著者
山本 珠美
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.261-270, 2001-03-15

"Public Understanding of Science (PUS)" has been paid attention to in many countries since 1980s. PUS tends to be confused with public acceptance of science, but it contains both getting correct information and decision-making based on informed decision. Science museums have been regarded outside politics, but their shortness of representation about social context and uncritical attitude to scientific progress are criticized from a view of PUS. Recently, science museums have challenged to represent contemporary science and technology. Their aim is to offer a basis for visitors to make up their own minds. The principle of learning/education about controversial science and technology is an open end process.
著者
平岡 久忠 滝川 一晴 筋野 隆 星 和人 松平 浩 中村 耕三 岡崎 裕司 平岡 久忠 滝川 一晴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究においてわれわれは先天性下腿偽関節症の偽関節部では、介在する線維性軟骨により骨の連続性が絶たれていること、骨・軟骨は多数のTRAP陽性、vitronectin receptor陽性の多核巨細胞、破骨細胞により浸食されていること、骨形態計測の手法を用いた結果、偽関節部では破骨細胞数および破骨細胞表面が成人の外傷性偽関節組織にくらべて約4倍に亢進していることを明らかにした。またさらに症例を重ねて、昨年来行っている偽関節組織に対する生化学的検討を続行しその再現性を確認した。手術時に切除した偽関節組織からmRNAを調整し、破骨細胞形成のマスター分子であるランクリガンドの発現をRT-PCR法を用いて調べた。その結果、先天性脛骨偽関節症では外傷性偽関節にくらべてランクリガンドの発現が亢進していることがわかった。同様の知見は抗ランクリガンド抗体を用いた免疫組織化学によっても確認した。以上の検討より先天性下腿偽関節症ではその偽関節部において破骨細胞形成のマスター分子であるランクリガンドの発現が亢進し、その結果破骨細胞形成が促進されていることが明らかとなった。これらの破骨細胞は骨・軟骨組織を浸食し正常な骨癒合を妨げていることが推測された。
著者
佐藤 守俊
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究では,研究代表者が現在までに開発してきたゲノムの光操作技術とは全く異なるコンセプトに基づいて新しいゲノムの光操作技術を開発する.さらに,この光操作技術を用いることで,マウスの生体(in vivo)での全く新しい細胞標識技術を開発する.本技術により生体内での様々な細胞の動態を解明できるようになれば,生命科学の諸分野や再生医療,がん医療等に与えるインパクトは計り知れない.
著者
谷口 尚平 (2023) 谷口 尚平 (2021-2022)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

深層学習に代表されるような大規模で複雑な統計モデルの応用を進めるためには、統計モデルに含まれる大量のパラメータを効率よく推論するための技術が不可欠である。本研究では特に、深層ニューラルネットワークを活用した償却推論と呼ばれる技術を用いて、潜在変数モデルや強化学習における統計モデルの推論を効率よく行うための手法の開発を行う。この研究は、深層学習のような大規模なモデルを実世界応用にスケールさせるための重要な基礎技術となることが期待される。
著者
渡辺 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化合物半導体からなる太陽電池は高効率が期待できる反面、高コストであることが課題であった。この問題に対して、結晶成長時にGaAs基板上に疑似格子整合するInGaAs/GaAsP体重量子井戸層を介して太陽電池を形成し、この多重量子井戸が選択的に赤外線を吸収する性質を利用して、波長1064nmのレーザー光照射によるドライプロセスによって太陽電池層と基板を剥離する赤外線レーザーリフトオフ(IR-LLO)技術を提案し、基礎研究を行った結果、数mmサイズの小規模ながら剥離工程が確認された。
著者
中村 長史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、「平和活動や国際刑事法廷は、いつ終了が可能となるのか」という問いへの回答を通じて、対外政策終了論の体系化を目指すものである。まず、これまでの平和活動に関する研究を通して明らかになった《介入正当化と撤退正当化のディレンマ》や《責任転嫁可能な状況》という概念について、理論仮説に修正を施したうえで、ソマリア、ボスニア、アフガニスタン、イラク等を事例とした分析によって精緻化を図る。次に、平和活動終了についての分析を踏まえて、刑事法廷の終了について分析する。具体的には、上記の二つの概念が旧ユーゴ国際刑事法廷(ICTY)やルワンダ国際刑事法廷(ICTR)の終了決定過程を説明できるかを検証する。
著者
李 東宣
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

