著者
野村 律夫 高須 晃 入月 俊明 林 広樹 辻本 彰
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

最近,出雲の巨石が注目されている。島根大学のくにびきジオパーク・プロジェクトが主催した10月下旬の探訪会には,30名を超す参加者が出雲市坂浦町にある立石(たていわ)神社を訪れた。そこには今,社殿はないが,12mを超す巨石がご神体として鎮座している。アニミズムの象徴といえるこの巨石は,単なる石ではなく,古来より磐座(いわくら)や石神とよばれる神そのもとして人々のなかに息づいている。ここでは島根半島にみるジオサイトとしての巨石の成因と我々のジオパーク活動の方針について報告する。 東西約70kmにも及ぶ島根半島を西の日御碕から東の美保関までみると,山塊が分かれて少しずつ雁行状に日本海側へずれていることに気がつく。この構造は,今から2000~1500万年前に西南日本弧が大陸から分離し,日本海が形成された地殻変動と密接に関係している。半島地域の変動は,1100万年前まで続いているので,日本海が広がった頃を1700~1500万年前とすると,約400~600万年かかって島根半島の構造的な原形が造られたことになる。この時の地殻は,北西-南東方向の圧縮応力場にあり,著しい変形と変異を受けたため,島根半島は全国でも有名な宍道褶曲帯として知られる。大社の山塊の南麓には,落差が1000mの巨大な大社断層があり,北側の平田付近には弓のように窪んだ向斜構造が形成され,その構造は宍道湖へとつながっている。鹿島町の古浦海岸から美保関にかけて存在する宍道断層も大社断層と同じ性格をもち,半島の形成に参加した。島根半島には,これら二つの断層と平行した多数の断層が形成されているのが特徴で,巨石形成の最も大きな要因の一つになっている。立石神社の巨石も宍道断層の西方延長上につくられていることが,巨石の裏面や大小の割れ目に発達する擦痕からも理解できる。このようなことから島根半島に見られる多くの巨石は,島根半島の形成に伴ってできた地殻変動の結果である。 古代出雲の人々は,1300年も前に島根半島の形成に基づいた地形を反映させて,国引き神話を語っていた。風土記時代から詳細な地形分析がなされていたことは驚くべきことである。
著者
鈴木 輝美 苅谷 愛彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

山梨県御坂山地西部に位置する四尾連湖(湖面標高885 m,深度9.9 m)について,これまで演者らは地形・地質情報に基づきその成因と形成年代,発達過程を議論した(鈴木ほか2014 JpGU HDS29-P06;鈴木・苅谷2015 JpGU HDS25-P02)。その後の調査で新たに得た地形・地質情報や年代値から,四尾連湖を形成した地すべりの発生過程や,地すべり性湖沼の形成・消滅過程をさらに考察した。本大会では,これまでの議論と新たな成果を総合した四尾連湖の地形発達史について報告する。 現在の四尾連湖が成立する過程において,地すべりが重要な役割を演じてきたことが確認できた。この地域における地すべりの活動は,50 cal ka以降,繰り返されてきたと考えられる。地すべり性の地形変化により,地すべり性湖沼が成立してきた。実際,地すべり地内の数地点に湖成堆積物が分布しており,古湖沼の存在が示唆される。湖成堆積物の分布地点や分布高度から古湖沼は3つ存在していたと考えられる(古湖沼A,B,C)。これらの古湖沼は地すべり移動体にせき止められて形成されたと考えられる。湖成堆積物中の年代試料から得た14C年代値より,3つの古湖沼の形成は50~47 cal kaに完了したと考えられる。特に,現在の四尾連湖に継承された原初的な四尾連湖は50 cal ka頃に最初に成立し,当時の四尾連湖は東西に長い湖水域を持っていたと考えられる。その後,この原初四尾連湖は二次地すべり活動(47 cal ka頃)によって湖水域に流入した地すべり移動体で分断され,古湖沼Aが成立した。また原初四尾連湖の形成とほぼ同時に,古湖沼Bと同Cも成立した。さらに,現四尾連湖の湖岸堆積物を解析したところ,3.5 cal ka以前には四尾連湖の湖面水位が約1 m低かったことも明らかとなった。このように,現四尾連湖は湖水域の変化を伴ったものの現在まで約50 kyにわたり存続してきたが,古湖沼A,B,Cは地形変化による排水や土砂流入により消失した。 山地域においては,地すべりによって湖沼が形成され,水域が変化しつつ,存続したり消失したりする。地すべり性湖沼の地形発達は湖成堆積物から読み取ることが可能であり,さらにそれによって過去の地すべり活動についても考察することができる。地すべり地内においては地すべり変動とそれに伴う湖沼の形成や地形発達は密接に関わっているものと考えられる。
著者
牧野 莉央
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-05-10

2016年4月14日21時26分に熊本県熊本地方でM(マグニチュード)6.5の地震が発生し、震度7が記録された。その後の余震活動に続いて16日1時25分には、より大きいM7.3のイベントが発生し、熊本県周辺の狭い範囲で地震が続いた。このような狭い地域に引き続いて起こる大きな地震に興味をもち、実験で類似する現象の再現を試みた。実験では高野豆腐などの試料を万力で加圧し、発生する破壊音を記録する。そしてその音を地震ととらえて波形を解析し、大きさと発生した時間を数値化した。その結果、スナック菓子のハッピーターンによる試行で「平成28年熊本地震」の地震活動に最も似た現象が見られた。このデータから求めたグーテンベルク=リヒターの式による解析結果について考察を加えて報告する。
