖 尾藤 美樹
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-05-10

2011年に土砂災害が発生した兵庫県加古川市の大藤山や、2014年に土砂災害が発生した広島市安佐北区には花崗岩が分布している。このことから、花崗岩体では土砂災害が発生しやすいと考え、文献調査で確認しようとしたが、花崗岩と土砂災害の関係について確証できる実験データを伴うものはなかった。そこで、全国で2012年~2014年に土砂災害が発生した地域の地質を調査した。その結果、花崗岩の分布面積は全国で12%程であるにも関わらず、地質別の土砂災害発生件数は花崗岩体が最も多くなっていた(図1)。このことから、2015年度は花崗岩の風化が土砂災害に及ぼす影響について研究を行い、花崗岩特有の風化過程によって土砂災害発生の危険性が高まるという結論を得た。ところが、兵庫県の土砂災害ハザードマップには地質的条件が十分考慮されていない。そこで、花崗岩体における土砂災害発生危険度(以下、危険度とする)を新たに設定し、それをハザードマップに反映させることを目的として、昨年度から研究を進めている。危険度の設定には、鉱物の割合と透水係数を用いる。岩体の崩れやすさを鉱物の割合から、土砂層の崩れやすさを透水係数から、それぞれ[1]~[5]の5段階で定める。そして、岩体の崩れやすさと土砂層の崩れやすさの分布表を作成し、[A]~[E]の5段階で危険度を設定する(図2)。 崩れやすさを定めるにあたって大藤山で現地調査を行い、土石流跡付近の土砂を採取した。この地点の岩体・土砂層の崩れやすさを、最大である[5]と定義する。そして、土砂の鉱物の割合と透水係数を測定した。鉱物の割合は、採取した土砂を樹脂で固めて薄片を作成し、偏光顕微鏡で黒雲母・緑泥石・粘土鉱物の観察を行った。そして、3つの鉱物の合計面積に対する、それぞれの鉱物の面積の割合を算出した。黒雲母は風化によって緑泥石、粘土鉱物へと変質していくことから、粘土鉱物の割合が大きいほど風化は進行し、岩体は崩れやすくなると考えている。鉱物の面積は、偏光顕微鏡に設置したカメラで薄片を撮影し、画像加工ツールを用いて対象の鉱物を着色し、「PixelCounter」というソフトを使用して測定した。画像を分析した結果、土石流跡付近の土砂は粘土鉱物が91.5%、黒雲母が8.5%で、緑泥石は見られなかった。この結果から、土石流跡付近では風化が著しく進行していることが分かる。この土石流跡付近の土砂の岩体の崩れやすさを、前述で示した最大の[5]とした。また最小の[1]として、風化していない花崗岩の薄片観察の結果を用いた。次に、土砂層の崩れやすさを求めるために、ユールストローム図を用いた。ユールストローム図とは、土砂の粒径と、土砂が侵食・堆積され始める水の流速の関係を表したグラフである(図3)。流速が小さいほど、土砂が動き始める際に必要なエネルギーは小さい、即ち土砂層は崩れやすいと考えられる。この図を用い、土砂の粒径を測定することで土砂層の崩れやすさを求めようと考えていたが、ユールストローム図における土砂の粒径は均一であることが前提である。しかし、実際に堆積している土砂の粒径は不均一である。そのため、粒径と透水係数の関係を表す表であるクレーガ―表(図4)を用いることで、透水係数から土砂層の崩れやすさを求めることができると考えた。ここでユールストローム図とクレーガ―表から、図3の赤線と図4の赤枠が示すように、土砂層の崩れやすさが最大である[5]となる透水係数は3.80×10-3cm/sとなる。そこで、土石流跡の透水係数を測定し、最も土砂層の崩壊しやすい値(3.80×10-3cm/s)と比較することにした。測定実験は土石流跡の土砂の構造を壊さないように採取したものを持ち帰り、自作した装置(図5)に詰めておこなう、室内変水位透水試験を実施した。実験により得られた土石流跡の透水係数は5.18×10-3cm/sとなり、最も土砂層の崩れやすい値である3.80×10-3cm/s付近となることから、ユールストローム図とクレーガ―表を用いることで透水係数から土砂層の崩れやすさを求めることができるといえる。岩体と土砂層、それぞれの崩れやすさから設定した危険度の分布表をより正確なものにしていくために、土石流跡周辺の崩壊していない土砂層が見られる露頭でも同様の実験をおこない、そのデータを分析中である。今後は大藤山と同様に花崗岩体であり、既に予備調査を終えている六甲山(兵庫県神戸市)の試料も採取するなどさらに多くのデータを得て、危険度の分布表をより正確なものにしていきたいと考えている。
