著者
川井 謙太朗 舟崎 裕記 林 大輝 加藤 晴康 沼澤 秀雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.39-43, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
23
被引用文献数
5 2

〔目的〕投球障害肩症例における肩関節機能を投球側と非投球側の間で比較した.〔対象と方法〕対象は野球投手の男性44例とした.肩甲上腕関節ならびに肩甲胸郭関節に対する肩関節機能(可動域7項目,筋力13項目)を投球側と非投球側の間で比較した.〔結果〕投球側は非投球側に比べ,上腕骨頭後捻角度,補正外旋角度は有意に大きく,一方,補正内旋角度,Horizontal Flexion Test,Scapular Retraction Test,inner muscle筋力,僧帽筋下部線維筋力は,有意に低い,あるいは小さかった.〔結語〕投球障害肩症例にみられた, 投球側と非投球側間での可動域や筋力に関する肩関節機能の特徴的な相違は,これと投球動作時の肩関節痛との深い関連性を示唆する.
著者
上杉 雅之 嶋田 智明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.551-554, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

[目的]知的障害を伴う症例3名を対象にAberrant Behavior Checklist(ABC)を用いた評価を施行し紹介することである。[対象]知的障害を伴う脳性麻痺2名とスミス・マゲニス症候群1名の計3症例とした。[方法]小児理学療法の経験のある理学療法士がABCのマニュアルと評価表を翻訳し,そのマニュアルに従い対象3名に対して評価を施行した。[結果]症例Aは I 攻撃性7点,II 引きこもり6点,IV多動性8点,V不適切な言語2点を示した。症例BはI攻撃性3点,II 引きこもり4点,IV多動性2点を示した。症例CはI 攻撃性9点,II 引きこもり1点,III 常同性5点,IV多動性14点を示した。ABCは知的障害の問題行動を短時間で評価できる有用な尺度の一つであると言えるだろう。
著者
新貝 和也 千住 秀明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.353-357, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

〔目的〕運動時の音楽が身体に与える影響を,下肢疲労感,呼吸困難感および呼吸循環応答から検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は健常男性13名とし,無作為交差試験を採用した.対象者は運動負荷試験終了後,Endurance Shuttle Walking Testを音楽有り(以下音楽ESWT)と無し(以下コントロールESWT)の条件でそれぞれ実施した.〔結果〕呼吸困難感,下肢疲労感は音楽ESWTにおいて有意に低い値を示し,楽しさは音楽ESWTで有意に高い値を示した.また,運動時間の経過とともに音楽による効果が増加していた.呼吸循環応答では,VO2/Wのみ音楽ESWTで有意に高いという結果を示した.〔結語〕運動中に音楽を聴くことで,より少ない疲労感で,より楽しく長時間の運動が実施できることが示唆された.
著者
楠 貴光 早田 荘 大沼 俊博 渡邊 裕文 野口 克己 宮本 達也 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.77-81, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
3

〔目的〕電気刺激による上腕三頭筋長頭の筋収縮が肩甲骨肢位に及ぼす影響を検討した.〔対象と方法〕健常人の20肢を対象に,上肢を肩関節水平屈曲60°位にて治療台上に保持させた.上腕三頭筋長頭に電気刺激を加え,X線を撮影し,安静時と電気刺激時の肩甲棘内側端と肩甲骨下角の脊椎間距離,肩甲骨上方回旋角を比較した.X撮影には放射線技師および医師の協力を得た.〔結果〕電気刺激時にて肩甲骨下角と脊椎間距離の中央値は7.9 mm,肩甲骨上方回旋角の中央値は9°増大し,有意差を認めた.〔結語〕肩関節水平屈曲60°位にて保持させた際の電気刺激による上腕三頭筋長頭の筋収縮は,肩甲骨外転および上方回旋に作用したと考える.
著者
川﨑 仁史 冨田 和秀 居村 茂幸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.485-488, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
14

〔目的〕脳卒中片麻痺者の非麻痺側膝伸展筋を対象に1RMの予測回帰式を算出することを目的とした.〔対象〕片麻痺者37名とした.〔方法〕1 repetition maximum(1RM)の測定とHand-held dynamometerを用いた等尺性筋力の測定を実施した.1RMを従属変数,膝伸展筋力及び年齢,性別,BMI,発症後期間,下肢のBrunnstrom recovery stage,FIM歩行,連合反応を独立変数とする重回帰分析により1RMの予測回帰式を算出した.〔結果〕1RM=0.157×膝伸展筋力+2.183と1RM=0.385×膝伸展ピークトルク+2.795の予測回帰式が得られた(R2:0.549, 0.583).〔結語〕片麻痺者の非麻痺側膝伸展1RMはHHDを用いた膝伸展筋力から推定が可能であった.
著者
杉浦 徹 櫻井 宏明 杉浦 令人 岩田 研二 木村 圭佑 坂本 己津恵 松本 隆史 金田 嘉清
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.623-626, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
19
被引用文献数
5 3

