著者
花北 順哉
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.10, pp.674-681, 1997-10-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

腰椎椎間板ヘルニアの740症例に対する, microsurgical discectomyの経験をもとに,この病態におけるいくつかの問題点につき論じた.まず,腰椎椎間板ヘルニアの治療の原則は保存的療法であること,MRIにより脱出した椎間板へルニア塊が縮小,あるいは消失する症例が,かなり報告されるようになってきていることについて述べた.ついで,これらの知見を踏まえたうえでの手術適応につき述べた.腰椎椎間板ヘルニア摘出術については,まず,麻酔法につき述べ,ついで,下位腰椎椎間板ヘルニアに対する基本的手術操作のポイントにつき述べた.特殊な術式として,transdural approach,高位腰椎椎間板ヘルニアに対する手術法,外側型ヘルニアに対する術式のポイントにつき述べ,最後に再手術につき考察した.
著者
松本 理器 菊池 隆幸 山尾 幸広 中江 卓郎 小林 勝哉 下竹 昭寛 吉田 和道 國枝 武治 池田 昭夫 宮本 享
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.316-325, 2019 (Released:2019-06-25)
参考文献数
12

適切に選択された2種類以上の抗てんかん薬で単独あるいは併用療法が行われても, 1年以上発作が抑制されないてんかんは薬剤治療抵抗性てんかんと定義される. 全てんかん患者の30~40%を占め, 外科治療適応を検討することが推奨されている. 本稿では, 最近の診断技術の進歩も踏まえて, 部分てんかんのてんかん焦点診断のためにキーとなるてんかん関連領域を概説し, 実際の症例提示から, てんかん焦点の術前診断のプロセスを紹介する. 焦点関連領域の評価にはさまざまな検査法を行うが, 単独で焦点診断に至る 「万能な」 検査はなく, 各検査の特性・限界を理解して, 各種検査間の結果の整合性を検討しながら, 包括的に術前評価を行うことが重要である.
著者
森田 明夫 UCAS II研究者グループ
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.484-490, 2011-07-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
13
被引用文献数
16 10

目的:未破裂脳動脈瘤は無症候性疾患であり,治療合併症を最小限に抑える努力が必要である.日本における未破裂脳動脈瘤治療の詳細なデータを得るべくUCAS IIを開始した.中間成績を示す.方法:2006年に31施設からオンラインで前向き登録された1,059例を対象とした.登録時,3ヵ月,12ヵ月,60ヵ月の経過観察登録の予定である.全症例の詳細な画像データ,各登録時の生活の質(SF-8,SF-36,EQ5D),治療前後の高次脳機能(MMSE),診療開始後1年間の総治療費を計測している.結果:治療は558例に施行され,開頭術81%,血管内治療19%であった.重篤な合併症はmodified Rankin scale 2ポイント以上の低下が25例(4.5%)に認められ,MMSEの24以下への低下を含めると5.3%であった.治療予後はサイズ,部位,クモ膜下出血既往により有意に影響された.SF-8,SF-36,EQ5Dで測定された生活の質は術前後に大きな変化は認められなかった,治療に要する費用は1年間で約200万円であり,血管内治療が有意に高額であった.結語:日本における未破裂脳動脈瘤の治療成績はおおむね良好である.しかし大型動脈瘤や椎骨脳底動脈瘤の治療成績はいまだ不良であり,今後さらなる治療技術の向上およびリスクコミュニケーションの改善が必要である.
著者
金村 米博 市村 幸一 正札 智子 山崎 麻美 渋井 壮一郎 新井 一 西川 亮
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.436-444, 2015
被引用文献数
1

