著者
小坂 俊文 金子 吉史 中田 陽子 松浦 光信 田中 茂男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.963-967, 1996-10-25
被引用文献数
3

イヌマクロファージおよび好中球介在性免疫応答に対する綿状キトサンの皮下埋没の影響について化学発光法(CL)を用いて検討を行った. 白血球数はコントロール群では術後120時間目まで有意に減少した(P<0.05). しかしながら, キトサン埋没群では白血球数,特に好中球数は24から96時間目まで増加した(p%lt;0.05). 全血におけるCL反応は, コントロール群では術後48時間目および96時間目に減少した(p<0.05)のに対し, キトサン群では埋没後120時間目まで高い活性が持続した(p<0.05). CL法によるマクロファージ活性の測定ではコントロール群では術後24, 48, 96時間目に著しく減少した(p<0.05). 5 mg/kgキトサン群では24および48時間目では減少した(p<0.05)が, 72時間目から120時間目までは高い活性が認められた. 10 mg/kgおよび20 mg/kgキトサン群では術後のマクロファージのCL反応の低下は認められず, 20 mg/kg キトサン群では術後120時間目まで高い活性が持続した(p<0.05). これらの結果よりキトサンは術後の免疫抑制に対する予防として有効で有用な免疫賦活物質であることが示唆された.
著者
林田 健一郎 金子 俊朗 竹内 崇 清水 洋彦 安藤 邦雄 原田 悦守
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.149-154, 2004-02-25

ラクトフェリン(LF)は,ミルク,血液など体液中に広く存在する鉄結合性タンパク質で,多様な生理機能を待つことが知られている.本実験では,経口投与したLFが,リウマチ性関節炎のモデルであるラットアジュバント関節炎モデルにおいて,抗炎症及び鎮痛効果を示すか否か検討した.加えて,LFの免疫調節機能の特徴を調べる目的で,同モデルにおいて,LPS刺激によるTNF-α及びIL-10産生に対するLFの効果も検討した.LFを関節炎惹起3時間前から1日1回予防的に投与した場合,あるいは関節炎惹起後19日目から7日間治療的に投与した場合のいずれにおいても,LFは関節の腫脹と疼痛を抑制した.関節炎惹起25日目のラットに,LFを単回投与したところ,用量依存的に鎮痛効果が観察され,この効果はナロキソンによって消失した.また,LFは,連続投与した場合だけでなく,単回投与でも,LPS刺激によるTNF-αの産生を抑制しIL-10の産生を増加させた.以上の結果から,経口投与したLFは,関節炎の炎症と疼痛に対し予防的及び治療的効果を待つことが明らかとなった.更に,LFは,TNF-αの産生を抑制しIL-10の産生を増加させるという性質の免疫調節機能を待つことが示唆された.これらのことから,LFが関節炎に対する天然の治療薬になることが期待される.
著者
伊東 登 岡田 洋之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.439-442, 1993-06-15

セキセイインコにおけるクロラムフェニコール(CP)の薬物動態および安全性を調べた. 100mg/kgまたは200mg/kgの筋注後15分で最高血中濃度35.3μg/mlまたは90.7μg/mlに達し, その後半減期2.5ないし2.7時間で減少した. この結果, 100mg/kgのCPを1日3回または200 mg/kgを1日2回投与することによりセキセイインコの感染症の治療に有効であると思われた. CPまたは生理食塩水を1日2回または3回, 5日間筋注後, 赤血球, PCV, ヘモグロビン, 血漿総蛋白, AST, ALT, LDHおよびCKを測定した. 実験前後の体重も測定し, さらに全身臓器を病理組織学的に検索した. 注射の影響として注射部位の筋肉障害が顕著であった. 200mg/kgのCPを1日2回5日間投与する方法は比較的安全であると思われた.
著者
矢部 光一 村上 要一 西田 里織 関口 正保 古濱 和久 御領 政信 岡田 幸助
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.867-872, 2001-08-25
被引用文献数
1 14 11

