著者
康 炳奎 輿水 馨 尾形 学
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.295-305, 1970-12-25

豚の伝染性萎縮性鼻炎(AR)の主体をなすと考えられるBordetellabronchisePtica感染豚の血清学的診断として,凝集反応が応用されうる可能性について,基礎的な検討を行なった.まず,AR由来および実験動物由来のB.bronchisePtica20株につき,抗原用菌株の選択と本菌の相変異の関連性をみるため,血液寒天上の集落形態と生物学的諸性状につき検討した.ついで本菌の家兎免疫血清,AR自然感染豚血清およびspr豚血清を用い,反応用抗原作成培地の種類,抗原の処理法,反応感作温度の影響,反応の特異性につき検討した.さらに,隔離飼育した自然感染豚を対象に,抗体価の推移と菌の分離状況を追究した.得られた成績を要約すると,次のとおりである.1. B.bronchisePtica菌株の相変異と生物学的諸性状の関連性は,血液寒天上の集落形態および溶血性と,従来本菌属の相変異判定の指標とされている酸凝集性,あるいは血球凝集性などについて,菌株間の相互関係に必ずしも一定した関係が認められず,また初代分離株からも明らかにIII相菌と判定された菌株が検出されたことから,凝集反応における抗原用菌株の選択には,慎重な検討が必要であることが明らかにされた.2. B.bronchisePticaI相菌のトリプトソイブイヨン24時間培養生菌液を用い,直接,可検血清を希釈し,56°02時間感作,4°C24時間後に判定する゛′Boui110n法"が,反応の特異性および鋭敏度において,比較的すぐれた結果を示した.さらに自然感染豚血清とB.bronchisePticaを用いての吸収試験の結果,本反応の特異性が確認された.3・ 隔離飼育されたAR自然感染豚2群19頭の豚につき,凝集抗体価の経時的推移と菌分離の関係を,約3カ月にわたって追究した.本反応による凝集抗体(1:10以上)は,生後約20週(約4カ月)ごろより検出される傾向があり,と殺時に病変(甲介萎縮)および凝集価(40~10240倍)が認められたが,実験期間中B.bronchisePticaが検出されなかった2頭の豚では,凝集抗体価の上昇は全く認められず,また病変も陰性であった.このことから,野外例におけるB.baonchisePtica感染保菌豚の摘発に,本反応が応用されうる可能性が示唆された.
著者
筒井 茂樹 平沢 健介 武田 真記夫 板垣 慎一 河村 晴次 前田 健 見上 彪 土井 邦雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.785-790, 1997-09-25
被引用文献数
7 20

in vivoマウス肝細胞における高用量ガラクトサミン誘発アポトーシスについて検索した. 3g/kg GalN投与群では, Tdt-mediated dUTP nick end labeling (TUNEL) 陽性細胞が6時間後から観察されはじめ, HE染色切片における好酸性小体およびTUNEL陽性細胞の出現は, 24時間後で最も顕著になった. また, 48時間後では, 肝実質細胞の変性および壊死が目立ち, TUNEL陽性細胞はほとんど見られなくなった. 1.5g/kg GalN投与群では, 3g/kg GalN投与群に比べ, 病変は穏やかで, 好酸性小体およびTUNEL陽性細胞は24時間後ではほとんど見られず, 48時間後で顕著になった. さらに, アガロースゲル電気泳動によって見られるDNAの"はしご様"断片化パターンは, 3g/kg GalN投与後24時間および1.5g/kg GalN投与後48時間で最も顕著となったが, 3g/kg GalN投与後48時間では減少した. 一方, sGOTおよびsGPT活性は, 3g/kg GalN投与後48時間で著しく上昇した. これらの結果から, in vivoで高用量ガラクトサミンにより誘発される細胞死は, アポトーシスにより生じ, 後にネクローシスによる可能性が示唆された.
著者
安川 正敏 長野 慶一郎
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.135-PLATE II, 1960-04-25

