著者
Hyo Jin Kang Young Bin Hong Yong Weon Yi Chi-Heum Cho Antai Wang Insoo Bae
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.355-361, 2013-06-01 (Released:2013-05-11)
参考文献数
29
被引用文献数
6 11

The risk factors for breast cancer, the most common female malignant cancer, include environmental factors such as radiation, tobacco, a high-fat diet, and xenoestrogens as well as hormones. In addition, BRCA1 and BRCA2 are the most well-known genetic factors that increase risk for breast cancer. Coincidence of those environmental and genetic factors might augment the risk of tumorigenesis of breast. To verify this hypothesis, we briefly evaluated the carcinogenic potency of various environmental factors in the absence or presence of BRCA1 as a genetic factor in a normal mammary epithelial cell line, MCF10A. Many environmental factors tested increased cellular ROS level in the absence of other insult. In addition, TCDD, DMBA, 3MC, and BPA enhanced the BaP-induced ROS production. BRCA1 knockdown (BRCA1-KD) cells by siRNA significantly induced cellular accumulation of ROS compared to control cells. In this setting, the addition of paraquat, TCDD, DMBA, 2OHE2 or 4OHE2 significantly augmented ROS generation in BRCA1-KD MCF10A cells. Measurements of BaP-DNA adduct formation as a marker of DNA damage also revealed that BRCA1 deficiency leads increased DNA damage. In addition, TCDD and DMBA significantly increased BaP-DNA adduct formation in the absence of BRCA1. These results imply that elevated level of ROS is correlated with increase of DNA damage in BRCA1 defective cells. Taken together, our study suggests that several environmental factors might increase the risk of tumorigenesis in BRCA1 defective breast epithelial cells.
著者
石井 健
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-5, 2014 (Released:2014-08-26)

「よく効く」ワクチンには、必ずアジュバント、もしくは内因性のアジュバント成分が含まれており、宿主細胞に存在する自然免疫受容体によって認識され、その後の獲得免疫が誘導されることが明らかになってきており、アジュバント(因子)の分子メカニズムの免疫学的、細胞生物学的な理解が飛躍的に進歩しつつある。2011年度のノーベル医学生理学賞が、アジュバントの作用機序に関する自然免疫や樹状細胞研究に授与されたこともあり、基礎研究の裾野も広がってきている。2014年のKeystone Symposiaでは「The Modes of Action of Vaccine Adjuvants」という題目の会が開かれる予定である。また、アジュバントが必要とされるワクチンの臨床応用の対象は感染症の枠を超え、がん、アレルギー、アルツハイマー病など非感染性疾患に広がっており、その開発は世界的に競争が増している。 一方で、アジュバントを含むワクチンの副作用が問題になっている。このような状況において、ワクチンやアジュバントの有効性や副作用の評価方法、指標(バイオマーカー)の構築が切望されている。 我々は、各種アジュバントによる動物実験やヒトのサンプルを網羅的に解析した「アジュバントデータベース」を構築する準備を進めている。本研究では日本が「安全な」アジュバント開発研究で世界のトップに立つために、アジュバントの評価方法の指標 (バイオマーカー)の同定を目的としたアジュバントデータベースの構築、および新規アジュバント開発を行っている。これらのトランスレーショナルリサーチ、とくにマイクロRNAによるワクチンの副作用バイオマーカーの可能性を示唆する知見を発表したい。<最近の著書>“Biological DNA Sensor” Edited by Ken Ishii and Choon Kit Tang Elsevier“Nucleic Acids in Innate Immunity”Edited by Ishii KJ and Akira S CRC press「アジュバント開発研究の新展開」石井健、山西弘一編、CMC出版 2011<最近の代表論文> 1) Kobiyama K et al Nonagonistic Dectin-1 ligand transforms CpG into a multitask nanoparticulate TLR9 agonist PNAS 2014 in press 2) Desmet C and Ishii KJ Nucleic acid sensing at the interface between innate and adaptive immunity in vaccination Nat Rev Immunol 2012 12(7):479-91 3) Marichal T, et al DNA released from dying host cells mediates aluminum adjuvant activity. Nat Med. 2011 17(8):996-1002. 4) Koyama S et al Plasmacytoid dendritic cells delineate immunogenicity of influenza vaccine subtypes. Sci Transl Med. 2(25):25ra24. (2010) 5) Ishii,K.J. et al. TANK-binding kinase-1 delineates innate and adaptive immune responses to DNA vaccines. Nature 451, 725-729 (2008).
著者
神野 透人 古川 容子 大河原 晋 西村 哲治 香川(田中) 聡子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第38回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.20064, 2011 (Released:2011-08-11)