著者
諏訪 仁 大塚 清敏 野畑 有秀 久保 智弘 宮城 洋介 棚田 俊收 中田 節也 宮村 正光
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2014年の御嶽山では死傷者を出す火山噴火が発生し、それを機に火山災害への関心が急速に高まっている。最近でも、草津白根山が小規模噴火を起こし死者が発生した。一方、富士山の宝永噴火のような大規模噴火を想定したとき、火口周辺の噴石などに加えて、降灰が首都圏を含む広範囲に及ぶと予想されている1)。降灰の建物への影響に着目すると、降灰荷重による屋根のたわみや崩落、空調用室外機などの空調効率の低下や腐食、目詰まりによるフィルタの交換時間の短縮など、さまざまな被害状態が懸念される。このため、筆者らは、それらを統合的に評価するため、降灰被害予測コンテンツの開発を行っている2)。本研究では、建物の空調機能を維持するために重要となる空調用室外機を対象に、火山灰の降下直後を想定した実験を行い空調用室外機の稼働状態を検討した。 降灰深が約50mmまでの実験結果をまとめると、降灰深の増加に伴い熱交換器のフィンに火山灰が付着して通風抵抗が増加し、ファン運転電流にわずかな上昇が見られた。しかし、湿潤状態で降灰深が約50mmのケースを除くと、空調用室外機はほぼ正常に稼働することを確認した。今後は、病院、庁舎など重要施設を対象に、降灰深に応じた建物機能への影響事例を作成し、自治体など防災担当者を支援するための情報ツール開発に繋げる予定である。【参考文献】1)富士山ハザードマップ検討委員会、2004、2)文部科学省:次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト
著者
伊藤 英之 角野 秀一 辻 盛生 市川 星磨 高崎 史彦 成田 晋也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

近年,宇宙線ミュオンを用いた火山体内部の透視技術が確立され,浅間山,薩摩硫黄島などで成果を出している(Tanaka, et.al 2008).我々は,岩手山山頂から約6km東麓に位置している国立岩手山青少年交流の家にミュオン測定機を設置し,2016年10月14日より観測を実施している.合わせて,岩手山起源の湧水の化学組成について連続観測を行い,ミュオグラフィーから得られる山体内部構造のイメージングとあわせ,火山体内部の深部地下水流動系の解明を目指している.現在のデータの取得状況は安定しており,二次元の簡易イメージは得られている状況にある.しかしながら,測定から得られる山の密度長は実際の山の厚さとはかけ離れた値を示しており,電磁シャワーや周囲からの散乱によって入ってきたミュオンによる影響が大きい.一方,数値地図火山標高10mメッシュを用いて,実測密度長と地形データの距離との比を取り,密度分布にすると,北側と南側で濃淡が異なってくることから,今後はバックグラウンドを仮定して,山体の密度分布を把握していく予定である.一方,湧水の化学組成から,岩手山麓の湧水の多くはCa(HCO3)2型であるが,北麓の金沢湧水と北東麓の生出湧水では,Ca(HCO3)2に加えSO42-の濃度が高い.これらの湧水についてトリチウム年代を測定したところ,13.9~23.5年の値が得られた.特に生出,金沢湧水については,それぞれ19.4年,23.5年の測定値が得られ,1998~2003年岩手山噴火危機の頃に涵養された地下水が今後湧出してくる可能性が示唆された.
