著者
楠木 建
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.16-37, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
39

「機能」を基本的な分化次元としていたこれまでの組織理論は,コンセプトのイノベーションをうまく扱えなかった.そこでのコンセプト創造は特定少数の「個人」の仕事であり,組織にとっては前提条件としてえられてきた.しかし,コンセプトの創造と進化はすぐれて組織能力の問題である.コンセプトのイノベーションのための組織能力の構築が競争優位の源泉としてますます重要になる.この論文は,「価値分化」の概念に基づいて,製品コンセプトのイノベーションのための組織モデルを提示する.
著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.50-58, 1989 (Released:2022-07-14)

現代の大企業では,戦略づくりは,トップや戦略スタッフなどの限られた人々の仕事ではなくなっている.目まぐるしい環境変化のなかで,多様化し複合化した事業を運営して行くためには,戦略づくりに,組織内部の多くの人々が関与しなければならない.そのための組織を考えることも必要になっている.この論文では,組織認識論をベースに,戦略構想を組織的に創造するための方法論を探る.
著者
蟻川 靖浩 宮島 英昭
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.19-31, 2015-09-20 (Released:2016-06-29)
参考文献数
32
被引用文献数
1

高度成長期から石油ショック後にかけてメインバンクは,日本企業の資金調達及び企業統治において中心的役割を担ってきた.しかし,1980年代の規制緩和の進展や1990年代の銀行危機,その後のメガバンクの設立などを経て,企業・銀行関係は多様化が進展している.本稿では,20世紀の企業・銀行関係,とりわけメインバンク・システムをめぐる歴史と,近年の企業・銀行関係の実態を展望する.
著者
三浦 紗綾子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.20-32, 2019-03-20 (Released:2019-06-16)
参考文献数
34

社会活動団体の説得によって新行動が諸企業に普及することで新たな市場カテゴリが形成されることがある.既存研究は説得戦略の経路を議論してきたが,戦略内容について論じてこなかった.産業の周辺に位置する社会活動団体にとって適切な内容を事前に決めるのは難しい.社会活動団体は,自らの行為に対する企業とその主要ステークホルダーの反応から学ぶことで企業への説得戦略の内容を修正していくという仮説を本稿では提案する.
著者
服部 泰宏 伊達 洋駆 福澤 光啓 舘野 泰一 安斎 勇樹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.113-119, 2013 (Released:2013-07-30)
参考文献数
13

Social scientists credit science with stimulating technological invocation and with it economic growth. We management theorist also believe that theories do help us organize our thoughts, generate explanations, and improve our predictions. In American/Western context, however, many researchers in our field point out that the gap between science and practice is so persistent and pervasive that our theory has been lost its relevance. Over the past decade, several attempts to deal with such problem have evolved in the form of movements toward “evidence-based management: EBM.” In response to EBM movement, in this “theme session” we try to rethink about the problems of researcher-practitioner linkage (RPL) in Japanese context. Our session consists of three separate parts. In the first part, based on the result of survey research we discuss about diffusion of management theory. In this part we try to develop a framework that will guide us in taking steps necessary for increasing the probability that practitioners will implement our findings. This may enable us to understand how transfer of knowledge (management theory) occurs and why. In the second part, we theoretically and empirically discuss about inter-organizational trust. As prior studies have suggested, the existence of inter organizational trust decrease uncertainty in inter-organizational exchanges and can enhance the performance of both practitioner and researchers. And our empirical research supports this. And finally, in the third part we think about RPL from the perspective of educational technology. Discussing about “evidence-based education” and analyzing data from some academic-industrial collaboration projects we try to draw some implication about RPL.
著者
松井 剛
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.87-99, 2013

本論文は,「癒し」という流行語が社会に波及する中で生じた意味創造プロセスを,20年分の雑誌記事タイトル8033件のテキスト分析を通じて明らかにする.特に注目をするのは,マーケティングを通じて新しい言葉が普及する一方で,こうした言葉の流行に乗る形でマーケティング努力の模倣が生じるという相互作用である.またブームが生じた理由を説くメディアの「理屈づけ」が,こうした相互作用を強化する可能性も指摘される.
著者
生稲 史彦 原 泰史
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.52-58, 2015-07-31 (Released:2015-07-31)
参考文献数
14

