著者
北川 信一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.147-150, 1994-03-31
被引用文献数
1
著者
泉 裕明 菊地 勝弘 加藤 禎博 高橋 暢宏 上田 博 遊馬 芳雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.147-158, 1996-03-31

近年, 酸性降水に対する関心が高まり, 日本各地においても降水のpHの測定結果が数多く報告されるようになってきた. しかし, 降雨に対して降雪の観測例は極めて少ない. また, 降雨は前線や低気圧によってもたらされるが, 北海道西岸の降雪はそれ等の外に, 季節風や季節風末期パターンといわれる独特の降雪機構をもっており, これ等の降雪機構による相違と降雪の化学成分濃度の変動に着目した研究はほとんどない. この研究では, 環境の異なる複数の観測点で, 30分から数時間毎に降雪の採取を行い, pH, 電気伝導度の他, イオンバランスのとれる主要イオンを全て測定することにより, 降雪機構の相違と降雪粒子の化学成分濃度の変動を調べたものである. その結果, 各観測点でのpHの平均値は4.6〜4.9で, いわゆる酸性雪であることがわかった. また, 都市や海の影響が大きく, はっきり出ていることもわかった. イオン濃度組成は, 降雪イベント毎によって大きく変動するが, 酸性度に注目すると, 季節風による降雪はpHが大きく, 低気圧による降雪は小さい傾向があった. また, 化学成分のウオッシュアウト率は, 低気圧による降雪の方が高いことが明らかになった.
著者
沈 学順 木本 昌秀 住 明正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.217-236, 1998-04-25
被引用文献数
7

実測SSTを与えた大気循環モデルの10年間積分(1979-1988)を用いて、広域インドモンスーンの年々変動とそれと関連したユーラシア大陸上の陸面プロセスについて調べた。用いたモデルは東大気候システム研究センターと国立環境研究所の共同開発によるものである。南アジアモンスーン域における上下の西風シアをモンスーンの強弱の指標として用いた。モデルでシミュレートされたモンスーン環境の年々変動は観測と良い対応を示した。モデルのモンスーン変動にはユーラシア大陸上で顕著な前兆現象が見い出された。弱いモンスーンの前の冬に、北緯50°より南のほうで積雪がより多く、強いモンスーンの前にはパターンが全く逆になっている。季節の進行とともに、春にはモンスーンの強弱に応じて土壌水分等にも顕著なコントラストが見られた。これらのシグナルは観測の統計結果及び他のモデル実験結果と整合的である。陸面での熱収支解析により、雪解けの遅いチベット高原では積雪のアルベド効果が顕著であり、その西の標高の低い区域では土壌水分偏差による蒸発偏差や増えた雲量によるアルベド効果の方が卓越していることが見い出された。冬〜春の陸面プロセス偏差が引き続き夏のモンスーンの強弱に定量的にどの程度のインパクトをもつかを数値実験によって調べた。このモデルでは、陸面プロセスはボジティブフィートバックとして働きはするが、モンスーン循環の偏差の符号を決定する程の影響力はない。ENSOによる熱帯東西循環の変化の直接的な影響が量的にはより支配的役割を果たすようである。
著者
立花 義裕
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.697-715, 1995-06-25
被引用文献数
3

北海道石狩平野の降雪分布の特性について統計的な研究を行った。主に1982から1991年の冬季のAMeDAS毎時降水量データ用いて調べたREOF (rotated empirical orthogonal function)解析の結果、第1成分(31%)は山雪のパターン、第2成分(11%)は石狩平野を中心とする里雪のパターンになることがわかった。二つの成分の時間的な変化を調べたところ、里雪型は冬の後半に、また、昼間よりは早朝に多いことがわかった。次に、里雪型の降雪をもたらす気象条件を総観場及びメソスケール場の関連に着目して調べた。その結果里雪型の降雪が生じる場合には、北西季節風とは反対向きの寒冷な気流が海岸部の地表付近に存在していることが明らかになった。特に、降雪が1日以上持続する場合は、寒冷な気流は石狩川全流域におよぶ。この事実は、持続する里雪と北海道内陸部に形成される寒気のプールとの関連を示唆する。すなわち、カタバ風によって内陸の山から平野部に流れこんだ寒気が持続的に海上に流出する際に、海岸付近に収束帯形成され、持続的な降雪がもたらされると考えられる。さらに、里雪型降雪の際の総観揚を統計的に調べた結果、偏西風が非常に弱く、上空の気温が非常に低いことがわかった。このような総観場は、カタバ風の発生に好都合であり、上記の推測と整合的である。また、これらの総観場の特徴は他の日本海側の降雪域の特徴に似ていることもわかった。
著者
Sud Y.C. Mocko D.M.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.335-348, 1999-03-26