〔目的〕回復期リハビリテーション病棟における超高齢脳卒中患者の自宅退院に必要なADL条件を検討すること.〔対象〕85歳以上の脳卒中患者で,転帰先が自宅もしくは施設または療養病床である71名とした.〔方法〕自宅群(41名)と施設群(30名)の2群に分類し,これらの間で患者の基本的特性,退院時FIM得点を比較した.また,有意差の認められたFIM各合計点では,ロジスティック回帰分析とROC曲線からカットオフ値を算出した.〔結果〕自宅群と施設群の間で,年齢,発症から回復期入院までの期間,移動手段に有意な差が認められ,カットオフ値はFIM運動項目合計点で39点となった.〔結語〕新たなADL条件として,退院時FIM運動項目合計点が39点以下の場合,超高齢脳卒中患者の自宅退院は困難となる可能性がある.
著者
原 幹周 吉田 英樹 小田桐 伶 前田 貴哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.515-519, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
20

〔目的〕運動レベル経皮的電気神経刺激(TENS)の即時的な鎮痛効果は,周波数とパルス幅の組み合わせにより変化するか検討した.〔対象と方法〕健常成人16名を対象とし,人工的な疼痛に対して周波数とパルス幅の組み合わせが異なる6種類の運動レベルTENS条件とコントロール条件の計7条件を実施した.各条件の鎮痛効果は,Numerical Rating Scale(NRS)と前頭前皮質の酸素化ヘモグロビン量(Fp-HbO<sub>2</sub>)を用いて比較した.〔結果〕NRS,Fp-HbO<sub>2</sub>ともにコントロール条件と比較して,全TENS実施条件において有意に鎮痛効果が認められたが,TENS実施条件間で有意な差は認められなかった.〔結語〕運動レベルTENSの即時的な鎮痛効果は周波数,パルス幅による差が認められなかった.
著者
高井 範子 藤田 信子 池田 耕二 金子 基史 丸山 伸廣 中原 理 三木 健司 高橋 紀代 仙波 恵美子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.45-58, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

〔目的〕新たに考案した3週間入院運動プログラムによる介入前後の線維筋痛症(FM)患者の心身の変化を調査し,理学療法士(PT)の適切な対応を明らかにすることである.〔対象と方法〕FM女性患者12名を対象とし,医療や心理学などの専門家による共同チームが考案した3週間入院運動プログラムによる介入を行い,その前後において質問票(日本語版線維筋痛症質問票(JFIQ),日本版ベック抑うつ質問票(BDI-Ⅱ),The 8-item Short-Form Health Survey (SF-8))による評価と心理面談による聴き取りを行った.〔結果〕本プログラムによりFM患者のJFIQでは11名,BDI-Ⅱでは10名,SF-8では9名(身体面),8名(精神面)が改善を示した.患者の語りからは,患者の痛みや辛さに寄り添う姿勢など,PTの対応が患者にとり重要であることが示唆された.〔結語〕本プログラムはFM患者の心身に変化を及ぼす効果があり,その遂行において患者の痛みや辛さに寄り添うPTの姿勢が重要である.
著者
河西 理恵 丸山 仁司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.303-308, 2009 (Released:2009-05-28)
参考文献数
13

[目的]現在,欧米を始めとする諸外国では,2:1ないしは3:1モデルの臨床実習(実習指導者1人に対し学生2名あるいは3名)が主流となっている。本総説の目的は,過去に欧米諸国で行われた2:1モデルの研究から,効果やメリットおよび問題点を検証することである。[方法]1990年以降に理学療法学科の学生を対象に行われた2:1ないしは3:1の臨床実習モデルに関する論文を検索した。検索にはMEDLINE,CINAHLを用いた。検索の結果,6論文(量的研究3編,質的研究3編)を抽出した。[結果]全ての論文が,2:1モデルの効果を示していた。メリットとして特に多く挙げられていたのが,協同学習とピアサポートであった。また,2:1モデルは従来の1:1モデルと比べても,メリットが多く,デメリットが少ないことが示唆された。一方,問題点として,学生の学力差や性格の違いといった指摘が多かった。[結語]今回の結果から2:1モデルの有効性はある程度示されたが,参加者や対象施設の少なさ,および論文数自体の少なさなどから,2:1モデルのエビデンスが十分に確立されたとは言い難い。今後の課題として,研究方法の改善や研究数自体を増やすとともに,近い将来,我が国独自の2:1モデルの研究が始まることを期待する。
著者
山下 淳一 堀本 ゆかり 千葉 淳弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.101-105, 2022 (Released:2022-02-20)
参考文献数
14