著者
有江 賢志朗 奈良間 千之 福井 幸太郎 飯田 肇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

福井・飯田(2012)と福井ほか(2018)は,近年の小型化かつ高性能化した観測機器を用いて,氷厚の実測と流動観測をおこない,飛騨山脈北部に分布する御前沢雪渓,内蔵助雪渓,三ノ窓雪渓,小窓雪渓,カクネ里雪渓の6つの多年性雪渓が現存氷河であることを明らかにした.北アルプス北部には,氷河調査がおこなわれていないが,氷河の可能性が高い雪崩涵養型の多年性雪渓がいくつか存在する.そこで,本研究では,7つ目の氷河の可能性が高い唐松沢雪渓の氷厚と流速をGPR観測とGNSS測量により測定し,唐松沢雪渓の氷河の可能性について検討した.その結果,唐松沢雪渓では約30mの氷厚と流動現象が確認できた.
著者
竹之内 耕 茨木 洋介 小河原 孝彦 宮島 宏 松原 誠 西澤 あずさ 青井 真 平松 良浩 中川 和之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1. はじめに 新潟県糸魚川ジオパークには,1990年に公開されたフォッサマグナパークと呼ばれる糸魚川-静岡構造線(以下,糸静線)断層露頭の見学公園がある.国道148号脇の駐車場から遊歩道をへて断層露頭まで徒歩約10分の行程である.2018年8月の改修にあたっては,断層露頭の拡張のほか,断層のはぎ取り展示の設置や野外解説板の新設や改修が行われた.断層露頭近くの野外解説板には,防災科学技術研究所が開設した「地震だねっと!」(地震活動や歴史地震を閲覧できるホームページ)に接続できるQRコードを表示して,断層と地震を関連付けて学習できるようにした.ここでは,高校生を対象にした,「地震だねっと!」を活用した地震と断層の学習例を紹介する.2. 地震と断層の学習例(神奈川県の私立高校)(1) 断層に至る遊歩道での学習 二つの河川の川原の岩石の色が違うことに気づき,糸静線を境に地質が異なることを説明する.古生代の岩石を観察し,年代が古いほど多くの地殻変動を受けて硬いがボロボロの性質になっていることを理解する.近づくと見えてくる断層露頭では, 西側の古生代の岩石(暗緑色~白色)と東側の新生代の岩石の色調が,縦方向の不連続線を境に明瞭に異なり,それが糸静線であることが容易に理解される.(2) フォッサマグナと地震についての解説(野外解説板による) 糸静線はフォッサマグナの西端断層であり,日本列島形成と密接な関係があること,また,断層が動く時に地震が起き,中でも大きな断層運動が起こると断層が地表まで達して活断層と呼ばれること,また,動くたびに生じた変位が積み重なって,山地などの地形が形成されていくことを説明する.(3) 「地震だねっと!」からの情報生徒が携帯するスマートフォンで「地震だねっと!」に接続し,過去10年間の糸魚川周辺で起きた地震を表示する.画像から生徒が気づく点は以下のとおりである.・感じない地震を含めると,多数の地震が起きている.・地震が起きている場所と起きていない場所がある.・線状,楕円状に集中して起こる地震がある.・内陸の地震は,深さ10kmよりも浅いところで起きている.・活断層に沿って起きている地震とそうでない地震がある.・同じ活断層帯でも,地震が起きている場所と起きていない場所がある.・糸魚川は地震が空白で,活断層がない.・歴史地震が起こった場所に地震が集中しているようにみえる. その後,5年間,1年間,30日間,一週間,24時間と震源分布図を表示させていくと,表示される地震数は減少していく.24時間の画像でも,最新の地震が表示され,人が気づかない地震が今も起こっていることに驚く生徒も多い.(4) 断層露頭 露頭全体がボロボロになっていて,岩石が壊されていることに気づく.断層角礫との隙間には,さらに破砕された細粒物質(断層ガウジ)が充填されており,指で断層ガウジを押すと凹んで固結していないことがわかる.断層ガウジには,断層の運動方向を示す条線が認められるので,断層ガウジは岩石が粉砕されてできたことが理解される.マグニチュード7前後の地震を伴う断層運動では変位量が1.5~2mとされているので,糸静線に沿う落差(東落ち6000m以上)を考えると,過去3000~4000回の断層運動が起こって,フォッサマグナが落ち込んでいったことが想像できる.また,フォッサマグナの落差が進展する過程で,断層の幅が成長していったことが理解される.3. まとめ 「地震だねっと!」で示される震源分布図は,日本列島が地震の多い場所だと視覚的に理解でき,地震と断層を結び付けて考えるための良いツールである.断層露頭観察では,地質現象の結果の観察で終わってしまう傾向にある.しかし,「地震だねっと!」の利用によって地震と断層が関連付けられることで,生徒たちが地下の断層運動をイメージすることができるようになると期待される.今後,高校生を対象に「地震だねっと!」を利用した野外観察授業の経験を増やし,地震防災学習を含めた豊富な学習例をつくっていきたい.