今年度も引き続きオックスフォード大学にて研究を続けられたことで、問題関心がより明確になり、博士論文を具体的に構想する段階に至ることができた。博士論文では、トマス・バーロウというアングリカン聖職者を中心に、一七世紀半ばにおけるさまざまな論争の思想的基盤を明らかにする。イングランド一七世紀半ばの内戦期・空位期は、従来の君主制と国教会体制が崩壊した中、政治権力の本質とその限界という論点が最も顕著に浮上し、また宗教論争が最も根本的な次元で繰り広げられた時期である。この時期のアングリカン思想は、そもそも歴史的な分析が行き届いておらず、数少ない先行研究の中では反/非政治的に描かれてきた。しかしバーロウの一連の著作は、これまで専ら神学の観点から分析されてきたものも含め、実は宗教と政治の境界線を緻密に論じており、アングリカンという立場を維持しつつ共和政の権威を一定程度受け入れている。このようなバーロウの思想とそれを取り巻く知的潮流をたどることで、これまで明らかにされなかったアングリカン思想の一側面に光を当て、従来の政治思想の枠組みで宗教を語るのではなく、宗教内在的な議論から政治思想を語ることを博士論文では目指す。当初計画した王権論研究とは一見距離があるが、近世ブリテンにおける宗教と政治を分かつ境界線の論争性と、一見「宗教」的な議論の中に潜む政治性という点では一貫しており、かつ最新の研究を踏まえた着眼点という面でより大きな学術的貢献が期待できる。
著者
三條場 千寿 Chi-Wei-Tsai Zhang Ling-Min
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日本産サシチョウバエ、Sergentomyia squamirostrisは北海道を除く本州、四国、九州、沖縄に広く分布することが本研究により明らかとなった。成虫の発生は気温が20℃を超える6月から9月であり、爬虫類に対しての嗜好性があることが示唆された。南西諸島においては、S. squamirostrisと形態学的・遺伝的に異なる種の存在が明らかとなった。中国、モンゴル、台湾における採集調査および台湾に生息するSergentomyia属サシチョウバエとの分子系統解析の結果より、東アジアにおいてS. squamirostrisは、中国の一部地方と日本のみに生息する可能性が高い。
著者
新井 宗仁
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究で明らかになったことは、主に次の3つである。1.[α-ラクトアルブミン(α-LA)のモルテン・グロビュール(MG)状態の構造および安定性の解析]ヒトα-LAのMG状態及び巻き戻り中間体の構造と安定性を測定した結果、ヒトα-LAのMG状態は他のα-LAのMG状態よりも安定であり、かつ、より多くのα-ヘリックスを含むことが明らかになった。 2.[α-LAの変異体のフォールディング反応の解析]α-LAの様々な変異体を作成するために、ヤギα-LAの遺伝子をpSCREEN-1b(+)に組み込み、蛋白質の発現を行った。変異体を使った研究から、α-LAのフォールディング反応の遷移状態では、T29,I95,W118周辺の構造はまだ十分には形成されていないことが明らかになった。このことは、MG状態で形成される疎水性コアやCヘリックス周辺は遷移状態において構造化されていないことを示している。 3.[ストップトフローX線溶液散乱法によるα-LAの巻き戻り反応の測定]従来のストップトフローX線溶液散乱法では一次元PSPC型X線検出器を用いて測定を行っていたが、新たに開発された二次元CCD型X線検出器を用いることにより、400倍以上の感度向上に成功した。また、データの補正方法を確立した。本研究で完成した時分割X線溶液散乱法は、蛋白質のフォールディング研究のみならず、様々な研究に適用可能な優れた方法である。この方法を用いてα-LAの巻き戻り反応の測定を行った結果、α-LAは巻き戻り反応開始後数10ミリ秒以内に、平衡条件下で観測されるMG状態と同じ分子サイズと分子形状を持つ巻き戻り中間体を形成することが明らかになった。本研究の結果およびストップトフロー円二色性法による結果から、α-LAの巻き戻り中間体は平衡条件下で観測されるMG状態と同一であることが示された。
著者
寺田 寅彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究はヨーロッパで出版された英語教科書のイラストや写真の役割を検討したものである。外国語習得にイラストが有益であるのは、なによりも見て美しく、また文化的背景を学習者に提示するからである。今日出版されている英語教科書のほとんどがカラーイラストの入ったものである所以である。しかしながら、書かれていることと一致しないイラストや、情報過多ともいえるイラストが入っていることがある。それらは歴史的・政治的背景により、テキストの内容ではなく、ナチス・ドイツのスローガンのような政治的メッセージの内容を示しているのである。単なる語学学習が政治的道具に使われることを、本研究は明らかにしている。
著者
田近 周 (2023) 田近 周 (2020-2022)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-03-08

海洋の酸性化は海洋生態系に大きな影響を与えるといわれており、近年盛んに研究されているテーマである。過去の大量絶滅事変は、海洋酸性化等の環境変動とそれが生態系に与えた影響を直接観察できる絶好の研究材料である。本研究では、特に良好に保存された化石試料を採取・分析することによって白亜紀末の大量絶滅事変における海洋酸性化を復元し、それが当時大繁栄していたアンモナイトの絶滅とどのように関連していたのか、について検証を行う。
著者
古澤 卓也
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

少なくともある程度は競争的な選挙の下で特定の政党が長期間勝利し続ける体制(一党優位制)には、権力が安定するというメリットがある一方で、実質的な競争の不在による腐敗といったデメリットもある。ジョージアでは、安定性と競争性が奇妙な形で共存している。すなわち、常に特定の政党が議会選挙で連続して勝利し国政を支配してきた一方で、第一党自体は定期的に交代してきたのである。本研究はこのようなジョージア政治の特徴を「特殊な一党支配体制」と名付け、そのメカニズムを分析する。本研究は単にジョージア政治に関する理解を深めるだけでなく、政治における安定性と競争性の存立条件を明らかにすることを目的としている。
著者
河鰭 実之 李 玉花 王 宇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