著者
齋藤 遥香 鈴木 洋佑 市川 由唯 宮下 絵美里
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-05-10

福島県いわき市には「風と坊主は十時から」という言い伝えがある。しかし、本校の1,2年生640名にアンケートを取ったところ10名しか知っている人がいなかった。そこで実際にこのことわざは信頼性があるのか、そして本当に風が10時から吹くのかを検証した。また風が吹くということが、風が吹き始めることと風が急に強くなることのどちらを指すのかを検討した。 まず、気象庁の過去20年分の午前6時から12時の風速と風向のデータを天候別と季節別に統計した。観測地点はいわき市を含む福島県沿岸部の2地点と内陸の計4地点に設定し、吹き始めと風速の変化の大きい時間を調べた。人が風を感じる風速3.0m/sを初めて超えた時間帯を風の吹き始めとし、また、風速3.0m/sを超えた中で1時間の風速の変化量が最も大きい時間帯を風速の変化量とした。本研究では、この2つのデータと、その時観測された風の向きを統計の対象とした。 その結果、沿岸部のいわき市小名浜と相馬市では、吹き始め・変化量のどちらにおいても10時から風が吹くことが多く、特に春と夏は風速の変化量が最大になる時間帯が10時より早かった。風向きに関しては、夏は海側からの風が、冬は北西よりの風が多くみられた。このことから、春と夏に小名浜や相馬市で10時より早い時間帯に吹く風は海風であると考察した。一方で内陸に位置する福島市と会津若松市では、吹き始め・変化量どちらにおいても一年を通しておおむね10時より遅い時間帯に多く吹くことが分かった。風向きに関して、夏は北東、それ以外の季節では北西か西北西の風が多かった。 沿岸地域で風速の変化量が大きくなる時間帯が夏に早くなる原因が海風にあることを確証づけるため海風を模擬的に起こす実験を行った。まず水槽に水と砂を配置し、その間に風を可視化するため線香を置いた。そして熱を発する500Wのハロゲンライトで砂と水を温め、海陸風を発生させた。また温める前の砂と水の温度はどちらも10℃にして、実際の海水温と気温の変化と実験の結果を比較するため、水の温度と砂の温度を測定した。この実験を6回行った。風が吹き始めたというのは、上昇気流が砂の上で生じた時とした。実験から、風が生じたのは砂と水の温度差が平均して5.216℃の時だった。その条件に当てはまる気温と海水温の時間帯を調べたところ、8時と9時の割合が高かった。このことから、夏の8時に風速の変化量が大きかった理由が海風の影響を受けたためであると推測した。 このことから、福島県いわき市小名浜ではこの言い伝えがおおむね適用できるということが分かった。
著者
大澤 拓未 山本 伸次
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

マントル内部物資循環において海洋地殻、大陸地殻が海洋プレート沈み込みによりマントル内へリサイクルし、マントル対流を通して地殻物質がマントル内に混染している可能性が指摘されているW.Xu et al.,(2008)。しかしその実態は不明であり、マントル-地殻鉱物大循環の解明のためリサイクル地殻鉱物を用いた物質科学的制約が急務である。北海道日高山脈に位置するマントル由来造山帯かんらん岩の幌満かんらん岩は蛇紋岩化していない新鮮なかんらん岩として知られ、メルトマントル反応による交代作用からレールゾライト、ハルツバージャイトの顕著な層序構造を示す。近年、Li et al.,(2017)により幌満かんらん岩からジルコンやルチル、低い炭素同位体比を有するダイヤモンドの産出が報告されており、幌満かんらん岩中に地殻由来鉱物が存在することが示唆されている。しかし問題点としてかんらん岩中の地殻鉱物は回収例が少なく、その起源に関しても不明確であるため、かんらん岩中に残存する地殻鉱物分離技術の改善・分離回収された鉱物の記載を目的とする。本研究では、東邦オリビン工業(株)の採石場より採取したかんらん岩試料、ハルツバージャイト 764㎏、レールゾライト 954㎏、それぞれを板状に切断し移送したものを用いた。ジョークラッシャーおよび連続式粉砕機を用いて0、1㎜大まで粉砕した後、粒度分離、比重分離、磁選処理を行い、ハンドピッキングおよびエポキシ樹脂への包埋、研磨を行った。レールゾライト内からジルコン6粒、ルチル(TiO₂) 1粒が回収された。一方で、ハルツバージャイト内から非磁性鉱物を濃集させた粒子を樹脂に包埋し、EPMA(YNU機器分析評価センター)を用いた鉱物探査・鉱物同定を行った結果、コランダム(Al₂O₃) 12粒が分離回収され、包有物および付着鉱物が共生している様子が観察された。コランダム6粒子のSEM-EDS分析から、これらは①Si-Al-Kに富む珪酸塩相 ②Ti-Zr酸化物 ③Si-Ti合金 からなる包有物が確認された。Morishita et al.,(1998; 2000)より幌満かんらん岩体ポンサヌシベツ川流域のハンレイ岩転石中から微量のCrを含むコランダムの産出が報告されている。本研究で得られたコランダムは、①Crがほぼ含まれない、②TiO2を最大で2.3 wt%程度含む、③Ti-Zr酸化物やSi-Ti合金といった特異な包有物を含む事などから異なる起源のコランダムであることが考えられる。世界中のコランダムの産出を比較した結果(Griffine et al.,2016; 2018)よりイスラエルMt.Carmelのアルカリ玄武岩由来捕獲鉱物中コランダム内に特異な包有物として(Ti-Zr酸化物、Si-Ti合金)が報告されている。また高いTiO2濃度(最大2,6wt%)、捕獲結晶としてダイヤモンドの産出も報告され、リサイクル海洋地殻玄武岩由来であると考えられている。以上より本研究で幌満ハルツバージャイトから分離回収されたコランダムとGriffine et al.,(2016; 2018)で報告されたコランダムは組成も共存鉱物も非常に類似していることから同様の起源を持つことを意味し、幌満ハルツバージャイト中コランダムもリサイクル海洋地殻由来コランダムであり、幌満かんらん岩中に鉱物レベルで地殻鉱物が存在することを示唆する。引用文献Griffin1,William L. (2016) “Deep-earth methane and mantle dynamics: insights from northern Israel, southern Tibet and Kamchatka,” JOURNAL & PROCEEDINGS OF THE ROYAL SOCIETY OF NEW SOUTH WALES, VOL. 149,PARTS 1 & 2, 2016, PP. 17-33Yibing Li. The mineralogical and chronological evidences of subducted continent material in deep mantle: diamond, zircon and rutile separated from the Horoman peridotite of Japan. AGU. FALL MEETING 2017. AGU Contact Technical Support AGU Privacy Policy. https://agu.confex.com/agu/fm17/meetingapp.cgi/Paper/222963 [2019/02/19].Morishita, T., 1998, ”finding of corundum-bearing gabbro boulder possibly derived from the Horoman Peridotitie complex, Hokkaido, northern Japan, ”JOURNAL OF MINERALOGY, PETROLOGY AND ECONOMIC GEOLOGY, 93(2), 52-63.