著者
井上 素子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

自然系博物館は自然科学の普及をその使命のひとつとしているが,展示や普及活動においては,観光のついでに立ち寄った家族連れからセミプロまで,多くの人々を同時に満足させることが求められる.地質学や地形学を専門とする学芸員は,地球科学的な概念に対する知識と理解(以下「地球科学リテラシー」)が多様な人々を対象に,どうすれば地球科学のおもしろさを伝えることができるのか,常に試行錯誤している.日々の活動において,地球科学は他分野に比べて直接的にとらえにくい.例えば花や昆虫は直接観察しその生態を知るだけでも十分楽しめるが,岩石や露頭を目の前におもしろさを読み取ることは非常に難しい.おもしろさを感じられるようになるためには,相応な地球科学リテラシーが必要となるからである.必要とされる知識は,例えば時間軸や地史的な概念などであるが,学校教育において地球科学を体系的に学ぶ機会はほとんどない.平安時代と江戸時代のどちらが昔かを知らない人はいないが,ジュラ紀や新第三紀といわれても,ほとんどの人は「大昔」と思うだけである.また,日常生活において市民が露頭を目にする機会はほとんどなくなり,かつてたくさんいた「化石少年」や「鉱物少年」は「絶滅危惧種」となり,地質分野に対して苦手意識をもつ教員が多いという.地球科学はますます市民の日常生活から遠い存在となっている.地球科学を振興するためには,ベース層の拡大,つまり多くの市民に地球科学を身近に感じてもらい,そのおもしろさを知ってもらうことが重要である.このことは学芸員の使命であるととらえ,これまで活動してきたが,同時にその難しさも実感している.この課題をみごとにクリアしているのがブラタモリである.講演者は「♯79 秩父」「♯80 長瀞」に案内人として出演したが,ブラタモリの番組制作に携わる中で,地球科学のおもしろさを伝える上で重要となる下記の視点を再認識した.1)普段まったく地質や地形に興味のない市民の思考に即した展開をする.専門家ほど,市民が何をわからないのかがわからなくなる.インタープリター(テレビ番組においてはディレクター)の存在が必要不可欠である.2)地域に関する様々な分野の情報(自然科学・歴史・文化)を集約し,関連付け,市民生活に直結させる.自然科学は細分化されており,地域に関する様々な情報を集約・提供できる機関は少ない.地域の博物館の存在意義でもある.3)論理よりもストーリーを重視する.科学的事象を順序だてて理論的に説明をしがちであるが,おもしろさを伝えるためには,ストーリーが身近で興味の湧く内容であることの方が重要である.4)わかりやすくするために,正確性を犠牲にする勇気をもつ.「正確性の犠牲」には次のような種類がある.科学的な裏付けの責任を負うこととなる案内人としては,どこまでを許容するのか難しい選択を迫られる. ①研究の裏付けがあるが、段階を踏んで説明すると複雑なので「省略」する. ②諸説あり定説がないが、思い切ってひとつの説で説明する。 ③仮説をたてることは可能だが,研究対象とされていないので裏付ができない.②や③はできれば避けたいが,ディレクターや市民が抱く素朴な疑問のほとんどは③であり,③なくしておもしろいストーリー展開は難しい.5)科学的知識を説明するのではなく,知的に楽しむ姿を見せる.結局のところ,視聴者はタモリ氏が知的に楽しむ姿に同調しておもしろさを感じている.放映終了後好評をくださる視聴者も,案外と論理展開は覚えていないことが多かった.地球科学を楽しむ姿を見せることこそが最大のアウトリーチである.