Japanese animation industry has a big contradiction. Despite they have made great honorable animation, animators (people who draws motion picture) cannot get enough wages. Why their work are not adequately rewarded even they have a capability to produce excellent work? Involved stakeholders, academic researchers, and policy makes have shared similar concerns on this issue. Several policies had been implemented but it doesn’t yield sufficient outcomes. “Anime Mirai” policy is the new policy approach to solve this problem. Anime Mirai was planned mainly by the Japan Animation Creators Association (JAniCA), and implemented by the Agency for Cultural Affairs. Through Anime Mirai, policy makers aimed to develop human resources which sustain the creation of Japanese animation ecosystem. JAniCA and Cultural Affairs has same point of view on Japanese animation that current animation company haven’t capability to train young animators. In Anime Mirai scheme, JAniCA provided fund to the selected animation companies, these companies produced the new original animations to train young animators. Through Anime Mirai process, turn-over rate of young animators turns low and animation companies has own profitable copyright product such as Little Witch Academia (Trigger) and Death Parade(Madhouse). As of the policy implication of Anime Mirai, organizational failure could be absorbed by “gemba-oriented” governmental funding scheme.
著者
野田 隆
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.34-42, 1990 (Released:2022-07-14)
被引用文献数
2

災害危機下における組織行動は,急激な環境変動に対する適応の視角から研究されてきた.本稿では,従来の知見を瞥観した後,構造・機能を変えずに適応するタイプと,構造・機能ともに創発するタイプに焦点をあてて検討する.前者について,組織ストレスに依存しない適応モデルが,また両者について,連続性原理と創発現象という一見相反する知見を同時に支える災害下位文化という概念が,問題となる.
著者
三隅 二不二 米谷 淳 三隅 譲二 矢守 克也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.2-14, 1992 (Released:2022-07-15)
被引用文献数
1

社会の広範囲にわたって被害をもたらす自然災害に対する対処は,組織レベルで行われることが多い.しかし,多くの組織は自然災害に対する対応のみを目的として機能しているわけではない.したがって.社会的防災力の向上のためには.複数の組織間のネットワーク.地域住民による自主防災組織を効果的に機能させる必要がある.本稿では,これらの問題について,実際の災害に関する事例研究,および,実験室実験の成果を基に論じた.
著者
花田 光世
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.44-53, 1987 (Released:2022-07-14)

日本企業の昇進・昇格人事においては古くから厳しい競争原理が働いていた.現在進行している人事制度の見直し,そして新人事制度はこのような厳しい競争原理が背後にあるからこそ日本企業各社で採用されていったのである.しかしこのような厳しい対応に加えて個人個人の選択の余地の残る組織制度を構築して初めてこの競争原理の受け皿ができ,組織ニーズと個人ニーズとの統合化に踏み出すことができるのである.
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.20-29, 2019-06-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
32

研究論文の質という問題について英国の研究評価事業を「反面教師」的な事例として検討していく.研究の質を論文の掲載誌の格付けと同一視するような風潮は,世界大学ランキングへの関心の高まりや研究業績に基づく各種補助金の傾斜配分政策などにともなって,日本でも近年傾向としてあらわれている.本稿ではこのような「論文掲載至上主義」的な傾向が,学術研究の劣化をもたらすだけでなく次代の研究者を育成するシステムの基盤をも掘り崩してしまう可能性について指摘する.
著者
シン ハヨン 島貫 智行
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.61-73, 2021 (Released:2022-01-11)
参考文献数
44

仕事や職場において他者に恩恵を与えようとする動機づけを意味する向社会的モチベーション(PM)は,従来自律的側面が重視され,成員への好影響が指摘されてきた.本稿は自己決定理論の観点からPM概念を再検討し,統制的側面の存在とそれが成員に悪影響を与える可能性を論じる.分析の結果,自律的PMと統制的PMの 因子が確認され,これらが主観的バイタリティと情緒的消耗感に異なる影響を及ぼすことが示された.
著者
山口 裕之 阿部 智和
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
pp.20220801-2, (Released:2022-08-01)
参考文献数
58