白レグの成鶏(♂)に, Ta^<182>の0.05〜1.5μc/g を皮下注射し, 血漿蛋白分屑に及ぼす影響を中心に追求し, つぎの結果をえた. 1. Albuminが減少した. 投与量の多い,1.5μc/gおよび0.5μc/gにおける減少は特に顕著で, Albumin peakがφ位成分あるいはγ Globulinのそれよりも低いPatternを示した. 2. Albumin減少に対し, 相対的に増加する分屑は一定してない. 3. 血球像の変動としては, 赤血球および白血球(特にHeterophylic L.)の増加が所見された. 4. Ta^<182>は肝, 肺に最も多く蓄積し, 脾, 腎がこれにつぐ.
著者
長谷川 承 左向 敏紀 竹村 直行 小山 秀一 本好 茂一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.789-790, 1992-08-15

陽イオン交換カラムを使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりネコ糖化ヘモグロビンを測定した. 臨床上正常な猫37頭及び糖尿病猫12頭の糖化ヘモグロビンの百分比はHbAlcではそれぞれ1.70%および3.54%, HbAlでは1.88%および3.85%と, 糖尿病猫で有意な高値を示していた(Plt;0.05). このことからネコ糖化ヘモグロビンは糖尿病診断の指標になると思われた.
著者
浅利 将男 和久井 信 深谷 幸作 鹿野 胖
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.803-806, 1985-10-15

牛の結腸ら^^.せ^^.ん^^.わ^^.な^^.の形成について, 頭尾長2.1〜25cmの胎仔を用いて観察した. 大腸では小腸に遅れ, 頭尾長3.5cm胎仔において近位結腸部に最初の折れ曲がりが観察された. その後, 頭尾長6.5cmに至るまでに, 近位結腸部は巻き込みはじめ, これらの巻き込みは頭尾長9.3cmに至るまでに円錐状にまとまりはじめた. これらの近位結腸の円錐状の巻き込みは, およそ頭尾長13〜23cmの間に, 成牛型の円盤状の結腸として完成した.
著者
宮前 武雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.369-377, 2005-04-25

抗癌剤投与による易感染宿主で向肺ウイルス感染が示す臓器への侵襲態度を動物モデルで解析した.コーチゾン(CO), シクロフォスファミド(CY)の皮下接種マウスが経鼻感染したセンダイウイルスの臓器への侵襲をウイルス血症, ウイルス抗原の検出で追跡した.CO, CYの各1回接種と名古屋株の感染時, ウイルス血症が18時間目と3日目に夫々出現し, 同時に気管リンパ節に侵襲した.更に両群の肝細胞(10日目)と脾リンパ細胞(5-10日目)に侵襲した.感染後, COとCYを夫々3回接種時, 大脳組織(神経細胞, 脈絡叢)への侵襲と肺の重篤感染を夫々に認め, 各腹腔内実質臓器への侵襲は軽度に増し, 双方間に有意差がなかった.感染時にCO1回, 更にCY2回接種の場合, 脳血管の抗原陽性率が高く, 星膠細胞層, 軟膜, 脈絡叢, 脳室上皮も抗原陽性となり神経細胞への侵襲は稀であった.全臓器への侵襲は顕著に上昇し, 呼吸器, 脳, 腹腔内実質臓器の順に低減した.血清HI価は陰性を保った.MN株感染の場合, さらに星膠細胞の侵襲から神経細胞侵食, 神経膠症を招く脳関門の破壊を見, 該血管の抗原は60日間は存続した.CO, CY併用2群は感染後, 死マウスは抗原陽性大脳血管に結節形成を示し, 遅延型過敏症を示唆した.
著者
笛吹 達史 メアス ソティー 今内 覚 大橋 和彦 小沼 操
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.287-289, 2003-02-25
被引用文献数
2 10

