著者
上原 邦昭
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

デジタル映像を対象とする検索システムが従来のデータベースシステムと大きく異なる点は,(1)検索のための効果的な内容記述方式を開発する必要があること.(2)映像コンテンツ自身による分類や構造化が必要なこと,(3)利用者の主観,視点,嗜好などを反映した感性的な検索や,映像のストーリやキーワードによる高度な意味的な検索が求められていることなどである.本年度は,前年度に開発した階層的内容記述形式を用いて,柔軟なストーリ検索が可能な知的映像検索システムを開発した.知的映像検索システムは,階層構造の上位レイヤに記述されたストーリを用いたストーリ検索機能,特定の人物の行動,場所,時相に注目した個別属性検索機能,ストーリに対応する映像をすべて表示させるか,もしくは部分的な映像を表示させる選択的映像表示機能,余分な挿話を省略して映像のダイジェストを作成する映像ダイジェスト機能などを有するシステムである.具体的には,Lehnertの提案したAffect Unitに基づく動画像の内容記述モデルを開発した.本内容記述モデルでは,予め典型的なシーンをプロトタイプとして用意しておき,ボトムアップのアプローチに基づいてストーリの内容記述を行っている.映像データの内容記述モデルでは,ユーザの記述コストが高くなることが問題となるが,本システムでは,プロトタイプを階層構造として管理して,ユーザの労力を軽減するようにしている.さらに,ストーリの内容記述を具体化して,ユーザの主観の差異をできる限り吸収するようにしている.また,本内容記述モデルを用いたシステムをプロトタイプ指向言語AMULETを用いて構築し,具体化についての実験を行った.
著者
北里 宏平
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は当初の計画通りの成果をだすことができたが,最終的な成果を投稿論文にまとめるところまでは至らなかった.残った課題については今後取り組む予定である.本研究では,「はやぶさ」探査機に搭載した近赤外線分光器の観測データを用いて小惑星イトカワの宇宙風化作用を明らかにし,小惑星の形成進化についての知見を深めることが目的である.宇宙風化作用は,月や小惑星のように大気の存在しない天体表面下において微小阻石の衝突や太陽風照射の影響から光学的性質が変化する現象であり,その度合いは物質が表面に露出していた時間を示す指標となる.この効果は近赤外線波長域の反射スペクトルで顕著に変化が見られ,定量的に測ることができる.前年度では,スペクトルデータのマッピング処理に必要となる小惑星表面の光散乱特性を表す測光関数を導出し,それらの結果を投稿論文にして出版した.本年度では,得られた測光関数を用いてスペクトルデータを一定の観測幾何条件に補正し,天体表面のグローバルなスペクトルマップのデータベースを作成した.その結果,鉱物組成の不均質性はみられなかったが,宇宙風化作用の度合いや表面物質の粒子サイズに起因すると考えられるアルベドおよびスペクトルスロープの地域差が検出された.この結果は,小惑星の形成進化過程を考える上で非常に重要な情報を秘めた可能性があり,今後様々な理論的・実験的研究によってより詳細な議論が進められると考えられる.
著者
大久保 晋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

スピンフラストレーション系では、相互作用が競合するためマイナーな作用が支配的である場合がある。スピンJahn-Tellerではスピン-格子相互作用により格子を歪ませることになる。本研究ではフラストレーション効果の解明のため、カゴメ格子やパイロクロア格子をもつ反強磁性体におけるスピンフラストレーション効果を、強磁場ESRを用いることで緩和の速いスピンダイナミクスを調べ、格子を変えてもスピンの揺らぎが強く残ることを明らかにした。
著者
小椋 たみ子 松尾 雅文 松嶋 隆二 常石 秀一 竹島 泰弘
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

