著者
多田 耕太郎 寺島 晃也 中村 優 鈴木 敏郎
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.85-91, 2012 (Released:2013-10-08)

畜産副産物である豚皮を有効利用するため,膨化したスナック様食品へ加工する方法の開発を試みた。その結果,脱毛した豚皮を100℃の熱水に60分間浸漬することにより皮の形状を保持したまま脱脂と豚皮組織の脆弱化を図ることができた。脱脂後の豚皮は80℃で4時間通風乾燥し,水分を約2%まで減少させた後,200℃でフライヤーを用いて油揚あるいはパン用オーブンを用いて焙焼することにより顕著に膨化した。膨化した豚皮は従来の農産物を主原料としたスナック類とは異なり,タンパク質が多くコラーゲンを豊富に含み,さらに焙焼したものは低脂肪でカロリーが抑えられていた。官能評価は油揚あるいは焙焼で膨化した豚皮のいずれも良好であった。本結果から,これまで低未利用状態にあった豚皮を有効利用した新規な食品を,食品添加物を用いずに一般的な食品加工装置で製造できることが明らかになった。
著者
本間 裕人 数岡 孝幸 徳田 宏晴 中田 久保 中西 載慶
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.189-198, 2013 (Released:2014-03-06)

ビールの抗酸化活性について,スタイルごとの品質特性を明らかにするため,様々なスタイルのビール類のDPPHラジカル消去能,スーパーオキシド消去能を測定し比較を行った。その結果,DPPHラジカル消去能はインペリアルスタウト,ボック類,IPAおよびスタウト等で高く,それぞれの平均値は254.1,232.7,201.0および195.8nmol Trolox/mlであった。一方,DPPHラジカル消去能が低かったのは発泡酒・ビール風飲料,ヴァイツェン類およびピルスナー等で,それぞれの平均値は54.7,110.9,120.9nmol Trolox/mlであった。スーパーオキシド消去能については,インペリアルスタウト,スタウト,ポーターおよびバーレーワイン等で高く,それぞれの平均値は90.0,74.0,72.5および71.3%であった。一方,ブロンドエール類,ピルスナー,発泡酒・ビール風飲料において活性は低く,それぞれ18.1,18.7および19.8%であった。これらのビール類の抗酸化活性をワイン類と比較すると,いずれも赤ワインよりは低値であったが,スタイルによっては白ワインよりも高値であった。また,DPPHラジカル消去能と総ポリフェノール量,苦味価,推定初期比重の相関性を調べたところ,DPPHラジカル消去能は総ポリフェノール量と高い相関性を示した。
著者
弘中 和憲 石橋 憲一 小疇 浩 小林 祥則 森 元幸 津田 昌吾 高田 明子
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.9-14, 2005-01-31

3品種の国産加工用ジャガイモを5および12℃で90日間貯蔵し、インベルターゼ、スクロース-6-リン酸シンターゼ(SPS)およびUDP-グルコースピロホスホリラーゼ(UGPase)活性を測定した。この研究の目的は、それらの3酵素に及ぼす貯蔵温度の影響の検討である。5℃貯蔵のジャガイモは12℃に比べ多くの還元糖を蓄積した。さらに、低温(5℃)はインベルターゼおよびSPSは活性を増加させた。これらのことより、加工用ジャガイモの低温における還元糖増加に、この2つの酵素は重要な役割をになっているものと推察された。
著者
ササキ ドリス ペレス カリン 樋元 淳一 伊藤 和彦
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.129-135, 2004-05-31
被引用文献数
1

3カ月間2℃および6℃で貯蔵を行い, その後20℃でリコンディショニングを行った4種類の加工原料ジャガイモ (トヨシロ, ホッカイコガネ, ノースチップス, P982) の成分値と物性値を測定した。加工原料ジャガイモの品質および原料から調製したポテトチップスの外観を貯蔵期間中5日ごとに測定した。リコンディショニングを行うことによって, すべての試料の還元糖含量が減少した。6℃で貯蔵した試料から調製したポテトチップスの明度は2℃で貯蔵し, その後リコンディショニングを行った試料から調製したポテトチップスの明度より高い値を示した。20℃で30日間リコンディショニングを行った試料から調製したポテトチップスは商品価値を保持していることが明らかになった。
著者
ササキ ドリズ 樋元 淳一 伊藤 和彦
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.275-280, 2003-09-30

北海道で栽培中開発中の油加工用ジャガイモのうち、代表的な(トヨシロ、ホッカイコウガネ、ノースチップス、P982)を用い、2℃および6℃の条件で6ヵ月貯蔵実験を行った。測定は成分および各種物性値について行った。その結果、還元糖含量、ポテトチップスの外観および萌芽率は品種と貯蔵温度に影響を受けることが明らかになり、2℃で貯蔵した試料の萌芽は6ヵ月間にわたって完全に抑制できたが、還元糖含量は6℃で貯蔵した場合に比較してすべての品種とも大きく増加した。還元糖、ポテトチップスカラーおよび萌芽率は品種間および貯蔵温度によって有意な差を認めることができた。ノースチップスおよびP982の両品種は6ヵ月間の貯蔵を行った後でも還元糖含量が他の品種に比較して低い値を示し、これらを原料に加工したポテトチップスの外観は10℃で貯蔵した場合とほぼ同程度を示し、消費者を満足させるのに十分な状態を示した。
著者
東尾 久雄 廣野 久子 佐藤 文生 徳田 進一 浦上 敦子
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.3-7, 2011-01 (Released:2012-12-06)