【目的】室内環境中の化学物質が発症の原因あるいは増悪因子となり得る疾病として、いわゆるシックハウス症候群や気管支喘息等があるが、その発症機序の詳細には未解明な部分も多い。本研究では主に塗料や粘着剤・接着剤、アクリル樹脂等の原料として利用されており、既に呼吸器/皮膚感作性が確認されている物質も含まれているアクリル酸及びメタクリル酸とそのエステル類について、侵害刺激受容体であり気管支喘息にも深く関与することが示唆されているTransient Receptor Potential (TRP) A1及びTRPV1 に対する活性化作用を検討した。 【方法】ヒト後根神経節Total RNAよりRT-PCRによってTRPA1及びTRPV1 cDNAをクローニングし、それぞれを安定的に発現するFlp-In 293細胞を樹立した。得られた細胞株の細胞内Ca 2+濃度の増加を指標としてTPRA1及びTRPV1イオンチャネルの活性化を評価した。 【結果】アクリル酸及びメタクリル酸とそのエステル類14物質について、ヒトTPRA1及びTRPV1に対する活性化能を評価した。その結果、TRPV1に対する活性化能は本研究で対象とした14物質には認められなかったが、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸ブチルがTPRA1を活性化する作用を有することが明らかになった。我々はこれまでに家庭用品から放散される揮発性有機化合物の評価試験を実施し、パーソナルコンピューターやテレビ等多種多様な家庭用品からからある種のアクリル酸エステル類・メタクリル酸エステル類が放散することを見いだしている。本研究結果から、これら家庭用品から放散されるアクリル酸エステル類・メタクリル酸エステル類がTRPA1を介した感覚神経あるいは気道の刺激を引き起こす可能性が考えられる。
著者
佐藤 至 西川 裕夫 齋藤 憲光 金 一和 大網 一則 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.75, 2005 (Released:2005-06-08)

【目 的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は合成樹脂原料,撥水剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されているが,その毒性については十分な情報が得られていない。このため本研究ではマウスなどの実験動物とゾウリムシを用いてPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方 法】8〜9週齢のWistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,ゾウリムシをPFOSまたはPFOAを含む種々の溶液に入れ,遊泳行動の変化を観察することにより毒性評価を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSはマウスで125 mg/kg以上,ラットでは250 mg/kg以上で超音波刺激による強直性痙攣を誘発した。PFOSによる痙攣は超音波刺激2時間前にジアゼパムまたはニフェジピンを投与しても抑制されなかった。一方PFOSおよびPFOAはゾウリムシに対して後退遊泳を誘発し,膜電位あるいは細胞内カルシウムに対する影響が示唆された。後退遊泳誘発作用はPFOAよりもPFOSの方が強かった。ジアゼパムおよび数種のCa2+チャンネルブロッカーは高カリウムによる後退遊泳は抑制したが,PFOSによる後退遊泳は抑制しなかった。また低カルシウム溶液中ではPFOSによる後退遊泳が増強された。以上の結果からPFOSは細胞外カルシウムの取り込みによらずに神経毒性を示す可能性が示唆された。
著者
ティン ティン ウィン シュイ 山元 昭二 藤谷 雄二 平野 靖史郎 藤巻 秀和
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第36回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.4113, 2009 (Released:2009-07-17)

【目 的】 近年、ディーゼルエンジン由来ナノ粒子の毒性影響研究の必要性が、社会的に認知されるようになった。本研究では、ナノ粒子(粒径50 nm以下)を多く含んだディーゼル排気(NRDE)をマウスに曝露し、細菌細胞壁成分リポタイコ酸(LTA)投与との併用下で海馬における空間認識記憶学習と記憶関連遺伝子発現や嗅球での神経伝達物質レベルおよび記憶関連遺伝子発現について検討した。 【材料および方法】 動物はBALB/c 雄マウスを用い、NRDEの全身吸入曝露チャンバーで4週間(5時間/日, 5日/週)曝露した(モード粒径26.21 nm、重量濃度148.86μg/m3)。また、曝露期間中、計4回(1回/週)LTAを腹腔内に投与した。NRDE曝露後におけるマウスの空間認識記憶学習を調べるためにモリスの水迷路試験を行った。また、嗅球での細胞外アミノ酸神経伝達物質(グルタミン酸)レベル測定のために脳マイクロダイアリシス法との組み合わせでHPLC分析をおこなった。さらに、海馬および嗅球における記憶関連遺伝子のmRNA発現レベルをリアルタイムRT-PCR法によって解析した。 【結果および考察】 モリス水迷路試験において、NRDE+LTA群では、対照群(清浄空気のみ;LTA非投与)に比べて水面下に隠れたプラットフォームへの到着に長い時間を要した。NRDEのみの曝露群ではそれらに影響はみられなかった。また、海馬でのNMDA受容体サブユニットNR1, NR2A, NR2BのmRNA発現レベルは、対照群に比べてNRDE+LTA群で有意に高かった。嗅球において、NRDE曝露のみやLTAとの併用、もしくはLTA投与のみは、グルタミン酸レベルの有意な増加を引き起こした。又、NR1, NR2A, NR2BやプロテインキナーゼCaMKIV, 転写因子CREB1等のmRNA発現のアップレギュレーションがNRDE+LTA群において観察された。
著者
Nozomi Asaoka Hiroyuki Kawai Naoya Nishitani Haruko Kinoshita Norihiro Shibui Kazuki Nagayasu Hisashi Shirakawa Shuji Kaneko
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.813-816, 2016-12-01 (Released:2016-11-16)
参考文献数
16
被引用文献数
12

