著者
米森 和子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第47回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S24-1, 2020 (Released:2020-09-09)

構造生物学は、タンパク質の構造情報を明らかにすることで創薬に貢献してきた。この20年間はX線を用いた構造解析が中心であり、とくにキナーゼに代表される酵素では、合成化学者が構造情報をもとに活性向上を指向したStructure-Based Drug Discovery(SBDD)を精力的におこなってきた。 近年注目を集めているクライオ電子顕微鏡により、さらに構造生物学の幅がひろがろうとしている。クライオ電子顕微鏡はチャネルやトランスポーター、複合体など、X線結晶構造解析での構造取得が難しかった分子量が大きく、かつ、複数コンホメーションを取り得る生体分子の構造解析を得意としている。これらのターゲットクラスにはhERGなど毒性に関与するタンパク質が多くあり、構造情報が得られることでオフターゲット回避もSBDDを用いて効率的におこなえるようになると期待できる。 クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析例は年々増えている一方で、残念ながら日本では絶対数としてクライオ電子顕微鏡の数が少なく企業が個別に利用できる環境にはない。毒性や動態で課題となるタンパク質は共通であることから、当社をはじめとする製薬企業では非競合領域での産官学連携組織を立ち上げて、毒性・動態関連タンパク質の構造解析に共同で取り組んでいる。本講演ではこの連携について紹介し、毒性領域へのさらなる応用について議論したい。
著者
岩野 英知 大谷 尚子 井上 博紀 横田 博
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S16-6, 2016 (Released:2016-08-08)

我々の身の回りには多くの化学物質があふれており、日常的に多くの化学物質に接触している。生体は、それら多くの化学物質を無毒化し、排除する効率的なシステムを備えている。たとえば、内分泌攪乱化学物質であるビスフェノールA(BPA)は、そのエストロジェン作用で大きく騒がれたが、現在では成熟した健康な大人であれば、大きな影響はないということが明らかとなった。それは、BPAが薬物代謝の第II相酵素UDP-glucuronosyltransferase (UGT)により効率的に代謝され、排泄されるからである。一方で、妊娠期にBPAを暴露すると、たとえ低容量であっても次世代に悪影響を及ぼすとの報告がある。この低容量BPAによる胎仔影響には、以下の3つのファクターが関与している、と我々は考えている。①妊娠期の母-仔間の体内動態 ②胎仔における代謝システム(グルクロン酸抱合と脱抱合) ③胎仔でのエストロジェニックな作用以外の攪乱以上の仮説をもとに、これまでに我々は以下の点を明らかにしてきた。①BPAの代謝物が胎盤を通過する可能性があること ②胎児側に移行したBPA代謝物がBPAに再変換されうること ③薬物抱合のタイプによっては、胎盤通過が異なる可能性があること ④ビスフェノール類(BPA、BPF)の妊娠期の暴露は、生まれた仔の成熟後に対して不安行動を増強すること。本発表では、これらの研究を踏まえながら、薬物抱合の役割、特に胎盤通過についての結果を中心に報告する。これまで薬物抱合反応は、薬物を排泄されるためのシステムであり、抱合体そのものの生体内での役割、影響については見いだせていなかった。生体内物質の抱合体には、排泄だけでなく運搬体としての意義があり、生体外からの化学物質も同様の過程をとる場合もあると考えている。今後、抱合体そのもの役割を詳細に検討するべきと考えている。
著者
関田 清司 井上 達
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.app.147-app.158, 1999-12-20

今日,コカインや覚せい剤などの薬物乱用問題は世界的な取り組の対象となっている。わが国においても,一時,減少傾向にあった覚せい剤の乱用者数が,特にこの数年,増加傾向と低年齢化を示しており危機に直面している。こうした,乱用される薬物は,生体に摂取されることにより,その薬理作用による高揚感や多幸感などの精神的「満足感」を引き起こす。脱し難い薬物依存の形成機序はともかくとして,薬物乱用はこの自覚効果の再体験への欲求にもとづく行動と考えられている。ところで近年,コカインや覚せい剤などのように麻薬及び向精神薬取締法などの法規の取締対象物として所持や使用が厳しく規制を受ける「違法な薬物」とは別に,これらの法的規制外で、多幸感や気分の高揚が得られるなどとの標傍のもとに,いわゆる「合法ドラッグ」と称する「商品」が流通している実態がある。現在取締対象となっている「乱用薬物」も、多くは今日の「合法ドラッグ」に似た位置づけにあったものと考えられるので、本稿では,代表的な「乱用薬物」であるコカインや覚せい剤などが乱用される機構を整理し,それらが法規制の対象になるに至った経緯などについて通覧することにより,今日の「合法ドラッグ」の性質やその危険性を明らかにすることを目的としている。
著者
森 宣瑛 吉岡 靖雄 平井 敏郎 髙橋 秀樹 市橋 宏一 宇髙 麻子 植村 瑛一郎 西嶌 伸郎 山口 真奈美 半田 貴之 角田 慎一 東阪 和馬 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-9, 2014 (Released:2014-08-26)

