著者
壁谷 英則 大橋 和彦 杉本 千尋 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.475-480, 1999-05-25
被引用文献数
3

BLVエンベロープペプチドにより引き起こされる免疫調節活性について検討するために, 2種類のヘルパーT細胞エピトープペプチド(peptide98および61)をヒッジに免疫した. 免疫した8頭のヒツジのうち4頭しかリンパ球幼若化反応を示さず, 残りの4頭はコントロール同様反応を示さなかった. このそれぞれ異なる2種類のペプチドにより誘導される反応について検討するためにそれぞれのペプチドに特異的に反応する細胞株を樹立した. peptide98特異的細胞株はCD4陽性細胞からなるが, 対照的にpeptide61特異的細胞株はCD8, およびMHCクラスII発現細胞から構成されることがフローサイトメトリー解析により明らかとなった. さらに, RT-PCRによる解析から, peptide98特異的細胞株は, IFN-γを産生するがIL10を産生せず, 逆にpeptide61特異的細胞株はIFNγは産生しないがIL10を産生することが明らかとなった. peptide61により誘導されるIL10産生及びMHCクラスII発現亢進という特徴は一般的なBLV感染症の病態進行にともなう特徴と一致しており興味深い. BLVエンベロープのpeptide98と61は, ヒツジ末梢血単核球に質的に異なる免疫反応をもたらし, BLV感染症の病態進行に影響をもたらしているのではないかと考えられる.
著者
高木 敬彦 峡谷 香澄 遠藤 治 後藤 純雄 光崎 研一 村田 元秀 松下 秀鶴
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.193-199, 1992-04-15

相模原市の大気の汚染度を変異原性の面から把握するため浮遊粉じんを1年間定期的に採取し調べた. 浮遊粉じん量は季節別に有意差はみられなかったが, その溶媒抽出物(タール状物質)の冬期の濃度は他の季節に対して有意に高いことが判った. 変異原性はTA100, TA98株の両菌株に対してS-9mix添加の有無にかかわらずみられることや, その高さは採取日により数倍〜数十倍大きく変動し, 日曜日, 盆, 正月など産業活動の低い時期には変異原性も低くなる傾向を示した. 季節別では冬期が夏期や春期に比べて有意に高いことが判った. また, S-9mix無添加系が添加系よりも高い日が比較的多く認められたことからTA98NR株を用いてニトロアレーン類の存在を調べた結果, その存在は冬期よりも夏期に多いことが判った.
著者
見上 晋一 谷口 和之 石川 勉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.357-369, 1985-06-15

成熟日本ウズラの膵臓内分泌島の免疫細胞化学的研究を行い, 膵島の分布, 細胞構成, 島細胞の微細形態について観察した. ウズラ膵島は主としてA細胞とD細胞からなるα島と, B細胞とD細胞からなるβ島, およびA, B, D細胞からなる混合型β島に区分された. β島は各膵葉に分布し, α島と混合型β島は膵葉と第三葉に限局して分布していた. A細胞は抗グルカゴン血清および抗グリセンチンC端血清に対して陽性の球形顆粒を有し, B細胞は抗インシュリン血清および抗アヒルC-ペプチド血清に対して陽性の多形性の顆粒を含んでいた. D細胞は抗ソマトスタチン血清に対して陽性の球形顆粒を含んでいた. 混合型β島は膵葉と第三葉のβ島にA細胞が混入して形成される. B細胞のみから成るβ島は著しく小型で, 膵臓全体に分布していた.
著者
中村 和市 橋木 善春 北川 浩 工藤 規雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.735-742, 1982-10-25

アヒルみずかき皮下にコロイダル・カーボン又は明ばん沈殿ウシ血清アルブミンを投与すると, 腰リンパ節リンパ洞内遊走性食細胞はこれらの物質を摂取後リンパ索よりリンパ小節に侵入し, コロイダル・カーボンを摂取した食細胞は食細胞小島を形成しつつ最終的には胚中心周囲域あるいは肝中心内に到達した. また西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼでは上記の食細胞を介する節内移動のほか, リンパ洞内皮および実質内細網細胞を介する移動もみられた. これらの事実は食細胞とリンパ球間の協調がリンパ節内における初期免疫応答時に重要であることを示すと思われる.
著者
岡本 敏一 山田 純三
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.863-870, 1981-12-25