1.Duchenne型筋ジストロフィー児165名に対して知能、発達評価を行なった。(1)IQ69以下の精神発達遅滞は25,6%、IQ 70-89が39.6%、IQ 90-109が28.7%、IQ 110以上が6.1%で精神遅滞が1/4であった。知能(IQ, DQ)の平均は80.2であった。(2)PIQとVIQの差はWISC(94名)、新版K式(26名)においては有意差なし、WPPSI(45名)においてはPIQIQ(84.8)がVIQ(74.2)より有意に高かった。(3)下位検査の評価点はWISCでは類似問題が最低点(7.0)、迷路が最高点(11.0)、WPPSIでは理解問題が最低点(5.2)、迷路が最高点(9.1)であった。言語概念化能力と言語表出能力が低かった。(4)32名の1年以上後の再検査(平均26.6ヶ月間隔)でFIQ, PIQ, VIQとも有意差はなかった。進行に伴う知能の低下はないと考えられる。2.Duchenne型筋ジストロフィー児43名(平均7.1歳)にITPA言語学習能力検査を実施した。「ことばの表現」「ことばの類推」の評価点が低かった。3.サザンプロット法、PCR法、RT-PCR法、直接塩基配列解析法により遺伝子異常を同定した症例について、遺伝子異常と知能との関連を検討した。欠失・重複例(97名)と微小変異例(53名)で、IQの平均値の差はなかった。欠失・重複例と微小変異例について大脳、脊髄をコントロールするエクソン44と45の間にあるdp140のプロモーターと知能の関係をみると、両例とも遺伝子異常がイントロン44より上流にとどまる群はイントロン45より下流に及ぶ群に比べ、IQ、VIQ、PIQとも有意に得点が高かった。なお、欠失・重複例はイントロン45より下流に及ぶ群(65.4%)、微小例はイントロン44より上流にとどまる群(74.1%)で出現率に有意差があった。ITPAにおいてはdp140のプロモーターとの関係は見出されなかった。4.筋ジス児の言語音の有標性を検討するために構音検査を実施したが、誤構音は少なかった。
著者
岡田 章宏
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イギリスでは、1997年以来地方自治制度改革が大規模に進められてきた。そこでは、地方政府に対し「権限踰越の法理」が適用されない広範な裁量が与えられ、「コミュニティ・リーダー」として多様な民間セクターと協働し、様々な課題に積極的に対応することが求められている。本研究では、こうした動きを近代以降の流れに位置づけながら、この国の伝統的な「住民自治」的あり方との歴史的位相を明らかにした。
著者
和田 進 二宮 厚美 山崎 健 岡田 章宏 浅野 慎一 澤 宗則 太田 和宏 橋本 直人 岩佐 卓也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本国内のみならず、グローバル社会全般にわたって不平等、格差、秩序の崩壊などの社会矛盾が広がりつつある。その構造的な要因と打開の方向を検討するのが本研究の目的である。本研究にかかわる研究者はこれまで「人間発達と社会環境」の相互関係、つまり主体と環境の双方向作用に注目しながら共同研究を推進してきた。その成果に立ち、本研究においては現代世界の秩序の崩壊と再構築の現状分析、および、その対抗軸として人間発達human developmentと新しい公共性neo publicnessの分析を行った。国際連合の提唱する「人間開発」やA.K.センの「潜在能力論」の限界をこえる「人間発達」のありかた、J.ハバーマス、U.ペック等の掲げる公共性の内包する矛盾を再検討する形で、現代社会の秩序形成を探求した。なお、その成果は報告書「Human Developmentと新しい公共性を軸とした社会秩序の学際的研究」(総ページ数446頁)としてまとめた。
著者
飯田 文雄 月村 太郎 辻 康夫 網谷 龍介 早川 誠 渋谷 謙次郎 津田 由美子 淺野 博宣 浪岡 新太郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、世界各地で展開されつつある多文化共生社会形成のための多様な政策を巡って、2000年代以降に生じた新たな議論の特質について、教育政策・福祉政策・人権政策という具体的な3つの政策類型に即して、北米・西欧・東欧各国の事例を手がかりに詳細な国際比較を行い、多文化共生社会の在り方に関する体系的・総合的な知見を獲得することを目指すものである。
著者
冨田 佳宏 中井 善一 長谷部 忠司 屋代 如月 徳田 正孝
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究では,一般熱力学的負荷条件下の金属ガラスの超塑性,変形・破壊の実験的検討とその評価,比例・非比例ひずみ履歴を伴う高ひずみ速度負荷試験による実験的検討と構成式の定式化,電子顕微鏡(SEM)・原子間力顕微鏡(AFM)・ナノインデンテーション法による金属ガラスの破壊機構の観察と局所領域の応力および強度の評価を行う.平成19年度は金属ガラスの環境強度について検討した. 3.5%食塩水中・室温において,一定試験力のもとで疲労き裂伝ぱ試験を行った結果,水溶液に浸漬した直後には過渡的なき裂伝ぱ挙動が観察されたが,定常状態においては,時間基準のき裂伝ぱ速度da/Dnは,応力拡大係数Kこよらずほぼ一定となった.3.5%食塩水中・室温において,繰返し試験力を負荷してき裂伝ぱ試験を行った結果,繰返し速度および応力比によらず,時間基準のき裂伝ぱ速度心da/dtが,最大応力拡大係数K_<max>によって規定されており,その関係は,前述の一定試験力におけるda/dt-K関係とほぽ一致していた.また, 0.05%, 0.01%食塩水中においてもき裂伝ぱ挙動を調べた結果,いずれの食塩濃度においても,1サイクル当たりのき裂伝ぱ速度da/Dnは大気中よりも大きく加速したが,超純水中におけるda/Dn-ΔKは大気中とほぼ一致していた.また,食塩水中の繰返し試験力下の破面形態は,一定試験力下の破面形態と同様であったが,超純水中の破面は,大気中における破面と同様であった.また,環境強度と直接結びつくものではないが,分子動力学による検討では,原子弾性剛性係数Bij^αの正値性(局所格子不安定性)により,構造のないアモルファスに欠陥の中の欠陥というべき不安定原子が存在すること,0.2%ひずみ以降,不安定原子が増加しており,塑性変形の担い手として新たな欠陥が導入されていること,などを明らかにした.
著者
冨田 佳宏 長谷部 忠司 屋代 如月 高木 知弘
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