ニューキノロン系抗菌剤ofloxacinの5, 10および20mg/kg/dayを雄の3ヵ月齢の幼若犬に8日間反復経口投与し, 関節症誘発に対する無影響量と血清および関節軟骨内濃度を調べた. 肉眼的に, 上腕骨および大腿骨関節軟骨に水疱形成を特徴とした関節症が10および20mg/kg/day投与群でみられた. しかし, 5mg/kg/day投与群ではこれらの変化は全く認められなかった. 病理組織学的には, 水疱は関節軟骨中間層の空洞として認められ, 空洞周囲では軟骨細胞の壊死, それに引き続き軟骨細胞のクラスター形成が観察された. 薬物動態解析では, 最高血清中濃度(C_<max>)および血清中濃度下面積(AUC_<0-24>)が用量依存的に増加したが, これらは単回および反復投与時には明らかな差異は認められず, 薬剤の蓄積性がないことが示唆された. なお, 最終投与2時間後におけるofloxacinの関節軟骨内濃度は血清中濃度の1.8 (day 2)から2.0 (day 8)倍の値を示した. 以上の結果より, 本実験条件下では, 幼若犬におけるofloxacinの8日間反復経口投了時の関節症誘発に対する無影響量は5mg/kg/dayであり, そのC_<max>, AUC_<0-24>および関節軟骨内濃度はそれぞれ3.4μg/ml, 35.1μg・hr/mlおよび7.0μg/gであった. したがって, 血清中ofloxacin濃度より関節症の発現が予測できると考えられた.
著者
播 英仁 輿水 馨 原澤 亮
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.203-205, 1987-02-15
被引用文献数
3

日本各地におけるニワトリ由来ウレアプラズマの分布を調べる目的で, 1都13県82鶏群の計456羽のニワトリの口腔を検査したところ, 1都8県, 31鶏群の110羽 (22.6%) がウレアプラズマ陽性であった。ウレアプラズマの分離率は農家, 個人宅, 幼稚園, 小学校で飼育されているニワトリの方が, 専業養鶏場のニワトリより高率であった。1都8県に散在している11鶏群から分離された11株は代謝阻止試験によりすべて血清学的に均一な性状を示し, ヒト由来Ureaplasma urealyticum T960株およびウシ由来U. diversum A417株とは区別された。
著者
甲斐 知恵子 落久保 文子 沖田 賢冶 飯沼 哲夫 見上 彪 小船 富美夫 山内 一世
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1067-1070, 1993-12-15
被引用文献数
16

臨床的にイヌジステンパーウイルス(CDV)感染症と診断された犬の脳, 脳脊髄液細胞, 脾臓, 末梢血細胞から, マーモセットBリンパ球由来のB95a細胞株を用いてウイルス分離を試みた. ウイルスは高率に分離され, また分離ウイルスのCPEの型や大きさに違いがあり, 野外流行株に異なる性状のウイルス群が存在することが示唆された. このようにB95a細胞株による分離は, 野外CDVの生態学的研究に有用と考えられた.
著者
大橋 文人 小谷 猛夫 大西 堂文 片本 宏 仲田 恵利香 Fritz-Zieroth Bernhant
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.875-876, 1993-10-15
被引用文献数
7

斜頸および運動失調を主症状とした10歳のマルチーズ種犬に対し, 神経学的検査, X線検査, 血液・生化学的検査, および脳波検査とともに, MRI検査を実施した. MRI検査では, Gd-DTPAによるコントラスト増強T1強調像に, 後頭領域に信号強度の増加した腫瘤を認めた. 後頭下開頭術および小脳虫部正中切開術による生検診断では腫瘤組織は乳頭状増殖を示す悪性脈絡叢乳頭腫であった.
著者
貝 健三 小峯 優美子 小峯 健一 浅井 健一 黒石 智誠 小堤 知行 板垣 昌志 太田 實 熊谷 勝男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.873-878, 2002-10-25
被引用文献数
6 23