著者
金田 義行 Haluk Ozener Nurcan Ozel Dogan Kalafat Seckin Citak 成実 高橋 高嶺 堀 宗朗 堀 真由美 阪本 Ali Pinar Asim Ozel Ahmet Yalciner Gulum Tanircan Ahmet Demirtas
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Recent, many destructive earthquakes and tsunamis occurred around the plate boundary in the world, which are, 2004 Sumatra Earthquake/Tsunami, 2011 East Japan Earthquake/Tsunami in Japan, and so on. Along plate boundary in Turkey, the North Anatolian Fault (NAF) distributes and the large earthquakes has occurred there. The one of the events along NAF in Turkey is the 1999 Izmit Earthquake, and severe damages was brought to residents The NAF between the eastern end of Turkey and the Aegean Sea has been ruptured in turn from the both ends, and the part off Istanbul city still remains as unruptured zone. It is considered that future large event brings fatal damages not only Istanbul city but also the entire of Turkish economy.To prepare future large earthquake there, Japan and Turkey made an agreement to start a multidisciplinary research project, MarDiM SATREPS in 2003. The Project has four research groups with the following goals. Group 1 is Marmara Earthquake Source region observational research group to clarify seismicity, crustal structures and crustal displacement, and to construct a possible fault model. Group 2 focuses on scenario researches of earthquake occurrence along NAF and precise tsunami simulation in the Marmara region. Group 3 aims improvements and constructions of seismic characterizations and damage predictions based on observation researches and precise simulations. Group 4 promotes disaster educations using research result visuals and construct strategies of disaster mitigation.Group 1 constructed a fault model along NAF with some asperities and with variation on the dip. The segment boundary was also identified through the modeling and it is consistent with the past rupture pattern and fluid distribution. The NAF on the western region of Sea of Marmara has creep and the rate is nearly half of block motion based on direct seafloor observation for crustal displacement. Group 2 calculated cyclic rupture pattern along NAF using heterogeneous fault model and constructed monitoring system “SWIFT” for crustal stress field by mechanisms of many events estimated automatically. We developed tsunami calculation code to image inundation around the coastal area. Group 3 investigated ground structure through regular fine shake observation, and constructed city model of industrial region supporting Turkish economy. We simulated strong motion using ground structure, city model and fault model derived from Group 1 and made a new hazard map. Group 4 considered teaching materials for disaster prevention including Japanese animation technique based on above results of three groups. These materials are utilized for disaster mitigation in Marmara region and disaster education in Turkey.
著者
溝口 勝
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2011年の東日本震災以来、さまざまな大学が学生を現場に連れて行き、そこから現場ニーズを拾うことの重要性を気づかせる教育プログラムを実施している。本セッションコンビーナもまた、原発事故の3か月後から福島県飯舘村に赴き、NPO法人や農家と協働で独自の農地除染法を開発し作物の試験栽培をしてきた。また、2012年から学生の現場見学会を実施して現地訪問前後における学生の意識の変化を目の当たりにしてきた。こうした経験を通して、福島の農業復興には放射能汚染地というハンデにめげずに新しい日本型農業の創設にチャレンジする若者を育成することが必要であるとの考えに至り、2018年度から【大学等の「復興知」を活用した福島イノベーション・コースト構想促進事業】(文部科学省)で「飯舘村における農業再生と風評被害払拭のための教育研究プログラム」を実施している。本セッションではこのプログラムに参加している土壌物理学会関係者に呼びかけ、現場教育やフィールド研究を通して観察された学生の意識の変化について報告してもらい、大学の社会的価値のあり方について議論する。
著者
小川 康雄 馬場 聖至
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

EPS (Earth, Planets and Space) is a peer-reviewed open access journal published on behalf of the following five societies; The Society of Geomagnetism and Earth, Planetary and Space Sciences, The Seismological Society of Japan, The Volcanological Society of Japan, The Geodetic Society of Japan, The Japanese Society for Planetary Sciences. These five societies are all society members of the Japan Geoscience Union.EPS was established in 1998 as a continuation of the two journals, the Journal of Geomagnetism and Geoelectricity (1949 to 1997) and the Journal of Physics of the Earth (1952 to 1997). In 2014 we started open access publication under the SpringerOpen platform. Open Access publication successfully shortened the publication time, increased visibility of the journal and widened its international readership. We publish average of 190 papers per year and half of the authors are from overseas. One of the qualification indices of the journal, impact factor (IF), is continuously increasing from 1.328 (2014) to 2.773 (2017) and it will also go over 2.6 in 2018. The increasing IF is supported both by increase of highly cited papers and by decrease of uncited papers, suggesting the success of quality control by the editorial board and possibly increasing of the visibility via open access.The scope of EPS covers Earth and Planetary Sciences, particularly geomagnetism, aeronomy, space science, seismology, volcanology, geodesy, and planetary science. The EPS share common scopes as well as a common journal platform with PEPS (Progress in Earth and Planetary Science). In contrast to PEPS, which emphasizes review papers, EPS is characterized by the following article types: (1) “Express Letter” which aims at fast publications, (2) “Technical reports“, which describe technical developments for scientific researches and (3) “Frontier Letters” for leading edge researches only with the invitation from the editor in chief. EPS promotes topical article collections (what we call special issues) on the first results of geoscientific events (earthquakes and volcanic eruptions) and scientific missions (satellite missions). EPS has been recently successful in attractive special issues. Aiming at fast and qualified review system, we have expanded editorial board members internationally since 2017. Now we have currently 50 regular editors (including 22 oversea editors). The oversea editors are 10 from Europe, 3 from North America, 5 from Asia, and 3 from Oceania.As part of the promotion of the journal we have four annual awards to recognize authors and reviewers: (1) EPS Excellent paper awards, (2) EPS Young researcher award, (3) Highlighted Paper Awards and (4) Excellent Paper Awards. From 2018, EPS has strengthened ties with JpGU. EPS has started collaborative advertisement activities at major domestic and international academic meetings, like JpGU, AGU, EGU and AOGS. EPS has updated the APC (Article Processing Charge) in September 2018 for sustainable operations of the journal.