ISLSCP Initiative-Iデータを用いた全球土壌水分プロジェクトでの評価で、SSiBモデルによるロシア小麦地帯(RWB)での融雪が観測と比べて非常に遅れ融雪水の浸透が極端に少ないことが示された。さらに、融雪水の多くが土壌水分増加ではなく流出となった。この欠点はSSiBの雪モデルと土壌層のモデル化の不十分のためであった。本研究では独立の雪層を考慮した新雪モデルを採用している。雪は入射太陽フラックスを吸収・射出し冬と融雪期を通じて雪温・地温に影響する。ISLSCP Initiative-Iデータによる評価で、新雪モデルはRWB域での融雪が2〜3週間早くなり、融雪期の初期に土壌が融け、より多くの融雪水が土壌に浸透する。このように新モデルは土壌水分やボルガ河流出をより現実的に再現する。融雪の遅れ(1〜4週間)の理由として、(1)密な森林での衛星による雪観測の不正確さ、(2)モデリングの仮定、例えば雪の年齢の影響を無視していることや雪による太陽放射吸収の簡単化のために雪面温度と平均気温の区別が不適切になること、(3)ISLSCP気温データの低温バイアスの可能性、が考えられる。
著者
青木 輝夫 青木 忠生 深堀 正志 内山 明博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.595-614, 1999-04-25
被引用文献数
12

雪面及び大気上端(TOA)における波長別及び波長積分した積雪アルベドに対する大気の効果を調べた。そこでは空気分子、吸収気体、エアロゾル、雲による吸収と散乱の効果を、doubling and adding法とMie理論に基づいた大気 - 積雪系の多重散乱放射伝達モデルによって見積もった。波長別雪面アルベドは太陽天頂角が大きいとき、大気中の吸収気体によって大気がないときに比べて減少することが示された。その太陽天頂角依存性は波長0.5μm以下でレイリー散乱によって弱められ、ほとんどの波長でエアロゾル及び雲によって弱められた。水蒸気の豊富な大気は、太陽天頂角が大きいとき、水蒸気の吸収帯で波長別アルベドを減少させた。ところが近赤外域の下向きフラックスが水蒸気の吸収によって減少するため、波長積分したアルベドは数パーセント高くなった。エアロゾルは太陽天頂角が小さいとき波長積分した雪面アルベドを増加させ、太陽天頂角が大きいときには減少させた。しかし、エアロゾルは太陽天頂角が大きいときを除き、波長積分したプラネタリーアルベドを減少させた。光学的に厚い雲は太陽天頂角に依らず波長積分した雪面及びプラネタリーアルベドの両者を増加させた。太陽天頂角が小さいとき可視域では、雪面上における曇天時の下向きフラックスが晴天時のそれを上回り、また両者はさらに大気外日射フラックスを上回り得ることがわかった。この現象は雪面と大気(雲)の間の多重反射によって説明できる。しかし、雪面上における曇天時の全天日射量は、晴天時及びTOAにおけるそれらを上回ることはなかった。
著者
播磨屋 敏生 中井 安末
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.101-115, 1999-02-25
被引用文献数
1

日本の日本海側の山岳地域において、毎年のように豪雪が起る。その降雪の形成に貢献する雲粒捕捉成長過程が、レーダーと微物理解析によって調べられた。観測結果は次のようにまとめられる。レーダー解析によると、日本海上で形成された降雪雲は、海上から陸上に向かって移動するにつれて、発達期から最盛期となる。その後陸上を移動するにつれて消滅期をむかえる。それらの降雪雲が山岳地域に到達する時、地形性上昇流によって再発達するのが観測された。降雪強度の増加につれて付着雲粒量が増加すること、および上方がら降る氷結晶の質量フラックスの影響をとりのぞいた付着雲粒量が、風速が増加するにつれて増加することが示された。そのうえ、風上から移流する雲粒量を差引いた付着雲粒量が、風速が増加するにつれて増加することが風速と雲粒寄与率の関係図から推測された。この観測事実から、風速の強い時には再発達して雲粒の増加した雲内を氷結晶が落下することによって、たくさんの雲粒を捕捉して、結果として高い雲粒寄与率をもち、強い降水強度をもつ降雪となることがわかる。このようにして、雲粒捕捉成長過程が山岳性降雪の形成へ非常に貢献する。観測結果は、昇華と雪片形成成長過程もまた山岳性降雪の形成に貢献することを示した。降雪雲内の雲水量は、地形性上昇流によって形成される雲粒量のみだけでなく、氷結晶の質量フラックスとの兼ね合いで決まることが示された。観測結果は、雲粒量に比べて氷結晶の質量フラックスが少なくなる風速の強い条件下と風速が弱くても発達初期段階の降雪雲である条件下の二つの場合が人工種まき実1験のために可能性が高いことを示した。
著者
Peng Melinda S. Chang Simon W.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1073-1089, 1997-12-25