近年、腸内細菌を有さないマウスの検討などにより、腸内細菌が宿主免疫細胞におよぼす影響が明らかになりつつあり、腸内細菌叢の有無が、免疫細胞の発達や各種免疫疾患の悪化・改善に寄与することが判明している。一方で、食事や抗生物質の服用などによる腸内細菌叢の変動が、免疫機能に与える影響は未だ不明な点が多い。従って、今後、環境要因による腸内細菌叢の変動を理解・制御できれば、各種疾患の予防や、健康増進に繋がるものと期待される。本観点から我々は、食餌成分や化学物質などが腸内細菌叢に与える影響を評価すると共に、腸内細菌叢の変動と宿主免疫機能の連関解析を図っている。本検討では、腸内細菌叢に最も大きな変動を誘導すると考えられる抗生物質の曝露が、宿主免疫系におよぼす影響を評価した。2週間連続で抗生物質を投与し、腸内細菌数の変動を解析したところ、コントロール群と比較して腸内細菌数が減少していた。次に、抗生物質を投与後、コレラトキシンとニワトリ卵白アルブミン(OVA)を経口免疫したところ、コントロール群と比較して、OVA特異的IgG・IgG1・IgEがほとんど誘導されないことが明らかとなった。また、抗生物質を投与した後、3週間後から免疫を開始した場合においても同様の傾向が認められた。次に、抗体産生抑制のメカニズムを解析するため、抗生物質を2週間投与後、宿主免疫系への影響を解析した。その結果、腸管の免疫組織であるパイエル板では、抗生物質投与によりCD4陽性T細胞の割合が減少しており、抗生物質投与終了3週間後にも、同様の傾向が認められた。即ち、抗生物質の一時的な投与は、長期間に渡って宿主免疫系に影響をおよぼし続けることが明らかとなった。今後、抗生物質をはじめとした様々な物質による、腸内細菌叢への作用機構、腸内細菌叢の変動による生体影響の関係を精査し、新たな毒性学・安全科学研究を推進したいと考えている。
著者
森 友久 芝崎 真裕 鈴木 勉
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

精神依存には,薬物を摂取しようとする試み,摂取による薬物の感覚効果,さらには,摂取時の環境要因が密接な関わりを持っている。そこで,薬物の感覚効果を指標にする薬物弁別試験,薬物による強化効果を指標にする薬物自己投与試験,さらに薬物摂取時の効果と環境要因を条件づけする条件づけ場所嗜好試験が薬物依存形成能の評価や作用機序の解明に現在までに広く用いられてきた。非常に強い精神依存を引き起こす薬物としてメタンフェタミン,コカインならびにモルヒネなどが知られている。これらの依存性薬物の精神依存の機序として,中脳辺縁ドパミン神経系の活性化が重要であることが明らかにされてきた。メタンフェタミンおよびコカインは,中脳辺縁ドパミン神経系の投射先である側坐核におけるドパミンの放出ならびに再取り込みを阻害することにより,精神依存を発現する。モルヒネは,中脳辺縁ドパミン神経系の細胞体である腹側被蓋野のGABA神経上に分布する&mu;-オピオイド受容体に作用し,脱抑制機構を介して,側坐核からドパミンを遊離することがよく知られている。また,アルコールの依存にも側坐核からのドパミンの遊離が関与していると考えられている。一方,クラブドラックとして乱用されてきたフェンサイクリジンおよびMDMAなどは,セロトニンおよびドパミン受容体作動作用ならびにNMDA受容体拮抗作用が精神依存の形成に関与していることが示唆されている。さらに,大麻の作用には,主成分であるテトラヒドロカンナビノールが脳内のカンナビノイド受容体に作用することにより幻覚を発現する。最近では,MDMAおよびカンナビノイド誘導体が続々と合成され,「違法ドラッグ」として嗜好品の如く販売されている物も多いが,これらの依存形成機序はほとんど明らかにされていない。<br>
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.W3-4, 2015