アヒル腺胃における内分泌細胞を光学および電子顕微鏡で観察し次の所見を得た. 1) アヒル腺胃には銀親和細胞は認められなかった. 2) 深在腺には多数の好銀細胞が卵円形と2極あるいは多極性の突起をもった形でみられた. 浅在腺には卵円形のものが少数みられるにすぎなかった. 3) これらの内分泌細胞を電顕観察し, 分泌顆粒の形態から次の4形に型別した. I型:顆粒が径約100〜250 nmの球形で種々の電子密度と, 空胞状から充実したものまで多様な内容を示すもの. この型の細胞は深在腺のみにみられ, Grimelius法またはSevier-Munger法で検出される突起をもつ細胞と同じ細胞と考えられた. II型: 径約200〜450 nm大の多数の大型球形顆粒の間に, 長径約200〜500 nmの多形性顆粒が少数混在する. いずれの顆粒も電子密度が高く, わずかな明調帯を有していた. 少数の脂肪様滴がこれらの顆粒間に混在していた. III型: 顆粒は径約230〜400 nmの球型で種々の電子密度を示す. この顆粒がアヒル膵島のD細胞顆粒と同様の形態であることから, この型の細胞はD細胞と推察された. IV型: 顆粒は球形で径約80〜200 nmと非常に小型で, 限界膜に囲れ高い電子密度を示す. 4) これらの内分泌細胞はすべて閉鎖型と推定した.
著者
橋本 善春 北川 浩 工藤 規雄 杉村 誠
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.597-605, 1982-08-25

アヒル胸腺髄質内にみられる, 細胞内小胞および細胞間小胞を形成する上皮性細網細胞の微細構造とその分泌能を電子顕微鏡的免疫組織化学によって検討した. 細胞内小胞を含有する上皮性細網細胞は, その小胞内にPAS陽性物質を含み, 粘液物質の分泌および貯蔵を示す像がみとめられたが, 細胞間小胞を構成する細胞にはこれらの像はみとめられなかった. horseradish peroxidase (HRP) で免疫すると, 抗HRP抗体が小胞含有上皮性細網細胞内に検出されたが, ファブリキウス嚢除去アヒルではみとめられなかった. これらの所見は, アヒル胸腺上皮性小胞含有細胞は粘液物質の分泌および貯蔵能を有することを示唆するものと思われた.
著者
Maslog Florita S. 本部 真樹 林田 直樹 吉原 一浩 両角 徹雄 松村 正利 廣田 好和
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:9167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.283-285, 1999-03-25
被引用文献数
4 5

フィリピンのアヒルから分離したPasteurella multocida serotype A菌体のリポ多糖体 (LPS), 莢膜抗原(CCA), リボゾーム(RS), および細胞外層(OCL)の分画に対するニワトリ末梢血白血球の貧食能の影響を, フローサイトメーターにより検討した. これら4つの分画の中でCCAのみに, 単核細胞及び多形核白血球の貧食能を増強する作用かみられた. この成績から, CCAは貧食能増強誘発作用を有することが示された.
著者
鈴木 順 局 博一 菅野 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.779-787, 1991-10-15
被引用文献数
1

代表的な抗不整脈薬, procainamide (PA)(class Ia), lidocaine (LC)(class Ib), propranolol (PN)(class II)およびverapamil (VP)(class IV)を成熟ラットに投与したときの心電図変化の特徴についての検討を行った. 同時に心筋細胞膜電位についても1-5 Hzの刺激頻度で測定を行った. いずれの薬物においても高用量においては洞房ブロックあるいは房室ブロックが見られ, またverapamilを除く3種の薬物ではQRS持続時間の延長とQRS波形状の変化が観察された. これらの薬物の心電図への影響を人やイヌに対するものと比較すると, ラットでの特徴は(1)LCとPNでQT間隔の延長が明瞭に認められ, それは用量依存性であったこと, (2)VP0.6mg/kg以下の投与量でRR間隔の短縮がみられたことであった. LCとPNとも胸部単極誘導心電図では右心室側のQT間隔を延長したこと, および心筋細胞膜電位の実験ではO相の脱分極速度(Vmax)が減少しながら, 活動電位持続時間にこれらの薬物がほとんど影響を及ばさなかったことから, これら2つの薬物のQT間隔延長には右心室側の局所的な電気的興奮時間の遅延が関与しているものと考えられた. 一方, VPによるRR間隔の短縮はPNの前処置により消失したことから, ラットにおけるこの反応は主にVPの末梢血管拡張作用による交感神経反射が関与しているものと考えられた.
著者
梶原 栄二 重田 暁子 堀内 浩幸 松田 治男 古澤 修一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.607-614, 2003-05-25
被引用文献数
21