牛免疫不全ウイルス(BIV)ならびに牛白血病ウイルス(BLV)血清疫学調査を行った。北海道内10地区より採取した390検体を検査したところ, BIVとBLV陽性率はそれぞれ11.0%と33%であった。和牛の調査ではBIVが16.6%の陽性率を示した。一方,BLV陽性の乳牛を調べたところ,18.7%と高率にBTV陽性を示した。これらの結果から,BIVが北海道全体に分布することが明らかとなった。
著者
妙本 陽 眞鍋 昇 今居 譲 木村 嘉博 杉本 実紀 岡村 佳則 福本 学 酒巻 和弘 庭野 吉巳 宮本 元
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.641-649, 1997-08-25
被引用文献数
13 15

ブタ卵巣の健常卵胞から調製した顆粒層細胞を反復感作したマウスの脾細胞とミエローマから常法に従ってハイブリドーマを作成し, IgM抗体を産生しかつ免疫蛍光法にて健常卵胞顆粒層細胞とのみ反応するものを選抜した. 次いでハイブリドーマが産生する抗体が培養顆粒層細胞にアポトーシスを誘発出来るかを調べ, 2種の細胞株 (PFG-1およびPFG-2) を選抜した. PFG-1抗体は顆粒層細胞細胞膜の分子量55kD, 等電点5.9の蛋白質を認識し, PFG-2抗体は分子量70kD, 等電点5.4の蛋白質を認識することがウエスタンブロット法にて分かった. 顆粒層細胞を0.1μg/mlのPFG-1抗体あるいは10μg/mlのPFG-2抗体を添加した培地で3時間培養すると顆粒層細胞にアポトーシスを誘発することが, 核の形態, DNAのラダー形成およびフローサイトメーターによる核相解析にて確認できた.
著者
平田 聡子 森 裕司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.845-850, 1995-10-15
被引用文献数
12

野生動物など捕獲, 採血が困難な動物種では, 生態研究や繁殖管理を目的に生殖内分泌機能の非侵襲的評価法の確立が待たれている. 糞中性ステロイドホルモン測定は, 糞の採材が動物を拘束する必要はなく容易に行えるため, 最も適していると考えられる. 本研究では反芻動物への応用を目指した研究モデルとして, シバヤギにおける糞中プロジェステロン測定法の確立を試み, 血漿中プロジェステロン濃度の変動との相関について検討を行った. 正常性周期を回帰する雌シバヤギ (n=4) および卵巣を摘出しプロジェステロンカプセルを皮下移植したヤギ (n=2) から糞および血液を経時的に採取し, それらのプロジェステロン濃度をラジオイムノアッセイ法により測定した. 糞の処理・保存・プロジェステロンの抽出方法について様々な条件で検討を行った結果, -20℃で凍結保存後に乾燥処理 (100℃で1.5時間) した糞0.25gをエーテルで一回抽出する簡便な方法を採用した. 本法による糞中プロジェステロンの回収率は約70%であった. 供試した全ての動物で, 糞中プロジェステロンと血漿中プロジェステロンの一致した変動が観察され, 両者の相関は交配させ妊娠に移行した場合および卵巣摘出ヤギにプロジェステロン処置した場合においても維持されていた. 以上の成績により反狗動物における糞中プロジェステロンの測定は排卵周期や妊娠を知る手段として有効であることが示された.
著者
翁 強 村瀬 哲磨 淺野 玄 坪田 敏男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.603-605, 2005-06-25
被引用文献数
2 8

2001年10月に交通事故により死亡した野生タヌキ1頭を収集した.本個体は年齢査定により4.5歳と判定された.外生殖器は雌型を示したが, 外陰部より大きな陰核がペニス様に突出していた.内生殖器は精巣と子宮の形状を呈した.精細管内にセルトリ細胞のみが存在し, 精子形成は認められなかった.PCR法によりY染色体上にある性決定領域(SRY)の単一バンドを増幅した.以上の結果より, 本例のタヌキは雄性仮性半陰陽と診断された.
著者
黄 禹錫 金 賢一 李 殷松 林 正黙 廬 湘鎬 申 泰英 黄 光南 李 柄千
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-5, s・viii, 2000-01
被引用文献数
8

