著者
新野 宏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.833-841, 2002-10-31
参考文献数
30
著者
光田 寧 林 泰一 竹見 哲也 胡 隠樵 王 介民 陳 敏連
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1269-1284, 1995-12-25
参考文献数
12
被引用文献数
7

HEIFEプロジェクト期間中において2個のシビアストームが観測された(1992年7月19日・1993年5月5日)。ここでは乾燥地帯で発生したストームの発生機構について述べる。2つのストームは一方が数kmの積乱雲のスケール、もう一方が100kmのスコールラインのスケールであったが、ともに対流性の雲からの強い下降流で特徴づけられるという点で一致していた。これらは本質的に世界の各地で見られるストームと同じであるが、7月19日の場合では、年間雨量の3分の1に相当する30mmの雨が降り、下降流が地表に達したことで生じる発散する風速場がとらえられた。5月5日の場合では、激しい砂嵐をともない、スコールラインが狭いバンドから広いバンドに発達していくとともに、発達した状態では地表で2時間以上にもわたり強風が続いていたことが特徴的であった。
著者
土井 妙子 細見 正明 溝口 次夫 佐藤 純
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.827-834, 1993-11-30
被引用文献数
4

筑波山山頂のオゾン濃度と地表付近の大気中の^7Be濃度を測定して,これらの濃度の季節変化を比較した.筑波山におけるオゾン濃度と^7Beの地上濃度の季節変化のパターンはよく合致し,それぞれの月別平均値は4月と5月に高くなり,7月に低く,10月にも小さいピークが見られる二山型を示した.筑波山山頂のオゾン濃度と土浦市のオキシダント濃度を比較すると,土浦市のオキシダント濃度は年間を通じて山頂より低く,秋季のピークは顕著ではなかった.秋季にピークが見られないのは,秋季から冬季にかけて頻繁に出現する接地逆転層のためと考えられた.
著者
上田 博 遊馬 芳雄 高橋 暢宏 清水 収司 菊地 理 木下 温 松岡 静樹 勝俣 昌己 竹内 謙介 遠藤 辰雄 大井 正行 佐藤 晋介 立花 義裕 牛山 朋来 藤吉 康志 城岡 竜一 西 憲敬 冨田 智彦 植田 宏昭 末田 達彦 住 明正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.415-426, 1995-06-15
参考文献数
26
被引用文献数
11

2台のドップラーレーダーを主に用いた熱帯の雲やクラウドクラスターの観測を、TOGA-COARE集中観測期間内の1992年11月12日から約2カ月半に渡って、パプアニューギニア、マヌス島で行った。観測期間中に、スコールライン、クラウドクラスターに伴う対流雲や層状雲、及び、日中のマヌス島上に発生する孤立対流雲等の種々の異なるタイプの雲について、ドップラーレーダーで観測した。マヌス島における観測の概要と観測結果の要約について述べる。観測データについての解析結果の予備的な要約は以下の通りである。1)レーダーエコーの発達の初期には暖かい雨のプロセスが支配的であり、最大のレーダー反射因子はこの時期に観測された。2)エコー頂高度の最大は最初のレーダーエコーが認められてから3時間以内に観測された。3)レーダー観測範囲内における、レーダーエコー面積の最大値はクラウドクラスターの大きさに対応して最大のエコー頂高度が観測された時刻より数時間遅れて観測された。4)長時間持続する層状エコー内の融解層の上部に、融解層下層の上昇流とは独立した上昇流が観測された。これらの観測データを用いてさらに研究をすすめることにより、熱帯のクラウドクラスターの構造や発達機構を解明できると考えられた。
著者
大野木 和敏
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.497-516, 1998-08-25
被引用文献数
1

気象庁の数値予報システムにおいて、誤った観測データを除去するための新しいデータ品質管理方法を開発した。品質管理は、すべての観測値に対し、予報から与えられる第一推定値との差を評価することによって行われる。この差は統計調査の結果を基に観測要素・観測レベルごとに設定されたしきい値と比較され、許容範囲から外れた観測データは誤データとして除去される。従来の静的品質管理では、気象状態に関係なくしきい値は一定であった。新しい方法である動的品質管理では、観測点付近の第一推定値の場の状態を考慮する。しきい値は局所的な水平勾配と3時間の時間変化によって線形的に変化させる。統計的な調査によって、観測値と第一推定値の差は、第一推定値の局所的な水平勾配と時間変化に近似的に比例することがわかった。動的品質管理はこの関係を品質管理に適用したものである。静的品質管理では、誤ったデータが静穏な領域で誤って採用され、正しいデータが変動の激しい領域で誤って除去される誤判定がしばしば見られたが、動的品質管理によってこれが全領域で大幅に減少した。動的品質管理を適用した予報実験では、熱帯と南半球で予報スコア及び予報値とレーウインゾンデ観測との整合が向上した。予報期間にして1日分以上に相当するアノマリー相関の改善がみられる場合や、レーウインゾンデ観測との整合が平方根平均二乗誤差(RMSE)で10%以上改善される場合もある。北半球では予報結果は変わらなかった。動的品質管理は1997年3月17日に気象庁の数値予報システムに組み込まれ、その後現業全球予報の成績は大幅に向上している。
著者
井上 豊志郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.59-66, 1997-02-25
被引用文献数
1