鶏ではファブリキウス嚢(BF)がB細胞の分化に重要な組織であるが,一部の哺乳動物では回腸バイエル氏板(PP)などのgut-associated lymphoid tissue(GALT)が嚢相当組織であると考えられている.鶏GALTにはPPも存在するし,また盲腸扁桃(CT)などの存在も知られている.しかしながら,これらの組織とBF濾胞でのB細胞発生の関係は検討されていない.そこで本研究では胚発生におけるPP,CTとBF濾胞形成を免疫組織化学的染色により比較した.その結果,BFでは13日胚でMHC class II陽性細胞のリンパ濾胞への移入開始と少数のB細胞の集族が,15日胚以降でB細胞のさらなる濾胞移入が観察されたが,同じ13日胚でMHC class II陽性細胞の集族,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の出現(PPとCTの原基)が腸管で初めて観察された.15日胚ではMHC class II陽性細胞,Bu-1陽性細胞およびIgM陽性細胞の数も増加した.これらの胚発生時期のPPの出現は,メッケル憩室付近と盲腸・回腸分岐部付近の2箇所に限定されていた.さらに,BF濾胞形成を完全に阻害させた場合でもPPとCTの原基が観察された.本研究により,鶏のPPやCTの形成はBF濾胞形成や外来抗原の刺激に依存することなく,胚発生の段階でBF濾胞形成と平行して行われている事が明らかになった.
著者
松井 利博 藤野 隆志 加島 準子 辻 守康
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.487-489, 2000-02-25
被引用文献数
3 17

中国産シマリスよりクリプトスポリジウム小型種のオーシストを分離し, 実験動物齧歯類への感染性について調べた.自然感染シマリスには著明な臨床症状がみられなかった.オーシストは類円形を呈し, 大きさは平均4.8×4.2μmで, ヒトやウシから分離されたCryptosporidium parvumに類似していた.実験動物齧歯類に1.6×10^6個のオーシストを投与した結果, SCIDマウスは7日目からオーシストを排泄し始め, 50日目から10^5個台のOPG値を示した.ICRマウスでは13日と16日目に蔗糖液浮遊法でのみオーシストが検出されたが, ラット, モルモット, ウサギからは認められなかった.100日と102日目に感染SCIDマウスを剖検した結果, 空腸下部から回腸にメロゾイトやオーシストが検出されたが, 胃からは全く認められなかった.したがって, 本原虫C.parvumで, その感染性からgenotype 2の可能性が考えられた.
著者
日笠 喜朗 森田 剛仁 二岡 由紀子 佐藤 耕太 島田 章則 籠田 勝基 松田 浩珍
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.187-190, s・iv, 2000-02-25

カーリー・コーテッド・レトリバーに肥満細胞の高度の白血化が認められ, 循環虚脱, 嘔吐, 下痢, 肺水腫, 血小板減少症, 高ヒスタミン血症, 溶血性黄疸, 肝・腎障害を呈していた.組織所見では腹腔内腫瘍塊を伴った肥満細胞の浸潤が内臓に認められ, 腫瘍細胞はサフラニンおよび蛍光色素のベルベリンに強陽性に染色された.本例は内臓に腫瘍細胞の浸潤を示す結合組織型肥満細胞性白血病と診断されたイヌでは極めて希な報告例である.
著者
網本 勝彦 佐々木 修 磯貝 誠 北島 崇 大石 英司 岡田 伸隆 安原 寿雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.681-685, 1998-06
被引用文献数
2 15

Clostridium novyi(C.novyi)B型菌のα毒素を精製し, トキソイド化後, りん酸アルミニウムゲルアジュバントを加えた精製α毒素トキソイドワクチンを作製した.4μg以上のトキソイドを含むワクチンを2回免疫したモルモットは全てC.novyi B型菌の芽胞攻撃に対して耐過した.攻撃前のモルモットの抗毒素価をVero細胞を用いて測定したところ, 10単位以上を示したモルモットは全て攻撃耐過していた.ついで, トキソイド化した培養上清及びこれに不活化した破砕菌体を加えた非精製α毒素トキソイドワクチンをモルモットへ免疫および攻撃したところ, 10単位の抗毒素価が攻撃後のモルモットの生死の境となった.また, 死亡したモルモットの攻撃から死亡までの時間は抗毒素価に比例した.以上の成績より, α毒素が, Clostridium novyi B型菌の培養上清中の主要防御抗原であるものと推察された.
著者
Pak Son-Il Han Hong-Ryul 清水 晃
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1013-1018, 1999-09-25
被引用文献数
4 36