血清無添加で,"HanWoo"(Bos taurus coreanae)の卵子を牛卵管上皮細胞(BOEC)と共培養し,産生された組織増殖抑制因子metalloproteinase(TIMP)-1の精製純化と,胚の発育効果を調べることを目的とした.TIMP-1はHPLC-System(Perseptive Biosystems Inc.,U.S.A)とゲルろ過法により精製純化し,分子量はSDA-Page(Bio-Rad Co.,U.S.A)により32kDa蛋白質であることが明らかとなった.培養BOECのTIMP-1局在を,isothiocyanate蛍光染色標本で証明した.血清無添加培養液にTIMP-1を,0,1.25,2.5ならびに5μg/mlの割合で加え,体外受精により得られた胚の発育を観察した.この結果,2.5μg/ml添加で桑実胚と胚盤胞への発育効果を認めた.今回の試験から,BOECはTIMP-1を産生し,この糖蛋白質は"HanWoo"(Bos taurus coreanae)体外受精卵の発育を桑実胚と胚盤胞へ促進した.
著者
村上 昇 幸野 亮太 中原 桂子 井田 隆徳 黒田 治門
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.S・viii, 763-766, 2000-07-25
被引用文献数
3

一年以上の間, 室温22度, 14時間明:10時間暗の照明条件下で飼育されたシマリスを短日照明(10時間明:14時間暗)と低温条件に暴露することにより季節外冬眠を誘起した.我々は一年のどの時期でもこの季節外冬眠を誘起できた.この季節外冬眠は季節間において, 冬眠一党醒インターバルや, それぞれの冬眠や覚醒時間には有意な差を認めなかったが, 冬眠に入るまでの期間の長さにおいて夏のみ約60日を要し, 他の季節の平均30日より長かった.さらに, 覚醒インターバルでの覚醒時刻は冬では明期に起こるのに対し, 春では明期と暗期でほぼ等しい割合で起こった.これらの結果はシマリスの冬眠がサーカディアンリズム(概日リズム)とサーカニュアルリズム(概年リズム)の両者にリンクしていることを示唆している.夏の季節外冬眠において, セロトニン枯渇剤であるパラクロロフェニルアラニン(PCPA)の冬眠中での慢性投与は冬眠を阻止し, 非冬眠動物への投与は逆に冬眠を誘発した.一方, オピオイドのアンタゴニストであるナロキソンの投与は覚醒時間の延長を起こした.これらの結果は, セロトニンによる冬眠誘超や維持機構がサーカニュアル(概年リズム)システムと独立したものであることを示唆している.
著者
鈴木 正嗣 梶 光一 山中 正実 大泰司 紀之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.505-509, 1996-06-25
参考文献数
29
被引用文献数
13

北海道東部産のエゾシカ胎子87例で胎齢を推定し, 受胎日の変異と外部形態の発達過程とを明らかにした. 胎子の体重(W)と胎齢(T)との間には, T=(√^3<W>+2.730)/0.091関係式が認められた. この式を用いて胎齢を算出し, 捕殺日からの逆算により求められた推定受胎日は, 10月7日から翌1月17日の範囲で変異していた. しかし, その多くは10月中旬から11月上旬にかけて集中していた. また, 11月下旬以降に受胎したと思われる胎子9例のうち, 6例が1歳メスから採取された標本であった. これは, 北海道東部個体群の良好な栄養状態が, 1歳メスの成長と性成熟を冬期間にも可能にすることを示唆している. 胎子の外部形態においては, 感覚毛や一般被毛の発現時期と白斑の発現時期とが重複していなかった. また, いくつかの発達過程上の変化が, 特定の体重で起こることも確認された. これらの特性を利用することにより, 胎子成長は4段階のステージに分割できた. 各ステージにおける胎子の外部形態的特徴は, エゾシカ以外のニホンジカでも簡便な胎齢推定に役立つと考えられる.
著者
ナマンガラ ボニフェス 横山 直明 池原 譲 田口 修 辻村 邦夫 杉本 千尋 井上 昇
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.751-759, 2008-08-25
参考文献数
35
被引用文献数
5

