著者
中野 治郎 石井 瞬 福島 卓矢 夏迫 歩美 田中 浩二 橋爪 可織 上野 和美 松浦 江美 楠葉 洋子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-284, 2017 (Released:2017-09-08)
参考文献数
21
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した造血器悪性腫瘍患者における運動機能,倦怠感,精神症状の状況を把握することである.【方法】対象は化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した入院中の造血器悪性腫瘍患者 62名とし,運動療法の介入時と退院時の握力,膝伸展筋力,歩行速度,日常生活動作能力,全身状態,倦怠感,痛み,不安,抑うつを評価した.そして,各項目の介入時から退院時への推移を検討した.【結果】介入時と退院時を比較すると,膝伸展筋力は一部の患者では低下していたが,歩行速度,ADL能力,全身状態は9割以上の患者で維持・改善されていた.また,女性では倦怠感,不安,抑うつの改善傾向が認められたが,男性では認められなかった.【結論】化学療法実施中に低強度の運動療法を適用した造血器悪性腫瘍患者の運動機能は維持・改善しており,倦怠感,不安,抑うつの変化には性差が認められた.
著者
西﨑 久純 石川 奈津江 平山 英幸 宮下 光令 中島 信久
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.271-276, 2017 (Released:2017-09-08)
参考文献数
10

【目的】在宅診療を受けているがん末期患者における褥瘡の予測危険因子を明らかにすることを目的とした.【方法】在宅診療を専門としている施設において,在宅のまま死亡にて診療終了となるまで施設入居者を含む在宅診療を受けていたがん末期患者95例について,後ろ向き研究を行った.【結果】褥瘡ができた患者は31名で,できなかった患者は64名であった.二変量解析の結果,統計学的に有意であった変数は,大浦・堀田スケール(以下,OHスケール)(P=0.02),過活動型せん妄(P=0.005),拘縮(P=0.008),ヘモグロビン値(P=0.02)で,多変量ロジスティック解析で有意であった変数は,拘縮(OR=16.55 P=0.0002) と,過活動型せん妄(OR=4.22 P=0.008)が独立した褥瘡のリスク因子として同定された.【考察】在宅診療を受けているがん末期患者においては,褥瘡の予測危険因子として過活動型せん妄についても考慮すべきである.
著者
滝本 佳予 小野 まゆ
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.547-551, 2017 (Released:2017-08-18)
参考文献数
7
被引用文献数
2

悪性腸腰筋症候群(malignant psoas syndrome: MPS)は,悪性腫瘍が腸腰筋に浸潤して生じる,侵害受容性痛と腰神経叢領域の神経障害性痛を特徴とする病態である.痛みは強く,症状緩和に難渋することも多い.53歳の女性,子宮癌肉腫で広汎子宮全摘術施行後,骨盤内リンパ節病変が増大し左MPSを生じた.この病変に対し放射線治療(radiation therapy: RT)が予定されたが,強い痛みで股関節伸展保持不能であり,RTを開始できなかった.硬膜外ブロックをRT30分前に毎回実施することで股関節伸展可能となり,RTを予定回数終了し得た.MPSの治療は多角的アプローチが推奨されており,今回は内服治療と併せて早期に硬膜外ブロックを実施することで目標鎮痛を達成し,放射線治療を実施した.MPSの痛みにより股関節伸展が困難であるがために,RTを開始できなかった患者に対する鎮痛手段として,RT前に毎回,単回の硬膜外ブロックを実施することで予定通りRTを完遂できた.
著者
下川 美穂 久永 貴之 矢吹 律子 萩原 信悟 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.553-557, 2017 (Released:2017-08-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2

当院緩和ケア病棟では,2015年1月から2017年1月の間に5例の植え込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)を有するがん終末期の患者を経験した.ICD停止について,5例中4例でせん妄や認知症により患者本人の意思決定能力がなく,1例は意思決定能力はあったが,家族が患者本人の意思確認に同意せず,5例とも家族による代理意思決定であった.ICD停止の手順は,家族と死亡の2〜21日前に話し合いを開始し,1〜5回の面談を経て同意を得たうえで,死亡の3時間〜11日前に停止した.今回の経験を通じて,ICD停止に関して①意思決定に関する医療者の経験不足,②ICDが患者に与える苦痛に関する医療者の認識不足,③話し合いにかかる心理的負担や時間的制約,④患者と家族のICDに関する知識不足,という問題点が明らかになった.がん患者のadvance care planningの一環としてこの問題に対応していく必要がある.
著者
西森 久和 高下 典子 西本 仁美 露無 祐子 松島 幸枝 久山 めぐみ 福武 恵 井上 佳子 藤田 百惠 平田 泰三 堀田 勝幸 田端 雅弘
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.135-141, 2013 (Released:2013-03-08)
参考文献数
19