生活環境化学物質がシックハウス症候群や喘息等の主要な原因あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムの詳細については未解明な部分が多い。著者らは生活環境化学物質による粘膜・気道刺激性のメカニズムを明らかにする目的で、ヒトTransient Receptor Potential (TRP) V1及びTRPA1をそれぞれ安定的に発現するFlp-In 293 細胞株を樹立し、その活性化を指標にして室内環境化学物質の侵害刺激について検討した。これまでに評価した238物質のうち、50物質がTRPV1を、75物質がTRPA1を活性化することを明らかにした。なかでも溶剤として広く使用される2-Ethyl-1-hexanolやTexanolをはじめ、一般家庭のハウスダスト中からも比較的高濃度で検出されるTris(butoxyethyl) phosphate、溶剤や香料成分として多用される脂肪族アルコール類、実際に室内環境中に存在する消毒副生成物や微生物由来揮発性有機化合物がイオンチャネルを活性化することが明らかになった。特に、可塑剤等DEHPの加水分解物であるMonoethylhexyl phthalateがTRPA1の強力な活性化物質であることを見いだした。また、塗料中に抗菌剤として含まれ、室内空気を介してシックハウス様症状を引き起こすことが報告されているイソチアゾリノン系抗菌剤や、呼吸器障害を含む相談件数が増加している高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤もイオンチャネルを活性化することが判明した。シックハウス症候群の主要な症状として皮膚・粘膜への刺激があげられるが、本研究結果は、室内環境中に存在する多様な化学物質がイオンチャネルの活性化を介して、相加的あるいは相乗的に気道過敏性の亢進を引き起こす可能性を示唆しており、シックハウス症候群の発症メカニズムを明らかにする上で極めて重要な情報であると考えられる。
著者
辻 良三
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.S9-1, 2014

発達神経毒性とは、重金属や化学物質等のばく露による、胎児期あるいは生後発達期の神経系の構造および機能に対する有害影響と定義されている。メチル水銀による胎児性水俣病やエタノールによる発達障害は、その例としてよく知られている。最近、LD(学習障害)、ADHD(注意欠損・多動性障害)、自閉症等の疾病を有する児童が増加している報告されている。また、子どものいじめ、引きこもり、自殺等の心の問題は社会問題となっている。これらの原因については、明らかになっておらず、その原因のひとつに、身の回りの化学物質のばく露による発達神経毒性が疑われている。環境省は、大規模な疫学調査であるエコチル調査を開始し、化学物質との関連性を調査している。農薬等の一部の化学物質については、動物を用いた毒性ガイドライン試験である発達神経毒性試験を実施され、その影響が検討されてきたが、高額の費用、長い試験期間、多数の動物使用等の問題があり、膨大な数の化学物質に対応するのは困難であり、より簡便な方法が望まれている。そこで、種々の生物や細胞を用いた<i>in vivo, in vitro</i>評価系の開発が進められているが、まだ十分と言える評価系は出来ていない。その理由のひとつとして、種々の既知の化学物質による発達神経毒性自体の研究が十分になされていないことが挙げられ、発達神経毒性の発現メカニズムの解明や評価に適したバイオマーカーの開発が進んでいないことが考えられる。これらの研究の今後の一層の研究の進展が望まれる。本講演では、発達神経毒性の概要及び研究動向について説明するとともに、ラットにおけるエタノールの幼若期ばく露による脳発達への影響のメカニズム研究の例についても紹介したい。
著者
孫谷 弘明
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.MS4-3, 2014 (Released:2014-08-26)

2007年にヒトiPS細胞樹立が発表されて以降様々な大学・研究機関で活発な研究が行われ,再生医療の分野では昨年,理化学研究所が滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植の臨床研究が開始されたことが記憶に新しい.iPS細胞は自己複製能により大量培養を可能とし,多能性分化能により多種多様な体細胞に分化することができるため,様々な疾患に対する臨床応用への研究が進められている一方,未分化のiPS細胞が移植細胞群内に残存もしくは混入することにより移植適用部位で造腫瘍や異所性組織形成が懸念される.造腫瘍性とは移植された細胞集団が増殖することにより悪性もしくは良性の腫瘍を形成する能力をいい,増殖した細胞集団による周辺組織への影響や細胞集団自身の異所性に分化のリスクが飛躍的に上昇する.従ってiPS細胞を用いた細胞治療において移植細胞中の未分化iPS細胞の評価及び管理は非常に重要である.株式会社新日本科学は京都大学iPS細胞研究所高橋淳研究室との共同研究により,iPS細胞由来ドーパミン神経細胞を用いたパーキンソン病の細胞移植治療の臨床研究のための非臨床試験として,現在造腫瘍性試験を実施している.本発表ではiPS細胞の臨床応用に向けて最重要課題である造腫瘍性の評価を中心にその概要及び進捗を報告する.
著者
岩瀬 裕美子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

