- 著者
-
乙藤 洋一郎
松田 高明
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1997
北上地塊,西南日本東部,そして沿海州シホテアリン山地の研究結果から次のような興味深いテクトニクスが明らかになってきた.北上地塊は日本海が拡大する直前にアジア大陸に付加した可能性を指摘した.北上地塊に分布する114Ma-119Maの年代を示す原地山層と62-71Maを示す閉伊崎火山岩類の古地磁気データは,伏角が-20度から9度の低伏角を示した.今回発見した北上地塊の低伏角は,北上地塊が太平洋プレートに押されて25-30Maにアジア縁辺にやってきたとすることで説明ができる.北上地塊がアジア大陸に付加したのは日本海が拡大する直前であったことになる日本海拡大が起こっている際の,西南日本弧の回転のテクトニクスについて次のようなモデルを提出した.20〜15Maにおこった日本海拡大に伴い,九州から関東山地にわたる西南日本弧は対馬の西方にある同転軸の周りで時計回り回転運動を行った.西南日本弧が30度ほど時計回り回転すると,現在の諏訪湖近辺で,関東山地とそれ以西の小西南日本ブロックの2つの独立に運動するブロックに分かれた.関東ブロックは諏訪湖近辺を回転軸として時計回り回転運動を続け,60度回転した.小西南日本弧は引き続き対馬の西方にある回転軸の周りの回転運動を行い,20度ほど回転した.回転の際,小西南日本弧の東端は現在の赤石裂線に沿って滑って南下した.中央線の折れ曲がりは島弧の塑性変形ではなく,二つの剛体,関東ブロックと小西南日本弧,の回転運動が原因で造られたと結論した.このモデルは,西南日本で観察される中央線の折れ曲がりに新しい見方を提供する.