著者
北本 朝展 絹谷 弘子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1. JDARNの設立と経緯Japan Data Repository Network (JDARN)とは、日本のデータリポジトリを対象として、世界の最新動向を共有しながら、信頼性を向上させるための取り組みを進める、コミュニティ活動である。その源流は、ジャパンリンクセンター(JaLC)が2014年10月から2015年9月にかけておこなった「研究データへのDOI登録実験プロジェクト」にある。このプロジェクトは、研究データに関する専門家が分野を越えて集まったという点では日本初とも言える画期的な場となった。この活動を引き継ぐものとして研究データ利活用協議会が2016年6月に設立され、その後いくつかの小委員会が提案されることとなった。その一つとして2017年10月に我々が立ち上げたのが「国内の分野リポジトリ関係者のネットワーク構築」小委員会である。2018年10月からは、より多くの分野と関係者を対象とするために「ジャパン・データリポジトリ・ネットワーク(Japan DAta Repository Network : JDARN)」と名称を変更した。JDARNはデータリポジトリに関する動向を共有することが目的の一つであるが、中でも焦点となっているのがデータリポジトリの信頼性という問題である。研究データの生産者がデータを外部サービスに預ける際に、どこに預けるべきかを意思決定する基準として、データリポジトリの信頼性は重要な役割を果たす。そうした信頼性を示す基準の一つにCoreTrustSeal (CTS)がある。CTSはデータリポジトリに関する国際的な認証の一つであり、2019年2月現在で140あまりのデータリポジトリが認証を受けているが、日本ではまだ認証を受けているケースが少ない。CTSの認証が日本では少ない理由を探るため、2017年12月にセミナー「信頼できるデータリポジトリ〜CoreTrustSeal認証に関する実践的情報共有の場〜」を主催し、日本の有力なデータリポジトリがCTSの要求要件を用いて自己評価(self-assessment)してみる試みを行った。その結果、CTSの背景となる考え方がわからないとCTSによる自己評価も難しいことが判明した。そこでまずCTSを理解するための資料の作成を開始し、これが小委員会の主要な活動となった。そしてさらに議論を重ねた結果、CTSありきでなく利活用の側面も考慮したデータリポジトリのガイドラインを作成する課題に活動がシフトしていった。2. データリポジトリのガイドライン現在作成中のデータリポジトリガイドラインは、基本的にCTSの要求要件(16項目)を参考にしつつ、CTSを直訳するのではなくJDARNが独自に構成を提案するものである。このようにCTSを再考するきっかけとなったのが、バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)の八塚茂氏によるCTSのアイテム単位の整理である。CTSの審査過程では、様々なドキュメントを用意しそれを公開していることが透明性の一つの証拠となる。そこでCTSを実際に獲得したデータリポジトリの申請書を分析し、そこで言及されているドキュメントの種類を整理することで、CTSに必要なドキュメントを準備するという次のアクションがわかりやすくなると考えた。CTSの抽象的な項目を具体的なヒト・モノなどに落とし込むことで、より理解しやすいガイドラインを作れる可能性が生まれたのである。しかしドキュメントの整理に比べると、データリポジトリに関わる人に関する項目の整理はより困難である。データリポジトリではどんな職務が必要なのか、それを担うのは誰なのか。しかも職務については、その職務を専門家として何と呼ぶかという名称の問題もある。データ専門家として近年提唱される職名には、データライブラリアン、データキュレーター、データサイエンティスト、データエンジニアなどがあり、その意味も人によって異なる。これらの職務の概念を整理し、それらの長期的なキャリアパスを示すこと、それができければデータリポジトリを基盤としたオープンサイエンスの展開はおぼつかない。こうした問題についてはまだ確固たるモデルがあるとは言えず、我々は現在も議論を続けている。3. 今後の展開JDARNは設立以来、毎月1回ほどの会合を開きながら活発な議論を交わしてきた。そうした議論に参加するデータリポジトリの数が増えれば、日本のデータリポジトリの品質を高め、世界の中での存在感も高め、オープンサイエンスのための基盤としての価値も向上するであろう。そのためにはデータリポジトリが研究に不可欠な存在となる必要がある。データリポジトリというデータのコンテナとしての信頼性・持続性の向上がCTSの焦点であるが、それに加えてデータの統合、分析、可視化、社会実装などコンテンツの利活用に向けた多様な専門家も必要になる。これを単独で担える組織は限られるため、データリポジトリ間のコラボレーションも重要な課題であり、そこにデータリポジトリのネットワークが活きてくると考えている。

3 0 0 0 OA 総合討論2

著者
萬年 一剛
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

地球科学のアウトリーチとはどのような営みなのか議論をする。
著者
小倉 拓郎 早川 裕弌 田村 裕彦 小口 千明 守田 正志 清水 きさら 緒方 啓介 山内 啓之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

