著者
高見澤 幸子 森野 道晴
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.705-711, 2015 (Released:2015-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2

難治性てんかんに対する迷走神経刺激療法は, 比較的手術手技が容易であるが, 迷走神経の正確で迅速な同定が重要である. 迷走神経とその周囲の総頚動脈 (CCA) および内頚静脈 (IJV) の解剖学的位置関係にはバリエーションが多く, 症例によっては迷走神経の同定に難渋することがある. われわれは, 頚部迷走神経の走行をCCA, IJVとの位置関係から5つのタイプに分類した.  Type 1 : IJV内側でCCA腹側, Type 2 : IJV内側でCCA外側, Type 3 : IJV内背側でCCA腹側, Type 4 : IJV内背側でCCA外側, Type 5 : CCA背側.  最も頻度が高いのはType 3である. Type 1から5になるにしたがい, 手術手技が煩雑になり, 難易度も高くなる. このような解剖学的バリエーションを念頭に置いてVNS手術に臨むことは, 初心者でも安全で正確な手術を行ううえで効果的である.
著者
亀山 元信 小沼 武英 昆 博之
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.12, pp.816-821, 2004-12-20
被引用文献数
3

全国的なスポーツ外傷データベースの構築は重症スポーツ外傷の発生予防の見地から重要な意義があり,本邦でもその整備が期待される.直接的スポーツ外傷による死亡は頭部外傷に,後遺症を残す重症例は頸部外傷に多く発生している.特に重症頭部スポーツ外傷予防のために脳震盪の意義を再確認すること.second impact syndromeを防止するために脳震盪後の試合復帰についての統一的なガイドラインの導入が早急に望まれる.またスポーツ外傷だけでなく一般外傷においても,本邦における外傷初期診療ガイドライ(JATEC)に準じて初療からの管理が行われるべきである.
著者
櫻井 卓 上山 憲司 大里 俊明 荻野 達也 遠藤 英樹 御神本 雅亮 高平 一樹 浅野目 卓 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.748-753, 2016
被引用文献数
3

<p> 慢性硬膜下血腫は脳神経外科領域で遭遇する機会の多い疾患であり, 治療法としては穿頭術が標準的な治療となっている. 血腫の排液により症状の改善を認め, おおむね良好な成績を得ているが, 術後血腫の再発をまれならず経験する. 今回当院で経験した慢性硬膜下血腫の再発危険因子を検討し文献的考察を加えて報告する.</p><p> 2014年1月1日~2015年7月31日に当院で手術を施行した慢性硬膜下血腫187症例 (222手術例) を対象とし, 患者因子, CT所見について後方視的に比較した.</p><p> 再発は187症例中26症例に認め, 再発率は13.9%であった. 統計学的に有意差 (p<0.05) を認めた再発危険因子は, 患者因子では年齢, 高血圧の既往, 抗凝固薬の内服であった. 術前CT所見では, 血腫量, 正中偏位, ニボーであった. 術後CT所見ではday 1, 7での血腫縮小率であった.</p><p> 再発を起こす例は術後1週間で血腫がすでに増大していることが多く, 術後翌日から1週間後にかけての血腫増大または増大率により, 再発を早期に予測できると考えられる.</p>
著者
常盤 嘉一 倉田 彰 宮坂 佳男 橘 滋国 矢田 賢三 大和田 隆 菅 信一 向野 和雄 高木 宏
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.128-132, 1993
被引用文献数
2

視野障害をきたす特徴的な水頭症の所見を得るために,後頭蓋窩腫瘍にて閉塞性水頭症をきたした28例の画像を検討した.視野障害群(n=6)と視野正常群(n=22)で,計測を含めたCTの検討を行った.第3脳室幅の著明な拡張と,同脳室の著明な下方進展が視野障害をきたす特徴的な所見であった.すなわち,両群間で,側脳室の拡大の程度に有意差はなかった.視野障害群では第3脳室幅(平均12 mm)が有意に嵩値を示した.また第3脳室の著明な下万伸展(トルコ鞍内への陥入)例が視野障害群(4/6例)で有意に多かった. MRIは2例中1例で視交叉と第3脳室および内頚動脈との関係を明瞭に描出した.今後,視野障害の責任病変の把握に有用となることが期待された.
著者
梶 龍兒
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.310-315, 2005-05-20

