著者
川野 義武 宮崎 哲哉 豊田 貴信 堀 恵輔 竹島 里香 林 良文
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.160, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】中枢神経系患者における体幹機能へのアプローチは重要である。この方法の一つとして、ストレッチポール(以下SP)を応用したアプローチの展開が進んでいる。日本コアコンディショニング協会(以下JCCA)の推奨するコアリラクゼーション、コアスタビライゼーション、コアコーディネーションの段階に基づくコアセラピーは、脳卒中片麻痺患者の治療にも十分応用可能な概念である。コアセラピーについて、健常者や運動器疾患を対象とした各関節アライメントの変化と下肢筋力や下肢協調性、柔軟性等の先行研究は存在するものの、脳卒中片麻痺患者を対象とした研究は未だ少ない。そこで今回、脳卒中片麻痺患者に対して、ストレッチポールを用いたコアセラピーが立位制御機能に及ぼす影響を検討することを目的に、アプローチ前後の重心動揺を測定し、若干の知見を得たので報告する。【方法】対象は、当院回復期病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者6名(年齢58.2歳±8.4、右片麻痺3名、左片麻痺3名)とした。取込基準は、支持なしでの開眼、閉眼での立位保持が30秒以上可能な者とした。介入内容はJCCAが提唱するベーシックセブンによるコアリラクゼーションプログラムから抜粋した7項目と、ストレッチポール上でのコアスタビリティープログラム6項目を加えたエクササイズ(以下SP-Ex)、計13項目とした。実施時間は合計10分以内とした。なお基本姿勢の保持ならびに動作遂行に関して、随時必要な徒手的介入を施した。測定には重心動揺計(酒井医療株式会社製ActiveBalancerEAB-100)を用いた。条件として、裸足にて両足部の内側縦アーチ頂点間を20cm離した立位を設定基本肢位とし、静的立位で開眼、閉眼を各15秒間、アプローチ前後に各々1回ずつ測定した。測定指標は総軌跡長、外周面積、矩形面積とした。統計的手法にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準5%にて比較検討した。なお被験者には研究の趣旨と個人情報の取り扱いに関し、書面にて十分に説明。同意を得た上で研究に参加していただいた。【結果】開眼時では、アプローチ前後の総軌跡長・外周面積・矩形面積において有意な変化は認められなかった。症例毎では、総軌跡長にて3例に減少傾向、残り3例に増加傾向が認められた。外周面積と矩形面積について、2例で減少傾向、残り4例に増加傾向が認められた。一方、閉眼時では、総軌跡長・外周面積・矩形面積いずれにおいても有意に減少しており(p<0。05)、6例とも減少傾向が認められた。【考察】閉眼で総軌跡長、外周面積、矩形面積の減少を認めたことは、重心動揺の振れ幅を制御できるようになったと解釈できる。今回の対象者は一側性の片麻痺患者を介入対象としており、視覚情報の遮断から、開眼時とは異なり脊柱や脊柱起立筋群、足底などの接地面の固有受容器感覚を含む感覚入力が正中位指向の改善に影響したのではないかと考えられる。またSP-Exによるコアスタビリティーの向上に加え、SPという不安定な場面でのベーシックセブンは体幹の不安定性のある片麻痺患者に対して、コアスタビリティーとしてもすでに作用し、筋出力の向上につながったのではないかと考えられた。 一方、開眼時よりも閉眼時において、アプローチ前後の静的立位バランスは改善傾向にあった。この要因として、対象者特性を考慮すると亜急性期から回復期に属する片麻痺患者であり、視覚からの情報に対して何らかの情報処理エラーが生じやすく、閉眼時よりも開眼時ではコアの安定性による影響が反映されにくいと考えた。【まとめ】今回片麻痺患者に対し、ストレッチポールによるコアリラクゼーション・コアスタビライゼーションを中心としたアプローチを実施し、静的立位バランスへの即時的効果を検証した。結果、閉眼時の重心動揺指標は有意に減少しており、静的な立位制御機能に対して、足底からの固有受容器感覚を含む感覚入力や正中位認識の改善が期待できるのではないかと考えた。 日常遂行される動作は視覚情報を取り入れながらのものとなるため、今後は視覚情報と固有感覚器感覚とのリンク可能なアプローチ方法を考え、実施することが必要と考えられた。また今回の研究から、多様な症状を示す脳卒中片麻痺患者を対象とする際には、感覚機能やUSNの有無、麻痺の程度などの特定したグループのデータ収集も必要と考えられた。
著者
加藤 勇気 小山 総市朗 平子 誠也 本谷 郁雄 田辺 茂雄 櫻井 宏明 金田 嘉清
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【はじめに】 </b>動的バランス能力低下を引き起こす要因として、足底感覚の低下が報告されている。その機序の一つとしては、機械的受容器の非活性化が示唆されている。臨床では、機械的受容器の賦活にタオルギャザーや青竹踏みが用いられている。しかし、刺激量が定量化できない事、随意運動が不十分な患者では施行できない事が問題となっている。近年、経皮的電気刺激(transcutaneous electrical stimulation以下TES)を用いた機械的受容器の賦活が報告され始めている。本手法は、刺激量が定量化でき、随意運動が不十分な患者でも施行できる利点がある。過去報告では、下腿筋群に対する運動閾値上のTESによって、足底感覚と動的バランス能力の改善を認めている。しかし、感覚鈍麻を認める患者においては、可能な限り弱い強度での電気刺激が望ましい。本研究では、足底に対する運動閾値下のTESによって動的バランス能力が向上するか検討した。<br><b>【方法】 </b>対象は健常成人17名(男15名、女3名、平均年齢24.6±3.2歳)とし、10名をTES群、7名をコントロール群に分類した。TES装置はKR-70(OG技研)を用いた。電極には長方形電極(8㎝×5㎝)を使用し、足底、両側の中足骨部に陰極、踵部に陽極を貼付した。TESは周波数100Hz、パルス幅200us、運動閾値の90%の強度で10分間連続して行った。コントロール群は10分間安静を保持させた。動的バランス能力の評価にはFunctional Reach Test(FRT)を用いた。FRTの開始姿勢は、足部を揃え上肢を肩関節90°屈曲、肘関節伸展回内位、手関節中間位とした。対象者には指先の高さを変えない事、踵を拳上しない事を指示し、最大前方リーチを行わせた。測定は2回行い、その平均値を算出した。統計学的解析は、各群の介入前後の比較に対応のあるt検定を用いた。本研究の実施手順および内容はヘルシンキ宣言に則り当院倫理委員会の承諾を得た。対象者には、評価手順、意義、危険性、利益や不利益、プライバシー管理、目的を説明し書面で同意を得た。<br><b>【結果】 </b>TES群は介入前FRT 34.6±3.2㎝、介入後36.9±3.2㎝と有意な向上を認めた。一方で、コントロール群は介入前34.3±1.9㎝、介入後34.6±2.0㎝と有意差は認められなかった。<br><b>【考察】 </b>足底に対する運動閾値下のTESは、動的バランス能力を向上させた。過去の報告で用いられた下腿筋群に対する運動閾値上のTESの作用機序としては、筋ポンプ作用によって末梢循環が改善され、機械的受容器が賦活されたと示唆されている。したがって、本研究における運動閾値下のTESの作用機序は異なるものであると考えらえる。運動閾値下のTESは、刺激部位の機械的受容器や上位中枢神経系の賦活が報告されている。機械的受容器の感受性改善は、足底内での細かな重心位置把握を可能とし、上位中枢神経系の賦活は、脊髄反射回路の抑制によって協調的な動作を可能にすると考える。今後、足底に対する運動閾値下のTESと重心動揺、上位神経系との関係を明らかにすることで、動的バランス能力向上の機序がより明確になると考える。<br><b>【まとめ】 </b>本研究によって足底に対する運動閾値下のTESが動的バランス能力を向上させることが示唆された。
著者
奥佐 千恵 平 昇市 笠原 知子 川口 久美子
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.24, pp.O023, 2008