N-[[1-(5-fluoropentyl)-1H-indazol-3-yl]carbonyl]-3-methyl-D-valine methyl ester (5F-ADB) is one of the most potent synthetic cannabinoids and elicits severe psychotic symptoms in humans, sometimes causing death. To investigate the neuronal mechanisms underlying its toxicity, we examined the effects of 5F-ADB on midbrain dopaminergic and serotonergic systems, which modulate various basic brain functions such as those in reward-related behavior. 5F-ADB-induced changes in spontaneous firing activity of dopaminergic and serotonergic neurons were recorded by ex vivo electrophysiological techniques. In dopaminergic neurons, 5F-ADB (1 μM) significantly increased the spontaneous firing rate, while 5F-ADB failed to activate dopaminergic neurons in the presence of the CB1 antagonist AM251 (1 μM). However, the same concentration of 5F-ADB did not affect serotonergic-neuron activity. These results suggest that 5F-ADB activates local CB1 receptors and potentiates midbrain dopaminergic systems with no direct effects on midbrain serotonergic systems.
著者
木村 真三
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.1104, 2013 (Released:2013-08-14)

放射線影響とは,放射線により物質が電離される際に電子軌道より飛び出した自由電子によって細胞やDNAを傷つけることで生じる様々な障害を総称する言葉である。放射線被ばくを考えた場合,外部から放射線にさらされた場合と放射性物質が生体内部に取込まれた場合では,影響が異なるのか否か,まだまだ不明な点が多いのも放射線の難しさのひとつと言える。チェルノブイリでは事故から27年が過ぎた現在でも,汚染地域では汚染食品による内部被ばくが続いている。我々の調査では,高濃度の汚染食品を食べて生活している30歳代男性で58,000ベクレル,預託実効線量に換算して5.2ミリシーベルトだった。近年ウクライナの報告では,心疾患や閉経後の女性の甲状腺がんの増加などが報告されている。科研費番号22406019 H22年度~H24年度「チェルノブイリ被災地をモデルとした原発解体作業に伴う被ばく影響の基礎的研究」(研究代表者 木村真三)でも,成人を対象とした調査結果から,国際疾病分類表ICD-10のカテゴリーより,妊娠,分娩および産褥(単胎自然分娩を除く)等において土地の汚染度と上記疾病に関して有意な値が示された。一方,東京電力福島第一原発事故では,事故発生より3日目には福島県内に入り環境調査を進めながら,高線量地域と知らされずに避難していた浪江町住民を再避難させるなど,事故当初から福島県内の実態を明らかにしてきた。今回は,演者が健康アドバイザーを務める二本松市の外部被ばく,内部被ばくについて報告する。現在の二本松市では,明らかに内部被ばくをしている市民は0.5%程度であり,食事コントロールが成功しているが,事故から2年が過ぎ,市民の危機意識も薄らいで来たために,僅かながら内部被ばくを呈する市民が増え始めている。また,外部被ばくは,H23年度とH24年度の推定年間被ばく線量に変化がなかった。
著者
Asuka Kaizaki Sachiko Tanaka Satoshi Numazawa
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-6, 2014-02-01 (Released:2014-01-10)
参考文献数
23
被引用文献数
19 56

1-phenyl-2-(1-pyrrolidinyl)-1-pentanone (α-PVP) is a new designer drug of the cathinone type. People who have taken drugs containing α-PVP or other synthetic cathinone reportedly lose consciousness, develop difficulty breathing, and at worst case, die. However, the mechanism underlying α-PVP-induced neurotoxicity is unknown. The objective of the present study was to investigate the effect of α-PVP on the central nervous system (CNS) and compare its neurotoxicity with that of methamphetamine (METH) in mice. Balb/c male mice (8 weeks old) were orally administered α-PVP (25 mg/kg) or METH (5 mg/kg). α-PVP induced a significant increase in locomotor activity, which occurred earlier than locomotor activity induced by METH. This increase was inhibited by the D1 receptor antagonist SCH23990 (50 µg/kg, i.p.) and the D2 receptor antagonist sulpiride (50 mg/kg, i.m.). The extracellular concentration of dopamine (DA) in the striatum, determined by in vivo microdialysis increased immediately after α-PVP administration. These results suggest that α-PVP stimulates DA release, causing an increase in locomotor activity, and that this stimulatory effect of α-PVP on CNS is mediated, at least in part, by the D1 and D2 receptors.
著者
武田 志乃 西村 まゆみ 山田 裕 上野 俊治 島田 義也
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5156, 2007 (Released:2007-06-23)