 近年, 髄芽腫の分子遺伝学的診断および国際コンセンサス4分子亜群分類 (WNT, SHH, Group 3, Group 4) は, 腫瘍特性解析, 腫瘍分類, 臨床的リスク評価, 新規治療法開発に大きなブレークスルーを引き起こしている. 国内では, 日本小児分子脳腫瘍グループ (JPMNG) が組織され, 全国から試料を収集し, 国際的コンセンサスに基づく小児脳腫瘍の遺伝子診断実施体制の構築が開始されている. 髄芽腫の分子遺伝学的診断は, 今後の診療および研究において, 重要かつ不可欠な手法になると思われ, 本邦のJPMNG研究は, 現在いまだに完治が困難な髄芽腫の診療水準のさらなる向上と予後改善に大きく貢献し得ると考える.
著者
泉原 昭文
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.8, pp.605-615, 2010-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
60
被引用文献数
1 1

温帯から亜寒帯に属する地域において,クモ膜下出血発症の周期性,群発性あるいは気象との関連性が指摘され,環境因子の影響が示唆される.本検討では亜熱帯に属する八重山諸島における13年間のクモ膜下出血患者94例を対象として,発症時活動状況を含む環境因子からの疫学的分析を行った.本邦の中では発症年齢(平均57.3歳)がやや低く,男女比約1:2で女性の比率がかなり高いが,年間発症率(年齢性別調整17.4)は平均的であった.季節別では秋に多く,月別では8月に多かった.曜日別では月曜に多く,時間別では18:00〜19:59に大きなピークを認め,6:00〜7:59に小さいピークを認めた.また0:00〜1:59と4:00〜5:59に少なかった.台風最接近日前後3日以内ではそれ以外の時に比べて約1.8倍多かった.生活・労働時発症が多かった.無・軽負荷例で周期性および台風接近との関連性がより明瞭であった.
著者
梶原 基弘 花北 順哉 諏訪 英行 塩川 和彦 斎木 雅章 織田 雅 中島 信明
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.465-468, 2001-07-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

外傷性後腹膜下腔出血は死亡率の高い疾患であり, 骨盤骨折はその原因としてよく知られているが, 腰動脈損傷によるものはきわめて稀である.症例は56歳, 男性で, 交通外傷にて腰椎圧迫骨折をきたし, 出血性ショックにて搬送された.輸液負荷にもかかわらず血圧低下, 貧血の進行がみられたために, 腹部CTを繰り返したところ, 受傷後6時間目のCTにて腰椎レベルで後腹膜下腔血腫を認めた.腹部大動脈造影にて第2, 3腰動脈から造影剤漏出像が認められた.スポンゼルおよびプラチナコイルを用いて選択的腰動脈の塞栓術を行い, 臨床症状が改善した.腰動脈は椎体辺縁を走行し椎体内や腸腰筋へ分枝を出している.圧迫骨折や腸腰筋の断裂によりこれら血管が損傷され後腹膜下腔に血腫を形成すると考えられた.後腹膜下出血は開腹手術による止血が困難であり, 塞栓術は非常に有効な手段であった.
著者
本望 修
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.574-579, 2011-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
37

われわれは,1990年代初期から,各種細胞(幹細胞を含む)を用いた神経再生治療へ向けた基礎研究を継続してきた.近年は,骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)をドナー細胞とした神経再生研究に注目し,MSCは経静脈内投与で脳梗塞に対して著明な治療効果が認められるという基礎研究結果を多数報告してきた.これらの基礎研究結果に基づき,2007年1月より自己血清で培養した自己MSCを脳梗塞亜急性期の患者に対して静脈内投与を行い,安全性と治療効果について検討した.
著者
和久井 大輔 長島 梧郎 植田 敏浩 高田 達郎 田中 雄一郎 橋本 卓雄
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.138-142, 2012-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1 4