2012年11月にStep 2に到達した「ICH S10:医薬品の光安全性評価ガイドライン(案)」では,光安全性評価を実施する要件の一つとして,290 - 700 nmの波長において吸収がある有効成分と新規添加物について光安全性評価を行うことが合意された。しかしながら,光照射後における活性酸素の生成や組織分布を根拠とすることについては,日本と欧米当局間で考え方が異なっている。光安全性の評価が必要になった場合には,<I>in vitro</I>試験,<I>in vivo</I>試験,臨床試験のいずれかで判断することになるが,その実施にあたり,化合物の光化学的特性や臨床適用経路を考慮して,適切な試験系を用いてリスク評価を行うことが必要である。<I>in vivo</I>光毒性試験を実施する場合,現時点ではバリデートされた試験系がないことから,医薬品開発者は,各自で適切であると考えられる試験系(動物種,投与回数,光照射条件等)を選択する必要がある。光毒性評価に際し,一般的に皮膚への作用を評価するが,例えば全身に曝露される医薬品の場合,可視光域に光吸収をもつ化合物については,皮膚だけではなく網膜へのリスク評価も必要となる。一方,光アレルギー性については,ヒトにおける予測性が不明であることから,非臨床試験は推奨されていない。光化学的特性や光安全性を評価する方法の選択は,原則として医薬品開発者の判断で行うことになるが,ケースバイケースで規制当局との検討も可能である。本ワークショップでは,医薬品の光安全性評価における留意点,当局の要求レベル,ICHブリュッセル会議(2013年6月)における議論等について紹介する予定である。
著者
真木 彩花 東阪 和馬 青山 道彦 西川 雄樹 石坂 拓也 笠原 淳平 長野 一也 吉岡 靖雄 堤 康央
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.O-35, 2016 (Released:2016-08-08)

ナノマテリアル(NM)は、粒子の微小化に伴い、化学反応性や組織浸透性などが向上することから、近年多くの分野で普及し、我々の生活において身近なものとなっている。一方で、NMの有用機能が、予期せぬ生体影響をおよぼす可能性が指摘されているものの、そのハザード解析、およびハザード発現機序の解明に向けた検討は殆ど進展していない。本観点から我々は、化学物質による毒性発現において重要な役割を果たすことが示されつつあるエピジェネティック修飾に焦点を当て、NMの安全性評価を進めている。本研究では、最も身近なNMである銀ナノ粒子(nAg)曝露によるエピジェネティック変異、特にDNAメチル化への影響を解析した。まずDNA全体のメチル化率への影響について検討を行った。粒子径10 nmのnAg(nAg10)をヒト肺胞上皮腺癌細胞に添加し、24時間後ゲノムDNAを抽出しメチル化率の変化を評価した。その結果、nAg10曝露によりメチル化率が減少する傾向が認められ、nAg10がDNAメチル化に影響をおよぼす可能性が示された。そこで、代表的なDNAメチル化酵素であるDnmt1への影響について検討した。細胞から核内タンパク質とmRNAを抽出し、ウェスタンブロット法とリアルタイムPCR法によりDnmt1のタンパク質とmRNAの発現量を評価した。その結果、nAg10曝露によってタンパク質発現量が減少する一方で、mRNA発現量には対照群との有意な差は認められなかった。従って、Dnmt1の発現減少は、nAg10曝露によるDnmt1の翻訳阻害または、タンパク質の分解に起因する可能性が見出された。また、nAg10曝露によるDNAメチル化への影響には、Dnmt1発現量の減少が関与する可能性が示された。今後は、他のDNAメチル化酵素への影響などを解析し、nAg10曝露によるDNA低メチル化の誘導機序について解析を進め、NMに係るエピジェネティクス研究推進への貢献を目指す。
著者
横田 理 佐藤 央 杉戸 雄四郎 水尾 圭祐 武田 健
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4093, 2009 (Released:2009-07-17)