著者
池田 敦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

温暖湿潤な日本列島において,永久凍土がまとまって分布しうるのが富士山と大雪山である。富士山ではひときわ高い標高が,大雪山ではより高緯度にあって標高2000 m前後の山頂部が台地状に広がることが,永久凍土を分布させやすくしている。一方,日本アルプスの高峰でも,地表面付近の地温から永久凍土の存在が示唆され,実際に飛驒山脈立山の1点では永久凍土が直接確認された。そのため,そうした山脈の山頂高度はちょうど永久凍土帯の下限付近に位置すると解釈されてきた。ところが2000年代末から,富士山の永久凍土とその周辺の地温を網羅的に観測しはじめたところ,1970年代の記念碑的論文が想定したよりも,また同等の気温をもつ国外の山域に比べても,富士山ははるかに永久凍土が存在しにくい環境であることが明らかになった。その結果をもとに,ここでは従来ごく限られたデータから論じられてきた日本列島の永久凍土環境について見直すこととする。 富士山では秋季に地温が特異的な急上昇をする場所が多く,その誘因は降雨であり,その素因は雨水を浸透させやすい火山砂礫層であった。一般に季節的な凍結融解層では,熱伝導が地温をほぼ支配する。しかし,富士山では移流的な熱の移動が顕著に加わるため,表層の地温勾配が極端に大きく,地表面に比べ永久凍土上端(深さ約1 m)の年平均地温が約1℃高い。永久凍土が存在しない地点の地温勾配はさらに大きく,深さ2 mの年平均地温は地表より3~5℃高い。こうした場所において,地表付近の地温を従来の知見に参照させるだけでは,永久凍土分布を過大評価してしまう。これまで日本アルプスで永久凍土が表層地温から示唆されたところは,透水性のよい岩塊地が多い。そこでは深さ2 mの年平均地温を従来の見積もりよりも3℃は高く想定すべきで,そうすると日本アルプスでは永久凍土がほとんど現存しないことになる。立山で確認された永久凍土は,8月まで残存する積雪が降雨浸透を妨げる場所で観察されており,気候的な代表性をもつ永久凍土帯下限の証拠ではなく,極端に不均一な積雪分布を反映した非成帯的な永久凍土と理解する方がよいだろう。一方,台風や秋霖の影響をほとんど受けない大雪山では,おそらく永久凍土が富士山より高い気温のもとでも存在している。つまり,日本列島では気温の南北傾度に比べて,永久凍土帯下限の南北傾度が大きい。今後,仮に気候変化により,大雪山が台風や秋霖の影響を受けやすくなれば,それに応じて永久凍土が縮小に転じると考えられる。
著者
新中 善晴 亀田 真吾 笠原 慧 河北 秀世 小林 正規 船瀬 龍 吉川 一朗 ジェライント ジョーンズ スノッドグラス コリン
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Comet Interceptor' is a proposed mission to the recent European Space Agency (ESA) call for F-class ('fast') missions. This is one of six mission concepts invited to submit detailed proposals. A decision is expected until late July 2019. The purpus of our misson is to characterise a dynamically-new comet or interstellar object like 'Oumuamua, which are visiting the inner Solar System for the first time, including its surface composition, shape, and structure, the composition of its gas coma for the first time. Our mission will launch to the Sun-Earth L2 point, where it will be stayed in a stable L2 halo orbit for a period of up to 2-3 years, until a suitable opportunity for a flyby mission to a dynamically new comet presents itself. Suitable targets will be comets that will have a perihelion distance closer than ~1.2 au and an ecliptic plane crossing time and location reachable with ~1.5 km/s delta-v from L2. Once a target is found, which expected to be within a few years based on predictions for comet discovery rates with the Large Synoptic Survey Telescope (LSST), the spacecraft will depart on an intercept trajectory. Before the flyby, the main spacecraft will resease at least two sub-spacecraft, parallel paths through the coma and past the nucleus to be sampled. This mission will give us a 3D snapshot of the cometary nucleus at the time of the flyby, testing spatial coma inhomogeneity, interaction with the solar wind on many scales, and monitoring of Lyα coma. This mission will be a unique measurement that was not possible with previous missions, in addition to the fact that we will target a dynamicall new comet, which will allow interesting comparisons to be made with the results from Rosetta target comet 67P/Churyumov-Gerasimenko. It is expected that the proposed mission includes contributions from Japan as well as ESA member countries.