近年、劣化ウラン弾汚染地域やウラン鉱山伏流水を飲用する地域で健康影響についての報告が増加し、子どもへのウランの毒性影響に関心がもたれている。自然界に存在するウラン(天然型ウラン)や劣化ウランは放射線毒性よりも重金属としての化学毒性が優勢とされ、カドミウムや水銀様の腎臓の尿細管障害を引き起こすことが知られている。しかし発達期におけるウランの感受性や体内挙動は十分に理解されていない。その理由の一つは、組織中の微量ウランの測定が困難であったことがあげられる。すなわち、ウランはα線放出核種であるため、β線やγ線核種のように感光フィルムやイメージングプレートによる組織分布が簡便に得られない。 我々はこれまでに、ナノビームを利用した高エネルギー領域シンクロトロン放射光蛍光X線分析(SR-XEF)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)による微量元素測定手法に取り組んできた。両手法は微小組織におけるウラン分析に有効であることから、我々はこれらの手法を幼若ラットにおけるウランの挙動解析に応用することを試みた。本研究では、ウランをばく露した生後6日齢および3週齢の雄性ラットにおけるウランの体内挙動、および腎臓中ウラン分布とアポトーシス誘導との関係を報告する。
著者
Jun Kanno
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Special, pp.SP105-SP109, 2016-12-31 (Released:2017-04-11)
参考文献数
15
被引用文献数
23

Silent Spring by Rachel Carson (1962) established a role for environmental chemicals in cancer and Our Stolen Future by Theo Colbone, Dianne Dumanoski and John Peterson Myers (1996) coined the concept of “Endocrine Disrupting Chemicals (EDCs)” with its mechanistic plausibility for all the living organisms. For basic biologists, seeing a non-monotonic dose-response curve was a matter of course. In contrast, for the toxicologists at that time, the dose-response curves should be monotonic. It took some time for toxicologists to accept the plausibility that animals and humans are subject to the effects of EDCs act in a way that is explained by the new paradigm of receptor-mediated toxicity or in other words “signal toxicity.” In classical toxicology, a toxic substance reaches a cellular target and induces malfunction. The target molecules are proteins including enzymes, lipid membranes, DNA, and other components of the cell which are damaged by the toxic substances. On the other hand, in the case of signal toxicity, a chemical binds to a specific receptor - after that, the chemical itself is not important. The signal from the receptor initiates a cascade of molecular events that leads to various changes in the cells and organs. When the signal is abnormal for a cell or an organ in terms of quality, intensity and timing, then the signal will induce adverse effects to the target. An extreme example of signal toxicity is the 1981 Nobel Prize in Physiology or Medicine work by Drs. Hubel and Wiesel. They blocked the signal of sharp images from the retina to the brain and found that the visual cortex needed this signal at the correct time for its proper development. In humans, such signal disruption is well known to induce “form-deprivation amblyopia” in infants. The concept of signal toxicity widens the range of systems vulnerable to EDCs and facilitates the understanding of their biological characteristics. For example, compared with intrinsic ligands, xenobiotic chemicals usually act as weak agonists and/or weak antagonists of receptor systems; the dose-response characteristics and the dose range will depend on the signaling system of concern. If the signal is used for organogenesis and functional maturation, there would be a critical period in the development during which the disturbance of such signals may cause irreversible changes. Since recepter-based signaling mechanisms are usually an amplification systems, it is hard to set a threshold in its dose response, and the outcome of signal toxicity is often stochastic at low doses. This review attempts to explain the benefits of incorporating the concept of signal toxicology for widening the range of toxicology for the better protection of human and environmental health in modern civilized life, where chemicals are designed to be less toxic in terms of traditional toxicity but not yet in “signal toxicity.”
著者
川畑 公平 川嶋 洋一 工藤 なをみ
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-77, 2015 (Released:2015-08-03)