イチゴ果実の着色は供試した白色蛍光ランプ,食肉展示用蛍光ランプのいずれを照射しでも着色し始めた果実の着色を促進した。その着色促進には,UVのみならず可視光線も関与していた。また,UVの作用は処理する果実熟度で大きく異なり,着色し始めた果実ではアントシアニン合成に促進的に作用し,着色が果実表面の1/2程度およびそれ以上に進むと抑制的に作用することが推察された。一方,イチゴ未熟果実の着色促進に有効なUV強度は供試した蛍光ランプのUV領域の総放射エネルギー量より,0.14W・m-2程度で十分と思われた。
著者
小崎 道雄
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.139-146, 2002-05-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
11
著者
岡 大貴 入澤 友啓 野口 智弘 内野 昌孝 岡田 早苗 高野 克己
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.121-125, 2011-05-31

せんだんごは,対馬において伝統的な手法で,サツマイモから製造された澱粉である。せんだんごは'ろくべえ'という麺をはじめ,主食から間食まで幅広く加工利用されている。せんだんごは澱粉が約90%,繊維質が約6%を占め,SEMの結果,繊維質によって複数の澱粉粒が固まりとして存在していた。さらに,その繊維質はサツマイモ澱粉単独では形成できない生地のつなぎとなり,せんだんごより調製したろくべえは,冷麺やうどんとは異なるテクスチャーを示した。
著者
中内 道世 池本 重明 山西 妃早子 尾崎 嘉彦 築野 卓夫 野村 英作 細田 朝夫 谷口 久次
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.183-188, 2002-07-31
参考文献数
18
被引用文献数
1 7

合成したフェルラ酸誘導体31種類について, 細菌, カビ, 酵母に対する抗菌活性を評価した。供試した化合物のうち, 12種類の化合物がグラム陽性細菌, カビおよび酵母の増殖を抑制することを見い出した。それらのうちMICの測定に供した化合物のほとんどがフェルラ酸より抗菌力が向上した。フェルラ酸ブチルとフェルラ酸-2-メチル-1-ブチルは, <I>B. subtilis, S.aureus, S. cerevisiae</I>に対して顕著な増殖抑制を示した。フェルラ酸ヘキシルは, <I>B. subtilis, S.aureus</I>の増殖を顕著に抑制したが, カビ, 酵母に対してはその増殖に影響を与えなかった。一方, フェルラ酸メチル, フェルラ酸エチルはグラム陰性菌を除くいずれの供試菌に対しても増殖抑制作用を有し広い抗菌スペクトルを示した。フェルラ酸エステル類の抗菌活性は, アルキル基鎖の伸長に伴いグラム陽性細菌に対する抗菌力が向上し, 同時に細胞毒性も増すという傾向が認められた。フェルラ酸メチルおよびフェルラ酸-2-メチルー1-ブチルについては, 市販の食品保存料であるソルビン酸や安息香酸と同程度またはそれ以上の抗菌活性を有し, 細胞毒性試験でも100μMの濃度では, マウス由来線維芽細胞株Balb/c3T3A31-1-1の増殖にほとんど影響を与えず, 新たな食品用抗菌剤として検討できるレベルにあることが示唆された。
著者
阿部 一博
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.283-290, 2006-11-30
被引用文献数
3 5

近年の社会情勢や食環境の変化とともに食習慣や食素材の形態も移り変わり、特に簡便性を有するカット青果物の流通・消費量が急激に増加し、日本では最近10年程の間に2,000億円を超える市場規模となっている。カット青果物の先進国であるアメリカ合衆国では、2005年のフレッシュカット青果物の売上総額は前年比10%増の60億ドル(6,900億円/1ドル=115円換算)に達し、全国青果物小売総売上額の16%を占めることが、国際フレッシュカット青果物協会の市場調査で明らかになっており、日本におけるカット青果物の消費量のさらなる増加が予想される。一方、栄養士志望の若い女性を対象として、2005年に筆者が実施したアンケート調査においても、カット青果物の利用頻度が今後も高まることが明らかになっている。筆者は、1987年ごろから十数年間にわたってさまざまなカット青果物を研究の対象としており、また、基礎的な研究から応用研究まで幅広い分野の研究結果を報告しているので、それらを11項目に分けて記載する。
著者
小出 章二 福士 祥代
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.127-130, 2007-05-31 (Released:2011-08-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年, 玄ソバは低温貯蔵されるケースが増えている。本研究は, 玄ソバを5, 15, 25℃の貯蔵温度かつ種々の相対湿度の条件で玄ソバを貯蔵し, 水分収着等温線を求め, 玄ソバの低温貯蔵時の水分管理に必要な貯蔵環境条件 (温度・湿度) に関する基礎的知見を収集した。これより, 水分活性と温度を軸とした水分等高線をプロットし, 玄ソバの水分活性について検討した。その結果, 水分15%の玄ソバは温度15℃において, 0.66以下の水分活性を示し, 微生物的観点からも低温貯蔵の有効性が示された。
著者
荒木 忠治 長谷川 美典 伊庭 慶昭
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.343-347, 2001-12-31
被引用文献数
1