〔目的〕理学療法士の「働きがい」の構成要素と影響度を明らかにすることを目的とし調査を行った.〔対象と方法〕当院理学療法士61名を対象に5件法による全18項目のアンケート調査を実施し,重回帰分析およびパス解析を用い分析した. 〔結果〕「働きがい」の構成要素は,「評価」,「処遇」,「人間関係」,「能力向上」,「配置」,「達成感」で構成されていることが明らかとなった. そのうち「働きがい」と特に関係が強い要素は,「評価」,「処遇」,「人間関係」の順であることが明らかとなった.〔結語〕理学療法士に対する「働きがい」を向上させるための具体的取り組みとして,まずは「評価・処遇」の改善が必要であることが示唆された.
著者
横塚 美恵子 阿部 和也 今野 加奈子 石井 伸尚 竹本 晋也
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.289-292, 2005 (Released:2006-02-14)
参考文献数
11
被引用文献数
5 2

本研究の目的は,排泄関連動作における着衣を上げる動作の自立群と非自立群の立位バランスを比較し,さらに影響を与えている運動機能について検討することである。対象は発症から6ヶ月以上経過し,立位保持が可能な脳血管障害片麻痺者20名(平均年齢76.7±10.9歳)を,自立群13名と非自立群7名に分類した。立位バランス能力の評価はBerg Balance Scale(以下BBS)を用い,運動機能として下肢Br.Stage,非麻痺側及び麻痺側膝伸展筋力を測定した。その結果,自立群と非自立群の立位バランスの比較では,BBS総合点とBBS動的バランス得点において有意な差を認めた(p<0.05)。BBS各項目の中で「リーチ」「物を拾う」「振り向き」の3項目について,自立群と非自立群で有意な差を認めた(p<0.05)。さらに,立位バランス能力と運動機能の関係において,麻痺側膝伸展筋力(p<0.01)とBr.stage(p<0.01)で比較的強い正の相関を認めた。着衣を上げる動作には,動的バランスが関与し,麻痺側膝伸展力及びBr.Stageが影響していることが示唆された。
著者
糸数 昌史
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.297-300, 2007 (Released:2007-07-11)
参考文献数
5

認知運動療法は,運動機能回復を一つの学習過程と捉え,脳の認知過程に注目した認知理論を基礎として成り立っているアプローチ方法である。今回,その背景と概要を紹介する。
著者
山中 悠紀 水野 智仁 石川 成美 笹倉 祐太 山本 亜衣 石井 禎基
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.571-574, 2016 (Released:2016-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

〔目的〕無償のソフトウェア(フリーウェア)による動作解析の実用性を検討すること.〔対象と方法〕大学生11名(男性5名,女性6名)にデジタルビデオカメラで矢状面から撮影した立ち上がり動画を画像上のマーキング箇所の座標値が取得できるフリーウェアで解析させ,作業時間と自覚的疲労度を評価するとともに,算出した股,膝,足関節角度と2次元動画解析ソフトウェアで求めた角度との差を分析した.〔結果〕115枚の画像解析に要した平均時間は約20分,自覚的疲労度はVASで30.0 mm程度であった.2種類の解析方法で算出した角度の最大値の差は股関節屈曲で0.12±0.25°,膝関節屈曲で0.14±0.30°,足関節背屈で1.02±0.38°であった.〔結語〕フリーウェアによる動作解析法は実用的である.
著者
窪川 徹 佐藤 光将 平田 祥洸 宮内 音好
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.95-100, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
9

〔目的〕加齢臭やアロマセラピーなど,においに関しては両側面がある.本研究の目的は体臭対策として理学療法士に香りがあった場合の賛否とその理由を調べることと,アンケート項目との関連を調べることである.〔対象と方法〕理学療法士役の学生に石鹸の香りのミストを付け,トランスファー介助動作を行わせた.患者役の男女学生にその印象と日頃のにおいに関してのアンケートを行い,関連を調べた.〔結果〕男性81.8%,女性51.6%がミストに肯定的で,理由は「清潔感がある」が多く,否定的な理由は「無臭がいい」が多かった.ミストの賛否とアンケート項目には関連はみられなかった.〔結語〕ミストには肯定的であっても,理学療法士に香りがあることには否定的な意見もあり様々であった.臨床現場に受け入れられる香りの探求が課題である.
著者
大島 祥央 浦辺 幸夫 前田 慶明 河原 大陸
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.199-202, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