乾乳早期のブドウ球菌性乳房炎に罹患したホルスタイン種の乳牛に対して,ウシラクトフェリンの臨床効果を評価した.3農場でブドウ球菌性乳房炎を発症した41分房から無作為に選定した12分房にはウシラクトフェリンを投与し,29分房には対照として抗生剤を投与した.その結果,ウシラクトフェリン投与区では91.7%の乳房炎分房が分娩後7日目までに治癒し,対照区では48.3%が治癒した.別の分房を用いて乳汁の変化を調べたところ乳房炎分房における乳汁中のブドウ球菌数は,ウシラクトフェリンを投与した5分房および抗生剤を投与した対照の5分房において,投与後,有意に減少した(p<0.05).この乳汁における全細胞数は,ウシラクトフェリンを投与した分房では増加したが,対照分房では変化が認められなかった.また,健康な乳房においてもウシラクトフェリンを投与した6分房に限って,乳汁中全細胞数が増加し,これらの細胞の多くは多形核白血球および補体受容体であるCD11bの陽性細胞といった食細胞群であった.乳房炎分房における乳汁中C3濃度はウシラクトフェリンを投与した5分房で有意に増加したが(p<0.05),対照の5分房では投与後の有意差は認められなかった.以上の結果より,ウシラクトフェリンによる治療には乾乳早期のブドウ球菌性乳房炎に対して宿主の自然免疫を誘導し,乳房炎の治癒率が高まる可能性が示唆された.
著者
大越 伸 北野 訓敏
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-PLATE II, 1966-02-25

昭和38年1月23日, 東京都下三鷹屠場において, ホルスタイン種, 3才牝牛の涙腺嚢から, T. rhodesi と異なる眼虫7隻を検出した. 可検虫体の各部計測値を測定した結果, 1928年ロシアの W. S. ERSCHOW によって報告された T. skrjabini の計測値とほぼ一致するのでこれを同種と同定した. わが国において牛の眼球から T. skrjabini が検出されたことは, まだ報告されていない. 次いで T. skrjabini の分布を知るため, 全国から牛が参集する芝浦屠場において, 17府県から集まった屠殺牛96頭の眼球を検査した結果, 2地区の牛(千葉県4頭, 茨城県1頭)から, 合計16隻の T. skrjabini を検出することができた. さらに昭和40年7月から10月にわたり, 東京都の八丈島と大島, 北海道の新冠種畜牧場, 茨城県の東京大学付属牧場における合計199頭の牛を, 生理食塩液加圧眼球洗浄によって検査した結果, 合計226隻の眼虫を得た. そのうち35隻(15.4%)が T. skrjabini であったので, 本虫はわが国においても広く分布していることが判明した.
著者
一条 茂
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.217-228,図4p, 1966-10