【はじめに】我々は平成18年19年に女子ウエイトリフティング競技ナショナルチームの強化合宿中の選手に関わる機会を得た.その後,平成19年9月にタイ国で開催された第19回女子ウエイトリフティング世界選手権大会に出場する日本代表選手団に帯同し,大会中の選手に携わる機会を得たので,それらの活動内容に若干の知見を加えて報告する.<BR>【選手・スタッフ構成】合宿には13~15名,国際大会には9名の選手がいた.そこに監督とコーチからなるテクニカルスタッフが2~4名,日本オリンピック委員会強化スタッフのチームトレーナー1名が加わる.<BR>【活動内容】ナショナルチームとして招集された選手達のコンディションは様々である.そのため,合宿中には各選手のコンディションや置かれている立場・状況に応じて,病院内あるいは練習場で治療・ケア・応急処置・指導などを行った.国際大会には,事前合宿が行われていた国立スポーツ科学センターを訪問し各選手のケア及びスタッフとの事前打ち合わせを行った上で,チームに帯同した.現地入りしてからは,練習前後に宿舎で,そして試合当日には競技直前と競技中においてはアップルームでコンディショニング・ケアなどに携わった.<BR>【現場からの要望】合宿中において,監督からは方向性の統一化の元,選手の体をよくすることを第一の目的としたリハビリ以外に,「選手と指導者側とのズレを埋める」「メンタル面のフォロー」などが求められた.国際大会においては,特に「選手がその場で変わる調整」が求められた.選手からは痛みの軽減や身体機能の回復などが求められる一方で,合宿中の記録会や大会では「痛みが出現しようが体が壊れようが記録を出したい」という要望が少なくなかった.また「指導者側が求める事が実際に再現できない」「自分のイメージ通りに体が動かない」などといった意見も多く,選手・指導者側が求める最高のパフォーマンスの獲得あるいは再現を叶えるための関わりが求められていると感じた.しかし,現場での監督・選手からの要望は必ずしも一致するわけではなく,また現場では,理学療法に関する知識や技術以外のものも多く要求された.<BR>【おわりに】スポーツ現場では,医師以外の何らかの有資格者はトレーナーとして一括されることが往々にしてある.そこでは必ずしも理学療法士という「資格」ではなく,選手の競技力を向上させ,試合で最高のパフォーマンスを発揮できるための手伝いができる「人」が求められる.関わる以上,そこにかかる労力とコストは惜しめない.今回の経験より,我々理学療法士はスポーツ医療に関わる多くの職種の共通部分と専門性をより明らかにし尊重し合い,他職種との連携や役割分担を図り,選手・チームに関わっていかなければならないと強く感じた.
著者
藤井 壮司 田中 寛 酒井 達也 喜多 由加里 加藤 正貴 土田 隼太郎
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第25回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.43, 2009 (Released:2010-04-21)

【はじめに】変形性股関節症に至るケースとして,先天性股関節脱臼の既往や臼蓋形成不全が因子としてあげられる.これら疾患は両側性に発症することが多い特徴があるため両側への治療の必要性が高いと考えられる.今回,臼蓋形成不全と診断され片側股関節痛を訴える症例に対し治療を行ったので報告する.【症例紹介】症例は26歳女性.先天性股関節脱臼・装具治療の既往歴がある.平成16年頃より左股関節に違和感出現.平成18年頃からは右寝返りの際に,左股関節前面に疼痛,脱臼感が出現する.現在は椅子に座り靴を履く時に脱臼感が出現する.【理学・X-P所見】骨盤後傾/前傾(右/左),筋力評価では左股関節周囲筋に低下を認めた.しかし,右外旋筋のみ左より低下.ROMでは股関節外転30°/25°,内転5°/0°,SLR(外旋位)70°/75°.Thomas Test陰性/陽性,片脚立位時の動揺(右<左).歩行では左下肢への重心移動が不十分.CE角23°/21°.臼蓋荷重面に軽度の骨硬化・骨棘がみられる.関節裂隙の狭小化・骨頭の変形はみられない.右大腿骨骨頭が外上方に偏位.【治療・経過】右外側hamstrings stretch,左腸腰筋stretch,左深部外旋筋再教育を施行.結果,骨盤のアライメントの改善,右外旋筋の筋出力向上,左内転可動域拡大,更に歩行でも左下肢への重心移動が改善され,靴を履く際の疼痛も軽減した.【考察】本症例において疼痛側だけでなく,反対側に対しても治療を行い疼痛軽減が図れた.理学・X-P所見から,右内転筋優位により骨頭が外上方に偏位し,さらに骨盤後傾により骨頭の被覆率が下がっていると考え,骨盤のアライメント改善から右大腿骨骨頭のアライメント改善を図った. 右骨盤の前傾が得られ,左股関節屈曲筋群の過緊張が軽減される事で立位歩行時の股関節の伸展が出やすくなる事で,左側への重心移動が改善された.【まとめ】両側性に発症する疾患に対しては,片側のみに症状が出現している症例においても両側を治療することで,疾患の進行を遅らせる効果が大きいと考えられる.
著者
笹谷 勇太 中村 拓人 塚本 彰 糸川 秀人 丸箸 兆延
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.70, 2010 (Released:2010-11-02)

【はじめに】腓骨筋腱脱臼は、足関節背屈および外反が強制された場合に受傷するとされる。今回、足関節外反となるダイナミックアライメント(以下、DA)の改善を図るとともに、足関節外反となる要因にも着目して理学療法(以下、PT)を実施したため、考察を加えて報告する。【症例紹介】16歳女性。バレーボール歴7年。ポジションはセッター。2009年12月初旬、トスをあげようとしゃがみ込み、右足関節外反位にて伸びあがろうと底屈した際に腓骨筋腱脱臼を受傷。2010年2月9日にDas de法を施行。術後3週でギプスカットし、エバーステップ装着にて全荷重を開始。その後、競技復帰を目的に週1回の外来PTを開始。既往歴として、両足関節内反捻挫の反復がある。【PT初期評価】立位時、両側ともに踵骨回内位。スクワッティングテストでは、両脚ともに踵骨回内が起こり、Knee inが出現。振り向きテストでは、踵骨保持が困難であり、外側荷重に不安感を訴えた。【PT経過】術後5週からclosed kinetic chainでの運動を開始し、足関節だけでなく複合関節の連動による足関節内外反の制御を目指した。まず意識下において足関節内外反を制御したDAでのステップ動作などから開始し、動作の習得とともに、ジャンプやボールを用いての実際の競技動作に近い練習へと進めた。また、足関節内外反を制御するためのテーピング指導も行い、術後20週で競技に復帰した。【考察】本症例が受傷に至った要因として、内反捻挫の反復により外側支持機構のひとつである腓骨筋支帯の脆弱化があったこと、足部外側不安定性から踵骨回内位での競技動作であったことが考えられた。競技復帰のためには、回内位でのDAを修正する必要があったが、過度の矯正は内反捻挫を惹起する可能性があった。よってPT実施上、足関節内外反を制御したDAを獲得させることが再発・二次的障害予防のために必要であったと考えられた。
著者
八木 崇行 冨田 昌夫
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.25, pp.160, 2009

【目的】<BR> 人の身体は,内骨格形構造をしており,安定のために働く深層筋と動作のために働く表層筋が機能的に分化して活動することで安定性と可動性,2つの矛盾した要求を満たす.今回,"脊柱の深層筋が活性化されれば,全身的な表在筋の余分な力が抜け,感受性が高まって姿勢制御の能力も改善する"という仮説を立てた.そして,アンバランスになった表在筋の緊張に対する頚部から脊柱を小さく揺する治療の効果について,重心動揺計を用い,従来の評価(面積,総軌跡長など)と非線系解析の一種である再帰性定量化分析:RQAから定量的に評価した.<BR>【方法】<BR> 健常成人を対象とし,(1)揺すり群5名,(2)対照群5名の2群に分けた.重心動揺計(メディキャプチャーズ社製Win Pod)上,立位にて15秒間動揺を計測した.計測は1:開眼立位,2:前方250cmの位置に置いた構造物を見る,3:構造物に貼った文章を読むの3種類とした.そして,従来の評価に加え,RQAにて分析し,介入前後で比較した.尚,本研究は当院倫理委員会の承認を受けて実施した.<BR>【結果】<BR> 揺すり群では,面積は計測2:140→105mm<SUP>2</SUP>,計測3:125→86mm<SUP>2</SUP>,総軌跡長は計測2:143→110mm,計測3:175→133mmと減少傾向が認められた.また,RQAでは,特に計測3左右方向において,系の安定性を示す再帰率(0.6→2%)や決定率(90→96%),系の複雑さを示すエントロピー(1.8→2.3)が上昇する傾向が認められた.一方,対照群の計測2では,面積189→187mm<SUP>2</SUP>,総軌跡長121→143mmと変化が少なく,RQAでも変化は少なかった.<BR>【考察】<BR> 揺すり群で軌跡長や面積が減少し,再帰率と決定率が増加する傾向がみられた.これは,揺すりにより立位姿勢が動揺の少ない安定した状態に変化し,環境から情報が得やすくなること,目的動作に適応しやすくなることを示すものと考える.さらに,エントロピーが増加していることから,単に安定するのではなく,複雑に動きながら安定していることも示唆された.今後,対象を増やしこの傾向を更に追求する.