分子動力学, 離散転位動力学, 連続転位理論, フェーズフィールド法, 結晶塑性理論, 均質化法, 有限要素法を駆使し, ナノからマクロに至る材料の複数の階層の組織形成と応答をシームレスに結合するモデルを構築し, 変形, 相変態等によって創生する微視組織の予測と対応する材料の力学特性の評価も可能とする。加えて、材料組織形成制御による所望の力学的特性を具備した材料の創生への途を開く。
著者
冨田 佳宏 中井 善一 屋代 如月 安達 泰治 岩本 剛 比嘉 吉一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

変形誘起変態が変形,応力,温度,ひずみ速度によって影響され易い性質を最大限活用して,変形誘起相変態の発生に伴う微視組織の創生ならびに成長を制御し,使用目的に応じた,材料の強度,延性,靭性等の機械的特性を発現させることを目指し,実験によりマイクロからマクロスケールに至る変形誘起相変態現象を詳細に検討し,以下に示す各スケールにおける変態のメカニカルモデルを構築し,その応用の可能性を示した.1.分子動力学的手法を用いて,結晶格子構造の安定性を評価することにより,マイクロスケールの相変態発生過程を検討し,対応した相変態のマイクロメカニカルモデルを構築した.2.結晶方位に依存したマルテンサイト構造を考慮しつつ,メゾスコピックなマルテンサイトエンブリオの発生とその成長を表現可能なメゾメカニカルモデルを構築した.3.近い2つの階層のモデルに均質化法を適用することによりこれらを連結し,マイクロ・メゾとメゾ・マクロメカニカルモデルを構築し,マルチスケールメカニカルモデルを提案した.4.相変態のマルチスケールメカニカルモデルにより,材料に発生するひずみ,応力,ひずみ速度,温度等のマクロスケールの物理量を操作することにより変形誘起変態を誘導することによって所定の特性を具備する材料の創生方法を提案した.5.磁気力顕微鏡によって得られたマルテンサイト相の分布形態ならびにそれを平滑化して得られた体積含有率と提案したモデルによるシミュレーションによって得られた結果を比較することで提案したメカニカルモデルの妥当性を検討した.本研究によって得られた変態のメカニカルモデルをシミュレーション過程に導入することにより,メゾスケールの材料構造を制御した機能性材料の新しい創生法の提案の可能性に加えて,従来困難とされてきた,材料の機械的特性の自由な設計に対して途が開かれると同時に,形態設計と融合することで新しい設計あるいは製造技術の開発に貢献する.
著者
屋代 如月
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,整合界面を構成する種々の格子構造について「第一原理格子不安定解析」を行うことにより,界面転位発生の臨界ミスフイットの評価や第三元素添加による界面安定化など,2相整合耐熱超合金の界面原子構造設計につながる重要な知見を,電子レベルから精密に評価することを目的とする.昨年度は,基本となるNiおよびNi_3Al単結晶の格子不安定性を詳細に評価した上で,W, Cr, Bの添加の効果について検討した.本年度は,界面原子構造設計の指針となる格子不安定クライテリアマップをより多くの元素について検討するために,Ni以外の10族元素Pd, Ptならびに11族元素Cu, Ag, Auについて,[001]方向単軸引張下の格子不安定性を評価した.本研究の動機にあるように,小数の原子しか扱えない第一原理計算では,強い周期性を仮定した上で変形させるため,系が不安定となっても転位等の局所変形を生じることなく,引張方向の原子面はく離に相当する点まで応力は単調に増加した後,ピーク応力を示して低下する.このピークを「理想引張強度」として評価すると,臨界ひずみは0.23〜0.34の範囲内に分布し,そのときの応力の大小関係はほぼヤング率に応じたものとなった.一方,引張下の格子不安定性を調べると,これまでの報告同様いずれの元素も上述のピークひずみより遙かに小さいひずみで格子不安定条件に達していた.ここで,Pd, Cu, AgはNi, Ni_3Alと同じく横方向変形の等方性がくずれるBorn不安定を示していたのに対し,Pt, Auはせん断に対するB_<44>不安定となっていた.臨界ひずみ-臨界応力上に各元素の理想引張強度ならびに格子不安定となる点をプロットすると,前者は広く分布して相関が見られなかったのに対し,後者は低ひずみ側で,原点を通る同一直線上に乗るような分布を示した.
著者
屋代 如月
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