【目的】CVポート留置による合併症を回避することは, 抗がん剤治療, 緩和医療を受ける症例にとって重要である. 【方法】2006年10月~2011年12月に, 岡山大学病院 腫瘍センターでCVポートを介して外来化学療法を施行した大腸がん患者68例におけるCVポート関連合併症を後方視的に検討した. 【結果】CVポート関連トラブルを20例(29.4%) に認め, そのうちルート閉塞または逆血不可を15例に認めた. この15例中, 10例は逆血不可以外の合併症なく, 継続して抗がん剤投与が可能であったが, 残り5例はさらなる合併症のため, CVポートの入れ替えが必要であった. 鎖骨下静脈穿刺・左側静脈穿刺によるCVポート留置が, ルート閉塞のリスク因子であった. 【結論】CVポート関連合併症のうち, 特に逆血不可の症例に関して約1/3は潜在的にCVポートの入れ替えが必要な可能性があることを認識すべきである.
著者
三浦 篤史 篠原 佳祐 山本 亮 大塚 菜美 宮田 佳典 崎山 隼人
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.301-304, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

舌がんでは,腫瘍増大による嚥下機能低下から流涎を招き,Quality of Life を低下させることがある.一般的に流涎の対応として,水分摂取量の減量,抗コリン薬の投与などが行われるが,充分に流涎を抑制できない場合がある.今回,ブチルスコポラミン臭化物の持続静注では流涎の改善が認められなかった舌がん患者に対して,院内製剤であるスコポラミン軟膏を耳介後部の乳様突起付近に貼付したところ流涎の緩和が認められた.有害事象としては口渇を認めたが,問題になるほどではなかった.また,局所の皮膚炎を生じることなく使用できた.スコポラミン軟膏は持続注射よりも簡便であり,舌がん患者の流涎対策の一つになり得る可能性が示唆された.
著者
田所 学 高橋 美穂子 松下 久美子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.229-238, 2017 (Released:2017-06-29)
参考文献数
31

【目的】緩和ケア病棟実習における医学生の学びの内容と同病棟に対するイメージの変化を明らかにする.【方法】医学生20名を対象に質問紙調査を行い,Berelsonの手法により分析した.【結果】学びの内容として「患者・家族のQOLの向上を目的とした具体的なケア」「緩和ケアの概念・提供体制・効果に関する新たな気づき」「がん終末期における緩和治療の実際」「緩和ケア病棟の医療における位置づけ」「適切なコミュニケーションによる患者・家族とスタッフとの信頼関係の構築」「各職種の特徴とチームケア」「患者・家族に向き合うスタッフの姿勢」「看取りに立ち会えた学生の経験」「患者・家族の抱える思い」「がんの疾患特性とその脅威」「スタッフの悲嘆とメンタルケアの必要性」が抽出された.イメージは,否定的・静的から肯定的・動的へと変化した.【結論】医学生は患者・家族やスタッフとの直接的な関わりから基本的緩和ケアを学んだ.
著者
橋本 秀子 宮本 謙一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.207-210, 2007 (Released:2007-10-02)
参考文献数
10

薬剤師として1980年代にがん患者中心の病棟で臨床に密着した業務を展開する中で, 抗がん剤の副作用やがん末期の諸症状に苦しむ患者を目の前にし, 医師や看護師のがん患者への情報提供と彼らの意見を調査した. その後, 1996年と2005年にも同様の質問を行い, その変化に応じて薬剤師の患者への関わり方を探った. 1988年には72.7%の医師が早期がんでも病名告知しなかったが, 1996年には70%の医師が早期がんのみ病名告知するようになり, 2005年には100%の医師が, 進行度に関係なく病名を告知するとの回答を得た. しかし,「いつまで抗がん剤治療を続けるか」「終末期の症状緩和の技術が未熟である」といった新たな問題が生じており, 薬剤師がスタッフの中で独自の立場で主張することも必要となってきている.
著者
菅野 喜久子 木下 寛也 森田 達也 佐藤 一樹 清水 恵 秋山 聖子 村上 雅彦 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.131-139, 2014 (Released:2014-11-15)
参考文献数
28