著者
臼井 晴信 西田 裕介
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.72, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 慢性炎症は、生活習慣病を発症、進行させる一要因である。主に内臓脂肪中の免役細胞により慢性炎症が生じる。免疫細胞は自律神経の支配を受け、慢性炎症は一部自律神経活動により調節されると考えられる。心拍変動の周波数領域解析によるVLF(Very Low Frequency)の低下は、炎症反応や生命予後との関連が認められている。本研究ではVLFを慢性炎症に関与する自律神経活動の指標として用いる。 先行研究ではストレス負荷後30分以上遅延して炎症指標が増加し、その後持続することが認められている。本研究では心理ストレス課題により、VLFが課題後に遅延・持続して低下するという仮説を検証し、心理ストレスによる慢性炎症に関する自律神経活動の亢進を確認することを目的とする。【方法】 健常成人男性10名(26.3±4歳)を対象に測定した。座位による安静10分(課題前安静)の後、Stroop課題を20分間実施し、その後2時間座位による安静(課題後安静)をとった。課題前安静から課題後安静終了までの間、心拍数計(RX-800 Polar社)にて心拍を計測した。心拍のR-R間隔データに周波数領域解析を行い(Memcalc/Tarawa)、課題前安静、課題時、課題後安静10, 20, 30, 45, 60, 90, 120分の各時間のVLF値を算出した。また、BMI、腹囲を測定した。VLF値の変化を課題前安静値で除し、VLF変化率とした。各時間のVLF変化率と身体計測値についてSpeamanの順位相関係数にて関連を検討した。課題後にVLFが課題前安静よりも低下した群をVLF低下群、低下しなかった群をVLF非低下群とし、身体計測値について対応のないt検定により群間で比較した。なお、本研究は聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得ており、対象者には口頭と文書にて説明し同意を得た。【結果】 対象10名中7名において30分程度遅延したVLFの低下を認め、内6名においてVLFの低下は60分以上持続した。45分、60分でのVLF変化率とBMIには中程度の有意な負の相関を認めた(それぞれr=-0.69, p<0.05, r=-0.64, p<0.05)。VLF低下群はVLF非低下群に比べ、体重と腹囲が有意に大きかった(それぞれp<0.05)。【考察】 7名で30分程度VLFが遅延して低下し、6名で60分程度低下が持続した。VLF低下の遅延・持続時間は、先行研究におけるストレス負荷後の炎症反応指標の遅延・持続した増加と類似している。ストレス負荷により慢性炎症を生じる自律神経活動が亢進したことを反映すると考えらえる。腹囲、BMIは内臓脂肪量と正の相関が認められている。課題後45分、60分のVLF変化率とBMIに負の相関を認めたこと、VLF低下群で体重と腹囲が大きいことより、内臓脂肪量とVLFの低下しやすさに関連があると考えられる。ストレス負荷による慢性炎症は、内臓脂肪の多い人で生じやすいという先行研究の結果と一致している。本研究の結果は、内臓脂肪の多い人は自律神経機能が低下していることを示唆している。【まとめ】 本研究よりストレス負荷により慢性炎症を生じる自律神経活動が亢進することが示唆された。また、内臓脂肪の多い人は自律神経機能が低下している可能性を示唆したことより、理学療法士は自律神経機能の改善を目的とした介入をする必要があると考える。
著者
久保田 聡 白崎 浩隆 西潟 央 藤田 祐之
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.127, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 大腿骨頚部・転子部骨折は早期離床を目的に骨接合術など観血的治療が行われている。しかし全身合併症を有し手術困難と判断される場合や、高齢・認知症を理由に家族が手術を希望しない例も少なくない。保存療法は観血的治療に比べ、痛みの緩和に時間がかかりベッド上で安静になる期間が長く、筋力低下や認知機能低下などの二次的合併症を引き起こすリスクがある。今回当院における大腿骨頚部・転子部骨折保存療法例について調査を行い、現状および今後の課題を検討した。【方法】 2010年11月より2012年4月の間に当院に入院した大腿骨頚部・転子部骨折患者29例中、保存療法13例を対象とした。男性1例、女性12例で受傷時平均年齢は90.8歳であった。骨折型は頚部骨折4例、転子部骨折7例であった。また13例のうち他院からの転院が10例であった。保存療法を選択した理由、入院時の痛みの程度、安静臥床期間、リハビリ治療方法とその開始時期、入院期間、退院時の移動などの日常生活動作を後方視的に調査した。本研究は、当院倫理委員会の承認のもと個人情報の保護に配慮し調査を行なった。【結果】 退院時の生存例は12例、死亡例は1例であった。保存療法を選択した理由は家族の意向が最も多かった。当院入院からリハビリ開始までの期間は平均5.1日、車椅子座位までの期間は平均7.0日、入院期間は平均52.9日であった。退院時移動能力は独歩2例、車椅子自立3例、車椅子介助7例となった。退院先は在宅が2例、介護老人保健施設8例、他病院1例、グループホーム1例であった。また入院中に2例が肺炎を合併した。【考察】 大腿骨頚部・転子部骨折後は受傷が引き金となり全身状態の悪化や心不全や肺炎などの合併症のリスクが高くなることが諸家により報告されている。当院では13例中2例が肺炎を合併した。保存療法では疼痛や骨折部管理をしながら、できるだけ早期離床をすすめ二次的合併を予防することが必要となる。安静臥床から車椅子への離床移行までの期間が平均7.0日間であったが、内科的合併症や強い痛みがあったなどの背景があった。実用歩行獲得は13例中2例で、保存療法患者のほとんどが車椅子レベルとなった。そのうち車椅子介助が7例と多く、認知機能低下の影響が考えられた。また車椅子への離床が遅くなった例では、痛みが原因の一つとして挙げられた。高齢者の場合、認知機能・早期離床の観点から医師と連携し痛みのコントロールが重要である。さらに移動能力の予後を早期に予測し、次の生活の場での移動手段の獲得を考慮したアプローチも必要であると考える。【まとめ】 今回当院に入院した大腿骨頚部・転子部骨折保存療法例を後方視的に調査した。安静臥床から車椅子乗車への離床移行までの期間が約1週間だった。また退院時の実用歩行獲得例は少なく、ほとんどが車椅子レベルとなった。今後は早期離床、移動手段の獲得に向けて検討することが課題として挙げられた。
著者
臼井 晴信 秦野 吉徳 西田 裕介