種々の不随意運動は大脳基底核, 小脳, 大脳皮質, 脊髄などを含むフィードバックループの障害と考えることができる.本論文では大脳基底核とそれを含む運動ループの生理的な役割と疾患, 特にパーキンソン病とジストニアにおける異常について詳説する.このループ内では運動に関係した知覚入力のみが処理されていると考えられるが, その選択(gating)に異常をきたすと運動に不必要な筋の収縮がみられ, ジストニアなどの不随意運動をきたす.パーキンソン病ではこの感覚入力と運動出力のgain control (scaling)の異常が起こり運動が過少になる.このような知覚情報処理が基底核の生理と病理できわめて重要な意味をもっている.
著者
平沼 直人
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.506-512, 2016 (Released:2016-06-25)
参考文献数
6

未破裂脳動脈瘤コイル塞栓術死亡事件を例に, 医療訴訟について紹介し, 脳神経外科領域において医療水準論をどう捉えるか考察し, 慢性硬膜下血腫除去術後のドレナージチューブ抜去に伴う大量出血のような合併症を取り上げ, 説明こそ最大の防御であることを結論とした.
著者
大同 茂 難波 克成 小野 恭裕 田宮 隆 大本 堯史
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.796-800, 2001-12-20
被引用文献数
1

9歳男児, 思春期早発症を伴った大脳基底核部HCG(human chorionic gonadotropin)-producing germinomaの1例を報告した.頭痛・嘔吐・左不全片麻痺・性早熟を主訴に近医を受診し, CTおよびMRIで右基底核部に腫瘍を認め, 当院紹介となった.入院時, 血清HCG値は90mIU/mlと上昇していた.定位的腫瘍生検を行い, 病理組織はgerminomaで, 血清HCG値の軽度上昇を認めることから, HCG-producing germinomaと診断した.化学療法(ICE療法)および放射線療法(拡大局所照射24Gy)を実施した結果, 血清HCG値は正常化し, 画像上, 腫瘍はほぼ消失した.本症例では, 腫瘍から産生されるHCGのLH作用により思春期早発症をきたしたものと考えられた.
著者
川又 達朗 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.666-673, 2009-09-20
被引用文献数
4

スポーツ医学の分野では,脳振盪が注目されており,予防を中心にさまざまな研究が行われている.軽症の頭部外傷である脳振盪の予防が強調されるのはなぜであろうか.スポーツによる脳振盪の特徴は,繰り返して起こしやすいこと,軽症であるがゆえに診断,重症度の評価と競技への復帰時期の判断が難しいことである.繰り返す脳振盪は,頭部外傷後脳症や脳振盪後症候群などを引き起こす.尚早な復帰はセカンドインパクト症候群や急性硬膜下血腫など,重篤な頭部外傷の発生につながる可能性がある.脳振盪を起こしやすいスポーツ環境は,急性硬膜下血腫による死亡率が高いことも報告されている.スポーツ頭部外傷,特に脳振盪について現状の考え方をまとめる.
著者
溝口 昌弘
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.366-377, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
93

TCGAに代表される大規模癌ゲノム解析により, 体系的かつ包括的なゲノム解析が推進され, グリオーマにおいて新たな知見が続々と報告されている. ゲノム, トランスクリプトーム, エピゲノムといった複層的な解析により, その全体像が明らかとなりつつある. 次世代シークエンサーに代表される, 近年の技術開発に伴い, その解析速度は飛躍的に向上し, 大量のゲノムデータが公開されるとともに, その複雑さも明らかとなった. 本稿では膠芽腫を中心に, これまで明らかとなった知見を総括し. 現時点での問題点と今後の課題について考察した.
著者
中川 俊男 端 和夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.341-350, 1995-07-20
被引用文献数
11

1988年3目から開始した脳ドック600例中,36例(6.0%)に37個の無症候性未破裂脳動脈瘤が発見された.初期の370例に施行したIA-DSAと最近の230例に施行したMRAにおける発見率の差はなかった.発見された動脈瘤は,94%が10mm以下で破裂例に比べ前交通動脈瘤が少なく,内頸動脈瘤,特にC2-3,C3部瘤が多いことが判明し,前者に比較し後者が破裂しにくい可能性が示唆された.また,2親等以内にくも膜下出血の家族歴をもつ人では,15.5%という高率(p<0.01)に未破裂脳動脈瘤が発見された.37個のうら33個が手術適応があるとしたが,インフォームド・コンセントの結果,26例26個の動脈瘤に対して根治手術(neck clipping)を施行した.手術死亡率0%,手術罹病率は嗅覚減退の1例(3.8%)のみであった.今後,手術適応のない症例の取扱いなど問題点を克服していくことができれば,有効なくも膜下出血の予防をすることができると思われた.
著者
田中 秀一 川西 昌浩 加茂 正嗣 西原 賢太郎 山田 誠 横山 邦夫 伊藤 裕
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.200-206, 2011-03-20