著者
藤間 藍 日色 知也 地震火山子供サマースクール 運営委員会
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

地震火山こどもサマースクールは、日本地震学会, 日本火山学会, 日本地質学会を主催として、1999 年から毎年夏休みに全国各地で開催されている. このイベントの目的は, 研究の最前線にいる専門 家が、 こどもたちに地震・火山現象の発生要因と自然の大きな恵みについてわかりやすく伝えるこ とである(日色ほか, 2018)。平成 30 年度は伊豆大島を舞台に地元の小学生から高校生まで 34 名を迎え実施した。 当初8 月 7 日, 8 日の 2 日間の開催を予定していたが、天候不順のため, 8 月 7 日の 1 日間に短縮しての開催とした。伊豆大島は, 一般に伊豆・小笠原弧上に位置し、太平洋プレートの沈み込みに伴うマグマの発生に より、現在まで火山活動が生じている火山島であると考えられている。最近の火山活動としては、1986 年の三原山噴火が挙げられる。今回は「火山島 伊豆大島のヒミツ」をテーマに、島の誕生から現在までの歴史やそこに成立した 地域社会との関係について、野外観察や身近な材料を使った実験, 研究者との対話を通して、こどもたちが火山噴火の仕組みを理解し、自然の恵みや観光, 自然災害についての理解を深めるとともに、島の過去, 現在, そして未来を考えることを活動の目的とした。こどもたちは1日の中で地形, 地層, および溶岩に関する野外観察, 室内実験と講義を通じて学習し、島の成り立ちについて理解を深めた。地形観察では、伊豆大島西側の溶岩台地や元町地区の街並み、カルデラ内部の構造を観察し、自分た ちが住んでいる島の土地について学んだ。地層観察では、 大島温泉ホテル付近の露頭にて火山灰を観察した。 火山灰中には神津島由来の灰白 色の火山灰が挟まれており、短い期間に別の島でも噴火していたことを学んだ。溶岩の観察では、パホイホイ溶岩とアア溶岩の産状の違いについて学んだ。室内では、カルデラ形成のメカニズムを再現したカルデラ実験, マグマの性質と上昇過程を再現し たマグマだまり実験, パホイホイ溶岩の移動と形成を再現した溶岩実験, 炭酸を用いて噴火様式に ついて再現した噴火実験を行った。1日の最後には、こどもたちはチームごとに学んだことをまとめ, 発表を行った。今回のサマースクール終了後、実行委員会はこどもたちからのアンケートや発表内容、および携 わったスタッフの意見をもとに、来年度のサマースクールの方針を議論した。実行委員会のスタッフの意見では、地元スタッフの長年の経験や機転の利いた行動で、運営をス ムーズに進められたことが挙げられた。また、こどもたちのアンケート結果からは、 4つの実験のうち3つで「よかった」と回答した人が 80%を超えており、こどもたちは実験に対して高い関心があったことを示している。さらに、地形および地層の観察でも 22 人(65%)が「よかった」と回答しており、地形地質学的な 諸現象への関心の高さがうかがえる。こどもたちの発表では、活火山は常に活動しており、生活する上で不便なこともあるが、温泉や良い 漁場など多くの恩恵の受けているという意見が挙げられた。毎年2日間かけて行われるプログラムを1日に短縮しての開催となったが、こどもたちは観察や 実験、講義を通して火山現象の発生要因を解き明かし, 火山島で住むことで得られる自然の恵み, 自然災害との共生のしかた, 伊豆大島の過去, 現在, そして未来について考え、有意義なサマース クールとなったと考えられる。
著者
田村 理納 宮澤 理稔
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

2011年3月11日に発生したMw9.0東北地方太平洋沖地震の4日後に、静岡県東部においてMj6.4(Mw6.0)の地震が発生した。この地震は、東北地方太平洋沖地震のセントロイドから約450km離れた余震域外の領域で発生しており、また約4分前に発生した福島県沖の地震(Mj6.2)の表面波が通過している最中に発生していたため、どの様な誘発過程を経て発生に至ったのかを調べた。まず、静岡県東部地震の震源にどのような応力変化が働いていたのかを調べるため、静的ΔCFF、表面波と地球潮汐による動的ΔCFFを調べた。東北地方太平洋沖地震による静的応力変化及び表面波による動的応力変化の最大値は、それぞれ約21 kPa, 200 kPaであり、動的応力変化は静的応力変化に比べ一桁大きかった。地球潮汐による応力変化と福島県沖の地震の表面波による動的応力変化は最大で約1.2 kPa, 0.3 kPaであった一方、静岡県東部地震発生時の値はいずれも負の値で約-0.2 kPa, -0.01 kPaであった。次に、静岡県東部地震の破壊域での前震活動の有無について調べた。気象庁一元化震源カタログによると静岡県東部地震の発生前に震源域を含む領域では地震活動が認められていないため、matched filter法により検出を試みたところ、本震の約17時間前に本震の震源から約2km北北東の場所にM1.0の地震が1つ見つかったが、それまでの微小地震活動を考慮すると本震を誘発した前震とは結論付けられない。以上の結果を踏まえ、地震発生サイクルにおけるclock advanceによる、静岡県東部地震の「見かけ遅れ誘発」の可能性を提案する。まず静岡県東部地震の震源域の摩擦応力が、東北地方太平洋沖地震による静的な応力変化及び、表面波の動的な応力変化によって急速に増加した。その後、東北地方太平洋沖地震の大規模な余震の表面波による動的な応力変化及び、地球潮汐による応力変化によって摩擦応力がより摩擦強度に近づき、応力擾乱がなかった場合の発生予定時刻よりも早まって(clock advance)地震が発生した。大振幅の応力擾乱が作用してから遅れ破壊に至るまでの時間が、地震発生サイクルのスケールと比べてわずかでしかないことから、もともと静岡県東部地震のような地震が発生する準備が十分整っていたことが示唆される。