頭蓋骨固定用チタンプレートにより術後頭皮断裂および美容上の問題が生じた3例を報告する.1例目は68歳男性,開頭術2年後に頭皮にチタンプレートが露出し,これを除去し,bioabsorbable polymerによる頭蓋形成術を施行した.2例目は74歳女性,開頭術11年後に手術部位感染でチタンメッシュによる頭蓋形成術を施行した.その後メッシュは表皮より透見され,美容上の問題がある.3例目は65歳女性,開頭術6年後に頭皮にチタンプレートが露出した.骨削除・プレート除去術を施行した.頭皮断裂の主原因はチタンによる頭皮への刺激の他,皮膚切開に伴う皮膚脆弱化や骨欠損部への頭皮陥凹と思われ,チタンプレートによる頭蓋形成で頭皮断裂の可能性がある症例には,bioabsorbable polymerの使用も考慮するべきと考えられた.
著者
湯澤 泉 川野 信之 鈴木 祥生 藤井 清孝 伊藤 洋一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.364-369, 2000-05-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

東南アジアなどに渡航歴を有する46歳男性が, 渡航先にて脳腫瘍を指摘されたため, 帰国後, 当院を受診した.主訴は頭重感であり, 神経学的には異常を認めなかった.CTとMRIでは左側頭葉皮質下に孤発性の小嚢胞を認めた.外科的に摘出された嚢胞は有鉤嚢尾虫の特徴を備えていた.近年, 本邦においては孤立性の脳有鉤嚢尾虫症が増加しており, 日常診療において孤立性嚢胞性病変を認めた場合, 本疾患を念頭において鑑別診断する必要がある.
著者
森田 明夫 村井 保夫 木村 俊運
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.10, pp.812-819, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2

Occipital transtentorial approach (OTA) は, 中脳背側, 松果体, 小脳上面の腫瘍等の病変にアクセスする基本的アプローチの一種である. 本稿では本アプローチの基本についてまとめる. OTAは視野が広く, 特に下方へ伸展する病変への対応に優れている. 一方で術後短期間または永続的な視野障害をきたすことがある. これを回避するためには, まず静脈損傷を避けるアプローチ側を選択する. そのうえで髄液圧を減らし, 後頭葉を広く剝離し, 脳表を十分保護しつつ愛護的に後頭葉を圧排しテント面に至る. 手術中視覚誘発電位モニターなどが有用である. その他中脳背側への障害, 静脈損傷などは重度な障害をきたし得るので要注意である. 術前の画像評価を徹底して行い, 適切な解剖学的知識, 手技によって安全な手術を心がけることが重要である.

1 0 0 0 OA Neuromodulation

著者
深谷 親 山本 隆充
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.137-142, 2016 (Released:2016-02-25)
参考文献数
20

機能的神経疾患の原因を考えるうえで皮質-線条体-視床-皮質ループ (CSTCループ) という概念が注目されている. 大脳皮質から大脳基底核, 視床に至る経路にそれぞれ運動, 認知, 情動に関する回路が近接して存在し, 連携して活動しているという考えである. このループの機能障害が関与していると考えられる疾患として, パーキンソン病, ジストニア, 強迫性障害, トゥレット症候群などが挙げられる. これらの疾患では, 運動, 認知, 情動のどの回路が主に障害されているかで疾病としての表現型も異なってくる. 脳深部刺激療法のターゲットは, CSTCループのいずれかの部位に設定されることが多い. したがって, 運動, 認知, 情動といった機能を個々に切り離して治療することは難しい. パーキンソン病に対する視床下核の刺激により情動面の変化が生じることがあるのはよく知られている. こうした現象は, 健常者においても気分のよいときには行動も快活になり, 気分が落ち込んでいる時は頭も働かなくなるといった経験からも理解できるであろう. CSTCループを基盤とした考えは, 脳深部刺激療法の理論背景となるだけではなく, 最前線の臨床の場でも役立つ可能性が高い. 運動には, 高い認知症予防効果やうつの改善効果があり, パーキンソン病の進行を遅らせることが知られている. また前向きで安定した情動は不随意運動を改善し, 運動療法が痛み認知を改善させることも報告されている.
著者
深谷 親 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.347-352, 2004-05-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