骨粗鬆症性椎体圧迫骨折では,圧潰椎体の後壁が脊柱管内に突出して脊柱管狭窄をきたし,腰痛に加えて神経症状を呈すことがある.今回,本病態の7症例(平均74歳)に対し低侵襲治療を目的に,一期的に椎体形成術と後方除圧術を施行し短期治療成績を検討した.術後,腰痛は全例で軽快し,JOA scoreは術前10.6から術後20.3,椎体高は前方と中央で有意に改善した.歩行不能であった3例とも歩行可能となり,跛行は4例中3例で消失した.こく短期間の検討では,同法は低侵襲に骨折椎体の前方支持性と神経症状,腰痛を改善できた.同法の有効性を論じるには症例の蓄積と長期経過観察が必要だが,特に固定術が躊躇される症例で治療オプションとなる可能性がある.
著者
前田 剛 春山 秀遠 山下 正義 大野 奈穂子 石崎 菜穂 長谷川 一弘 田中 茂男 渋谷 諄 小宮 正道 牧山 康秀 秋元 芳明 平山 晃康 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.517-522, 2006-07-20
被引用文献数
4

スポーツによる顎顔面骨骨折は,交通事故,転落・転倒に次いで3番目に多く,10〜20歳代の男性が大多数を占めた.種目では野球/ソフトボールが最も多く,次いで空手,サッカー,ラグビー,ボクシングの順であった.受傷原因は,格闘技においては全例が打撃を含めた対人衝突であったが,球技においても大多数が対人衝突による受傷であった.骨折の好発部位は下顎骨体部であり,多発骨折例では下顎骨体部と対側の角部との骨折が最も多く認められた.スポーツによる頭蓋顎顔面骨骨折の特徴を十分理解したうえで,マウスガードやフェイスガード付ヘルメットなど各種スポーツの特性にあった予防対策の検討を行うことが必要であると考えられた.
著者
斉藤 厚志 成島 浄 松村 明 目黒 琴生 能勢 忠男
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.472-477, 1995-09-20

肝硬変を伴った非外傷性脳出血9症例について臨床的に検討した.男性が7例と多く,肝硬変の原因はC型肝炎ウイルスが4例と多かった.脳出血の部位は,大脳皮質下出血が4例で最も多かった.術前の血小板数は,全例で底下しており,PT・APTTを術前に測定できた6例中,PT延長を2例に認めた.開頭血腫除去術が2例に行われたが,出血傾向による合併症を生じた.穿頭血腫ドレナージ術は3例行われ,いずれも補充療法を併用し,術後経過は良好であった.長期経過は,肝不全,食道静脈瘤破裂などの肝硬変に直接起因する死亡例が3例あり,不良のものが多かった.独歩退院は,皮質下出血に対する穿頭血腫ドレナージ術後の2例のみであった.
著者
大島 まり 石上 雄太 早川 基治
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.710-715, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
10

脳動脈瘤の発症, 成長, 破裂は, 血流によって引き起こされる力学的刺激が重要な役割を果たすことが指摘されている. 力学的刺激には, 圧刺激, 進展刺激, ずり刺激の3つが挙げられ, その中でも特に壁面せん断応力は内皮細胞に影響を与え, 脳動脈瘤を考える際に重要な力学的刺激といわれている. 本研究は, これらの力学的刺激を定量的に捉えるために, 医用画像や計測データから得られる患者の血管形状に対して数値解析を適用し, 患者個別の血行動態の情報を得るとともに予防や診断を生かすことのできる支援システムの構築を目指している. 本論文では, 血液の流体力学 (血行力学) や患者個別のシミュレーションの概説とともに, より生体に近い現象を再現するための末梢血管や血管壁の弾性の影響を考慮したマルチスケール血流—血管壁の数値解析について紹介する.
著者
岩月 幸一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.452-458, 2013 (Released:2013-06-25)
参考文献数
61