〔目的〕林業従事者の転倒災害防止の一助とするためにチェンソーの駆動が立位バランス能力におよぼす影響を検討することとした.〔対象〕健常成人男性12名とした.〔方法〕安静時とチェンソー把持直後,5分後,10分後の静的・動的立位バランス能力(足圧中心の単位軌跡長,外周面積,重心前方移動距離)を平衡機能計で測定した.チェンソーの把持はエンジンを駆動しない非駆動条件と,エンジンを駆動する駆動条件に分けた.〔結果〕足圧中心の単位軌跡長と外周面積は,チェンソー把持前後で両条件とも有意な変化はなかった.重心前方移動距離は,駆動条件のみ安静時と比較してチェンソー把持直後,5分後でそれぞれ有意に低下した.〔結語〕本研究は,チェンソーを駆動させることで,即時的に立位バランス能力が低下する可能性が示唆された.
著者
今井 樹 潮見 泰藏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.261-265, 2004 (Released:2004-08-30)
参考文献数
8
被引用文献数
30 14

近年,科学的根拠に基づいた理学療法(EBPT)が一つのトピックとなっている。このEBPTを検討するにあたって重要になるのがOutcome measuresである。しかしながら,Outcome measuresに関していくつかの問題点があり,その一つに信頼性の問題が挙げられる。ここでの信頼性とは,検者内信頼性(Intra-rater reliability)および検者間信頼性(Inter-rater reliability)のことを指している。この信頼性を表すものとして,Pearsonの積率相関係数などが挙げられるが,今回は級内相関係数(ICC:Intraclass correlation coefficient)を取りあげ,検者内信頼性および検者間信頼性の求め方を概説する。
著者
田邉 泰雅 水上 昌文
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.207-212, 2015 (Released:2015-06-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

〔目的〕階段降段速度の違いが下肢のバイオメカニクスに与える影響について立脚相を前半と後半に区分して明らかにすることとした.〔対象〕健常若年成人20名(男性12名,女性8名)とした.〔方法〕動作計測に三次元動作解析装置と地面反力計を用い,地面反力,関節モーメント,関節角度を算出した.降段速度として3条件のケイデンスを規定した. 〔結果〕立脚相前半の膝関節伸展と足関節底屈モーメントピーク値は速度が高くなるほど大きくなり,その際の膝関節屈曲角度,足関節底屈角度も増加した.一方, 立脚相後半の膝関節伸展モーメントピーク値は速度が高くなるほど小さくなり,その際の膝関節屈曲角度も減少した.〔結語〕降段速度が下肢のバイオメカニクスに与える影響は,立脚相前半と後半で異なる.
著者
立花 陽明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.235-240, 2005 (Released:2005-09-02)
参考文献数
11
被引用文献数
10 7

日本の高齢社会が今後一層加速化することは必至であり,加齢に伴う退行変性を基盤とした骨・関節疾患が今後も増加することは容易に想像できる。変形性関節症は,関節軟骨の進行性の変性病変を主体とした骨の変形性変化として定義される。変形性膝関節症は,明らかな原因なく,加齢に慢性的な機械的刺激が加わって発症するが,これまでに,その発生や進展に関する種々のリスクファクターについて検討されてきた。本症に対する治療の第一選択は保存的治療であり,種々の保存的治療を試みるべきである。しかし,治療目標の達成度が十分でない場合には,QOLをできる限り高めるために,観血的治療も含め,各症例ごとに治療方針を吟味すべきである。
著者
大田尾 浩 八谷 瑞紀 村田 伸 小野 武也 梅井 凡子 金井 秀作 長谷川 正哉 溝上 昭宏 川上 照彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.359-363, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

〔目的〕脳卒中片麻痺患者の屋内車いす駆動の可否に影響を及ぼす要因を検討した.〔対象〕脳卒中片麻痺患者59名(男性35名,女性24名)とした.〔方法〕候補となる要因をBrunnstrom stage,立位バランス,座位バランス,握力,腹筋力,非麻痺側・麻痺側の下肢筋力,および認知機能とし,これらの要因と車いす駆動能力を評価した.車いす駆動能力に影響する要因をロジステック回帰により分析した.〔結果〕車いす駆動の可否に影響を及ぼす要因は,立位バランスと腹筋力が選択された.〔結語〕脳卒中片麻痺患者が屋内での車いす駆動能力を獲得するには,立位バランスと腹筋力が重要であることが示された.
著者
鈴木 幸宏 宇佐 英幸 祭 友昭
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.667-673, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
24

〔目的〕スランプテストによる非特異的腰痛患者の坐骨神経滑走性低下の鑑別の可否を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕非特異的腰痛患者をスランプテストで陰性群24名と陽性群14名に分類し,健常群20名を加えた3群間で坐骨神経滑走距離を比較した.〔結果〕坐骨神経滑走距離には,陽性群は健常群と比較して有意に低下したが,陰性群と陽性群との間に有意差は認めなかった.〔結語〕非特異的腰痛患者でスランプテスト陽性の場合,坐骨神経滑走性低下が生じている可能性が示唆された.