【目的】フッ素化界面活性剤であるペルフルオロオクタン酸(PFOA)は難燃剤、乳化剤、撥水剤等に使用されてきたが、化学的に安定で環境中に残留し、また、ヒトにおける半減期が長いため、ヒトの健康への影響が懸念されている。PFOAをラットに投与すると、脂質代謝が広範に撹乱され、脂肪酸のβ酸化に関与する酵素が誘導されることが報告されている。一方で、ペルフルオロカルボン酸を投与すると肝臓にトリグリセリド(TG)が蓄積される。そこで本研究では、肝スライスを用いてPFOAにより脂肪酸のβ酸化が亢進するかを評価した。【方法】9週齢の雄性WistarラットにPFOA0.01% (w/w)含有飼料を1週間摂取させた。ラットより肝臓を採取し、precision cut sliceを調製し、Krebs-Henseleit buffer中で[14C]16:0また[14C]18:1n-9とインキュベートし、ex vivoで代謝物の生成速度を測定した。また、肝ホモジネートを用いて、in vitroでのミトコンドリアとペルオキソームのβ酸化活性を評価した。肝TGおよびリン脂質の量は、構成脂肪酸をGCで分析することにより定量した。【結果および考察】肝スライスを用いると、PFOA群における16:0および18:1n-9のβ酸化活性は、それぞれ対照群の約1.5倍、1.7倍に上昇した。ホモジネートを用いて評価したところ、16:0および18:1n-9のβ酸化活性はミトコンドリアでそれぞれ1.9倍、2.4倍、ペルオキソームでそれぞれ3.2倍、1.9倍に上昇した。PFOA群における肝臓中の総脂肪酸量は対照群と比較してむしろ有意に増加した。以上の結果より、PFOAを投与すると肝臓のβ酸化活性が上昇するにもかかわらず、肝臓中の脂肪酸量は低下しないことが明らかとなった。
著者
高野 裕久
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.28, 2006 (Released:2006-06-23)

医学、工学、薬学等の多分野でナノテクノロジーは応用され、ナノメーターサイズのナノチューブやナノ粒子等の新素材が大量生産されている。これらのナノマテリアルは、表面積の加増、触媒・酵素活性の上昇、溶解・吸収・透過性の向上、抗菌作用等を目的に創出され、化粧品、歯磨き、塗料、携帯電話等の一般生活関連製品や、半導体、デイスプレイ、データ蓄積機器等の一般家電製品にも広く使用されているため、人体への曝露機会が急増している。ナノマテリアルは、呼吸器、消化器、皮膚・粘膜を介し人体に曝露される可能性がある。ナノマテリアルは、吸収性や透過性の向上を目的として作製されている場合も多く、曝露臓器・系統からの容易な吸収による体内侵入と、その後の全身循環系や免疫系等への影響惹起の可能性を否定できない。また、ナノマテリアルは種々の活性が高い場合が多いこと、既報告上、物質が微小であればあるほど生体毒性を発揮する活性酸素・フリーラジカルの生成が多いことなどから、体内に侵入したナノマテリアルの生体影響は、粗大なマテリアルより強い可能性も危惧される。一方、ナノメーターサイズの物質の生体影響に関しては、自動車排ガス等の燃焼由来の大気中浮遊微小粒子状物質に関わる研究が先行してきた。その結果、微小粒子の生体影響には、それを受けやすい「高感受性群」が存在することが報告されている。それらの「高感受性群」には呼吸器疾患、免疫・アレルギー疾患、循環器疾患等が列挙される。大気中の微小粒子の報告例からも、上述のナノマテリアルの曝露様式や特性からも、呼吸器、循環器、免疫・アレルギー系とそれらに関連する疾患は、ナノマテリアルの健康影響に対する「高感受性群」である可能性が強く想定される。本シンポジウムでは、免疫・アレルギー、呼吸器系とそれらに関連する疾患モデルに、ナノマテリアルの曝露が及ぼす健康影響に関するわれわれの知見を紹介する。
著者
光本(貝崎) 明日香 田中 佐知子 沼澤 聡
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-221, 2014 (Released:2014-08-26)

【目的】カチノンはCatha edulis (khat)から得られるモノアミンアルカロイドである。カチノン構造類似体である合成カチノンは中国・インドで合成され、世界中に流通している。1-phenyl-2-(1-pyrrolidinyl)-1-pentanone (α-PVP)は、2013年3月に新たに麻薬指定された新規の合成カチノンである。我々は、2012年度に「ハーブ」や「バスソルト」などと称して販売されている薬物が、主に合成カチノンを含有しており、その多くはα-PVPであることを明らかにした。「ハーブ」や「バスソルト」を使用した者が、重大な交通事故を起こしたり、健康被害を被ったりする事例が相次いで報告されており、大きな社会問題となっているが、α-PVPの生体作用は明らかではない。そこで本研究では、α-PVPが中枢神経系に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】自発運動量の測定:Balb/c雄性マウスにα-PVP (25 mg/kg)または水(10 mL/kg)を21日間投与し、1, 7, 14, 21日目に自発運動量を計測した。また、D1受容体拮抗薬SCH23390 (50 µg/kg, i.p.)および/またはD2受容体拮抗薬スルピリド(50 mg/kg, i.m.)を前投与し、自発運動量を計測した。ドパミン量の測定:in vivo マイクロダイアリシス法を用いて、α-PVP投与後の細胞外ドパミン量の変動を検討した。その他、ドパミン取り込み測定、免疫組織染色を行った。【結果および考察】α-PVPは、投与後速やかに自発運動量の増加を引き起こしたが、長期投与することにより、その作用は減弱した。α-PVPは、細胞外ドパミン量の上昇を引き起こした。SCH23390およびスルピリド前処置により、α-PVPによる自発運動量の増加は有意に抑制されたことから、α-PVPはドパミン神経系を刺激し、ドパミン量を増加させることで、自発運動量の増加を引き起こすこと、また、その作用には、D1およびD2受容体が関与していることが明らかになった。
著者
山本 一彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.EL3, 2015 (Released:2015-08-03)