完全脊髄損傷慢性期に対する嗅粘膜移植法においては, 運動機能の部分的回復およびそれに伴う随意性の筋電図の出現が報告されている. しかし筋電図の出現は, 電気生理学的に皮質脊髄路の再構築を証明するものではない. われわれは完全脊髄損傷慢性期患者4名に対し本法を施行したが, 4例中2例において6カ月後より運動機能の改善がみられ, うち1例では装具を用いた立位保持や歩行器を用いた歩行が可能となった. 4名いずれの患者においても, 日常生活上何らかの運動機能改善がみられた. また1例において, 大脳運動野の経頭蓋磁気刺激により下肢筋において運動誘発電位が認められ, 錘体路の接続性を世界で初めて電気生理学的に明らかにした.
著者
福元 雄一郎 師田 信人 塩田 曜子 森 鉄也
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.581-588, 2014 (Released:2014-07-25)
参考文献数
25

ランゲルハンス組織球症 (LCH) は中枢神経晩期合併症をきたし得る比較的まれな疾患である. われわれは, 2005年3月∼2010年9月までの間に当科で手術を施行したLCH 14例の臨床的特徴について後方視的に検討した. 多くは有痛性の緩徐に増大する頭部腫瘤で発症し, 化学療法を施行した13例中2例で再燃した.  LCHには多発・再燃例があるため, 全身検索が必須である. また, 頭蓋病変では中枢神経晩期合併症の防止が重要である. 約半数が多臓器に発症し, 化学療法を行ったにもかかわらず2例で再燃したことからは, 外科単独治療の危険性が示唆される. LCHの治療では小児腫瘍専門医との共同診療が推奨される.
著者
今井 邦英
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.801-806, 2001-12-20
被引用文献数
2

2個の動脈瘤が相接して生ずるいわゆるkissing aneurysmsの報告例は稀である.特に同一内頸動脈に発症したものは, 渉猟し得るかぎり14例であった.kissing aneurysmsにおいて手術前の血管撮影では, 確定診断を得ることは必ずしも容易ではなく, 多房性の1個の動脈瘤と誤認する場合がしばしばある.また, いずれの報告においても, 動脈瘤同士の癒着がみられ, その剥離に際し高頻度に術中破裂をきたしている.特に脳血管攣縮を呈している場合, 術中破裂に伴う親血管の遮断は術後の高度な神経脱落症状の原因となり得る.前脈絡叢動脈の温存にも細心の注意を払うべきである.したがって, 自験例の反省も含めて, 慎重な剥離操作と迅速な手技, 術前の的確な血管撮影読影の必要性を指摘し報告した.
著者
山木 哲 近藤 礼 長畑 守雄 伊藤 美以子 齋藤 伸二郎 佐藤 慎哉 嘉山 孝正
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.885-889, 2012 (Released:2012-11-22)
参考文献数
12

総頚動脈閉塞症 (CCAO) に対し頚部頚動脈内膜剥離術 (CEA) を行うことはまれであるが, 今回, 大動脈炎症候群に合併したCCAOに対しCEAを施行し良好な結果を得ることができた1例を経験したので報告する. 症例は58歳女性で一過性脳虚血発作にて発症した. 大動脈炎症候群によるCCAOを認めたが, 神経放射線学的検討にて術前に閉塞部分はごく限局していることが診断しえたためCEAによる血行再建を行った. 本例のごとく閉塞が限局しその近位部および遠位部の開存が術前に確認できる場合には順行性の血行再建が行えるCEAは有効な方法である.
著者
定藤 規弘
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.318-324, 2014 (Released:2014-04-25)
参考文献数
11

従来, 子どもの発達過程を観察することによって得られてきた社会的行動特性の神経基盤が, 機能的磁気共鳴画像 (機能的MRI) を用いた研究の展開によって明らかになりつつある. 自他同一性から自他区別, 共感と心の理論の発達を経て向社会行動 (利他行為) へ至る, というモデルに基づき社会能力の発達過程を解明する試みについて紹介する. 特に人間の利他的行為において社会的承認 (褒め) が重要であること, そしてそれが基本的報酬や金銭報酬と同様の神経基盤を持つことが明らかとなった. ミクロからマクロレベルに至るまで各階層で進行している神経科学の成果を人文諸科学と結びつける結節点としてのイメージング研究の重要性を論ずる.