著者
伊藤 河聞 畠山 祥 藤賀 樹
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.F14, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表の目的は、タイ北部に暮らすムラブリを事例に、個人の自律性と他者との協同性をめぐる理念と実践を明らかにすることである。さらに、定住化を契機とする社会関係の質的変化を念頭に、ある程度の経済力や政治力を持つことで、図らずも従来の平等主義的な社会関係を崩しうる者の苦悩を明らかにすることである。
著者
河西 瑛里子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第42回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.166, 2008 (Released:2008-05-27)

キリスト教到来以前のヨーロッパにおける信仰の復興運動、ネオペイガニズムを通して、伝統の創出について考える。本運動は、外部からは創られた伝統とされるが、当事者は過去との連続性を主張し、「本物」の信仰の復興をめざしている。その一方で、北米やオーストラリアの先住民族の文化を積極的に取り入れている。ここでは、とりわけドルイドの実践を取り上げ、彼らがなぜ「伝統」を復興させようとしているのか、考えてみたい。
著者
甲田 烈
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第54回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A03, 2020 (Released:2020-09-12)

本発表では、比較思想の方法により、日本の近・現代哲学に着目し、仏教と通底するアニミズムの思想的可能性について考察する。そのさいに参照するのは井上円了(1858-1919)における「活物」の概念である。それは人間もそれを分有する世界そのものの働きを意味し、また生きとしいけるものの往還を意味することから、現代の哲学・人類学におけるアニミズムの再評価と重なるであろう。ここから、「往還存在論」を構想することができる。
著者
藤田 渡
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.125-145, 2011-09-30 (Released:2017-04-17)

近代化とグローバル化の進展にともない、ローカル・コモンズの管理における地域住民の主体性が問い直されている。本稿では、タイ東北部の事例を参照しながら、まず、ローカル・コモンズの主体のあり方を整理し、その上で、ローカル・コモンズの主体としての地域住民と社会に散在する権力との関係について考察する。「実践コミュニティ」の概念を用いることで、村落コミュニティのメンバーシップとは境界を異にするローカル・コモンズ管理への実質的な参加者を把握することができる。実践コミュニティと外部者との間のインタラクションは、ブローカーによって媒介され、外部の環境によって変化する。知識の権力はこうしたインタラクションを考える上で重要な視点である。共有資源管理においては、持続可能性に関する科学的な知識が地域住民の主体性を脅かしている。これに対し、地域住民は、持続可能性の意味を再交渉し読み替えを行うエイジェンシーとして彼らの主体性を守ろうとする。この読み替えによる対抗言説形成の過程に知識人が参画すると、地域住民にとって助力となると同時に、主導権を握られ、生活者の視点が、知識人のイデオロギーに再度、読み替えられ、結局、生政治的な知識の権力に従属することにもなりかねない。こうした状況を打破し、ローカル・コモンズ管理における住民の主体性を保つためには、実践レベルで公表された言説を緩やかに実行することで生活世界を防衛しつつ、地域住民自身が外部の知識の読み替えができるような能力を持つように学習・経験を積み重ねることが必要である。
著者
鈴木 栄太郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.A552-A558, 1963 (Released:2018-03-27)

The Kei association in Korea is very similar in structure and function to the Ko (講) group in Japan. The same is true of the Pumashi in Korea and the Yui in Japan. The Kei and the Ko assosications offer efficient and reasonable ways for financial cooperation when it is needed by the community, while the Pumashi and the Yui are applied to solveve the problem of labor cooperation. All four groups are apparently based on the supposition that all human beings are equal. How and when does the Kei association work? According to the rules of the Kei, each member is required to contribute a certain amount of property whenever it is needed by the community to accomplish any communal work; every person who satisfies the requirement is in turn guaranted a perfectly equal right. Thus the Kei group is undoubtedly financial in character. Whatever other object it may have, an association which is organized to meet the financial needs of the community falls in to the category of the Kei groups. The Ko association in Japan solves communal financial problems in exactly the same way, although some cultural differences may exist between the two growps. This argument applies with the same cogency to the relationship between the Pumashi and the Yui associations. Both represent a method of labor cooperation although are some cultural differences. According to the rules of Pumashi, if A offers his labor to B, B is required to return the equivalent labor to A. This principle extends to matual help among more than three members of the Pumashi group; the value of the labor is calculated in accordance with the differences in sex and years of age of the laborer.
著者
谷 憲一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.094-096, 2019 (Released:2019-09-04)
参考文献数
4
著者
長沼 さやか
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.107, 2013 (Released:2013-05-27)

本分科会では、沖縄、台湾、韓国、中国、タイのフィールドから個別具体的な漁村形成の事例を報告する。その際にとくに注目するのは、水上/陸上の他集団との社会・経済的関係と、国家など近代的公権力の影響(定住化政策、漁業開発、干拓事業など)である。これらを通地域的に比較するなかで、これまで移動から定住に至る一方向的なプロセスにおいて、分けて論じられてきた移動/定住漁民のあり方が、移動と定住の両方向的な動きにおけるバリエーションとして現われていることを実証する。
著者
花渕 馨也
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.459-477, 2009-12-31 (Released:2017-08-18)

変身の一つの技法としての憑依は、狂気やトランスとして語られる無秩序な動作なのではなく、日常とは異なるコードにおいて行為と主体の関係を構成する、統御された振舞いである。人類学者が見出してきたのは、一見して狂気にも見える憑依の舞台で演じる主人公達であり、理性的な説明を与えうるその秩序ある振舞いであった。憑依は身体や出来事の偶発性を飼い慣らし、人間を社会化する一つの方法として見ることもできるだろう。だが、憑依は必ず痙攣する身体からはじまるように、統御しがたい身体の偶発性や、予測不可能な出来事と結びついており、憑依の実践には説明を拒否するかのような、不確かな振舞いや出来事の曖昧さが顕著に見られる。精霊憑依とは規範から逸脱する根源的な他者とつきあう方法でもあるのだ。本稿では、ンダマルと呼ばれる野蛮な王の精霊とある女性の親子三代にわたる家族的関係の歴史を検討することで、不確かな他者としての精霊との移ろいゆく関係を通じたコモロにおける身体-自己の形成と変容のあり方について明らかにしたい。
著者
山田 仁史
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.B14, 2015 (Released:2015-05-13)

人類とさまざまな仕方で、長く付き合ってきた犬。ヨーロッパ中世でも、犬は猟犬、番犬、愛玩犬、野犬などとして人間とともに、あるいは人間の近くに生きてきた。本発表は、そうした犬のさまざまなあり方のうち、食肉としての犬をとりあげ、その諸相を論じることを通じて、動物全般と人間との関係、および犬の特殊性をあらためて考え直すことを目的とする。