【目的】ディーゼル排ガス (DE) 由来の排気微粒子 (DEP) は、大気環境中の浮遊粒子状物質の約半数を占めている。当研究室ではこれまでに DE 胎仔期曝露によって、ドパミン神経系の機能低下を引き起こすことを報告している。一方で、大脳や海馬等において、血管周囲の細胞で DEP 様粒子の蓄積、さらには細胞の変性像や末梢血管の閉塞などを観察した。しかし、DEP 曝露の影響は未だ未解明である。そこで本研究では、胎仔期に DEP を曝露したマウスを用いて行動学的解析を中心に脳神経系への影響を検討することとした。【方法】DEP (Lot. No. 060612) は結核研究所のディーゼルエンジン (いすゞ、排気量 2,369 cc) の希釈トンネルより採取したものを用いた。これを 0.05 % Tween 80 を含む生理食塩水に懸濁し、投与直前に超音波処理を約 2 時間行った。胎仔期曝露では、ICR 系妊娠マウスに対して DEP 100 μg / body / time を妊娠 6、9、12、15、18 日目に皮下投与した。雄性産仔は 3 週齢時に離乳し 5 週齢より行動試験を行った。行動試験は Spontaneous motor activity (自発運動量の評価)、Rotating rod test (運動協調性の評価)、Elevated plus maze test (不安情動性の評価)、Water maze test (空間学習・記憶の評価)、Passive avoidance test (学習・記憶の評価)、Forced swimming test (モチベーションの評価) により詳細な解析を行った。【結果・考察】胎仔期 DEP 曝露により、Elevated plus maze test では Open arm へのエントリー回数の減少が認められた。また、Water maze test において DEP 曝露マウスはプラットホームに到達するまでの時間が有意に長かった。本研究において、胎児期DEP 曝露が不安惹起並びに空間学習・記憶の低下を引き起こす可能性が示唆された。
著者
出口 雄也 高柳 あずさ 豊増 展子 岸 智裕 長岡(浜野) 恵 長岡 寛明
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-227, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】近年、禁煙補助剤としてニコチン含有のパッチやガム、トローチの利用者が増加している。タバコの場合、ニコチンは肺から吸収されるが、ガム、トローチの場合、消化器系から吸収される。タバコの主流煙には発がん物質であるタバコ特異的ニトロソアミンの4-(methylnitrosamino)-1-(3-pyridyl)-1-butanone (NNK)やN-nitrosonornicotine(NNN)などが含まれていることが知られている。禁煙補助剤はタバコ特異的ニトロソアミンを含有していないが、これらを経口摂取した場合に、胃内で亜硝酸との反応によりタバコ特異的ニトロソアミンを生成し、変異原性を示すことが考えられる。そこで、本研究では亜硝酸塩濃度、反応液のpHを変化させることにより、ニコチンガムの亜硝酸処理生成物の変異原性をAmes試験により検討した。【方法】ニコチンガム(2個分:ニコチン約25 µmol)に25 µmolあるいは250 µmol(10倍量)の亜硝酸ナトリウムを添加した緩衝液中(pH 3.0、4.0、5.0)に溶解し、37℃で60分間反応させた。反応物を酢酸エチルで抽出し、減圧濃縮したものをDMSOに溶解し、Ames試験の試料とした。Ames試験はプレインキュベーション法で実施し、ラット肝臓S9mixによる代謝活性化法を併せて実施した。菌株にはTA98株、TA100株を用いた。【結果】ニコチン及びニコチンガムの変異原性はTA98株、TA100株ともに各緩衝液(pH 3.0~5.0)において陰性であった。しかし亜硝酸処理したニコチン及びニコチンガムの変異原性は、pH 3.0の緩衝液で10倍量の亜硝酸ナトリウムと反応させた場合に陽性であった。このことから、ニコチンガムで禁煙が成功しない場合には、長期間の服用は避けるべきであることが示唆された。
著者
Guojun Yin Liping Cao Jinliang Du Rui Jia Takio Kitazawa Akira Kubota Hiroki Teraoka
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.455-459, 2017-08-01 (Released:2017-07-13)
参考文献数
16
被引用文献数
12