生体は自己の抗原とは反応しないという、免疫寛容のシステムを有しているが、これが破綻すると自己免疫現象、自己免疫疾患が惹起される。免疫寛容の破綻の詳細は明らかでないが、1)隔絶抗原の免疫系への提示、2)分子相同性、3)自己の抗原の修飾、4)樹状細胞の活性化、5)制御性T細胞の機能障害など、様々なメカニズムが考えられている。そしてこれらのメカニズムの背景には、遺伝要因と環境要因が複雑に影響しあっているとされている。本講演では、自己免疫疾患の一つである関節リウマチ(rheumatoid arthritis, RA)を例にとり、その免疫寛容の破綻について考察したい。RAは、自己免疫応答に起因する慢性炎症性病態が複数の関節に生じて、進行性の破壊性関節炎にいたる病態である。RAの発症に遺伝的な背景があることは、疾患の多発家系が存在すること、一卵性双生児における発症の一致率が高いことなどから示唆される。遺伝要因の最大のものはHLA-DR遺伝子であり、遺伝要因の10-30%を説明可能とされている。それ以外の遺伝要因として最近のゲノムワイド関連解析で約100程度の遺伝子多型が明らかになっている。環境要因としては、性ホルモンや喫煙、感染などが挙げられているが、最近では喫煙がもっとも注目されている。RAにおけるもっとも特異性の高い自己抗体は抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)である。ACPAは発症前から認められることが多いので、シトルリン化蛋白に対するトレランスの破綻が発症前より起こっていると考えられている。環境因子である喫煙との相互作用に関して、喫煙者の気管支肺胞洗浄液ではシトルリン化酵素(PAD、遺伝子はPADI)の発現とシトルリン化蛋白の増加が見られることから、喫煙がシトルリン化された自己抗原に対する免疫応答を誘導している可能性が示唆されている。HLA遺伝子多型、PADI遺伝子多型と、免疫寛容の破綻についても考察したい。
著者
庵原 俊昭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-4, 2014 (Released:2014-08-26)

インフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの原因として、発育鶏卵由来のタマゴ成分が関与していると考えられていた。しかし、本邦のインフルエンザワクチンに含まれるオボアルブミン濃度は1ng/mlであり、アナフィラキシーを引き起こす濃度(600ng/接種量以上)ではない。2009年のパンデミック時にタマゴを食べてアナフィラキシーを起こす小児41人に、発育鶏卵由来インフルエンザワクチンを接種したが1人もアナフィラキシーを発症しなかった。 2011/2012シーズンにおいて、2-フェノキシエタノール(2PE) を含むインフルエンザワクチンを接種した小児(主として3~5歳)は、2PEを含まないインフルエンザワクチンを接種した小児よりも高頻度にアナフィラキシーを発症した。アナフィラキシーを発症した小児は、インフルエンザワクチンに対するプリックテストが陽性であり、インフルエンザワクチンに対する高いIgE抗体を有しており、児から採取した好塩基球はインフルエンザワクチン刺激により活性化された。また、低濃度の刺激では、2PE入りインフルエンザワクチンの方が高い好塩基球活性化が認められた。以上の結果から、2PEがHAの構造をなんらか変化させ、結果として好塩基球や肥満細胞に付着した抗インフルエンザワクチンIgE抗体が架橋形成し、これら細胞を活性化させアナフィラキシーを誘発したと推論した。 2012/2013シーズンから防腐剤を2PEからチメロサールに変更したところ、小児のアナフィラキシーの頻度は他のメーカーは同等となった。一方、インフルエンザワクチン接種後に腕全体が腫脹した小児では即時型のプリックテストは陰性であったが、インフルエンザワクチンに対する高いIgE抗体が検出された。次に小児のインフルエンザワクチンIgE抗体を測定したところ、2歳~5歳で高値を示し、その後低下する傾向が認められた。 インフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシーや腕全体の腫脹を予防するためには、IgE抗体を誘導しにくいインフルエンザワクチンの開発が必要である。
著者
石井 明子
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S11-1, 2016 (Released:2016-08-08)