凝固術においては,最少の副作用で最大の効果が得られる最適の標的部位を限局性に特定することが,その基本的な戦略となる.しかし,脳深部刺激療法(deep brain stimulation : DBS)では,必要な範囲の刺激が行えるように電極を配置することが基本的な戦略である.この戦略では,最適な部位が限局性に存在するという前提は必要とならない.したがって,凝固術とDBSでは異なる工夫が必要となる.振戦に対する凝固術では,主として視床腹中間核の腹外側部が最適の標的部位とされてきた.これに対し,振戦に対するDBSでは,視床腹吻側核から腹中間核にわたる広い範囲の刺激ができるように電極を配置したほうが,良好な効果が得られる.そのためには(1)前後方向では,DBS電極をあまり垂直にしない,(2)内外方向では,DBS電極をあまり外方に傾けない,(3) dual-leadDBSを活用する,などの工夫をすることが重要である.
著者
星田 徹 榊 寿右
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.419-429, 2003-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
25

難治てんかん手術に必要な術前および術中検査について述べる.病態を知るための最初の情報は病歴聴取である.内側側頭葉てんかんは,乳幼児期に複雑型熱性けいれんを有することが多い.もっとも重要な検査は,脳波や脳磁図をはじめとする神経生理学的検査である.非侵襲的検査では,脳波ビデオモニタリングが基本となる.発作時脳波と症状を記録し,夜間の間欠陥異常波も捉えやすい.焦点を示す発作症状(笑い発作,激しい身振り自動症など)や側方性症状(同側性自動症と対側ジストニア肢位など)が重要である.てんかん発作波から双極子追跡法でてんかん焦点を措定する.次に画像検査を実施する. CT. MRI, MRスペクトロスコピー,PET.間欠時と発作時のSPECT,近赤外線脳血流測定法などの検査を行う.MRを用いた扁桃体海馬体積測定は,内側と外側側頭菓てんかんや全般てんかんとの鑑別が可能となる,MRで器質性異常を認めない場合や術前検査結果に不一致があれば,頭蓋内電極記録を行い正確なてんかん焦点を同定する.個々の患者で皮質電気刺激を用いて,焦点周辺の脳機能を知ることにより,術後の合併症を最小限にすることができる.術前に焦点を正確に同定し,周辺の脳機能を評価のうえ,焦点すべてを確実に切除すれば,術後に発作を十分抑制することができる.
著者
橋本 尚美 山根 冠児 沖井 則文 石之神 小織 恩田 秀賢 田路 浩正 花谷 亮典
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.525-530, 2009-07-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3 3

特発性脳脊髄液減少症には,数週間の安静や点滴による治療を行い,非改善例に自家血硬膜外注入療法が適応される.今回,特発性脳脊髄液減少症に対する自己血注入療法後5日目に症状が再発し,その後,慢性硬膜下血腫と昏睡を生じた症例を経験した.意識障害に対しては保存的な対応が可能であったため,再度自己血注入療法による脊髄液減少症の治療を先行した後に,穿頭洗浄術を行い症状の改善を得た.髄液漏の再発に伴い,急激な脳圧変化が生じ,硬膜下血腫の増悪や意識障害をきたしうる.さらには検査時の腰椎穿刺が頭蓋内環境の変化を誘発する可能性も考慮する必要があり,初回治療により症状が改善した後にも十分な観察が必要である.
著者
小野 純一 山浦 晶
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.128-134, 1994-03-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
4 5

頭蓋内椎骨脳底動脈の解離性動脈瘤50例を出血例と非出血例の2群に分類し,臨床的特徴,血管撮影所見および長期的転帰について検討した.年齢・性差では非出血例は若年男性に多く,解離部位は出血例では椎骨動脈に多いという特徴を認めた.また血管撮影所見の経時的変化では非出血例で血管の形状が改善する例が多い傾向を示した.長期的転帰は出血例ではくも膜下出血の重症度と相関した.外科的治療群では死亡例はわずか1例であり,また保存的治療群でも軽症例では全例転帰良好であった.また非出血例の長期的転帰は外科的治療群・保存的治療群ともに良好であった.
著者
新谷 好正 伊東 雅基 井戸坂 弘之 中林 賢一 卯月 みつる 新谷 知久 早瀬 知 馬渕 正二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.889-896, 2014 (Released:2014-11-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