極軌道衛星NOAAに搭載されているSplit Wiondowを用いて, 西太平洋における昼と夜での雲型別雲量のちがいについて調査した. Split Windowでは水晶で構成されている光学的に薄い巻雲型の雲と光学的に厚い積雲型の雲を分類することができる. この研究では光学的に薄い巻雲型の雲はさらに輝度温度で温かい巻雲型と冷たい巻雲型の2つに, また光学的に厚い積雲型の雲も輝度温度で積乱雲型と下層の積雲/層積雲型の2つに分類した. ISCCPの解析結果との比較から温かい巻雲型, 冷たい巻雲型, 下層の積雲/層積雲型と積乱雲型の光学的厚さの平均値はそれぞれ2.2, 7.4, 15.3および33.7であることが分かった. Split Windowで分類される雲型別雲量の昼と夜のちがいを, 個々の対流システムとしての台風についてと, 熱帯海洋域での緯・経度20゜×30゜の広い領域について調査した. 積乱雲型, 温かい巻雲型および下層の積雲/層積雲型の雲量は地方時2:30頃の夜間に多い傾向を示した. それに対し, 冷たい巻雲型の雲量は地方時14:30頃の昼間に多い傾向を示すことが分かった.
著者
森 征洋 鎌田 章司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.79-88, 1994-02-28
被引用文献数
6

"肱川あらし"と呼ばれる特異な現象が発生する愛媛県肱川河口付近の風の日変化の平均的特性について調べた.河口付近にある長浜の風の日変化は瀬戸内海沿岸の平野部とは大きく異なった特徴を示し,日中に比べて夜間から早朝に風速が強くなり,陸風が顕著に発達する.長浜では総観場の気圧傾度が小さく,天気がよい場合に,夜間,風速が1Om/sを越えるような強い陸風が発生することがある.この長浜の夜間の強風は,対比を行った沿岸平野部では見られないもので,特異な地形で生ずる強風の典型例を示している.
著者
高藪 出 金光 正郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.435-447, 2010-07-31
被引用文献数
1
著者
神田 学 森脇 亮 鈴木 譲 ロート マティアス オーク ティム
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.453-462, 2000-06-30
被引用文献数
7

密集低層住宅街(世田谷)の接地境界層において, 渦相関法とシンチロメーター法を併用した乱流フラックス観測を行い, 以下の結論を得た.(1)世田谷住宅街における放射収支・熱収支解析データを提示し, その特徴を示した.(2)2高度におけるシンチロメーター計測により, 顕熱と同時にゼロ面変位を推定する手法を提案した.推定されたゼロ面変位は, 平均的にはMacDonald et al.(1998)の形態学的手法から算定された値とほぼ一致した.また, ゼロ面変位が大気安定度に依存することを指摘した.(3)渦相関法とシンチロメーター法の比較により乱流フラックスの空間代表性が検討された.シンチロメーター法のソースエリアは渦相関法のそれに対して, 不安定時で2〜3倍の広さを持つ.30分平均値での顕熱は両手法で有意な差がない.顕熱の標準偏差は大気安定度に関わらずシンチロメーター法の値が小さい.これは計測スパンの長いシンチロメーター法における渦の空間積分効果であると考えられる.
著者
神田 学 森脇 亮 横山 仁
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.44, no.10, pp.723-731, 1997-10-31
参考文献数
21
被引用文献数
10

明治神宮で行われた集中観測データを森林環境気象モデルに同化させ, 神宮の森の気候緩和機能と大気浄化機能が定量的に評価された. その結果以下の結論が得られた. 1) 数点のポロメーター計測データから未知パラメータを非線形回帰させた気孔コンダクタンスモデルは, 気象学的測定から得られた群落気孔コンダクタンスの傾向をよく表現した. 2 )この気孔特性を森林環境気象モデル (NEO-SPAM2) に同化させて熱収支計算を行ったところ, 実測値を良好に再現した. 3) 神宮の森の気候緩和機能を大きく左右する植物の活性度 (気孔コンダクタンス) は, 樹冠部ほど大きく, 下方へ向かうほど減少している. また植物の活性度は午前中の早い時間帯に最も盛んであることが示された. 4) 本モデルを用いて, 神宮の森における汚染物質吸収量 (鉛直下向きフラックス) を算定したところ, その日中の平均値は, 観測結果と定量的によく一致した. またピーク時のNO_2フラックスを神宮の森全体の面積に換算すると, 乗用車93台分が排出するNO_2量に相当することが明らかとなった. 5 ) また汚染物質吸収は早朝に効率的に行われること, 樹冠付近の葉への吸収が活発なことなど, 観測で得られなかった大気浄化の時空間変動特性が示された.