犬における腎,上皮小体および骨の病変の関連性(骨腎系症候群)を知るため,腎・上皮小体・骨検索例26例,腎・骨検索例4例,腎・上皮小体検索例8例および参考としての腎検索例375例を加えた合計413例について,病理組織学的研究を行ない,次の結果を得た.1.腎・上皮小体・骨検索例,腎・骨検索例および腎・上皮小体検索例の合計38例のうち,28例に骨腎症候群を肖定すべき所見が認められた.2.骨腎症候群の発現は,一般的には,腎病変に継発した上皮小体機能冗進および繊維性骨栄養障害症の組合わせによると解される.3.本症候群における骨病変は,従来,一義的に腎性上皮小体機能冗進の結果招来されるとされている。しかし著者は,上皮体の介在性変化を認め得ないで,むしろ腎および骨の両病変の直接的関連性を首肯される例にも遭遇したj4.以上の点から,骨腎症候群の病理発生については,今後さらに検討の必要がある所以を知り得た。5.犬の骨腎症候群における原発性腎病変としては,慢性間質性腎炎または慢性糸球体腎炎などの終末腎病変に限られるべきものではなく,亜急性間質性腎炎,さらにはネフローゼなどの早期病変の場合にまで,拡張されるべきものと解された.6.上皮小体変化として,主細胞の淡明化と肥大・増生およびwatcrcIearcc11の出現,ならびに腺胞構造の不規則化を示す実質細胞配列の異常などを含めた上皮小体機能冗進像が指摘された.7.骨病変は,発端病巣に始まって,管腔性ないし非管性の多中心性小孔形成におよぶOstcodystro一phiafibrosagcneraIisataの像を呈していた.8.石灰転移は,本症候群例較に比的頻発する所 見であって,28例中10例に腎を始めとして,胃粘?膜,肺胞壁,胸膜,牌柱,気管支軟骨,子宮粘膜,・骨格筋々間動脈壁,心内膜,大動脈壁などに,その.州現を認め得た.この変化は,腎障害に多くを帰丁べきものと思考される.9.非腎性の繊維性骨栄養障害症に,上皮小体の増生性変化を伴った4例を得た.犬におけるこの例′に類した報告は,従来皆無である。このような例の存在は,骨賢症候群の検索に当たり,批判的態度を保持する必要性を示唆するものと思われる.10.腎検索例375例のうち,病変が認められたものは175例の多数におよんだ.腎病変の主体をなすものは間質性腎炎で,101例の高頻度に達した.以上,著者は,犬における骨腎症候群の存在を病理組織学的に確認し,あわせて従来の報告にみられない本症候群に属する腎病変の種々相を系統的に解明し,進んで本症候群発病病理学説における一元的解釈に批判を加えた.また,腎病変とは無関係に,繊維性骨栄養障害症および上皮小体機能冗進像を呈する例を得て,犬の小皮十体機龍冗進像の発現の一元的でないことをも明らかにした.
著者
板倉 新 加藤 久宗 王 碧昭 松長 敦子 実川 友史 枝村 一弥 大河原 久子 望月 学 西村 亮平 佐々木 伸雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.1107-1109, 2003-10-25

豚の膵島細胞への傷害作用における補体系の関与について,各種動物血清および抗補体作用を有するsCR1添加血清を用いて検討した.細胞傷害性の程度は種によって大きく異なった.またsCR1によって捕体活性が減弱された血清は細胞傷害性をほぼ失った.これらのことから,血清による豚の膵島細胞への傷害性は捕体が主要な因子であり,また動物種の組み合わせによって捕体と移植細胞の相性が大きく異なることが示された.
著者
兼子 樹広 及川 正明 吉原 豊彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.181-183, 1993-02-15
被引用文献数
3

レース中に骨折した470頭の競走馬の骨折部位を病理学的に検索した. 骨折は四肢の骨に多発(98%)し, 関節内骨折が高率を占めた. 骨折の発症部位に概ね一致して, 過激な運動負荷および乏血性変化としてとらえられる限局性の関節軟骨下骨壊死および骨硬化病変が共通して指摘された. これら病変は剪断負荷および捻転負荷への抵抗力を弱め, 非骨折骨にも多発してみられることから, 競走馬の骨折に対する前駆要因と推測した.
著者
野村 絋一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.185-190, 1997-03-25
被引用文献数
2

犬の脱落膜腫は, 間質細胞性ではなく子宮腺増殖型であることがこれまでのわれわれの報告で明らかになった. 犬の脱落膜腫もげっ歯類の間質細胞性脱落膜腫と同様に黄体依存性かどうかを確かめるために色々な時期の犬子宮について, 脱落膜腫の誘発が可能かどうか, また, 犬の分娩修復期早期の子宮に出現すると報告されているげっ歯類と同様な間質細胞性のいわゆる脱落膜細胞は刺激に対して反応するかどうかを確かめた. その結果は, 機能的黄体の存在する発情休止期初期から中期にかけての時期では脱落膜腫は高率に発生するが, 発情休止期後期では発生しなかった. また, 犬の脱落膜腫は妊娠した場合でもしなかった場合でもその大きさには変わりがなかったが, 同じ機能黄体存在下でもすでに妊娠が進行している子宮角内ではもはや新たな人工的刺激を受け入れないことが判明した. 一方, げっ歯類の脱落膜腫細胞に類似するとされている間質細胞性脱落膜細胞の出現する分娩後修復期早期では, げっ歯類でみられる様ないわゆる間質細胞増殖性の脱落膜腫は形成されなかった. 以上のことから犬でも脱落膜腫の誘起には子宮内膜が機能黄体の感作を受けていることが必要であるが, 一旦妊娠が成立した場合は, 同側の子宮角には新たな脱落膜腫は誘起されないこと, 更に, 分娩後に出現する犬脱落膜細胞は刺激に対して増殖しないことが示された.
著者
森 隆 永田 和哉 石田 卓夫 佐々木 富雄 濱田 香理 仁礼 久貴 大網 弘 桐野 高明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.581-586, 1993-08-15
被引用文献数
2