Fish hepatobiliary syndrome, characterized by hepatomegaly and fatty liver, has been frequently reported in many cultured fish species and has caused a dramatic economic loss in China. Glucocorticoids are thought to be important non-nutritional factors for hepatomegaly and fatty liver development. In the present study, a dexamethasone-induced zebrafish model of fatty liver and hepatomegaly was established, and the role of glucocorticoid receptor (GR) in the development of hepatomegaly and fatty liver was investigated using developing zebrafish. Exposure of larval zebrafish at 5 days post fertilization (dpf) to dexamethasone for 24 hr caused significant increases of liver size and number of fish with hepatic steatosis at 6 dpf. The increase of liver size caused by dexamethasone was significantly reversed by treatment with RU486, a GR antagonist, and by gene knock-down with a morpholino against the GR. The dexamethasone-induced hepatic steatosis was also inhibited by treatment with RU486. Overall, the results highlight larval zebrafish as a useful model for stress-induced liver failure.
著者
水川 葉月 前原 美咲 横山 望 市居 修 滝口 満喜 野見山 桂 西川 博之 池中 良徳 中山 翔太 高口 倖暉 田辺 信介 石塚 真由美
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.43, pp.P-6, 2016

ポリ塩化ビフェニル(PCBs)の水酸化代謝物であるOH-PCBsは、肝臓内で薬物代謝酵素より生成され、その後体外へ排泄される。しかしながら、一部の水酸化代謝物は甲状腺ホルモン(TH)と類似の構造をもつため、THの恒常性を撹乱することが危惧されている。これまでに、多様な陸棲哺乳類の血中OH-PCBsを分析したところ、種間でOH-PCBsの組成に差異が認められ、中でも、ネコのOH-PCBs残留パターンは他種と大きく異なることから、本種は特異な代謝機能を有することが示唆された。しかし、ネコの異物代謝能の研究は僅かであり、化学物質暴露による毒性影響も不明な点が多い。本研究では、ネコにおけるPCBs <i>in vivo</i>暴露試験を実施し、体内動態および代謝に関与する酵素活性や遺伝子を解析するとともに、化学物質の暴露評価に繋がる基盤的情報の収集を目的とした。<br>コーン油に溶解した12異性体のPCBsを腹腔内投与し、経時採血した血清中PCBsおよびOH-PCBs濃度について同条件で実施したイヌの<i>in vivo</i>試験と比較した結果、異性体の残留パターンや体内動態にイヌとネコで種差が観察された。とくにネコでは低塩素化体の残留が顕著であった。また、代謝酵素活性および遺伝子解析の結果、PCBs暴露によりEROD、MROD、PROD活性は上昇するものの、第2相抱合酵素(UGTやSULT)活性は変化せず、PCBs暴露による抱合酵素活性への影響もみられなかった。また、<i>CYP1A1</i>および<i>CYP1A2</i>遺伝子の発現量の上昇も認められた。<br> 本研究により、ネコのPCBs吸収・代謝・排泄能はイヌと異なることが示唆され、とくに低塩素化OH-PCBsの毒性リスクは高いことが予想された。低塩素化OH-PCBsは血中でTH輸送タンパクとの競合結合や、THの硫酸抱合排泄の阻害、TH起因性遺伝子の転写抑制などが報告されており、ネコの甲状腺機能障害が懸念される。
著者
藤田 郁尚
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W3-3, 2015 (Released:2015-08-03)