小学校の総合的な学習の時間では,身の回りにある様々な問題状況について,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすることを目標としている(文部科学省 2008).この目標を達成するために,地域や学校の実態に応じて,自然体験や観察・実験などの体験的学習や,地域との連携を積極的に行うことが求められている.演者らは,自然地理学・地理教育・空間情報科学・建築学・歴史学・文化財科学などの専門分野を生かし,横浜市登録地域文化財に指定されている「田谷の洞窟」保存プロジェクトを実施している.このなかで,UAS(Unmanned Aerial System,通称ドローン)を用いたSfM多視点ステレオ写真測量や,地上レーザ測量(TLS: Terrestrial Laser Scanning)などを用いた高精細地表情報を基盤に,洞窟保全や文化財保護などの研究を通して,地域の地表・地下環境情報のアーカイブに取り組んでいる.本研究では,横浜市田谷町「田谷の洞窟」とその周辺域を対象とし,高精細地表情報の取得方法や利活用事例に触れることを通した課題発見型・体験型の地域学習を実践し,児童たちの学習効果について検証する. 本授業は,横浜市立千秀小学校第6学年の総合的な学習の時間および図画工作科を利用して実施した.当該校では,田谷の洞窟を主題として,1年間を通して地域の歴史や文化財の保存,環境についての学習を発展させてきた.学習のまとめとして,3学期にUAS-SfMやTLS由来の地表データから大型3D地形模型を製作した.地形模型作成プロセスを通して,児童たちは地形の凹凸や微細な構造を手で感じ取り,1・2学期に学習した地域学習の内容を喚起させた.その上で,デジタルで高精細な地形モデルや,アナログな立体模型を自由に俯瞰したり,近づいて観察したりすることで,さまざまなスケールにおける地域の構造物や自然環境の位置関係,規模について再認識することができた. 本授業のまとめとして地域で報告会を開催し,作成した大型3D地形模型を利用しながら地域住民や参画する大学教員・大学院生と意見交換を行った.生徒たちは意見交換を通して1年間の学習の整理だけでなく,多様な学問分野の視点や時空間スケールで地域を見つめなおし,自ら立てた課題の再考察や新たな課題を発見することができた.
著者
平野 史朗 川方 裕則 土井 一生
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Revisiting earthquake catalogs have revealed that 40% or more of major earthquakes are accompanied by foreshock activities, at least in California [Abercrombie & Mori 1996 Nature] and Japan [Tamaribuchi et al. 2018 EPS].To investigate whether the foreshocks are magnification and activation of background seismicity, we have to compare waveforms due to the foreshocks and background events that might be sometimes uncataloged because of their small sizes.We can mine even small seismic signals similar to some template waveforms from continuous waveform records by using a matched-filter analysis based on cross-correlation coefficients (CC) between the template waveforms and continuous records.However, in the conventional analysis, we have to define a threshold of CC to detect similar seismic waveforms, which have been chosen subjectively and empirically.Then, we propose a threshold-free method to detect outliers from the empirical distribution of CC among seismic waveforms.In our framework, empirical distributions of the coefficients are modeled by the theory of extreme value statistics, and the detectability is automatically determined from Akaike's Information Criterion (AIC), depending on data.We applied the method of seismic signal detection to 2-years-continuous records before an M5.4 earthquake in Nagano, Japan (June 30, 2011) that followed 27 foreshocks cataloged by JMA.First, we found that the empirical frequency distribution of CC between the continuous records and foreshocks did not follow a normal distribution, which means that we cannot estimate the possibility of a false positive by assuming the normal distribution as a model.Instead, we also found that the maximum value of CC in every few seconds follow the Gumbel distribution after elimination of some outliers.The elimination can be achieved by comparing AICs of data including and excluding the outlier candidates.Given this method, we found a similar event ~2 months before the mainshock and 3 similar events 3-4 days before the mainshock.This result implies that the foreshocks were not similar to background events, and hence, not magnification or activation of them.