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.163, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】現在、脳血管障害患者の多くが、急性期治療後、リハビリテーション目的で回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)へ入院している。厚生労働省によると、脳血管障害患者で発症から回復期病棟入院までの平均期間は36日、入院患者の平均年齢は71歳である。回復期病棟転院までの期間は短縮しており、入院患者の多くが、脳血管障害患者や高齢者であることを考えると、心血管系リスク管理が必要であると考えられる。当院回復期病棟入院中の脳血管障害患者の入院時標準12誘導心電図においても、57%の症例で何らかの所見を認めた。適切な心血管リスク管理と、運動処方・生活指導を行うために、理学療法士による運動時の心電図評価は必要不可欠であると考える。本症例報告の目的は、心原性脳梗塞により当院回復期病棟に入院し、理学療法実施中に頻脈を認め、心電図評価を行い、生活指導に至った症例の経験より、回復期病棟における心電図評価の必要性について、後方視的に考察することである。なお、本症例報告はヘルシンキ宣言に沿っており、データの使用に際しては、市立御前崎総合病院倫理委員会の承認を得た。 【患者情報・治療歴】症例は70歳代男性で、既往歴に心筋梗塞がある。2009年4月、上下肢脱力により近隣他病院へ搬送され、心原性脳梗塞の診断を受け入院した。第55病日、当院回復期病棟に転院した。入院時標準12誘導心電図において、安静時心拍数は76bpm、心房細動の所見を認めた。第74病日、理学療法での歩行練習直後、橈骨動脈触診により約160bpm、安静坐位時に約130bpmの頻脈を計測した。直後にモニター心電図(CM5)による評価を行い、安静時115bpm、歩行練習時145bpmの頻拍を認め、さらに基線の規則的な動揺を確認した。自覚症状はなく、呼吸数は安静時16回/分、歩行練習直後18回/分であった。理学療法中の評価結果を医師に報告し、医師は理学療法評価結果をもとに、翌日午後からの24時間のホルタ―心電図検査を処方した。第77病日時点での歩行形態は四点杖歩行軽介助で、1日に20m程度を数回練習していた。 【結果】ホルタ―心電図検査の結果、24時間平均心拍数は85bpm、最小心拍数は55bpm、最大心拍数は136bpmであった。18時、7~8時、10~11時台に最大心拍数120bpm以上を計測した。医師の所見は、心房細動に加え心房粗動を認め、リエントリー回路が2:1の頻度で興奮すると頻拍となるとのことであった。また、カテーテルアブレーションの適応となるが、年齢に対し侵襲的であると判断され見送られた。 【考察】退院後の安全な生活の獲得のため、頻拍を防止する必要があると考えた。150bpm以上の頻拍は、心拍出量の減少を来すと言われている。また、心血管系リスクを低減するためには、無酸素性作業閾値(AT)以下の運動強度で日常生活活動を行うことが良いと考える。高齢者でのATは最大酸素摂取量(V(dot)O2max)の約65%と言われている。ホルタ―心電図の検査結果より、頻拍を計測した時間帯は食事時と理学療法実施時(10~11時台)であると考えられた。本症例は、食事時に病室からデイルームまで約50mを車椅子自操により移動していた。以上より、運動時・運動後に頻拍になる傾向があると考えた。その後、理学療法実施中に脈拍の計測、心電図評価を継続して行った。退院前評価時(第175病日)には、屋内歩行は四点杖で自立した。退院前の安静時脈拍数は70~80bpm程度であった。自由な歩行速度で、短距離歩行後の脈拍数は約100bpm程度であり、Karvonenの式より算出した運動強度は約40%V(dot)O2maxであった。しかし、約40m以上連続で歩行すると、130bpm以上の頻脈になる傾向があり、運動強度は85%V(dot)O2max以上となった。以上のことより、本人・家族に対する退院後の生活指導として、自宅外での移動は車椅子による介助移動を推奨し、歩行する場合は40m程度で休憩することを指導した。自宅内移動は杖歩行自立と設定した。 【まとめ】モニター心電図は、非侵襲的で患者の負担も少なく、多くの心機能情報を得られる評価であると考える。今回、回復期病棟入院患者に対し、運動療法中に心電図評価を行い、退院後の生活指導につながった症例を経験した。回復期病棟では、1日9単位までのリハビリテーション実施が推奨されており、入棟後、身体活動量の急激な増加が考えられる。また、回復期病棟の診療保険点数は、検査・薬剤などの点数が入院料に含まる包括医療制度が採られ、検査、投薬は減らされている。そのような回復期病棟の現状・リハビリテーションの特徴を考えた時、回復期病棟入院患者に対し適切な心血管リスク管理を行い、安全な運動処方・生活指導を行うために、運動時の心電図評価は非常に有用かつ必要であると考えられる。
著者
鈴木 健規 佐々木 嘉光 松浦 康治郎 小澤 太貴 榑林 学 高橋 正哲
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.87, 2012 (Released:2013-01-10)

整形外科領域における体外衝撃波療法(ESWT)は、1988年にドイツで初めて偽関節に対する治療が行われ、1990年代には石灰沈着性腱板炎、上腕骨外上顆炎、足底腱膜炎などの難治性腱付着部症に対する除痛治療として、欧州を中心に普及してきた。本邦では難治性足底腱膜炎を適応症として2008年に厚生労働省の認可がおりて臨床使用が可能となり、当院では2011年10月に国内9台目となる整形外科用体外衝撃波疼痛治療装置を設置した。今回、足底腱膜炎に対しESWTを実施した症例を経験したので報告する。【方法】 〈体外衝撃波疼痛治療装置の概要〉 体外衝撃波疼痛治療装置は、ドルニエ社製Epos Ultraを使用した。電磁誘導方式で照射エネルギー流速密度は0.03~0.36 mj/㎜2と7段階に可変式である。照射方法は基本的に超音波ガイド下に正確に病変部(腱付着部)への照射を行う。Low energyより始めて徐々に出力を上げ、痛みの耐えられる最大エネルギーで照射を行う。当院では整形外科医師と理学療法士がチームとなり、Visual analogue scale(VAS)を、照射前、照射直後に測定した。〈症例〉 58歳男性、運動は週3回行っており、平成23年1月にジョギング中に右足底に疼痛出現。同年6月に100キロマラソンに2度出場した結果、疼痛増悪。近医受診し、右足底腱膜炎と診断され、ステロイド注射等の保存的治療を受けた。また、接骨院へも通院したが改善せず、同年11月ESWT希望し当院受診。平成24年3月までに5回実施した。自己管理型質問票により疼痛と活動制限レベルを4段階で示したRoles and Mausdley score(以下RM score)では、最も低い活動レベルのPoorであった。1回目を照射レベル3、総衝撃波数5,000発、総照射エネルギー396mj/㎜2で実施した。2回目以降、総衝撃波数を5,000発、総照射エネルギーを1,300mj/㎜2までとし、2回目を照射レベル5で実施。3~5回目を照射レベル6で実施した。【説明と同意】 ESWT実施前に期待される治療効果と副作用の報告について口頭および書面を用いて説明し、本人の同意を得た。【結果】 歩行時VASは、照射1回目の治療前42㎜、治療後26㎜。2回目は治療前10㎜、治療後9㎜。3回目は治療前10㎜、治療後4㎜、4回目は治療前10㎜、治療後2㎜、5回目は治療前0㎜であった。朝の1歩目のVASは1回目聴取できず、2回目17㎜、3回目10㎜、5回目14㎜であった。また、3回目以降では連続歩行可能となった。4回目以降は15㎞程度のランニングが可能となっている。最終的なRM scoreはGood(時折不快感)であった。【考察】 先行研究によると、足底腱膜炎に対する除痛効果は1回照射より複数回照射の方が除痛効果は持続するとされており、本症例においても同様の結果であった。今回、RM scoreでGoodとなったが、朝の1歩目の疼痛は残存した。足底腱膜へのストレスが増大する要因として下腿三頭筋の疲労による伸張性低下もそのひとつとして考えられるとされており、ESWT実施後、下腿三頭筋のストレッチを行うことで朝の1歩目の疼痛が軽減するか否かが今後の検討課題として挙げられた。【まとめ】 足底腱膜炎に体外衝撃波を行い、ランニング可能となった。