第一原理計算による格子不安定性解析により,FeマトリックスにY,O,Ti,Alを添加した系の,安定添加サイト・自由エネルギーの大小,酸素の溶解熱,そして力学特性として弾性係数の行列式の正値性(格子安定性)を評価した.モンテカルロシミュレーションでは,酸化イットリウムや酸化チタンを平均化粒子として近似したシミュレータを用いて,原子空孔や結晶粒界などの複雑な条件下での析出形態について検討した.
著者
中野 修
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.121-130, 1991-07

epidermal growth factor (EGF)が胃粘膜において,如何なる機序で損傷粘膜の修復機転あるいはその恒常性保持に関与するのかを胃粘膜細胞を用いたin vitroの系で検討した。静止期に同期させたモルモット培養胃粘液細胞を10%血清存在下でEGFと共に刺激すると,細胞数及びDNA合成は対照に比し刺激時間及びEGFの濃度に依存して増加し,その最大効果はlOng/ml EGF刺激24時間で観察された。細胞を0.5%血清下で[3^H]-アラキドン酸で標識しつつEGFを加え上清を薄層クロマトグラフィー(TLC) 法で分析すると,上清中にプロスタグランジン(PG)E_2を主とするアラキドン酸(AA)代謝産物の産生が認められた。ラジオイムノアッセイ(RIA)法によりPGE_2量を定量すると,10%血清下でEGF刺激によりPGE_2分泌は刺激後6時間まで時間及びEGFの濃度に依存して増加し,その最大濃度は4.18X10^<-7>Mであった。又,シクロオキシゲナーゼ(COX) 阻害剤であるインドメタシン(IND)をEGFと同時添加すると,EGFにより刺激されたPGE_2分泌はほぼ対照レベルまで抑制された。INDは又,EGFの細胞増殖刺激効果をも抑制したが,さらにPGE_2を同時添加することによりINDにより惹起された増殖抑制はPGE_2の濃度に依存して有意に解除された。従って,EGF刺激により分泌されたPGE_2がEGFの増殖刺激作用に関与する可能性が考えられた。次に,どのような機序でEGFがPGE_2分泌を刺激するかを検討した。EGFは0.5%血清下で,添加したAAの濃度に依存してPGE_2分泌を刺激した。又,EGFは刺激後の細胞の破砕液を酵素源として[14^C]-AAからの[<14>^C]PGE_2への転換率より評価したCOX活性を亢進させ,かつウエスタンプロット法によりEGF刺激細胞においてはCOX酵素蛋白質の誘導が認められた。これらはEGF刺激により,COX蛋白質誘導,その活性冗進及びPGE_2分泌の順序で認められ,これら3者間に明確な時間的相関性が認められた。一方, EGFはCOX刺激を認める同条件下で評価した細胞のホスホリバーゼA_2活性には影響を与えなかった。以上より胃粘液細胞においては, EGFはCOX蛋白質合成過程を刺激し,かつ外液中のAAを利用することによりPGE_2分泌を刺 激するものと考えられ,このようなPGE_2を介した増殖刺激機序がin vivoで認められるEGFの胃粘膜保護作用の一部を担う可能性が示唆された。
著者
渡辺 香織 西海 ひとみ 戸田 まどか 奥村 ゆかり 岡田 公江
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ストレスがPMSの第1要因であることを示した。さらにストレス対処、睡眠の満足感、月経の悩み、喫煙がストレスを介してPMSに間接的な影響を及ぼしていた。また、唾液による生理学的評価からPMSではストレス認知が月経周期に伴い変化し、慢性ストレス状態を示すsIgA値の低下を認めた。ストレスマネージメントによる教育プログラムの効果を認め、今後の課題としてこれらを活用したピアサポートを教育機関などで拡大する必要性を示唆した。
著者
川谷 充郎 小林 義和 野村 泰稔
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.橋梁交通振動のアクティブ制御による制振効果の確認研究代表者らが開発してきた模型桁,模型車両およびアクティブ制振装置を用いて実験的にアクティブ制御の制御効果を示すとともに模型実験で用いられた制御理論を用いて理論解析を行い,実験結果との比較を行った。解析で用いる制御理論は出力フィードバック制御とロバスト安定性が高いと思われるH∞最適制御理論とした.そして実橋に対するアクティブ制御の制振効果を理論的に確認するために,阪神高速道路梅田入路橋の応答データに基づき,曲げ振動だけではなく曲げとねじり連成振動に対しても制御を行い,出力フィードバック制御とH∞最適制御理論との制振効果の比較を行った.結果として,H∞最適制御理論による橋梁交通振動の動的応答解析結果から,曲げ振動および曲げとねじり連成振動共に制振効果が高いことが分かった.2.歩道橋群集歩行振動のアクティブ制御による制振効果の確認大阪ドーム前歩道橋のうち最も揺れやすいと報告されている,支間長30.19m,幅員3.4mの区間を対象として現地歩行振動実験を行い,振動応答結果に基づき歩行外力モデルを検討するとともに,歩行者の振動感覚アンケート調査を行った.さらに,単独共振歩行および群集歩行に起因する振動の低減化対策について解析的に検討した.結果としてTMDは単独共振歩行に対しては効果的であるが,群集歩行時には共振成分以外の振動はあまり低減されず,振動を感じることがわかった.アクティブ制御においては,最適レギュレータ理論,H∞制御およびファジィ制御を適用したが,全ての制御理論において制振効果が高く,歩道橋に対しても,その有用性が確認された.各制御理論の比較から,H∞制御が最も制振効率が良く,単独・群集歩行時の共振成分以外の様々な振動成分を低減できることが明らかとなった.
著者
大月 直樹 丹生 健一 白川 利朗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