東日本大震災後のがん患者の緩和ケア・在宅医療については, ほとんど調査がされていない. 本研究では, 震災時のがん患者の緩和ケアと在宅医療の実態を明らかにし, 今後の大規模災害に向けたシステムの提言やマニュアルの整備のための基礎資料を作成することを目的とした.被災沿岸地域の医療者53名に半構造化面接を行った. 結果より, がん患者の緩和ケア・在宅医療に対する医療者の経験は, 【がん患者への医療提供の障害】【津波被害や避難の際に内服薬を喪失した患者への服薬継続の障害】【ライフラインの途絶による在宅療養患者への医療提供の障害】【地域の医療者と後方医療支援や医療救護班との連携の障害】【医療者に対する精神的ケア】【原発事故地域の医療提供の障害】の6カテゴリーに整理された. 大規模災害に向けた備えの基礎資料となり, 災害時のがん患者の緩和ケア・在宅療養に関する問題やその対応方法について明らかとなった.
著者
垂見 明子 三松 早記 森田 達也 内藤 明美 坂本 康成 奥坂 拓志 清水 千佳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.301-305, 2016 (Released:2016-01-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2

終末期についての話し合いは患者家族のquality of lifeを規定する重要な要因である.本研究はがん治療医を対象とした質問紙調査の自由記述の質的分析から,終末期の話し合いにおける課題に関するがん治療医の意見を収集した.質問紙は864名に送付し490名から回答を得た.自由記述から合計420意味単位を分析対象とした.がん治療医が終末期の話し合いを行う際の問題として(1)患者家族の課題(【患者家族の個別性に対応することの難しさ】【病状理解の難しさ】)(2)医療者に起因する課題(【患者家族・医療者双方への精神的サポートの不足】【医療者間の考え方の相違】など)(3)システムと体制に関する問題(【時間・人的リソースの不足】【教育・研究の不足】など)が抽出された.本研究の知見は,今後緩和ケア医とがん治療医が共同してがん患者との終末期の話し合いを行う際の相互理解に役立つと考えられる.
著者
李 美於 新城 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.527-530, 2015 (Released:2015-06-17)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

本邦では,フェンタニル舌下錠,フェンタニルバッカル錠が,がん疼痛の突出痛に対して投与可能となった.しかし,どのような病態の患者,またどのような突出痛にフェンタニル粘膜吸収剤を投与するか,具体的な報告は少ない.フェンタニル粘膜吸収剤の投与を推奨できない症例を提示する.77歳,男性,直腸がんの胸椎転移に対して,フェンタニル貼付剤 12.5μg/時を投与中,突出痛には,化学療法による悪心,嘔吐があったため,フェンタニル舌下錠 100μgを投与した.強い突出痛に対して,フェンタニル舌下錠を初めて使用したところ,6時間意識障害をきたした.重篤な呼吸状態の悪化がなかったため,経過観察した.回復後の後遺症はなかった.定時投与するオピオイドが経口モルヒネ換算 30 mg(オキシコドン 20mg,フェンタニル貼付剤 12.5μg/時)の患者に対しては,フェンタニル舌下錠 100μgを投与しない方がよい.
著者
坂本 雅樹 林 祐一 今藤 裕之 高山 悟 可児 久典 大橋 純子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.531-534, 2015 (Released:2015-06-22)
参考文献数
20
被引用文献数
1