実験的クモ膜下出血(SAH)後に起こる脳血管攣縮(VS)の病理発生と, 免疫学的反応の関与を明らかにするために, 犬のSAHモデルを用いて, Streptomyces tsukubaensisから分離された, 細胞性免疫抑制剤, FK-506のVSに対する効果を調べた. 実験的SAH後の無処置対照群の脳底動脈では, 典型的なVSを認めた. しかし, そのVSは, FK-506投与群及びステロイド剤とFK-506を併用投与した群のいずれにおいても, 無処置群との間で攣縮血管の収縮率に有意差を認めなかった. 免疫組織化学的並びに病理形態学的検索では, 無処置群の脳底動脈周囲の軽微なリンパ球浸潤以外に, FK-506投与群と無処置対照群との間に, 病変の性質に差を認めなかった. 病理組織学的に, クモ膜下腔の攣縮血管周囲に, FK-506によって抑制されない好中球の明らかな炎症反応を認めた. さらに, 攣縮血管壁の様々な収縮性あるいは退行性変化も認めた. 免疫組織化学的に, 攣縮血管の内膜, 中膜側及び脳幹実質内の毛細血管にIgG, IgM及びC_3の沈着を認めた. これらの沈着はVSにおける血管透過性充進によるものと思われた. 以上の様に, 細胞性免疫抑制剤, FK-506投与により, 血管攣縮あるいはリンパ球浸潤以外の病理学的変化が抑制されなかったことより, SAH後のVSの発生に細胞性免疫の関与が乏しいものと考えられた.
著者
池森 豊 太田 正史 梅田 浩二 ペラルタ ロバート 黒木 雅彦 横山 英明 児玉 義勝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.365-367, 1996-04-25

2種類の鶏卵黄抗体を用いて消化管における動態試験を行った. ヒドロキシメチルセルロースフタレート(HPMCP)抗体粉末(HAP)とコントロール抗体粉末(CAP)を子牛に経口的に投与し, ELISA法により抗体活性を測定したところ, 投与後2時間目には, CAPおよびHAP投与牛の第4胃における抗体価はそれぞれ128倍と256倍であったが, 4時間目には, 2倍および64倍に低下した. これらの結果から, HPMCPを含む抗体粉末は胃液に対してより抵抗性があり, 小腸でより確実に作用する可能性が示唆された.
著者
見山 孝子 坂田 義美 島田 洋二郎 荻野 祥樹 渡辺 麻麗香 板本 和仁 奥田 優 VERDIDA Rodolfo A. 玄 学南 長澤 秀行 猪熊 壽
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.467-471, 2005-05-25
被引用文献数
4 55

関東以北の犬のBabesia gibsoni感染状況を調べる目的で, 2003年4月から10月までの間, 関東以北の13都県の動物病院を対象として調査を行った.B.gibsoni感染症を疑った犬115頭の末梢血, および血清または血漿を採取し, B.gibsoni特異的PCRおよびELISAを用いて感染の有無を確認した.115頭のうち青森, 福島, 茨城, 群馬, 千葉, 東京, 神奈川, 長野8都県の35頭が, PCRもしくはELISAで陽性を示した.陽性犬35頭の品種は, 土佐犬28頭, アメリカン・ピット・ブル・テリア4頭, 雑種3頭であった.陽性犬におけるマダニ寄生歴が明らかなものは3例だけであり, 感染経路としてマダニ以外の要因が関与することが考えられた.陽性犬35頭のうち, 22頭でhemoplasmaの感染が確認され, この割合はB.gibsoni陰性犬よりも有意に高かった.
著者
松本 浩毅 山田 剛久 竹村 直行 左向 敏紀 小山 秀一 本好 茂一 稲田 頼太郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.727-730, 1996-08-25
被引用文献数
1