著者
小口 高
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2022年度から高校の地歴科で「地理総合」が必修となる。地理総合は現行の地理Aを基礎とするが、地理情報システム(GIS)によるデジタル情報の処理、自然災害、地球環境問題といった理系的な要素が重視されている。したがって、地理総合は高校生が地理学のみならず地学の素養を高めることにもつながる。高校の理科では、2012年度に「地学基礎」が新科目となった結果、以前よりも地学を学ぶ高校生が増えた。しかし履修率は三割弱であるため、多くの高校生にとっては地理総合が地球惑星科学に関連する内容に触れる主要な機会となる。したがって、地理総合が高校生の関心を惹きつけ、その内容が大学への進学や将来の職業の選択の際に考慮されれば、地理学のみならず地学を含む地球惑星科学の発展につながる。このような状況を作り出すためには、日本地球惑星科学連合や日本学術会議のような、地理学と地学の研究者が共に参加している組織における活動が効果的である。これらの組織の構成員の多くは大学や研究所の研究者であるため、高校の地歴科や理科の教員との連携体制を作ることも重要である。2018年度には、日本学術会議の地球惑星科学人材育成分科会の下に地学・地理学初等中等教育検討小委員会が設置され、主に高校における地学・地理教育の充実に向けた検討を行っている。この小委員会には大学と高校の教員とともに、文科省と国土地理院の職員も参加しており、検討課題の中には上記した地理総合の実施を踏まえた地学・地理教育の活性化も含まれている。このような活動を日本地球惑星科学連合の場でも行いつつ、地理学と地学の関係者が連携して将来の両学問を支える人材の育成に取り組むことが重要である。
著者
小河 泰貴
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

次期学習指導要領が2018年3月に告示され、「持続可能な社会づくり」に求められる地理の新科目として、必履修科目の「地理総合」が設けられた。1992年の「地理教育国際憲章」において、地理学研究の五大概念は「位置と分布」「場所」「人間と自然環境との相互依存関係「空間的相互依存作用」「地域」とされた。これらの概念は、地理カリキュラムを構成するうえでの一つの指針となっている。また、国際地理オリンピックの開催を通して、世界と日本の高校生に、地理教育で養う思考やスキルなどの国際的な基準が示されている。 「地理総合」の実施に向けて、私たち地理教員は何をどのように意識して授業構想をしていくのか。その視点として、国際地理オリンピック世界大会の出題内容や、日本の高校生の地理的な見方・考え方の現状などを踏まえ、「地理総合」で付けさせたい力と授業構想について報告をする。
著者
熊本 雄一郎 青山 道夫 浜島 靖典 村田 昌彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故によって、20­-40 PBqの放射性セシウムが環境中に放出されたと推定されている。そのうちの7­8割は北太平洋に沈着・流出したと見積もられているが、それらのほとんどは海水に溶けた状態で存在する。そのため福島事故由来の放射性セシウムは、海水混合によって希釈されながら表層水の流れに沿って北太平洋全域に広がりつつある。これまでの研究によって、日本近海に沈着・流出した放射性セシウムは北太平洋の中緯度を表面海流に乗って東に運ばれ、事故から約4年が経過した2015年には北米大陸の西海岸に到達したことが分かっている。演者らは2017年夏季に北太平洋亜寒帯域において実施された海洋研究開発機構「白鳳丸」航海において海水試料を採取し、その中の放射性セシウム濃度を測定した。福島事故起源134Csの濃度は、希釈と放射壊変(半減期は約2年)によって現在1 Bq m­-3以下まで低下しているため、濃縮しなければ測定することができない。濃縮には、仏国Triskem社製のCsレジン(potassium nickel ferrocyanate on polyacrylnitrile, KNiFC-PAN)を用いた。海水試料約40 Lを50 ml min­-1の流速で5 ml(約1 g)のCsレジンに通水することで、レジンに放射性セシウムを濃縮した。海水試料にはキャリアとして塩化セシウム(133Cs)を加え(濃度約100 ppb)、その通水前と通水後の濃度差から放射性セシウムの回収率を約95%と見積もった。陸上実験室に持ち帰ったCsレジンは洗浄後、海洋研究開発機構むつ研究所、または金沢大学環日本海域環境研究センター低レベル放射能実験施設の低バックグランドGe半導体検出器を用いてγ線分析に供され、134Csの放射能濃度が求められた。東部北太平洋のアラスカ湾を横断する東西(北緯47度線)と南北(西経145度線)の2本の観測線に沿った鉛直断面図によると、深度300mまでの表層において東側及び北側の観測点、すなわち北米大陸沿岸により近い観測点で事故起源134Csの濃度が高くなっていた(放射壊変を補正した濃度で最高6 Bq m­-3)。これは北米大陸に到達した福島事故起源134Csが北米大陸に沿って北上し、さらに北太平洋の高緯度(北緯50­-60度)を西向きに運ばれていることを示唆している。本研究によって得られた結果から、今後数年以内に福島事故起源134Csが北太平洋亜寒帯の反時計周りの循環流、すなわち北太平洋亜寒帯循環流に沿って日本近海に回帰してくることが予測された。