アフリカトリパノソーマ症(AT)は家畜およびヒトの健康を著しく損なう,獣医学および医学上きわめて重要な熱帯原虫病である.しかしながらATに有効なワクチンおよび安全な治療薬はない.野生動物やアフリカ在来品種のウシではATに自然抵抗性を有することが知られているが,獲得免疫によるAT抵抗性メカニズムは不明である.本研究ではTrypanosoma congolense (Tc)急性感染期マウスにおけるCD4/CD25陽性T細胞の役割を,抗CD25モノクローナル抗体(抗CD25)処置によって同細胞群を選択的に排除することで解析した.その結果,抗CD25処置群では感染初期の末梢血液中におけるTc増殖が有意に抑制され,生存日数の延長が観察された.また,抗CD25処置群のサイトカイン応答ならびにTc抗原特異的抗体応答はいずれも対照群とは逆にTh1タイプに偏っていた.以上の結果はTc感染抵抗性に感染初期のTh1タイプ免疫応答活性化が必要であることを示唆している.
著者
桑原 博義 布谷 鉄夫 田島 正典 加藤 篤 鮫島 都郷
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.901-909, 1994-10-15
被引用文献数
20

離乳期の子豚に発生した新しい豚病を検索した. 本病は臨床的に元気消失, 発熱,削痩, 発咳などとともに高度な腹式呼吸を特徴とするため俗にヘコヘコ病と呼ばれている. 罹患子豚に共通した病変はび慢性のII型肺胞上皮細胞の増殖を伴った間質性肺炎, 髄膜脳炎, リンパ組織の萎縮などであった. 罹患子豚の諸器官から初代豚肺細胞培養(PLC)に原因ウイルスが分離され, 血清学的に豚生殖器・呼吸器症候群(Lelystad)ウイルスと同定された. 直径約49nmの多数のウイルス粒子が, 分離ウイルスを感染させたPLC培養の肺胞上皮細胞と肺マクロファージの細胞質に検出された. 本病は分離ウイルスをコンベンショナルの子豚に鼻腔内接種することにより再現された.
著者
筒井 敏彦 天野 正 清水 敏光 村尾 育子 Stabenfeldt George H.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.613-617, 1989-06-15
被引用文献数
3

猫胚の子宮内移送の発現状況を明らかにするため,妊娠子宮169個の黄体数,胎子数を観察し,次の結果を得た.1頭あたりの黄体数は2-11個,平均5.6±1.9(SD)個で,左右卵巣の黄体数の間には負の相関関係が認められた(P<0.05).また胎子数は1-8頭,平均4.5±1.4頭で,左右子宮角内の胎子数の間には相関関係は認められなかった.着床率は25-100%で平均83.9±19.5%であった.胚の子宮内移送は69頭(40.8%)に認められ,1頭あたり移送胚は1-3個であった.黄体数の多い側の子宮角から少ない側への移送が66頭(95.7%),少ない側から多い側への移送が1頭(1.4%),左右黄体数の等しい例での移送は2頭(2.9%)であった.移送の結果,左右黄体数の差よりも左右子宮角内の胎子数の差が小さくなったものが54頭(78.3%),変らなかったものが8頭(11.6%),逆に多くなったものが7頭(10.1%)であった.このことから猫においても胚の子宮内移送によって,左右子宮角内の胎子数が均等化することが認められた.