臨床的に健常でDirofilaria immitis (D.immitis)感染の認められない102頭のビーグルと16頭のD.immitis感染犬の血中免疫複合体(CIC)を免疫粘着赤血球凝集反応(IAHA)法によって測定した. 102頭の健常犬のCIC値は, 28.2±29.1μg/mlであった. CIC値に関しては, 年齢や性による有意差はみられなかった. D.immitis感染犬のCIC値(210±111.4μg/ml)は, 健常犬に比べ有意に高かった(P<0.01). 今回の実験結果より, IAHA法がイヌのCIC測定に適した方法であり免疫複合体介在性疾患の検出あるいは診断に応用可能であると考えられた.
著者
藤瀬 浩 比嘉 一成 中山 孝大 和田 香陽子 落合 秀治 田名部 雄一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.495-497, 1997-06-25
被引用文献数
4 31

劣性である高K(HK)赤血球の表現型を持つ犬が, 日本犬の13の系統あるいは地方犬群の中の10群に発見された. HK犬の発生率は山陰柴犬, 信州柴犬および秋田犬で26-38%であり, その遺伝子頻度は0.513-0.612であった. 韓国の珍島犬は, HK犬の最も高い発生率を示し(42%), その遺伝子頻度は0.652であった. 韓国の他の2つの群もこの変異を保有していた. HK赤血球の表現型を持つ犬は, 台湾, インドネシア, モンゴル, ロシア(サハリン)の犬群には発見されなかったが, 日本および韓国に広がっていた.
著者
宇仁 茂彦 松林 誠 池田 英一 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.s・v, 385-388, 2003-03-25
被引用文献数
3 10

福井,滋賀,岐阜の3県において,捕獲されたニホンツキノワグマの各種内部臓器(肝臓,腎臓,心臓,肺,脾臓,リンパ節,皮膚)の組織学的検索を行った.その結果,18頭すべての肺の全葉の肺胞壁にHepatozoon sp.の未成熟および成熟メロントを見いだした.また,病理学的所見として,メロント,メロゾイトおよび虫体を包含する食細胞結節の周回に炎症性細胞潤滑は見られなかったが,崩壊過程を示す細胞,虫体および結節の周りには炎症性細胞浸潤を見いだした.クマにおけるヘパトゾーン症の最初の報告である.
著者
張 炯寛 小野 満 金 泰鍾 蔡 錦順 津嶋 良典 新倉 昌浩 見上 彪
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1057-1066, 1996-11-25
被引用文献数
6

マレック病ウイルス(MDV)血清2型(MDV2)相同糖蛋白I(gI homolog)のORFは, 355アミノ酸残基をコードし得る1065塩基からなり, MDV血清1型(MDV1)と血清3型(七面鳥ヘルペスウイルス: HVT)とはアミノ酸配列において各々49%, 36%の相同性が認められた. また予測されるN-linkの糖鎖付加部位並びにシグナル配列や膜貫通部位が存在し, 膜糖蛋白の性状を有していた. 転写産物解析により, このORFの翻訳開始コードンの上流56-147 bpで転写される3.5 kb mRNAがMDV2 gI homologの特異転写産物として同定された. MDV2(HPRS24株)感染鶏由来の抗血清を用いた免疫沈降解析によりMDV2 gI homologを発現するリコンビナントバキュロウイルス(rAcMDV2gI)の蛋白発現を検討したところ, rAcMDV2gI感染Sf9細胞では45-43 kDaの特異バンドが検出された. またツニカマイシン処理により糖鎖付加阻止試験を行ったところ, MDV2gI homologの前駆体蛋白と見られる35 kDaのバンドが検出された. これらの発現蛋白はホモのみならずヘテロの血清型MDV(GA株, SB-1株, FC126株)感染鶏由来の抗血清によっても認識されたことから, 型間共通のエピトープの存在並びに3血清型によるMDV感染細胞でのgIの発現が示唆された.