著者
北 佐枝子 Heidi Houston 田中 佐千子 浅野 陽一 澁谷 拓郎 須田 直樹
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

The slip on the plate interface has the potential to affect the stress field and seismicity within the subducting slab. Several studies have examined the interaction of slow slip phenomena with intraslab earthquakes [Nankai and Tokai regions, Han et al. 2014; Mexico, Radiguet et al. 2018, 2018 JpGU meeting; New Zealand, 2018, Warren-Smith, 2018 AGU meeting]. Kita et al. [2018, SSJ meeting] reported the stress change in the whole slab associated with ETS times based on stress tensor inversion results. However, we find a clear double seismic zone under Kii Peninsula, as also noted in a previous study [e.g. Miyoshi and Ishibashi, 2004]. Therefore, we here examine seismicity rate variations, stress changes, and b-value variations of seismicity separately for the upper plane events and oceanic mantle ones relative to ETS timings beneath the Kii Peninsula. We use the JMA earthquake catalog, the NIED tremor catalog, the upper surface of the Philippine sea plate estimated by Shibutani and Hirahara [2016], P-wave polarity data by NIED, and a stress tensor inversion code [Vavrycuk, 2014].We determined the timings of ~30 large ETS beneath the Kii Peninsula from 2001 to 2017, and categorized slab seismicity relative to the occurrence times of nearby the ETS (i.e., 60 days before or after). We then combined or stacked the slab seismicity based on these relative occurrence times. The rate of seismicity both in the upper plane events and in the oceanic mantle ones after the ETS timings clearly decreased, compared to the rate before the ETS timings. The peaks of b-values of seismicity both in the upper plane events and oceanic mantle ones were found to occur 1.5 months before ETS. A change in stress orientations before and after the ETS was seen in the oceanic mantle, and a relatively small change was seen for the upper plane events. The stress change in the upper plane events appears to be larger in the region updip of the ETS zone. The results of our study suggest that the aseismic slip on the plate boundary may affect the stress field and the occurrence of seismicity within the subducting slab beneath the Kii Peninsula. Fluid migration from the oceanic slab into the ETS zone on the plate boundary could be related to the interaction of slow slip phenomena with intraslab earthquakes.