脳動脈瘤の開頭手術において, クリッピングのために瘤の減圧を要する場面に時折遭遇するが, 母血管の一時遮断が困難な例がみられる. そのような例に房室伝導を強力に抑制する作用をもつadenosine triphosphate (ATP) の急速静注による短時間の循環停止 (transient cardiac arrest : TCA) 法が有効である. 経験した全例において短時間の心停止に伴う動脈瘤の著明な減圧が得られ, 安全なクリッピングに大きく寄与した. 合併症はみられなかった. TCA法に習熟した麻酔科医との緊密な連携が不可欠であるが, 本法は母血管の一時遮断に並んで考慮すべききわめて有用な方法である.
著者
キッティポン スィーワッタナクン
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.505-514, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
12

開頭手術と同様に血管内治療脳神経外科領域において正確な血管解剖の知識が安全な治療に必要である. 特に治療そのものが正常血管に影響を与える可能性が高い硬膜動静脈瘻や頭蓋底腫瘍の塞栓術の場合, 脳血管撮影では確認しにくい血管吻合や脳神経を栄養する血管があり, 正確な解剖の知識が要求される. ここでは特に血管吻合が豊富である眼窩領域, 海綿静脈洞領域, 頭蓋頚椎移行部領域について脳神経外科医が最低限身につけておくべき血管解剖を解説する.
著者
秋山 恭彦 宮嵜 健史 萩原 伸哉 中右 博也 神原 瑞樹 吉金 努 辻 将大 藤原 勇太 内村 昌裕 永井 秀政
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.728-737, 2017 (Released:2017-10-25)
参考文献数
32

頚動脈ステント留置術は, 全身性動脈疾患であるアテローム性動脈硬化症に対し, 頚部局所のアテロームを制御する治療で, 低侵襲であるために, 周術期の心筋梗塞をはじめとする全身性合併症を低く抑えることが可能である. しかし, 治療本来の目的は脳梗塞予防であるため, 現行の治療は, 周術期の脳虚血イベントを十分に制御できているとはいえない. 本稿では, これまでの頚動脈ステント留置術と頚動脈内膜剝離術のランダム化比較試験および, そのサブ解析の結果を概説し, 本治療法の現状と課題を周術期脳虚血合併症に焦点をあて整理し, 次世代への治療の進歩を探る.
著者
永井 正一 栗本 昌紀 西嶌 美知春 遠藤 俊郎 高久 晃
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル = Japanese journal of neurosurgery (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.450-453, 1996-11-20
参考文献数
8
被引用文献数
2

開頭術後の合併症としての遠隔部脳内血腫は報告が少なくまれである.われわれは脳動脈瘤術後にテント上下に多発性の遠隔部脳内血腫が発生した1症例を経験したので報告する.原因として,髄液排除による静脈環流障害および術中術後の血圧変動が考えられた.過度の髄液排除を避けることはもとより,術中術後の血圧管理に最大限の注意を払うことが必要と思われた.
著者
徳永 浩司
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.827-833, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
50
被引用文献数
2

頚動脈狭窄症に対しては, 1990年代以降の大規模ランダム化試験によりCEAの有効性が確立され, その後CASが導入され, CEAとの比較試験が行われた. 現在も各試験の長期的追跡と, 最良内科的治療を含む新たな試験が進行中である. 実際の臨床現場では, 患者の年齢, 症候, 治療時期, 基礎疾患, 過灌流リスクなどの背景, および大動脈弓形状やプラーク性状, 対側閉塞などの解剖学的特徴と術者の技量を勘案して治療手段を選択している. 最近はMRI, CTA, エコーなどの頚動脈イメージングで脳卒中リスクを層別化する動きが盛んである. 本稿ではCEAかCASかの治療手段選択にあたって理解すべき, 上記の項目に関する知見について概説する.