バイオ医薬品(組換えタンパク質医薬品)は,目的物質を発現する組換え細胞の培養,及び,細胞あるいは細胞培養上清からの目的物質の精製工程を経て,製造される.バイオ医薬品原薬の構成要素には,目的物質,目的物質関連物質の他,目的物質由来不純物,製造工程由来不純物が含まれる.目的物質由来不純物は,目的物質の分子変化体(前駆体,製造中や保存中に生成する分解物,凝集体,アミノ酸配列変異体等)で,生物活性,有効性及び安全性の点で目的物質に匹敵する特性を持たないものである.製造工程由来不純物には,細胞基材に由来するもの(宿主細胞由来タンパク質,DNA等),細胞培養液に由来するもの,あるいは細胞培養以降の工程である目的物質の抽出,分離,加工,精製工程に由来するもの(試薬・試液類,クロマトグラフ用担体からの漏出物等)がある.これらの不純物の評価・管理については,ICH Q6Bガイドラインに基本的な考え方が示されているが,具体的な許容値や管理値は示されていない.バイオ医薬品開発に際して,中間体,原薬,あるいは製剤を対象とした特性解析により,各種不純物の存在と残存量が明らかにされ,製剤中の不純物含量が安全性に影響のない値以下に管理できるよう,原材料の管理,工程パラメータ管理,工程内試験,規格及び試験方法等からなる品質管理戦略が構築される.不純物の管理値については,最終的には,臨床試験に用いたロットにおける不純物含量等をもとに決定されている.不純物の安全性への影響は,製剤の投与経路等によっても異なる場合があるので,各製品の意図した用途に応じた品質管理戦略が必要である.本講演では,バイオ医薬品に含まれる各不純物の特徴,不純物が問題となった事例,及び,不純物管理戦略の概要を述べ,不純物に焦点をあてたバイオ医薬品品質管理の現状と課題を考察したい.
著者
北村 繁幸 浦丸 直人 井上 俊夫 鈴木 祐子 尾崎 ひとみ 杉原 数美 太田 茂
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第38回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.20067, 2011 (Released:2011-08-11)

【目的】パラベン類(p-hydroxyalkylbenzoates)は、抗菌作用を有し保存料として食品、化粧品、医薬品等の様々な製品に使用されており、とくに化粧品中では最も頻繁に使用されている防腐剤である。化粧品の特性上、直接皮膚に使用するため、接触皮膚炎などのアレルギー症状が問題となっており、化粧品成分中の防腐剤が感作性物質(アレルゲン)になることが懸念されている。本研究では、パラベン類のアレルギー反応及びアレルギー反応へのパラベン類の代謝の関与を明らかにすることを目的とする。 【方法】代謝実験に供したラット肝ミクロゾームはSD系ラット肝より調製した。被検化合物はラット肝ミクロゾームと共に反応させ、代謝生成物であるp-ヒドロキシ安息香酸をHPLCにて測定した。抗原性試験はモルモットの皮膚反応にて検討した。被検化合物のヒスタミン遊離実験には、Wistar系ラットの腹腔から精製したマスト細胞を用いた。被検化合物をマスト細胞と共に反応させ、遊離したヒスタミンをHPLCにて測定した。 【結果および考察】代謝実験では、ラット肝ミクロソームはパラベン類に対して加水分解活性を示した。ブチルパラベンにて感作したモルモットおいて、ブチルパラベンでは弱いながら皮膚紅斑が認められた。p-ヒドロキシ安息香酸では、濃度依存的なマスト細胞からのヒスタミン遊離作用が認められた。一方、ブチルパラベンでは、低濃度域ではヒスタミン遊離作用は認められないものの高濃度域では認められた。ブチルパラベンにおけるアレルギー反応の発症には、p-ヒドロキシ安息香酸への代謝反応の関与が考えられる。
著者
清水 郷美 望月 雅裕 梅下 和彦 岡本 裕智 北澤 隆宏 後藤 玄 枝元 洋 鎌田 貴志 西原 義人 畠山 和久
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5102, 2007 (Released:2007-06-23)