農作物の品質に関わる紫外線応答について特にUV-Aに焦点を絞って調査をした.カブ `津田蕪`の芽生えでは,ピーク波長350nmのUV-A蛍光灯ではアントシアニン合成が誘導されるが,単波長の315~345nmではアントシアニン合成はほとんどみられず, 315nmと355nmの共照射によってアントシアニン合成が誘導された.網羅的な遺伝子発現解析の結果,UV-A特異的に発現が誘導される遺伝子群があり,そののなかには,アントシアニン合成系遺伝子の他にROS応答に関わる遺伝子が多数含まれた. この間のROSの発生は明らかでなかったが,青色光によるアントシアニン蓄積ではROSの関与が示唆された.
著者
高柳 広 新田 剛 岡本 一男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

骨と免疫系の不可分な関係性に基づく生体制御システムを「骨免疫系」として捉え、その複雑な制御系が個体の生涯にわたる生命機能の要として機能する仕組みを解明する。骨免疫系の分子的な実態を明らかにするとともに、自己免疫疾患や炎症性骨関節疾患、骨転移など、骨免疫系の破綻による疾患の病態解明に取り組み、骨免疫系を軸とした全身制御「オステオイムノネットワーク」という、新たな生物学のフレームワークの構築に繋げる。脊椎動物の生命機能の理解を深めるとともに、新たな疾患制御の開発基盤の構築に繋げ、国民の健康維持と健康寿命の延伸に向けた先端医学研究を推進する。
著者
堀尾 輝久 中野 光 柴田 義松 小川 利夫 竹内 常一 大田 〓
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1985

本研究はつぎのような課題意識のもとに発足した. 本研究は, 教育学諸分野の研究者の共同研究により,特に中等教育制度を中心に実態分析や提言を整理, 検討し, 現代社会における子どもの成長, 発達をよりよく保障する教育制度原理, とりわけ青年期の発達にふさわしい中等教育のあり方を究明することを目的とする. 本研究は次の5つのワーキング・グループを置き, 調査研究を行ってきた. 1教育改革理念 2現代社会と学校制度 3教員養成制度 4教育行財政制度 5教育改革の国際動向. かくクループは, 「青年期にふさわしい中等教育のあり方」検討を共通の問題意識とし, 特に第二グループを中心に各グループもそれに協力する体制をつくりながら研究会を重ねてきた. そこでは, 戦後中等教育改革の理念と, これまで試みられた各種の中・高一貫教育の実態調査, 新しいタイプの高校づくり, 入試改善にとりくむ各地の高校の実態調査(東京, 埼玉, 愛知, 長崎, 佐賀, 京都, 長野)を行い, 総合選抜制度の社会手機能と今後の動向, 推薦制(宮崎, 長崎)をどう考えたらよいか, 特色ある高校づくりは果して個性の教育に役立っているか, 等の視点から, 教育委員会や教職員組合の見解, PTAの意見等のヒアリングを行った. また, 中・高の接続問題についても, 中学・高校の双方から問題点をとらえようとした. また, 進学・就職指導の実態, 一貫カリキュラムのねらいと, カリキュラム編成上の留意点, 専門教育・職業指導の実態等の資料収集を行い, これらの改善努力が, 青年期の人間発達にとってどのような意味をもつかを検討した. これ迄60, 61, 62年に研究成果を日本教育学会大会で報告した他, 5回に亘る公開シンポジウムに参加しその成果の一端を報告した. 又学会報告の為に提出した研究冊子(「現代社会と学校制度」1984年8月, 「教育改革と教育実践」1987年8月)には本研究の成果の主要なものが表現されている.
著者
吉田 朋広
出版者
東京大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 CREST
巻号頁・発行日
2014

従属性のあるビッグデータへの統計的モデリングと、確率統計学の原理に則った統計解析の体系化を目指します。とくに、超高頻度金融データ解析を可能とする確率統計的方法を構築し、金融市場のモデリングを通じて、金融技術分野に貢献します。また、時系列データ科学のインフラとなる確率過程に対する統計解析およびシミュレーションのためのソフトウエアを発展させるとともに、SNSのデータ解析による様々な社会的事象の将来予測への応用を行います。
著者
戸塚 護
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

過剰な免疫応答を負に制御する制御性B細胞の分化誘導・活性化を促進するフラボノイドを検索する実験系を構築し、ケンフェロールおよびタマリキセチンがリポ多糖存在下でマウスB細胞のインターロイキン10産生制御性B細胞を増加させることを見出した。ケンフェロールをマウスに経口投与することで、脾臓および腸間膜リンパ節において制御性B細胞を増加させた。両フラボノイドは芳香族炭化水素受容体のアンタゴニストとしての機能があり、この活性が制御性B細胞の誘導・活性化に寄与している可能性が示唆された。本研究は制御性B細胞の誘導・活性化を標的とした新たな抗アレルギー、抗炎症食品の開発原理を示した。