著者
後藤 寛幸 足立 恵一 坪井 歩 甘井 努 大嶋 義之 齋藤 好道
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.25, pp.40, 2009

【はじめに】多発交通外傷後,まず車椅子ADL自立の後,装具処方と積極的な起立・歩行訓練により歩行自立となった症例を報告する.【症例】55歳男性【診断名】骨盤骨折(右寛骨臼骨折など),両下腿開放骨折(右脛腓骨二重骨折,左脛骨骨幹部骨折,左足関節内果骨折),左リスフラン関節脱臼骨折,神経因性膀胱,両坐骨神経損傷に伴う両膝関節から遠位の麻痺.【合併症】糖尿病【病歴】H19.7.20軽トラック運転中乗用車と正面衝突し受傷.心タンポナーデに対し心嚢ドレナージ.骨盤骨折に対し両内腸骨動脈塞栓術,両血気胸に対してトロッカー挿入し救命.8.3(左)脛骨髄内釘,足関節内果CCS,(右)脛骨近位CCS,遠位K-W骨接合.股関節臼蓋螺子にて骨接合.右脛骨偽関節形成の為,10.12プレート固定,骨移植施行後創感染.10.31右下腿前面皮膚11.19腓腹筋弁,分層植皮施行.H20.1.29当院初回入院.右下腿偽関節のため右下肢免荷.先ず上肢・体幹筋力強化を実施.4.22車椅子ADL自立で退院.10.28右部分荷重可能となり歩行訓練目的に再入院.【入院時評価】両下腿感覚重度鈍麻.MMT(右/左)大殿筋(1/1)大腿四頭筋(2/3)両前脛骨筋,下腿三頭筋収縮なし.両上肢4.右下腿前面骨癒合部の骨突出あり,皮膚面湿潤.脚長差3cm(左>右)【経過】起立,push up訓練実施.装具は右PTB免荷装具(モールドタイプ),左プラスチック短下肢装具を作成.PTB 免荷装具にインナーシェルを工夫し右腓骨骨折線への衝撃緩和,創傷保護実施.右全荷重開始後,両金属支柱付短下肢装具作成.MMT大殿筋(2/2)大腿四頭筋(4/4)両上肢5と筋力向上し歩行器装具歩行自立に至った.【考察】骨癒合の時期をみてPTB装具を処方し起立・歩行訓練を行うことで,両下肢近位筋と体幹筋力向上が図り,実用歩行の可能性が出た後に両短下肢装具を再作成し歩行自立に至った.
著者
見田 忠幸 小野 正博 清水 恒良
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2010 (Released:2010-11-02)

【はじめに】左膝蓋骨縦骨折の保存療法を経験した。外側縁部の骨折は血行が乏しく骨癒合が得にくいため、理学療法を実施するにあたり考慮が必要であった。骨折部に対し注意を払い理学療法を実施した結果、良好な成績が得られたので若干の考察を加え報告する。<BR>【症例紹介】症例は80歳代の女性である。自宅にて転倒後、疼痛の訴えが有り当院にて左膝蓋骨骨折と診断されギプス固定となる。発症後、約2週ギプス固定、その後knee braceに変更され週2日、外来にて理学療法開始となる。<BR>【評価および理学療法】理学療法開始の時点で発症4週であり著明な浮腫は見られなかった。関節可動域は屈曲90°伸展-15°、徒手筋力検査は膝伸展3+、屈曲4であった。治療としては膝蓋骨の各rotationの動きを引き出し、外側広筋、腸脛靭帯をトランスバース方向へ滑走させ、膝蓋骨を把持しながら軽い収縮を促した。以上を中心に膝蓋骨に離開ストレスが加わらない様に注意を払いながら徐々に可動域を獲得した。発症8週で屈曲140°伸展0°膝関節屈曲時に膝前面内側部に疼痛がみられた。疼痛の要因は内側縁部骨折線の離開ストレスを考慮しmedial infra patella tissue へのアプローチが十分ではなかったと推察し内側膝蓋大腿靭帯、内側膝蓋支帯に対しストレッチング、滑走性を促した。12週で正座可能となり理学療法終了となる。<BR>【考察】症例は内・外側縁部縦骨折である。富士川は外側縁部縦骨折の場合、血行がきわめて乏しく骨癒合が得にくいと示唆している。つまり固定期間、4週以降も愛護的に可動域を改善して行く慎重さが求められる。外側骨折部は外側広筋斜走線維の付着部であり、外側広筋のhyper traction(過剰牽引)が骨折部の離開を誘発する。そして、外側広筋斜走線維は腸脛靭帯の裏面より起始しており腸脛靭帯を含めた柔軟性改善が重要であると考えられる。外側に比較すると内側は血行が豊富でありtraction方向に働く軟部組織も少ないため積極的に進めた。以上を踏まえアプローチした結果、正座獲得に至った。<BR>
著者
合田 明生 佐々木 嘉光 本田 憲胤 大城 昌平
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 近年、運動が認知機能を改善、または低下を予防する効果が報告されている。運動による認知機能への効果を媒介する因子として、脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor;BDNF)が注目されている。BDNFは、中枢神経系の神経活動によって神経細胞から刺激依存性に分泌される。そこで本研究では、BDNFと交感神経活動の関係に着目し、運動ストレスによる交感神経活動が、神経活動亢進を介して中枢神経系におけるBDNF分泌を増加させる要因であると仮説を立てた。よって本研究の目的は、健常成人男性を対象に、運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血流中のBDNFを増加させるという仮説を検証することである。その結果から、運動によるBDNF分泌メカニズムの解明の一助とすることを最終目標とする。【方法】 健常成人男性10名を対象に、30分間の中強度有酸素運動(最高酸素摂取量の60%)を実施した。運動の前後で採血を実施し、末梢血液中のBDNF、ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。また運動中の中枢神経活動指標として、前頭前野領域の脳血流量を用いた。以上の結果から、運動前後のBDNF変化量、交感神経活動の変化(NA)、大脳皮質神経活動の変化(脳血流量)の関連性を検討した。各指標の正規性の検定にはShapiro-wilk検定を用いた。血液検体の運動前後の比較には、対応のあるT検定を用いた。各指標の相関の分析には、Pearsonの相関係数を用いた。いずれも危険率5%未満を有意水準とした。【結果】 中強度の有酸素運動介入によって、10人中5名では運動後に血清BDNFが増加したが、運動後のBDNFの値はバラつきが大きく、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(BDNF-NA r=.38, p=.27)、中枢神経活動指標と交感神経指標の変化の間(脳血流量-NA r=-.25, p=.49)、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間(BDNF-脳血流量 r=-.16, p=.66)には有意な相関は認められなかった。【考察】 本研究では、健常成人男性を対象に、30分間の中強度運動の前後でBDNFを測定し、運動が交感神経活動を亢進させることで、中枢神経系の神経活動を引き起こし、末梢血液中のBDNFを増加させるという仮説の検証を行った。その結果、中強度の運動介入によって、10人中5名は運動後の血清BDNF増加を示したが、運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった。この要因として、刺激依存性のBDNF分泌を障害するSNP保有が考えられた。また、BDNF変化量と交感神経指標の変化の間、交感神経指標と中枢神経活動指標の変化の間、BDNF変化量と中枢神経活動指標の変化の間には、有意な相関は認められなかった。この要因として、交感神経活動が急性BDNF増加に直接的には関与しないことが考えられる。【まとめ】 健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は、末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず、運動によるBDNF変化には、交感神経活動や中枢神経活動は関連しないことが示唆された。