著者
久保田 達矢 武村 俊介 齊藤 竜彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-05-11

沖合で発生する地震のセントロイドモーメントテンソル (CMT) 解の推定において,海陸の地震波形を同時に用いると,陸上記録のみを使用した場合よりもはるかに高い解像度でセントロイドの水平位置を拘束できる (Kubota et al., 2017).近年,東北沖には日本海溝海底地震津波観測網S-net (Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench) (Uehira et al., 2012) が展開された.この観測網と陸上の地震観測網の記録を活用することにより,沖合の地震のCMT解,とくに発生するセントロイド位置とセントロイド深さの推定精度の向上が期待される.しかし,海域における地殻構造は陸上とは大きく異なっているため,海水や堆積層などの低速度層を考慮した地震波伝播計算が重要である (e.g., Noguchi et al., 2017; Takemura et al., 2018).海域の地震について,海陸の観測網を同時に用いてCMT解を高精度で推定するためには,上記のような海域特有の不均質構造を考慮する必要がある.本研究では,地震動シミュレーションにより合成された海域・陸域の地震観測網におけるテスト波形をもとに,海域特有の構造が陸から離れた沖合で発生する地震のCMT解の推定,特にセントロイドの深さの推定におよぼす影響について考察した.本研究では東北沖のプレート境界で発生する逆断層型の点震源 (深さ ~18 km) を入力の震源として仮定し,テスト波形を地震動シミュレーションにより合成した.地震動伝播は3次元差分法 (e.g., Takemura et al., 2017) により計算し, Koketsu et al. (2012) による3次元速度構造モデル (JIVSM) を使用した.計算領域は960×960×240 km3とし,水平にΔx = Δy = 0.4 km,鉛直にΔz = 0.15 kmの格子間隔で離散化した.時間方向の格子間隔をΔt = 0.005 sとした.合成波形に周期20 – 100 sのバンドパスフィルタを施し,CMT解の推定を行った.セントロイド水平位置は沖合の観測網を用いることで高い精度で拘束できる (Kubota et al. 2017) ため,本解析では震央を入力震源の位置に固定し,セントロイド深さおよびモーメントテンソルの推定を行った.CMT解の推定に使用するグリーン関数は,3種類の異なる速度構造モデルを使用した.1つ目は,F-netメカニズム解の推定に用いられている内陸の構造を模した1次元速度構造モデル (Kubo et al., 2002) (内陸1Dモデル) である.この構造では,海水層や浅部の低速度層は考慮されていない.2つ目は,海域の構造を模した,海水層および浅部低速度層を含んだ1次元構造モデル (海域1Dモデル) である.最後は,合成波形の計算にも使用した3次元の速度構造モデル (JIVSM) (3Dモデル) である.1DモデルにおけるGreen関数の計算には波数積分法 (Herrmann, 2013) を用いた.内陸1Dモデルによるグリーン関数を使用では,最適解の深さは ~17 kmと,入力震源の深さとほぼ同様となった.セントロイドの深さ5 – 30 kmの範囲で,テスト波形の再現性に大きな差異はなく,深さ方向の解像度はさほど高くないと言える.一方で,3Dモデルによるグリーン関数を使用した場合,入力と同じ深さに最適解が推定された.セントロイドの深さ15 – 25 km範囲でテスト波形の再現性が高く,内陸1Dモデルと比べて深さ解像度が改善した.海域1D構造モデルを用いたCMT解では,3Dモデルと同様の結果が得られた.以上より,海域特有の構造を考慮したグリーン関数を用いることで,CMT解のセントロイド深さについて浅い解を棄却できるようになることがわかった.一方で,テスト波形の計算と同じ3次元速度構造モデルを用いた場合でも,セントロイドの深さを拘束することは難しいことも明らかとなった.本解析に使用した周波数帯域 (20 – 100 s) においては,深さ15 – 25 kmの範囲では3次元構造を用いて計算されるグリーン関数間の差が少ないことが原因と考えられる.