消化器がん患者では黄疸による皮膚掻痒感を訴える例が多く,さまざまな治療・ケアが提供されるが,症状緩和に難渋することも多い.進行がんによる黄疸が原因の皮膚掻痒症に対して,牛車腎気丸が有効と考えられた 2例を経験した.【症例1】68歳男性,胆管細胞がん.閉塞性黄疸による掻痒感が持続し,内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(endoscopic nasobiliarydrainage; ENBD)にて減黄しても掻痒感は軽減せず,種々の対症療法も無効であった.牛車腎気丸 7.5g分 3を投与開始し,睡眠が改善した.【症例 2】81歳男性,C型肝硬変,肝細胞がん.黄疸の進行により皮膚掻痒感が出現し,種々の治療は無効であった.牛車腎気丸を 5.0 g分 2で開始し,掻痒感 NRSが 10→3に減少した.黄疸による皮膚掻痒感に牛車腎気丸が有効であり,同様の症例に対して試してみてよい治療法と考えられた.
著者
平本 秀二 菊地 綾子 吉岡 亮 大津 裕佳 小東 靖史 後藤 容子 堤 ゆり江 平岡 眞寛 小野 公二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.514-517, 2015 (Released:2015-04-16)
参考文献数
10
被引用文献数
4

進行胃がんの出血や通過障害に対する緩和的治療には,外科的治療,内視鏡的治療があり,多くの報告があるが,緩和的放射線治療の報告は少ない.2006年4月~2014年3月の間に当院で非切除進行胃がんの患者の症状緩和目的に放射線治療を施行した11例について検討した.治療目的は止血8例,狭窄解除4例であった.止血奏効率は63%,狭窄解除奏効率は50%であった.止血奏効期間中央値,狭窄解除奏効期間中央値はそれぞれ103日,52日であった.全生存期間中央値567日で,照射開始後生存期間中央値は105日であった.症状緩和目的の放射線治療は,外科的治療や内視鏡的治療より効果発現までに時間を要するため,症例を選べば一定の効果が期待でき,低侵襲であるため,よい選択肢となる治療である.
著者
大西 佳子 細川 豊史 坪倉 卓司 深澤 圭太 上野 博司 権 哲 原田 秋穂 深澤 まどか 山代 亜紀子 谷口 彩乃 波多野 貴彦 田中 萌生 仲宗根 ありさ 岡田 恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.509-513, 2015 (Released:2015-04-16)
参考文献数
10
被引用文献数
1

転移性脳腫瘍による頭痛は,腫瘍による脳血管の偏位や頭蓋内圧亢進に基づく硬膜の緊張,痛覚神経が存在する頭蓋内部位の牽引などで生じる.また,腫瘍の髄腔内播種やがん性髄膜炎による髄膜刺激症状などによっても生じる.頭蓋内圧亢進による頭痛の治療は,通常,高浸透圧輸液とステロイドの投与により脳浮腫の軽減と頭蓋内圧を下げることで行うが,内圧が下がらず頭痛治療に難渋することも少なくない.今回,頭蓋内圧亢進に基づく頭痛に対し,高浸透圧輸液とステロイド投与が奏功せず,オピオイドの増量が奏功した2 症例を経験した.痛覚神経への浸潤に対してはオピオイドが有効であるが,頭蓋内圧亢進による頭痛に対してオピオイドが有効であるという報告は過去にない.高浸透圧輸液やステロイドで頭蓋内圧が下がらず頭痛のコントロールが不十分な際は,NSAIDs やオピオイドの投与あるいは増量で対処を試みることは臨床的に十分価値があると考える.
著者
森本 有里 新城 拓也 関本 雅子 東川 俊昭 新國 雅史 大石 麻利子 石川 朗宏 槇村 博之 置塩 隆 岡田 泰長 本庄 昭
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.120-124, 2015 (Released:2015-02-05)
参考文献数
11

【目的】高齢者福祉施設の看取りと終末期ケアの現状把握をするために実態調査を行った.【方法】神戸市内の高齢者福祉施設350施設を対象に質問紙調査を実施した.【結果】350施設のうち314施設(回収率89.7%)から回答を得た.看取りを実施している121施設(39%),看取りに対して取り組む意思がある151施設(48%),胃瘻造設した入居者がいる152施設(48%),点滴可能183施設(58%),医療用麻薬使用可能72施設(23%)であった.【結論】高齢者福祉施設のうち看取りを実施している所は半数に満たないことが分かった.また医療的処置として胃瘻,点滴は半数程度の施設で対応可能だが,医療用麻薬を使える施設は少ないことが分かった.
著者
森田 達也 井村 千鶴
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.116-126, 2013 (Released:2013-02-28)
参考文献数
14
被引用文献数
3 3 1