著者
松本 光司 佐久間 雅久 島田 隆明
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>我々は高校野球三重県大会においてメディカルサポートを実施しているが、その対象は一部の選手に限られる為、選手の状況を把握する為に、アンケート調査を実施し、選手の障害予防への介入方法の検討を行った。<br><b>【対象】 </b>三重県高校野球連盟に加盟の南勢地区を中心とする13校の硬式野球部の選手300名。<br><b>【方法】 </b>我々が各高校を訪問し、調査の目的、記入方法を説明し、現地にてアンケート用紙を回収した。アンケートは無記名の質問方式にて、(1)基本情報(学年、身長、体重、ポジション、野球歴、他スポーツ歴)、(2)理学療法士(以下:PT)の認知度、PTとの関わり、(3)障害(現在、過去の怪我・疼痛の有無、怪我をして受診する施設)、(4)生活習慣(練習時間、睡眠時間、ストレッチング(以下:STG)、食事・水分摂取)について調査した。また、怪我・疼痛とSTGの関係性について多変量解析(主成分分析)を用いて検討を試みた。<br><b>【結果】 </b>(1)基本情報 1)学年:1年生141名、2年生159名。2)ポジション:投手60名、捕手26名、内野手121名、外野手93名。3)野球歴:小学校から265名、中学校から35名。4)野球以外のスポーツ歴:ない138名、ある162名。<br>(2)PTの認知度およびPTとの関わり PTの知名度に関して、知る選手163名、知らない選手137名。PTと関わった事がある選手60名であった。また、PTの治療・指導に興味がある選手は182名であった。<br>(3)障害 怪我の既往歴がある選手は221名であり、野球肘83名、骨折72名、肉離れ50名、野球肩42名、腰痛19名、疲労骨折14名、腰椎分離症12名、捻挫10名、半月板損傷9名、腰椎ヘルニア9名、靱帯損傷8名、オスグッド4名、シンスプリント2名であった。<br> 現在怪我をしている選手は56名であり、野球肘15名、野球肩7名、腰椎ヘルニア・捻挫・腰椎分離症・膝痛が各4名、肉離れ3名、疲労骨折・腰痛が各2名であった。現在疼痛がある選手は165名、その内訳は腰痛61名、肘痛58名、肩痛51名、足部痛30名、手首痛16名他となった。そして、93名(56.4%)は痛みについて監督・コーチは把握していない結果となった。怪我・痛みに対して受診する施設は整骨院・整体師・鍼灸師が230名、病院が116名、PTによる治療が27名という結果であった。<br> 障害とSTGの関係について主成分分析の解析結果は、怪我によって、STGに関する認識や、実施時間が増える傾向であった。<br>(4)生活習慣 1)平均睡眠時間:5~6時間192名、7時間以上102名、3~4時間6名。2)部活動以外でのSTG実施状況:毎日実施115名、全くしない90名、週2・3日61名、週4日以上34名。3)STG実施時間:5~10分89名、10~15分57名、5分以内43名、15分以上21名。4)食事の摂取状況:主に朝食を食べない選手が多かった。5)水分摂取状況:練習中と試合中で違いがあり、試合中はスポーツドリンクを摂取している選手が多かったが、摂取量に気を付ける選手の割合は低かった。<br><b>【まとめ】 </b>今回、野球選手の障害状況と生活習慣の実態が明らかとなった。<br> 結果から、大会期間中だけでなく、三重県高校野球連盟と緻密な連携を図り、定期的なメディカルチェックやSTG講習会を実施し、選手個人の状態が把握できるような支援体制の構築が必要だと考える。
著者
河野 隆志 小林 敦郎 八木下 克博 漢人 潤一 廣野 文隆 甲賀 英敏 岡部 敏幸
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.27, pp.49, 2011

【目的】静岡県メディカルサポート(以下MS)は、静岡県高校野球連盟(以下静岡県高野連)の要請を受け平成14年より活動を実施している。主たる活動内容として、全国高校野球選手権静岡大会(以下静岡大会)での試合前・中・後における選手へのテーピング等の応急処置、試合後の投手へのクーリングダウン、選手や審判員に対しての熱中症予防を目的としたドリンク作製や啓発活動等を実施している。また、一昨年度より、投手の障害予防を目的とした投手検診をクーリングダウンと併用し実施している。そこで本研究の目的は、投手検診より、静岡県における投手の現状を把握し、今後意義のあるクーリングダウンの質的向上へとつなげていくことである。特に今回は、障害発生に関与するとされている投球数や投球後における肩関節内旋角度(2nd)、問診による既往歴の有無等を調査し、投手における現状を検討したので報告する。【方法】対象は、静岡大会において初登板し、終了後または途中交代の投手で投手検診を行なった97名(3年生74名、2年生20名、1年生3名)とした。投手検診実施にあたり、静岡県高野連に加盟している全118校に対し、第92回静岡大会責任教師・監督会議においてMS代表より投手検診の趣旨を説明、その後静岡大会での各試合前のトスの際にも再度MSスタッフより趣旨を説明し、同意が得られたチームの投手に限り投手検診を実施した。投手検診の内容は、肩関節内外旋角度(2nd)の測定、問診にて一日の平均投球数(以下平均投球数)や一週間での投球日数(以下投球日数)、クーリングダウン実施の有無、疼痛や故障による既往歴や医療機関への受診歴等の調査を実施した。投球数に関しては、公式記録を参照し記録した。肩関節内外旋角度の測定方法は、15分程度の投球側肘・肩関節へのアイシング終了後、仰臥位にて投球側、非投球側の順に実施した。測定機器はレベルゴニオメーターを使用し、各可動域とも90°を最大値と設定し、5°毎での測定を行なうよう統一した。検討項目として、各項目での測定結果や問診結果の集計、投球後における投球側と非投球側との角度差(以下角度差)を抽出し、各々と既往歴の有無での関係性を検討した。統計学的処理として、投球数と肩関節内旋角度、角度差にはt検定、平均投球数(50球未満、50~80球未満、80~100球未満、100~150球未満、150球以上の5群に分類)と投球日数(3日未満、3~4日、5~6日、7日の4群に分類)、クーリングダウンの有無には、マン・ホイットニの検定を実施し、それぞれの有意水準は危険率5%未満とした。【結果】投球数は98±34球であり、肩関節内旋角度は52.3±14.2°、角度差は8.5±12.1°であった。既往歴に関しては有りが60名(61.9%)無しが37名(38.1%)であった。既往歴有りの投手の部位別では、肩関節(46.7%)、肘関節(43.3%)、腰部(20%)の順に多かった。投球数、肩関節内旋角度、角度差、投球日数、クーリングダウンの有無と既往歴の有無に関しては有意差が認められなかった。