セイヨウナシ,バートレット,ラ・フランス,パス・クラサン,ウインター・ネリスおよびドヴァイァン・ジュコミスの果肉成分中,糖,酸,ペクチン組成,性状別含量と組成比の違いを調査した。<BR>(1) 収穫時の全糖含量は,バートレット,ラ・フンスパス・クラサンが9-11%,ウインター・ネリス(冷蔵40日)が12%,ドヴァイアン・ジュコミス(冷蔵60日)が11%であった。<BR>(2) 主な構成糖は,全品種ともショ糖,ブドウ糖,果糖およびソルビトールで,主要糖は果糖である・収穫時の含量と比率は,バートレットとラ・フランスが6-8%(全糖の60-70%),他の3品種は8-10%で,(同81-85%)を占めた。<BR>(3) 収穫時の全遊離酸含量は,バートレットが0.3-0.4%,他の品種は0.2%台で,主要酸はバートレットのみがクエン酸で,他はリンゴ酸であった。<BR>(4) 収穫時の全ペクチン含量は,バートレットが約400mgで,既報値に比べ少なく,パス・クラサンは500-600mg,ラ・フランスは470-690mgと年次による変動が著しかった。<BR>性状別含量は,バートレットのW-Pが約70mg,ラ・フランスとパス・クラサンは90-130mg,Na-Pが310-525mgで,両画分の比率はほぼ20:70であった。<BR>H-P画分は,30-60mgで6-12%を占め,品種間差や追熟による変化少なかった。<BR>本試験は,農林水産省・大臣官房企画室の「果実等の省エネルギー地下貯蔵技術開発」調査事業の一部として行われた。
著者
阿知波 信夫
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.91-99, 2006-05-31
被引用文献数
7 8

日本は今、"豊食"の時代と呼ばれ、多種多様な食べ物を、しかも手軽に入手し摂食することができる。しかしながら、遺伝子組換え野菜、残留農薬問題、調理時の微生物汚染由来の食中毒など、食の安全の確保は最も重要なテーマのひとつである。そこで、これら様々な問題を解決する手段として電解水に着目し、各ステージに合った具体的利用とそのときの効果をまとめた。第1章で農産物の生産現場での病害の防除を目的とした利用法について、第2章では培養液ならびに葉面散布液として利用したときの農産物の生育ならびに内容成分への影響について、第3章では収穫後の農産物の微生物汚染の機序とその対策について、そして第4章では最も一般的な殺菌剤である次亜塩素酸ナトリウムと比較したカット野菜への殺菌効果ならびに品質への影響について調査した結果を報告する。
著者
石丸 恵 茶珍 和雄 上田 悦範
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.89-93, 2003-03-31
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

刀根早生'果実は脱渋後の肉質が緻密で柔らかく最も人気のある渋ガキ品種の一つである。'刀根早生'果実の主な脱渋方法は固形アルコールによる樹上脱渋とCO, 脱渋 (CTSD法) であり, 樹上脱渋とCO<SUB>2</SUB>脱渋後の軟化速度は異なっている。そこでその違いをCO<SUB>2</SUB>排出量とエチレン生成の変化ならびに果実の軟化に密接に関係するヘミセルロース構成糖の分解酵素の一つであるβ-D-galactosidase活性の変化から検討した。<BR>(1) CO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実の呼吸量およびエチレン生成量は貯蔵後期に増加する傾向を示し, 樹上脱渋果実は無処理およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実より低く, 貯蔵期間中低いレベルを維持した。<BR>(2) 貯蔵期間中のβ-D-galactosidase活性は, 無処理果実およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実において収穫後2日から3日に活性が増大し, 収穫後7日にはその活性は収穫直後の約1.6~2倍になった。樹上脱渋果実は, 貯蔵期間中無処理およびCO<SUB>2</SUB>脱渋処理果実より低い活性であった。<BR>以上より, カキ'刀根早生'果実の収穫後の急速な軟化とβ-D-galactosidaseの活性は関係があると思われた。また, β-D-galactosidaseの活性とエチレン生成量は同様の傾向を示したことからエチレンによって誘導されたβ-D-galactosidaseがヘミセルロースを分解し, 最終的に指で押すと組織が崩壊しそうになる軟化現象を引き起こしていると思われた。
著者
田村 文男
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.315-321, 2009-11-30