私たちは、使用した時に不快な感覚を引き起こさない快適な化粧品を開発するため、感覚刺激の評価方法の確立を試みてきた。最近、温度感受性Transient Receptor Potential (TRP)チャネルが温度受容だけでなく、化学物質による侵害刺激にも重要な働きを示すことが明らかになってきた。その中でも唐辛子の辛み成分であるカプサイシンの受容体であるTRPV1、わさびや芥子の辛み成分であるイソチオシアン酸アリルの受容体であるTRPA1が、特に化学物質による痛み受容に重要な役割を持つ。これまで、皮膚上における感覚刺激へのTRPA1の関与について、様々な刺激要因を対象に研究を続けてきた。化粧品における感覚刺激の標準物質として用いられる防腐剤のパラベン類がTRPA1を活性化させ痛みを引き起こすことを見出してから、ヘアカラーの刺激の大きな原因であるアルカリ剤、化粧品に含まれる一価アルコールと、皮膚上の感覚刺激を引き起こす物質のTRPA1への関与を次々と明らかにしてきた。これと並行して、皮膚上の感覚刺激を軽減するためのTRPA1抑制剤の探索も行い、ユーカリオイルの主成分である1,8-シネオールにTRPA1抑制効果があることを見出した。最近では、皮膚上の冷感覚が外部温度に影響を受ける現象に冷受容体であるTRPM8のチャネル自体の特性が関与すること、つまり、事前暴露温度によってTRPM8の冷閾値が変化し得ることを見出した。これら、これまでの研究内容に、直近の研究成果を含めて報告したい。
著者
秋山 卓美 清水 久美子 藤巻 日出夫 内野 正 最上(西巻) 知子 五十嵐 良明
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-250, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】4-(4-Hydroxyphenyl)-2-butanol(ロドデノール)を配合した美白化粧品の使用者に白斑が生じる事例が多数発生し,大きな問題になった.我々はロドデノールが皮膚のメラノサイトやケラチノサイトを傷害している可能性があると考え,ロドデノール及び製造原料である4-(4-hydroxyphenyl)-2-butanone(ラズベリーケトン)が各種細胞に与える影響を調べた.また,これら化合物の細胞内酵素による化学変化についても検討した.【方法】ロドデノール配合製品にメタノールを加えて超音波処理した後,キラルカラム及びODSカラムを装着したHPLCに供した.ロドデノール,ラズベリーケトン及びそれぞれの酸化体を市販正常ヒトメラノサイトまたはHaCaT細胞に添加し,ATP量を指標に細胞生存率を求めた.培養上清及び細胞破砕液についてLC/MS分析を行った.さらに,これら化合物の水溶液を酸素ガスでバブリングし,マッシュルーム由来チロシナーゼを加えて反応させた後,LC/MSで分析した.【結果及び考察】製品に使用されていたロドデノールは光学異性体混合物であり,R:S存在比はほぼ1:1であった.ロドデノール中のラズベリーケトン,製品へのラズベリーケトンの混入はごくわずかであった.ロドデノールの酸化体はメラノサイト及びHaCaT細胞のいずれに対してもロドデノール及びラズベリーケトンに比べて強い細胞毒性が認められた.ロドデノール及びラズベリーケトンを添加した細胞の培養上清中にはそれぞれの酸化体が検出された.またこれらの化合物はチロシナーゼを直接処理すると酸化体に代謝されることを確認した.以上の結果より,ロドデノールはチロシナーゼ等により酸化体に代謝され,これらがメラノサイトの細胞死に強く関わることが示された.
著者
John B. MORRIS Joseph A. CICHOCKI Gregory J. SMITH
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S2-1, 2016 (Released:2016-08-08)

That respiratory defense mechanisms are stimulated by oxidants/electrophiles has long been appreciated. Our work has focused on characterizing two such defense pathways from an inhalation toxicological perspective: 1) neuronal reflex responses, initiated by the transient receptor potential ankyrin 1 (TRPA1) receptor, and 2) cellular antioxidant defenses initiated via the nuclear factor erythroid 2-related factor (NRF2). TRPA1 and NRF2 are oxidant sensitive receptors expressed throughout the respiratory tract. They are activated by reactive inhaled agents (acrolein) or by local metabolic activation of inhaled or systemically delivered agents (naphthalene, acetaminophen). Exposure to inhaled and systemic oxidants in combination results in synergistic TRPA1 and NRF2 responses. Oxidant responses have also been characterized among respiratory tract regions and between electrophiles with differing reactivity. When normalized to delivered dose, inhaled oxidant/electrophile induction of pro-inflammatory genes is similar throughout the airways, however, differences exist in the NRF2-dependent antioxidant gene induction patterns between regions. Activation of both TRPA1 and NRF2 depends on toxicant interaction with sulfhydryl moieties. The oxidant exposure levels necessary for activation of TRPA1 and NRF2 responses are similar suggesting both oxidant sensors are of comparable sensitivity. While soft electrophiles, such as acrolein, react with sulfhydryls, hard electrophiles, such as diacetyl, do not. Unlike acrolein, inhaled diacetyl is only a weak activator of either neuronal reflexes or NRF2 pathways, suggesting the chemical electrophilic reactivity profiles of TRPA1 and NRF2 are comparable. Overall, the oxidant sensitive receptors TRPA1 and NRF2 demonstrate many toxicologically relevant similarities
著者
Lu CAI
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.SL2, 2016 (Released:2016-08-08)