著者
山本 希 三浦 哲 市來 雅啓 青山 裕 筒井 智樹 江本 賢太郎 平原 聡 中山 貴史 鳥本 達矢 大湊 隆雄 渡邉 篤志 安藤 美和子 前田 裕太 松島 健 中元 真美 宮町 凛太郎 大倉 敬宏 吉川 慎 宮町 宏樹 柳澤 宏彰 長門 信也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

蔵王山は,東北日本弧中央部に位置し宮城県と山形県にまたがる第四紀火山であり,現在の蔵王山の火山活動の中心となる中央蔵王においては,火口湖・御釜周辺での火山泥流を伴う水蒸気噴火など多くの噴火記録が残されている.一方,蔵王山直下では,2011年東北地方太平洋沖地震以後,深部低周波地震の活発化や浅部における長周期地震や火山性微動の発生が認められ,今後の活動に注視が必要であると考えられる.そのため,地震波速度構造や減衰域分布といった将来の火山活動推移予測につながる基礎情報を得るために,「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の一環として,人工地震を用いた構造探査実験を実施した.本人工地震探査は,全国の大学・気象庁あわせて9機関から21名が参加して2015年10月に行われ,2箇所のダイナマイト地中発破 (薬量200kgおよび300kg) によって生じた地震波を132点の臨時観測点 (2Hz地震計・500Hzサンプリング記録) および定常観測点において観測した.測線は,屈折法解析による火山体構造の基礎データの取得およびファン・シューティング法的解析による御釜周辺の地下熱水系の解明を目指し,配置設定を行った.また、地中発破に加え、砕石場における発破も活用し、表面波解析による浅部構造推定の精度向上も目指した.得られた発破記録から,解析の第一段階として,初動到達時刻を手動検測して得られた走時曲線のtime term法解析を行った結果,P波速度5.2~5.5 km/sの基盤が地表下約0.5kmの浅部にまで存在することが明らかとなった.また,本人工地震探査時および2014年に予備観測として行った直線状アレイを用いた表面波の分散性解析の結果も,ごく浅部まで高速度の基盤が存在することを示し,これらの結果は調和的である.一方,ファン状に配置した観測点における発破記録の初動部および後続相のエネルギーを発破点からの方位角毎に求め,御釜・噴気地帯を通過する前後の振幅比から波線に沿った減衰を推定した結果,御釜やや北東の深さ約1km前後に減衰の大きな領域が存在することが示された.中央蔵王においては,これまで主に地質学的手法により山体構造の議論が行われてきており,標高1100m以上の地点においても基盤露出が見られることなどから表層構造が薄い可能性が示唆されてきたが,本人工地震探査の結果はこの地質断面構造とも整合的である.一方で,得られた速度構造は,これまで蔵王山の火山性地震の震源決定に用いられてきた一次元速度構造よりも有意に高速度であり,今後震源分布の再検討が必要である.また,御釜やや北東の噴気地帯直下の減衰域は,長周期地震の震源領域や全磁力繰り返し観測から推定される熱消磁域とほぼ一致し,破砕帯およびそこに介在する熱水等の流体の存在を示唆する.今後のさらなる解析により,震源推定の高精度化など,火山活動および地下流体系の理解向上が期待される.
著者
Liping Zhang Thomas L Delworth William Cooke Xiaosong Yang
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

While decadal variability and predictability in the North Atlantic and North Pacific have received considerable attention, there has been less work on decadal variability and predictability in the Southern Ocean. As shown previously, a coherent mode of decadal to centennial variability exists in multiple climate models. The mechanism involves a multidecadal accumulation of heat in the subsurface of the Southern Ocean, which is then rapidly discharged through intense oceanic convection when the accumulation of subsurface heat reduces the stratification of the water column. The release of this accumulated subsurface heat can have considerable regional scale climatic impacts, along with substantial impacts on ocean heat uptake. Using a large suite of perfect predictability experiments, in concert with long control simulations, we show that this variability has a high degree of predictability. We present further results that show this type of variability may play an important role for interpreting recently observed trends of sea ice and temperature in the Southern Ocean. Specifically, observed trends over the last several decades resemble a particular phase of this variability in which reduced oceanic convection leads to subsurface warming and surface cooling, with associated increases in sea ice extent. This phase of natural variability may substantially contribute to observed decadal trends, working in concert with other factors.