マイクロ波放射系 SSM/Iから推定された雨量の同化は、領域モデルによる熱帯低気圧の数値予報に有益であることが示されている (Pong and Chang, 1996)。しかし、衛星がほぼ太陽周期軌道をとることと観測幅が狭いことにより、SSM/Iは熱帯を完全にはカバーしない。一つまたはそれ以上の熱帯低気圧がSSM/I の観測領域に含まれず、したがって予報モデルに同化するための雨量を推定できない場合が多くある。この研究では、雲頂輝度温度がら推定された雨量を同化する効果評価する。Manobianco et al. (1994)によって提案された、SSM/Iの同時観測による雨量に基づいて赤外雲頂輝度温度から雨量を推定するアルゴリズムを、1990年の台風Floの数値予報に適応した。赤外観測による雨量の同化は、台風Floの経路と強さの予報に正の効果があり、これはSSM/Iによる雨量を用いた Peng and Changの結果と定性的に同じであることがわかった。赤外輝度温度とSSM/I輝度温度が同時に観測されない場合には、赤外雨量をSSM/I雨量に関係づける解析アルゴリズムの精度が低下した。赤外雨量を、数日前に得られた赤外輝度温度とSSM/I雨量の間の関係式から計算した感度実験では、赤外雨量の精度と予報のスキルの改善率が共に減少した。
著者
金田 幸恵 耿 驃 吉本 直弘 藤吉 康志 武田 喬男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.135-154, 1999-02-25
被引用文献数
1

1993年7月25日未明に台風9304が紀伊半島南端に最接近し、その後四国に上陸したことに伴い、半島南東斜面に多量の降水が観測された。この台風に伴い形成された対流性降水雲の地形による変質過程が、2台のドップラーレーダを用いた観測により調べられた。7月24日1900LSTから25日0000LSTにかけてのドップラーレーダ観測期間中、多くの対流性降水雲が上陸した。それらのレーダエコーは、様々な発達段階で海岸に達したにもかかわらず、海岸の10-20km手前で強まり、海岸線付近でいったん弱まった後、上陸後に再び強化されるか、あるいは広がるという共通の特徴を示した。また、対流性エコーは、海上で強まる前、海岸から30-40km沖付近で後面上部で強まり、その後、海岸に近づくにしたがって、進行方向前面のエコーが強まるという特徴も見出された。2台のドップラーレーダの観測データから導出された海上の水平風を時間平均したところ、平均風速は海岸に近づくにつれ減衰すること、海岸から約10km海上に10^<-4>s^<-1>以上の水平収束域が存在することが見いだされた。以上の観測事実にもとづき、また一般風に対する半島の地形効果に関する数値実験の結果も考慮して、対流性降水雲の地形による変質過程と効率的な降水形成過程が議論された。海上から接近、上陸する対流雲に対するこのような地形効果の総合的な結果として、紀伊半島南東斜面に多量の降水がもたらされたと考えられる。
著者
植田 宏昭 安成 哲三
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-12, 1998-02-25
被引用文献数
12

本研究ではベンガル湾及び南シナ海上の東南アジアモンスーン(SEAM)の開始のメカニズムを, チベット高原とその周囲の海洋との温度コントラストの視点から調べた。循環場の解析にはECMWFによる5日平均客観解析データ(1980-1989年), 対流活動の指標としてはGMSの5日平均等価黒体温度(TBB)データ(1980-1994年)を用いた。東南アジアモンスーンのいち早い開始は, 第28半旬(5月16-20日)に下層のモンスーン西風気流の加速を伴って見られ, その後6月の上旬に2回目のモンスーン強化が生じている。春から夏にかけてのチベット高原上では, 200-500 hPaの気層の温度上昇が約15日間隔で上昇している。特に5月中旬のチベット高原上の温度上昇は, SEAMの開始と一致している点が重要である。すなわちチベット高原とその周囲の海洋との温度差異は, 下層のモンスーン気流の加速と東方への拡大を引き起こし, 結果として南シナ海モンスーン(SCSM)を含むSEAMの急激な開始をもたらす。この関係は, (10゜-20゜N, 80゜-120゜E)での下層の風と200-500 hPaの層厚との年々変動の相関解析によっても確認された。中緯度への影響としては, SCSMの開始による低気圧性渦度と熱源により, 定常ロスビー波が南シナ海上で励起され, 更に北東方向に伝播している。この波の下流の日本付近は正の高度場偏差が現われ, 川村と田(1992)が示した5月中旬の日本の晴天の特異日と一致している。
著者
城岡 竜一 上田 博
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.461-470, 1995-06-15
被引用文献数
1