しかし、既往歴と平均投球数において、既往歴有りと無しの投手間で有意差が認められた。【考察】静岡大会における投手の現状として、61.9%の投手に既往歴や最近の故障等が認められた。そのなかでの投手の特徴として、一日における投球数が既往歴無しの投手と比べ有意に多いことが判明した。その反面、障害発生に関与するとされている肩関節内旋角度や角度差等において有意差は認められなかった。このような結果となった要因として、学童、少年野球時より受傷し、障害や疼痛が残存したまま現在に至る投手が多いことが予測される。また、部位別では肩、肘関節に次いで腰部の既往の訴えもみられており、投球動作における一連の流れや障害部位による代償等の影響も一要因として考えられる。肩関節内旋角度や角度差に関しては、MS活動における投手へのクーリングダウン時の肩甲骨周囲筋への必須ストレッチとしての実施やセルフエクササイズでの肩関節内外旋筋に対する個別指導による投手への認識が関与しているのではないかと考えられる。本研究より、静岡県における高校野球投手の現状として、肩・肘関節に留まるのではなく体幹や股関節等全身に着目しての実施が必要となるとともに、幼少期からのメディカルチェックも重要となることが示唆される。【まとめ】MSの主たる活動目的として、選手の障害予防や自己管理能力の向上を図ること、教育場面の一環等が挙げられる。今年度より、県内3校を対象とした巡回事業も実施しており、投手検診等のメディカルチェックを実践し、その結果を分析し問題点に対し対策を講じることで、選手が怪我や故障なく高校野球を継続できる環境づくりや障害予防に対する認識の啓発活動を行なっていきたい。
著者
南端 翔多 直江 祐樹 山口 和輝 谷 有紀子 岡嶋 正幸 野首 清矢 坂本 妙子 松原 孝夫(MD) 須藤 啓広(MD)
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>高位脱臼股では脚短縮がみられ、人工股関節全置換術(THA)施行時、原臼蓋にカップが設置され、その結果脚長が延長される。脚延長により、中殿筋等の股関節周囲筋が伸張され、術後筋力の回復、可動域の改善が遅れ、歩行機能の低下を呈するため、理学療法に難渋する症例を経験することがある。今回、高位脱臼股に対して4㎝の脚延長を行なった右THAの1症例に対して、術前、術後の外転筋力、歩行機能を調査したため、若干の考察と共に報告する。<br><b>【症例】 </b>症例は高位脱臼股に対して後方アプローチによる右THAを施行した60歳代の女性である。術後は当院THAクリニカルパスに沿って理学療法を施行した。右THA施行により約4㎝脚長が延長された。右THA後は松葉杖歩行獲得し、22日目に転院となった。5カ月後にT字杖歩行獲得、独歩可能となった。症例には発表の主旨を説明し同意を得た。<br><b>【方法】 </b>右THAの術前、術後1, 4, 7, 14日目、退院時(21日目)、術後5カ月の股関節外転筋力、歩行様式を調査した。股関節外転筋力は、microFET2(HOGGAN社製)を使用し等尺性筋力を測定した。測定は3回行い、その平均値を測定値とし、回復率(術後測定値/術前測定値×100)を算出した。また筋力測定時の疼痛をvisual analogue scale(VAS)を用いて測定した。<br><b>【結果】 </b>右THA後の外転筋力回復率は、1日目12%、4日目36%、7日目36%、14日目99%、21日目117%、5カ月198%であった。VASは術前5㎜、術後1日目36㎜、4日目48㎜、7日目22㎜、14日目15㎜、退院時(21日目)8㎜、術後5カ月0㎜であった。歩行様式は、術前屋内は独歩、屋外長距離はT字杖使用、術後1, 4, 7, 14日目は歩行器、退院時(21日目)は松葉杖、術後5カ月はT字杖、独歩も100m程度可能であった。<br><b>【考察】 </b>当院MIS-THA後の股関節外転筋力回復率は7日目で114.3%、退院時(22.6日)には156.8%と第38回日本股関節学会にて報告した。本症例では当院の先行研究と比較すると筋力の回復が遅れる結果となった。三戸らは21㎜以上脚延長した群は、低い回復率を示したと報告しており本症例も、同様にTHA後の平均より低い回復率となった。術後股関節周囲筋が、伸張されたことにより疼痛が出現し、術後早期は筋力の発揮が不十分となったこと、また術前高位脱臼により股関節外転筋群が短縮位となり、筋萎縮を呈していたことが考えられる。その結果、股関節外転筋力が術前値より改善しても歩行時に骨盤を安定させることができず、松葉杖使用が必要な状態となった。術後5カ月には股関節外転筋力は、回復率が198%となり歩行時骨盤が安定し、独歩が可能となったが、股関節外転筋力が回復し骨盤が安定するには時間を要する結果となった。<br><b>【まとめ】 </b>高位脱臼股に対して脚延長を行ったTHAでは、股関節外転筋力、歩行機能の回復が遅れる傾向がみられた。外転筋力、歩行機能改善には、長期的な理学療法の介入が必要であるということが示唆された。
著者
法山 徹 勝木 道夫 後藤 伸介 中村 立一
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

<b>【目的】 </b>超音波治療(US)は、局所へ理学療法(PT)の一手段として用いられ、その生理学的効果としては、コラーゲン組織の伸張性増大や疼痛の軽減等が報告されている。しかし、臨床においては関節可動域(ROM)制限に遭遇する頻度は比較的多いものの、USがその改善に寄与したとする報告は少ない。そこで、本研究では腱板断裂術後患者に対するUSがROM改善に及ぼす効果を検証することを目的とした。<br><b>【方法】 </b>症例は50歳代の男性であり、広範囲腱板断裂に対し、関節鏡視下腱板修復術(大腿筋膜を用いたパッチ法)を施行された症例であった。術後3ヶ月にて、大工への職業復帰を目標に当院に紹介され、初回評価時の日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(JOA score)は66.5点、肩関節自動屈曲ROMは95°であった。研究デザインはABAとし、期間Aは通常の運動療法のみを行い、期間Bは運動療法とUSの双方を行い、AとBを2週間ずつ其々週3回の介入で交互に実施した。期間BにおけるUSは、Ultrasonic Apparatus Model ES-1(OG技研社製)を使用し、周波数は1MHZ、出力は1.2W/㎝2、施行部位は肩甲骨内側縁(肩甲棘~下角間)、照射時間は10分間とし移動法にて実施した。また、運動療法については肩甲上腕関節及び肩甲胸郭関節のROM運動、胸椎モビリゼーション、肩甲骨周囲筋のリラクゼーション及び自主運動指導を期間A, Bとも同様に行った。評価は、PT前の肩関節自動屈曲ROMとし、初回Aの前(以下preA)、Bの前(以下preB)、2回目Aの前(以下preA&rsquo;)、2回目A終了翌日(以下post A&rsquo;)に行い、2回測定した低値のものを採用した。結果の処理は、PT前の肩関節自動屈曲ROMについて各セッションの前後での変化率(%)を算出した。<br><b>【説明と同意】 </b>患者には、本研究の趣旨を説明し同意を得て行った。<br><b>【結果】 </b>preA, preB, preA&rsquo;、post A&rsquo;における肩関節自動屈曲ROM(°)は、各々120, 125, 145, 135であった。ROM改善率は、期間Aで104.1%、期間Bで116.0%、期間A&rsquo;で96.4%であり、運動療法にUSを併用した期間で改善する傾向を示した。