病院犬から分離したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)12株の試験管内薬剤感受性, 毒力, パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子型別を行った. 薬剤感受性試1験では, 大多数の菌株が供試したβ-ラクタム系に耐性で, 全株がグリコペプチド系に感受性であった. アミノ配糖体系は抗菌活性がなかった. LD<50>は菌液を腹腔内接種し, Spearman-Kardcr法で求めた. MRSAとMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)のマウス致死活性は, 正常マウスとサイクロフォスファミド処置マウスで意義ある違いが認められず, 両株は同等の毒力を有していた. MRSAとMSSAの間でエンテロトキシン産生率に違いがみられ, MRSAの83.3% (10/12),MSSAの14.3%(1/7)がエンテロトキシンを産生じ, MRSAの優勢エンテロトキシン型はB型であった. MRSAの全株が莢膜型5型に属し, 一方MSSAは多様な莢膜型(4株:5型, 1株:8型, 2株:型別不能)を示した. PFGE解析では, 12株のMRSAは48.5-630.5kbの間で9-11のフラグメントを産生し, 6つの異なったパターンを示した。 これらの結果から, エンテロトキシンの産生性と莢膜型はマウスに対する病原性に役割を演じていないこと, またPFGEはMRSAの特徴づけに有用な方法であることが示された. 本論文は韓国の獣医学領域における最初のMRSA分離報告例である.
著者
森垣 孝司 九郎丸 正道 金井 克晃 向山 満 本道 栄一 山田 純三 アグングプリヨノ スリハディ 林 良博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.773-779, s・iii-s・iv, 2001-07
被引用文献数
14

ジャワオオコウモリとコキクガシラコウモリの精上皮周期を光学顕微鏡下で観察し, 両種の精子形成における特徴を比較した. ジャワオオコウモリでは精上皮周期は11ステージに分類され, 精子形成は13ステップに区分されたのに対し, コキクガシラコウモリでは精上皮周期は10ステージに, 精子形成は13ステップに区分された. また, 形態にわずかな違いが見られるものの, 両極の先体の形成における特徴は非常によく似たものであった. ジャワオオコウモリではステップ7以降で先体が徐々に伸長, 扁平化し, 最終的にスコップ状の形になるのに対し, コキクガシラコウモリではステップ8以降に先体が伸長, 扁平化してわずかに退縮し, 精子放出直前には先体が細長いへらのような形になった. この両種で見られた先体の伸長と扁平化は食虫目の動物種でも認められており, この特徴は翼手目と食虫目の近縁性を反映するものだと推測された.
著者
立石 美加 堀井 洋一郎 丸山 治彦 名和 行文 土屋 公幸 牧村 進
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.491-494, 1997-06-25

ミラルディア(Millardia meltada)のIgG抗体をイムノアフィニティークロマトグラフィー法で精製し, ウサギ抗血清を作成した. この抗体を用いて, 寄生虫特異的ミラルデイア抗体をELISAにて測定したところ, 従来の方法に比べ著しい感度の上昇が認められた. ミラルデイアはStrongyloides venezuelensisとNippostrongylus brasiliensis感染に対して効率的な抗体産生を行っていることから, この動物の寄生虫に対する高感受性は一般的な免疫不全によるものではないと考えられる.
著者
高井 伸二 森下 大洋 西尾 恭 佐々木 由香子 椿 志郎 樋口 徹 萩原 紳太郎 仙波 裕之 加藤 昌克 瀬能 昇 安斉 了 鎌田 正信
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.681-684, 1994-08-15
被引用文献数
9