Oxidative stress derived from various etiologies including environmental exposure, life-style changes, and systemic inflammation, can damage pancreatic β-cells, leading to the deficiency of insulin as type 1 diabetes, and also induce peripheral tissues as insulin resistance, leading to type 2 diabetes. Metabolic abnormalities in the body of individuals with diabetes cause mitochondrial superoxide overproduction that in turn activates multiple pathways: polyol pathway flux, increased formation of AGEs (advanced glycation end products), increased expression of the receptor for AGEs and its activating ligands, activation of protein kinase C isoforms, and overactivity of the hexosamine pathway, to generate excessive reactive oxygen or nitrogen species (ROSs or RNSs), which damages multiple organs, resulting in diabetic complications. Diabetic cardiomyopathy can occur independent of vascular disease, although the mechanisms are largely unknown. Current consensus is that the oxidative stress derived from metabolic syndrome causes cardiomyocyte abnormal gene expression, altered signal transduction, and the activation of pathways leading to programmed myocardial cell deaths. The resulting myocardial cell loss thus plays a critical role in the development of cardiac structural remodeling and dysfunction, “cardiomyopathy”. To support the above notion, our studies with in vitro and in vivo animal modes showed the prevention of diabetes and diabetic complications in the cardiomyocytes or transgenic mice with overexpression of antioxidant genes or supplementation of exogenous antioxidants. Among these clinical-translational antioxidants, metallothionein and its upstream nuclear transcriptional factor Nrf2 as well as their potent inducers have been received attention with greatly potential to be applied in clinics for patients with diabetes.
著者
高野 裕久
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

気管支喘息,花粉症,アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患が急増し,その増加・増悪の主因として環境要因の変化が重要と考えられている。居住環境,衛生環境,食環境,水・土壌・大気環境等,多くの環境要因の変化が指摘されているが,これらの背景には化学物質の増加に代表される環境汚染の問題が共通して存在する。本講演では,環境汚染物質とアレルギー疾患増加・増悪の関連性について,我々のこれまでの知見を紹介する。臨床的に,いわゆるシックハウス症候群において,環境汚染物質によるアレルギー疾患の再燃や増悪がしばしば経験される。また,実験的にも,環境汚染物質は,種々のアレルギー疾患を増悪しうる。例えば,粒子と莫大な数の化学物質の集合体であるディーゼル排気微粒子とともに,黄砂,ナノ粒子,ナノチューブ等の粒子状,繊維状物質もアレルギー性気管支喘息を増悪する。また,ディーゼル排気微粒子に含まれる増悪要因としては,キノン類やベンツピレンをはじめとする脂溶性化学物質が重要である。プラスチック製品の可塑剤として汎用されているフタル酸エステル類,や農薬等の環境化学物質も,アトピー性皮膚炎や喘息を増悪する。これらによるアレルギー増悪メカニズムとしては,総じて,抗原提示細胞の局所における増加や活性化,Th2反応の亢進等が重要であることを示唆する知見が多い。また,いわゆる毒性影響により決定されたNOAELに比較し,低濃度で増悪影響が発現する物質も多い。in vitroの検討では,樹状細胞におけるCD86やDEC205,脾細胞におけるTCR発現,IL-4産生,抗原刺激による細胞増殖の増強をきたすものもあり,増悪機構の解明と共にバイオマーカーとしても重要と考えられる。物質によっては,樹状細胞のケモカインレセプターの発現増加に作用するものもあり,今後,さらに免疫系の幅広いステップで影響を検討することも重要と考えられる。
著者
Takashi Ashino Kanae Hakukawa Yuka Itoh Satoshi Numazawa
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.815-820, 2014-12-01 (Released:2014-11-06)
参考文献数
23
被引用文献数
12

Synthetic cannabinoids developed by chemical modification are believed to bind to cannabinoid receptors and cause neurological effects similar to cannabis; however, their effects on drug metabolizing enzymes are unknown. This study aimed to elucidate the effect of synthetic cannabinoids on cytochrome P450 1A activity. Naphthoylindole, a basic structure of the major synthetic cannabinoids, strongly inhibited CYP1A activity in a competitive manner; the apparent Ki value was 0.40 μM. The N-Alkylated derivatives of naphthoylindole, MAM-2201 and JWH-019, also inhibited CYP1A activity in a concentration-dependent manner; however, their inhibitory effects were weaker than naphthoylindole. An adamantylamidoindole derivative, STS-135, showed inhibition of CYP1A activity in a concentrationdependent manner, but the adamantoylindole derivatives, AB-001 and AM-1248, did not. A tetramethylcyclopropanoylindole derivative, UR-144, showed a weak inhibition of CYP1A activity at high concentrations. These results suggest that synthetic cannabinoids and their basic molecules are capable of inhibiting CYP1A enzymatic activity.