HPV陽性扁平上皮癌の培養細胞株にE6およびE7に対するsiRNAを導入することにより、E6およびE7の発現が抑制され、p53およびRbの発現がmRNAレベル、タンパクレベルでともに増強し、結果として細胞の増殖は抑制され、アポトーシスが誘導されることがin vitroで確認された。現在in vivoでの実験を行い、解析中である。
著者
中嶋 美和 (林 美和)
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

平成20年度は1935年7月の人事で浮上した真崎教育総監更迭問題を中心に、二・二六事件が発生するまでの陸軍内部の動向についての分析を行った。この問題は、陸軍中央の中でも中堅幕僚たちの水面下による活動の影響が非常に強い。荒木陸相辞任後はその影響力をかき消すべく、反荒木の中堅幕僚たちが陸軍中枢部に属する上官に対して書面で「真崎罷免」を懇願するなどの行動を起こしている。そこで、本研究では中堅幕僚たちによる諸活動の実態を解明していくことにした。分析史料としては、国会図書館憲政資料室所蔵「片倉衷関係文書」を使用した。「片倉衷関係文書」は近年になり新しい原史料が追加され、軍人宛ての書簡が多く収められている。平成20年度の科学研究費補助金は、この史料の収集作業に利用した。片倉は満州事変の際にも暗躍し、荒木を支持する青年将校から忌嫌われる存在であった(実際、二・二六事件の時に磯部浅一からの銃弾を浴びている)。板垣征四郎や石原莞爾などと親しい片倉は、彼らに頻繁に書簡を送り、真崎を罷免するよう促している。以上のような問題関心をふまえ、陸軍中堅幕僚の内部活動の実態を解明していくことにする。取り上げる事例としては真崎教育総監更迭問題における中堅幕僚たち(片倉を中心とした)の活動実態を研究分析していった。そして、かつては陸軍の中心であった荒木や真崎が、陸軍内のいわば悪役として位置づけられていく過程を明らかにした。なお、上記研究実績を踏まえ、現在、私は博士論文及び学術雑誌に投稿予定の論文の執筆作業を行っている。
著者
三浦 伸夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

デューラーの『計測法教程』の源泉を中世ラテン,ギリシャ,アラビア数学に探索し,またドイツ語原典およびラテン語訳のそれぞれの受容を,両版を比較しながら,読者層,当時の学問の状況などを視野において探求した.とりわけ描かれた科学器具,引用された数学著作を中心においた.影響は中国にまで及び,その数学は世界規模である.他方でその数学の時代的限界も指摘した.しかしその内容は今日数学教育に大いに活用できることを指摘した.