Rhodococcus equiの毒力マーカーである15-17kDa抗原に対するモノクローナル抗体を用いたコロニーブロット法を強毒株簡易同定法として開発し, 軽種馬生産牧場の土壌,母馬及び子馬糞便から分離した菌株のプラスミドプロファイルとの比較から疫学調査における本法の有用性を検討した. 子馬糞便由来778株, 母馬糞便由来170株及び土壌由来1,267株のそれぞれ238株, 6株及び85株がコロニーブロット陽性を示し, そのうち, それぞれ235株(98.7%), 6株(100%)及び75株(88.2%)で病原性プラスミドが検出された. 一方, コロニーブロット陰性を示した子馬糞便, 母馬糞便及び土壌分離株からランダムに50菌株を選び, プラスミドプロファイルを調べたところ何れの菌株においても病原性プラスミドは検出されなかった. 以上の成績から, 本法は疫学調査において信頼度の高い, 迅速簡易な強毒株同定法であることが示された.
著者
鉾之原 節夫 Singh Upendra M. Jha Vijay C. PRADHAN Adarsha DEV Sadanand MANDAR Ram K.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.719-722, 2003-06-25
被引用文献数
1 1

ネパール東部地方で,水牛に披行,浮腫,蹄や尾の壊痕性損傷,別種,横臥を示し死亡する「デグナラ」病が発生した.臨床的に,シラミの体毛への産卵,徐脈,低体温,脱水,皮膚の発疹や黄痘がみられた.血液学的には,桿状好中球の増加,巨大血小板,低アルブミン血症と高グロブリン血症が特徴的であった.ギムザ染色後の鏡検下で,赤血球表面に青色の微細粒子を認めた.発生初期のテトラサイクリン療法が効果を示した.
著者
筒井 敏彦 長谷 正義 TANAKA Akihiro 藤村 奈苗 堀 達也 河上 栄一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.603-606, 2000-06-25
被引用文献数
8 34

アクロソームの保護, 融解後の精子活力の持続が明らかな希釈液にOrvus ES Paste(OEP)を添加した.犬凍結精液を用いて人工授精を行った.凍結精液は, 卵黄トリス・フルクトース・クエン酸液を用いて, グリセリンおよびOEPの最終濃度は, それぞれ7%, 0.75%で作製した.人工授精は, 末梢血中progesterone値から推定した交配適期に行った.子宮内授精は, 開腹手術によって片側子宮角内に精子数1億を注入して行った.また, OEP無添加の精液については, 精子数3億を授精した.腟内授精は, 精子数10〜40億について行った.その結果, 子宮内授精を行った10頭中9頭(90.0%)が受胎した.産子数は, 1〜7匹で, 平均3.6±0.9匹であった.精子注入側の排卵数に対する子犬数の割合は, 平均71.8%であった.注入側の排卵数を子犬数が上回った例はみられなかった.OEP無添加では, 4頭とも不妊であった.腟内授精の結果は, 10億と40億を授精した計6頭は不妊, 20億では3頭中2頭が受胎した.以上のように, OEPを添加した犬凍結精液の子宮内授精で高率に受胎することが明らかとなった.今後は, 手術によらない子宮内授精法の開発および腟内授精に使用可能な犬精子の凍結法の開発が必要と思われる.
著者
吉松 組子 有川 二郎 大洞 嗣子 板倉 智敏
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.863-868, 1997-10-25
被引用文献数
22

重症複合型免疫不全 (SCID) マウスをハンタウイルスHantaan76-118およびSR-11株に感染させ正常マウス, 新生マウスおよびヌードマウスにおける感染経過を比較した. SCIDマウスは両ハンタウイルス感染によって感染後32日から38日目に死亡した. ハンタウイルスによって致死的となる新生マウスの場合と異なり, 神経症状よりも全身の衰弱が顕著であった. 感染後2週間目までにBALB/cマウスから脾細胞を移植することによってSCIDマウスには受け身感染防御が成立した. 免疫組織染色と主要臓器からのウイルス分離によってヌードマウスもSCIDと同様に全身感染が成立していることが明らかとなったが, ヌードマウスは感染後, 観察期間の8週間以上生存した. 以上の結果から, マウスにおける致死的なハンタウイルス感染からの防御には宿主の免疫が重要であることが示された. さらに免疫介在性の病原性についてSCIDマウスへの脾細胞移植によって検討した. 感染後3週目に脾細胞移植を受けたSCIDマウスは, 血中抗ハンタウイルス抗体の出現に伴って血中尿素体窒素 (BUN) の上昇が見られ, 宿主の抗ウイルス免疫が病原性に関わっていると考えられた.