また、期間A&rsquo;より大工への職業復帰となった。<br><b>【考察】 </b>本研究により、腱板断裂術後患者に対して運動療法にUSを併用することはROM改善に有効であることが示唆された。今回の症例ではUSを肩甲骨内側縁に施行していたが、これは同部に生活上での倦怠感を訴えていたことや圧痛が出現していたことから挙上の阻害因子と考えたため行った。USの併用によりROMが改善したことについては、僧帽筋や菱形筋等の肩甲骨内側組織の伸張性が改善したことにより肩甲骨上方回旋が促通されたためと考えた。また、期間A&rsquo;においては、ROMが低下する傾向を示していたが、職業復帰により急激に上肢の運動量が増し、仕事後の疼痛増強もみられていたため職業復帰による過用が原因と考えた。<br> 今後は、USの実施方法(筋収縮の併用や施行筋の肢位、プラセボ化等)について、より効果的な方法を検討していくことが必要と考えた。<br><b>【まとめ】 </b>腱板断裂術後患者に対してUSの有効性を検証した。運動療法にUSを併用することは、ROM改善に有効であることが示唆された。
著者
戸渡 敏之 久野 雅彦 鈴木 歩美 天野 直樹 杉山 良信 平嶋 純代 赤津 嘉樹
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第23回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.O021, 2007 (Released:2007-11-02)

【背景】勤労者を対象とした痛みに関する調査では、腰痛の有訴率は高く社会問題化されてきた。この対策として、中央労働災害防止協会において「職場における腰痛予防の推進について」が通達され、職業性腰痛予防への取り組みが実践されている。一方、我々理学療法士(以下、PT)も、対象者のトランスファー介助や中腰姿勢など腰部にストレスのかかる動作を行う機会も頻繁にあり、腰痛経験者も多いと推測されるが、不明な部分も多い。そこで今回PTに伴う腰痛に関する予備的調査を実施し、若干の知見を得たので報告する。【対象と方法】対象は、静岡県士会教育局研修部が平成18年度に開催した計3回の研修会参加者である。方法は、開始時に無記名式のアンケート調査票を配布し、終了時に回収した。調査内容は、年齢などの基礎データと腰痛に関する情報とした。【結果】有効回答数は138名であり、腰痛経験あり(以下、LBP+群):115名(83.3%)、腰痛経験なし(以下、LBP-群):23名(16.7%)であった。LBP+群では、就職後の腰痛経験は、就職後1年以内:83名(60.1%)、2年以内:17名(12.3%)、3年以内:4名(2.9%)であり、腰痛を感じる内容は、トランスファー:73名(52.9%)、立位訓練時:29名(21%)、座位訓練時:24名(17.4%)、歩行訓練時:18名(13%)などであった。PT業務との関連性に関しては、非常にある:26名(18.8%)、少しある:72名(52.2%)、ない:4名(2.9%)などであり、困難な動作については、1時間程度の座位:34名(24.6%)、立ち上がり:8名(5.8%)、中腰の姿勢:72名(52.2%)、立位の持続:40名(29%)、重量物の挙上61名(44.2%)であった。また全対象(n=138)において、平均年齢:26.4±5.3歳、性別:男性;79名(57.2%)女性;59名(42.8%)、腰痛体操の実施:34名(24.6%)、柔軟体操・ストレッチの実施:73名(52.9%)、筋力トレーニングの実施:36名(26.1%)、ボディメカニクスの利用:99名(71.7%)、装具着用:17名(12.3%)となっており、これらの項目でLBP+群とLBP-群間に有意差はなかった。【考察】調査結果では、PTの8割以上が腰痛を経験しており、その多くは就職後1年以内で発症し、7割以上がPT業務との関連性を感じていた。以上よりPTに伴う腰痛有訴率の高さを再認識し、各施設において新規採用PTを対象とした腰痛予防に関する労働衛生教育の実施、及び再発防止や自分の腰を守る為の自己管理を各自で実践していくことが対応策になると示唆される。さらに今後の課題として、快適な職場環境の構築に向けて電動ベッドやリフトの導入など個々の施設特性を考慮しながら、PTの身体的負担軽減を目標とした作業管理を模索していく必要がある。
著者
永澤 加世子 西田 裕介
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.91, 2012 (Released:2013-01-10)

【はじめに】 高齢者では骨粗鬆症や圧迫骨折、長年の労働や生活環境など様々な原因により円背姿勢が構築されていき、背筋群の持続的遠心性収縮がおこるとされている。そのため背筋群の筋内圧上昇に伴う筋血流の減少により筋の委縮がおき、出力低下に繋がると考えられる。先行研究より円背姿勢は重心動揺が大きく、歩行が不安定になると報告されている。本研究では背筋の筋疲労が体幹動揺性に与える影響を捉えることを目的とし、器質的なアライメント変化による筋力の低下や姿勢制御に影響を与える感覚低下の影響を除外するため、対象を健常男性とした。【方法】 対象は下肢、腰部に明らかな疾患のない健常男性14名(平均年齢24±1歳、身長173.3±3.2㎝、体重65.5±5㎏)とした。対象者には本研究の意義ならびに目的を十分説明し、紙面にて同意を得た。方法は三軸加速度計を第三腰椎棘突起に貼付し、疲労前後で10m最速歩行時の加速度を測定した。加速度の解析方法として、動揺性の指標である二乗平均平方根(RMS)とRMSを歩行速度の二乗値と平均歩幅で補正し動揺要素を抽出したNormalized RMS(NRMS)を求めた。また、背筋を疲労させるためSorensenのtrunk holding testを一部変更したものを使用した。統計解析には各軸間で対応のあるt検定を使用し有意水準は危険率5%未満とした。【結果】 体幹動揺性を表わすNRMS(X・Y・Z)を各軸間で比較した。疲労前後の順で以下に記載する。Xは(0.28、0.29)、Yは(0.31、0.32)、Zは(0.3、0.3)であり、各軸間で疲労前後では体幹動揺性に有意差が認められなかった。これは背筋の疲労前後でX(前後軸)、Y(上下軸)、Z(左右軸)の方向で動揺性の変化が見られない結果となった。【考察】 健常男性では、背筋の筋疲労は歩行時の体幹動揺性に影響を与えない結果となった。先行研究より、高齢者では足関節での姿勢制御能力が低下し、代償的に股関節優位な戦略をとることや、アライメントの変化により下肢の筋出力が発揮しにくくなりパフォーマンスへ影響を及ぼすとされている。今回は対象が健常男性であり下肢筋力の低下は認められないため股関節や足関節の戦略にて背筋の筋疲労による影響を代償していると考えられる。また、足底の感覚情報入力が減少することにより重心動揺が増大するとの報告もあるが、健常男性では末梢の感覚機能低下が体幹動揺の決定因子にはならないと考える。【まとめ】 明らかな下肢筋力低下や末梢の感覚機能低下が認められなければ、背筋の筋疲労による体幹動揺性の変化を他の戦略にて代償させ、パフォーマンスレベルへの影響を少なくすることができると考えられる。したがって、背筋の筋疲労が及ぼす体幹動揺性への理学療法アプローチとしては、背筋の筋出力向上プログラムと比較し股関節や足関節での姿勢制御能力を向上させるようなアプローチがより体幹動揺性を減少させることが示唆された。そして股関節と足関節の制御が向上することによりパフォーマンス改善に繋がることが考えられる。