TOGA-COAREの集中観測期間中、西部熱帯太平洋上のパプアニューギニア、マヌス島において1992年11月19日から1993年1月19日までの2ケ月間、全天日射量の観測を行なった。日射量の日変化の特徴から観測期間を4つに分割した。GMSのT_<BB>からみた対流の活発度やウインドプロファイラーから得られた東西風にも各期間の特徴がみられた。観測期間を通して地上風の変動は激しかったが、12月下旬から1月上旬にかけて強い西風が観測された。最も対流活動が活発であった期間は午後の日射量の低下で特徴付けられ、西風強化の前に現れていた。一方、西風が強化された期間では午前中の対流活動が支配的であった。日射量の日変化を渦相関法によって求められた顕熱や潜熱のフラックスと比較すると、陸上におけるエネルギーフラックスの変化は日射量の変動に30分程度ですばやく対応していた。潜熱と顕熱のフラックスは、夜間はほとんど零であり、昼間の最大値は潜熱で約270W/m^2、顕熱で200W/m^2であった。
著者
荻野 慎也 山中 大学 深尾 昌一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.407-413, 1995-06-15
被引用文献数
4

J-COARE白鳳九航海のレーウィンゾンデ観測(1992年11月1日〜12月4日)より得られた温度・風速データをもとに、低緯度帯(13.78°S〜24.50゜N)の下部成層圏(14〜22km)における重力波活動度の南北変化を調べた。高度14〜22kmのデータを用いて鉛直波数スペクトル解析を行ない、全期間の平均をとると、卓越鉛直波長は温度・東西風については4km、南北風については2.7kmであった。高度プロファイルおよびホドグラフ解析結果をみると、赤道をはさんで南北約10゜の範囲では、鉛直波長が4km程度の比較的振幅の大きな(5〜10m/s)波動構造が、東西風にはしばしば認められるが南北風にはほとんど認められないことから、4kmの成分には主にケルビン波が、2.7kmの成分には主に重力波が寄与しているものと考えられる。鉛直波長4.0km,2.7m,2.0mの各成分について、パワースペクトル密度を緯度の関数として整理し、中緯度帯と較べると低緯度域の方が重力波活動度は大きいという結果を得た。重力波の振幅は波の周期や背景のブラントバイサラ振動数に関係すると考えられるが、今回得られた南北分布はこれらのパラメタだけでは説明できず、赤道付近で活発な積雲対流が重力波の励起と密接に関わっていることを示唆している。
著者
新野 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.933-936, 2007-11-30
被引用文献数
2
著者
加藤 輝之 栗原 和夫 瀬古 弘 斉藤 和雄 郷田 治稔
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.719-735, 1998-10-25
被引用文献数
6

10km分解能気象研究所非静力学メソスケールモデル(MRI-NHM)が予想した降雨の精度検証を1996年梅雨期について行った。精度検証結果については気象庁の10km分解能静力学領域スペクトルモデル(RSM)の結果とも比較した。MRI-NHMには雲水、雨水を直接予報する暖かい雨タイプの降水スキームを用い、RSMでは2つの対流のパラメタリゼーションスキームを大規模凝結とともに用いている。MRI-NHMは1時間降水量1mm程度の小雨を僅かに過小に予測した一方、降水強度の最大値20mm以上の強雨の面積を相当に過大評価した。統計的なスコアを取ったところ、1時間降水量10mm以上の強雨についてはMRI-NHMの方がRSMより正確に予測していた。ただし、5mm以下の雨についてはMRI-NHMはRSM程成績は良くなかった。MRI-NHMは1時間降水量20mm以上の雨のほぼ半数を予想することができた。降水は九州北部より南部の方が精度良く予想されていた。このことは九州北部と南部とで強雨形成のメカニズムが異なるためだと考えられる。