著者
恩田 裕一 高 翔 谷口 圭輔
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2011年の東日本大震災に起因して東京電力福島第一原子力発電所事故が起きたことにより,福島の周辺環境において放射性核種134Csや137Csが検出された.環境省は2011年8月から公共用水域について環境モニタリング調査を実施しており,2011-2012年環境省で取った底質サンプルは,多くの地点において減少傾向がみられるものの,増減にばらつきが非常に多く,場所によっては増加する地点も報告されている。従来の研究成果より,河川等の環境試料の時系列変化を解析する場合に,粒径補正を行うことが必要と考えられる。そこで,本研究では,それらの底質サンプルの粒径を分析することにより,粒度補正を施した後に河川の底質の実効減衰速度を考察した。 本研究によって,粒径補正前に見られて大きな変動は,ほとんど見られなくなった。また,時間とともに濃度が上昇している地点が,25地点から,7地点に減少した。底質における89個地域の減衰速度(λ)は平均1.15となり,河川底質の濃度減少傾向について解明することができた。さらに,福島県内の浮遊砂測定結果と比較すると,底質におけるCs濃度を粒径補正し懸濁態濃度を推定したところ,24地点の内,14地点で減衰変化が一致した。このことから,セシウムが河川中を流下する際の吸脱着により,多くの地点で懸濁態,底質,溶存態が平衡状態となっていることが推定された。
著者
萬年 一剛
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

関東地震は相模トラフを震源とする巨大地震で、地殻変動の検討から再来周期が180年から400年と考えられている。この再来周期が正しければ、最新は1923年大正関東地震であるので、歴史時代に数回の発生があったはずだが、1つ前の1703年元禄関東地震より前のものに関しては発生時期に定説がない。定説を持つに至らない理由は大きく分けて2つある。1つは、関東地震によって相模湾沿岸は隆起するものの、地震間の沈降によって、地震による隆起がほとんど残存しないためである。海岸地域の隆起履歴の解明には、海岸段丘の解析がもっとも有力であるが、正味の隆起量がほとんど無いこの地域においては、海岸段丘がないか、あっても貧弱かつ不明瞭で、十分な解析が出来ない。もう1つは、地震の記録はたくさんあるものの、被害の拡がりを把握するには至らず、地震の大きさの評価が難しいためである。地震の被害が少なくとも南関東全域に認められれば、関東地震である可能性が高くなるが、近世より前の歴史記録はほぼ鎌倉における被害に関する記述に留まる。神奈川県では、2011年の東日本大震災による津波被害を受け、沿岸における津波堆積物の有無を3カ年にわたって調査したが、その結果、海岸低地が陸化するプロセスと、その年代が明らかになった。このうち、鎌倉・逗子地域の海岸低地は6ka前後の内湾堆積物の上に、歴史時代の干潟堆積物が直接載り、それが河川堆積物や砂丘砂に覆われる、また、内湾堆積物と干潟堆積物の境界は現在の海水準付近にあるという共通した層序を有していることが判明した。しかし、干潟堆積物の年代は3グループに別れ、それぞれ18世紀、13世紀、9世紀を示す。これらはそれぞれ、元禄関東、1257年正嘉および1293年正応、878年元慶に近接している。また、古い干潟堆積物ほど、内陸側で検出された。干潟堆積物の形成過程は先行研究が乏しいが、高潮や洪水により堆積物は比較的短期間で入れ替わっているものと考えられる。干潟堆積物が地層中に残存するためには、隆起して高エネルギーの環境から離れ、浸食を免れる必要がある。したがって、干潟堆積物が古地震の年代に近接しているのは、地震による一時的な隆起とそれにより上位に河川堆積物や砂丘砂が堆積して波浪による浸食から保護された為であると考えられる。本研究は、正味の隆起量がほとんど無い海岸低地においても、隆起を伴う地震の履歴を、大量のボーリングと年代測定を元に解明できる可能性を示唆している。一方、この方法の信頼性を向上させるためには、干潟堆積物中の年代試料の年代分布など、海岸低地の地層形成過程に関する研究も併せて進行させる必要がある。【参考文献】Mannen, K., Yoong, K. H., Suzuki, S., Matsushima, Y., Ota, Y., Kain, C. L., & Goff, J. (2017). History of ancient megathrust earthquakes beneath metropolitan Tokyo inferred from coastal lowland deposits. Sedimentary Geology. https://doi.org/10.1016/j.sedgeo.2017.11.014
著者
吉田 聡 細田 滋毅
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

北西太平洋は冬季に爆弾低気圧が頻繁に発達する海域の中で最も深い海洋である。渦解像海洋大循環モデルによるシミュレーションは爆弾低気圧が急発達する際、海洋混合層内では強い発散が起こり、2000m深に達する湧昇流が励起されることを示している。しかし、通常の海洋観測網では爆弾低気圧に対する海洋応答を捉えることはできない。深い冬季混合層のため、衛星観測による海面水温では爆弾低気圧による変化は見えない。また、10日毎のアルゴフロート観測は1日程度の爆弾低気圧の急激な観測をするには長すぎる。そこで、爆弾低気圧に対する海洋応答を観測するため、北西太平洋でのアルゴフロートを用いた高頻度観測を2015/2016と2016/2017の2冬季(11月~3月)に実施した。今回用いたアルゴフロートは観測の時間間隔と観測深度を衛星通信によってリアルタイムに変更できる。気象庁の週間アンサンブル予報を元に、観測海域で爆弾低気圧が高確率で予測された場合には6時間毎、650m深までの観測を実施し、それ以外は1日毎、2000m深の観測を実施した。この観測で爆弾低気圧活動が活発な冬季北西太平洋域の1148本の水温・塩分プロファイルを観測し、そのうち73本が爆弾低気圧直下の海洋を観測していた。本講演では観測した爆弾低気圧のうち、発達率が最大だった2016年3月1日の事例についての解析結果を報告する。