ビジネスモデルの逸脱的変化を巡る先行研究では,ビジネスモデルの慣性が前提に置かれることで,一時的な変化プロセスが注目され,継続的な変化プロセスは看過されてきた.この間隙を埋めるべく,支配的なビジネスモデルからの逸脱を継続的に果たした事例を対象とした経時的事例分析を行う.この分析からは,慣性をもたらすと考えられてきた要因によって逸脱的な局所変化が誘発・波及・増幅されていくダイナミクスが明らかとなる.
著者
柳 淳也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.18-31, 2023-03-20 (Released:2023-06-02)
参考文献数
48

本研究は,日本のLGBTQ運動の拡大の象徴である東京レインボープライドを取り上げる.当初はLGBTQの人権を主張する場としての機能・目的を果たしていた組織が,その存続・拡大を目的とするようになり,企業からの資金的支援を取り込むことで,結果的に当事者の正当な抗議活動を排除するに至ったプロセスを記述する.こうしたミッション・ドリフトの 抑止には,組織から周縁化された主体こそが重要な役割を果たしうる.
著者
松本 陽一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.70-86, 2011-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
41

イノベーションの実現には,新たな知識を生み出すだけでなく,必要な資源を動員し,生み出した知識をビジネスへと結びつける必要がある.本研究は株式会社カネカにおける太陽電池事業創造のプロセスを詳細に調査し,知識創造と資源動員というイノベーションの2つの側面を踏まえた成功の要因とプロセスを議論する.
著者
小笠原 敦 松本 陽一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.26-39, 2005-12-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
11

薄型テレビやDVD機器を代表とするエレクトロニクス産業では,急激な価格低下によって収益獲得が困難になりつつある.本稿はテレビにおけるイノベーションの展開を観察することで個別企業の取り組みに触れ,ブラックボックス化による利益獲得の難しさを指摘する.そして,より高度な利益獲得方法を模索するため,近年の収益獲得に向けた取り組みからハード以外(ソフトウェア,サービス)のイノベーションの重要性を指摘する.
著者
中原 淳
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.28-37, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
81
被引用文献数
1

近年,組織論の研究領域において,「職場(workplace)」内部の学習(集団レベルの学習)に焦点化する研究が増えている.具体的には,職場の上司—メンバー間の相互作用を通して生起する学習を解明する実証的研究の増加である.本稿の目的は,こうした研究動向に鑑み,筆者がこれまで行ってきた研究を適宜引用・参照にしながら,職場における学習の研究群を紹介することにある.
著者
立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.60-73, 2011-12-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
47

1980年代の欧米のイノベーション政策によってオープン・ イノベーションを促す産業環境が生まれた.そこではコンソーシアム等の新しい企業共同が多用され,頻繁に産業標準が形成されている.産業標準はネットワーク外部性を発生させ,複雑なビジネス・エコシステムを生み出す.本論文では,オープン・イノベーションの制度的起源を紹介し,企業共同の増加と頻繁な産業標準形成が,産業構造や競争力構築に与える影響を説明する.
著者
武石 彰 青島 矢一 軽部 大
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.4-14, 2008-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
27

本稿はイノベーションが実現していく過程を分析するもので ある.イノベーションの過程を「革新への資源動員の正当化プロセス」としてとらえる視点に立ち,大河内賞を受賞した18 の事例を題材にして,資源動員を可能にした「理由」を解明していく.不確実性に満ちている革新的なアイデアを経済成果に結びつけていくイノベーションの過程は,関わる主体それぞれの特殊固有の理由が重要な役割をはたす営みであることが示される.
著者
藤本 隆宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.30-37, 2019-06-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2

経営学における高質な研究の特徴について考察する.例として,イノベーション研究の初期の代表的成果であるマイヤーズ=マーキス研究(米MIT)とProject SAPPHO(英サセックス大学)を取り上げる.これらは一流学術雑誌論文でもベストセラー書でもないが,一領域を切り開く嚆矢的論文であった.また,多数のケースをコード化して統計分析を行う「中数研究」でもあり,データ収集自体の価値が高いことが1つの特徴であった.