【目的】SD系〔Crl:CD (SD)〕SPFラットにフェノバルビタール(PB)を2週間反復経口投与することにより、血液凝固時間が延長した。そこで我々は、PB投与による血液凝固時間への経時的変化について検討するとともに、ビタミンK2を併用投与する群を設け、PB投与による血液凝固時間の延長に対するビタミンK2(Vt.K2)の影響について検討した。 【方法】PBの投与量は2週間反復投与により肝逸脱酵素の上昇が認められなかった100 mg/kg/日とし、投与1、2、3及び7日の翌日にPT、APTT、血漿中フィブリノーゲン、トロンボテスト(TT)及びAntithrombin III(AT-III)濃度を測定した。同時に肝臓について総Cytochrome P450(P450)含量の測定とウエスタンブロット法でCYP2Bの発現を確認した。更に、VtK2(30 mg/kg)を7日間併用投与する群とPB投与7日目に単回併用投与する群を設け、上記項目について測定した。なお、投与14日目の成績はPBの2週間反復投与による結果を使用した。 【結果及び考察】PB投与により、P450含量は投与回数に伴って増加傾向を示した。凝固系パラメータでは投与1日よりAPTTの延長、投与2日よりAT-III濃度の増加、投与7日よりTTの延長がみられた。Vt.K2の単回及び反復併用投与群では凝固時間の延長は認められなかった。したがって、PB投与によるAPTTの延長はVtKの付加により改善された。なお、PB投与初期にはTTの延長は認められず、PB投与によるAPTTの延長はVt.Kの関与する凝固因子の減少に加えてAT-III濃度の増加が関与している可能性が示唆された。
著者
笹野 公伸
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W4-4, 2014 (Released:2014-08-26)

ホルモン、特にステロイドホルモンは種々の標的組織における細胞増殖他に密接に関与している事から、腫瘍/癌化に大きく関与する。 中でもエストロゲン、アンドロゲンを中心とした性ステロイドは男性では前立腺癌、女性では子宮内膜癌、卵巣癌そして乳癌の発生に密接に関与する事はよく知られている。 こられのいわば古典的な性ステロイド依存性腫瘍に加えて最近では肺癌、大腸癌、胸腺腫等の一部でもこれら性ステロイドホルモンが癌化他に深く関与している事が示されてきている。 この性ステロイドが関与する発癌機構で動物実験と異なる事として、腫瘍組織局所での性ステロイド代謝による影響があげられる。 すなわち性ステロイド作用は通常血中のホルモン濃度と標的細胞における受容体の有無で規範される事が原則であるが、例えばヒトの場合エストロゲン依存性乳癌が発症してくるのはむしろ血中のエストロゲン濃度が極めて低下する閉経期以降が多い。この現象は受容体が発現している標的組織中で、閉経前後でその血中濃度があまり変わらない副腎皮質網状層由来の生物学的活性の低い男性ホルモンがアロマターゼ他の酵素によりエストロゲンに転換され作用する事に起因している。 このように血中のホルモン濃度に関係なく標的組織でホルモンを代謝/産生して作用する機序は従来の“Endocrinology”に比べて“Intracrinology”とも呼ばれ、多くの性ステロイド依存性腫瘍の発生/進展に際し大きな役割を果たしている事が明らかにされてきている。 このIntraccine機構はサイトカイン、成長因子等種々の要素による局所でホルモンを活性化、あるいは非活性化する酵素群の発現動態が影響され、これらのホルモン依存性は発癌機構も単に血中のホルモン濃度と標的細胞の受容体の発現量だけで規範されない。このようにホルモン、特に性ステロイドが関与するヒト発癌/腫瘍発生機構は非常に複雑であり、全身/組織/細胞レベルの総合的な解析が欠かせない。
著者
瀧山 和志 武田 志乃 内川 拓也 小久保 年章 島田 義也
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.1002024, 2013 (Released:2013-08-14)

【はじめに】原子力発電で利用されるウランは腎毒性物質として知られている。ウランは地殻成分として環境中に広く分布し、原発事故で飛散した多くの放射性核種と同様に、その内部被ばく影響に関心が高まっている。劣化ウラン弾汚染や鉱山乱開発による環境負荷の懸念、あるいは地下水汚染地域での健康調査報告などを背景に、放射線防護の観点から早急な対応が求められている。緑藻の一種であるクロレラは、鉛、カドミウム、メチル水銀といった有害金属の吸着作用あるいは排泄促進作用が報告されている。そこで、本研究ではクロレラのウラン腎臓蓄積低減効果を調べることを目的とし、ウラン吸収および排泄へのクロレラの効果について検討を行った。【実験】動物の処置:Wistar系雄性ラット(10週齢)に胃ゾンデにより酢酸ウラン(天然型)を単独(0.5 mg/kg)あるいはクロレラ(1 g/kg)を併用一回投与した。個別に代謝ケージに移し3日間飼育し、摂食、摂水、尿、および糞量を測定した。ウランの分析:腎臓、血液、尿、糞は高純度硝酸を加えて湿式灰化し、ウラン濃度を誘導結合プラズマ質量分析により測定した。【結果および考察】観察期間中、クロレラ併用群の腎臓中ウラン濃度はウラン単独群に比べ50-60%低値となった。投与後初期の血漿へのウラン移行がクロレラ併用群で減少しており、腸管でのウラン取り込みが低下していたものと考えられた。糞・尿代謝への影響についても併せて報告する。