本研究の目的は, 緩和ケアに関する地域連携を評価する評価尺度の信頼性・妥当性を検証することである. 476名の医療福祉従事者を対象として25項目からなる「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」を開発した. 内的一貫性は良好であった. 因子分析により7因子(他の施設の関係者と気軽にやりとりできる, 地域の他の職種の役割が分かる, 地域の関係者の名前と顔・考え方が分かる, など)が同定された. Palliative care Difficulties Scaleの地域連携に関する困難感と有意な逆相関が認められた. 地域連携の全般的評価, 多施設多職種対象の研修会の参加回数, 困った時のサポートとなる人の数, 地域での臨床経験年数との間に有意な関連があった. 「緩和ケアに関する地域連携評価尺度」は, 緩和ケアに関する地域連携を評価する尺度となりうることが示唆された.
著者
宮原 強 小杉 寿文 仁田 亜由美 濱田 献 日浦 あつ子 森 直美 八谷 由貴 平川 奈緒美 佐藤 英俊 松永 尚
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.125-130, 2014 (Released:2014-11-11)
参考文献数
18

【目的】当院ではオキファスト®注(OXJ)の換算比として簡便な 「OXJ:モルヒネ注射剤:フェンタニル注射剤=1:1:1/50」 を用いているが, 妥当性を検討した報告はない. 【方法】OXJに切り替えたがん疼痛患者18例を対象に臨床的検討を行った. 【結果】OXJへの切り替え理由としては, 鎮痛効果不十分11例, 内服困難6例, 傾眠1例であった. 疼痛コントロール達成までの投与量調節に要した日数は平均0.6日であった. 鎮痛効果不十分例ではOXJ変更前後のnumeric rating scaleは3.3から1.1と有意な改善効果が認められ(p=0.007), 内服困難例では変更前後で同等の疼痛管理が得られた. OXJ変更による有害事象の悪化は認められなかった. 【結論】OXJへのオピオイオド・スイッチングに対し, 簡便な換算比を用いても, 臨床での疼痛コントロールや有害事象における問題は特に認められなかった.
著者
柴原 弘明 世古口 英 竹下 祥敬 鈴木 伸吾 森本 美穂 稲熊 幸子 森 陽子 工藤 壽美代 太田 由美 西村 美佳 植松 夏子 今井 絵理 西村 大作
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.523-528, 2013 (Released:2013-06-29)
参考文献数
10

【緒言】フェンタニル貼付剤による色素沈着の報告は現在までにみられない. 【症例】43歳, 男性. 直腸がん術後再発に対して, セツキシマブ+イリノテカン療法後, パニツムマブ+FOLFIRI療法を施行した. がん疼痛に対して, フェンタニル貼付剤(フェントス®)投与し, 再発部位に後方からの放射線療法を行った. 経過中, 胸部と腹部のフェンタニル貼付剤の貼付部位に色素沈着がみられた. 貼付中止後, 4カ月でほぼ消失した. 【考察】色素沈着の機序として, フェンタニル貼付剤による接触皮膚炎後の炎症後色素沈着である可能性が高い. 正確な機序の解明のためには, パッチテスト・皮膚生検が望ましい. 【結論】フェンタニル貼付剤投与時には, 色素沈着に留意する必要がある.
著者
栗秋 佐智恵 上村 智彦
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.118-123, 2014 (Released:2014-07-23)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

【目的】がん患者の臨死期の意思決定について検討した. 【方法】52例の診療記録, 半構造化面接による医師の意向をもとに, 臨死期の意思決定について分析した. 【結果】医師が病状説明した対象は52例中49例において家族・代理人で, 48例で家族・代理人が意思決定していた. 患者が臨死期の意思決定をしているのは4例だった. 話し合いから死亡までの日数中央値は4日だった. 患者が意思決定を行わなかった際の理由は, 病状悪化が最多だった. 臨死期の意思決定者にかかわらず, 全例でdo not attempt resuscitationが選択されていた. 15名中8名の医師が臨死期の話し合いを家族と行うと回答, 患者と話し合うと答えた医師はいなかった. 【結論】臨死期の意思決定は, 医師が患者より家族と話し合う傾向があること, 話し合いの時期が死亡時期に近いこともあって, 大部分の患者で家族が行っており, 全例がDNARの意向だった.