著者
出口 剛司
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

エーリッヒ・フロム(Erich Fromm, 1900-1980)の分析的社会心理学(Socialpsychology)は、おもにファシズム、大衆社会批判を目的とした権威主義研究、「父親なき社会」(ミッチャーリッヒ)、「ナルシシズムの時代」(ラッシュ)という言葉とともに、社会的権威の崩壊が指摘された1960年代後半以降に展開された破壊性・ナルシシズム研究に大別することができる。本研究の課題は、とくに後期の破壊性・ナルシシズム研究に照準を定め、思想史的、社会史的位置を確定しつつ、その現代的意義を探ることにあった。後期フロムにおける破壊性・ナルシシズム研究は、社会現象としてのニヒリズム及び思想運動としてのニヒリズム双方を射程におさめつつ、それらに対して提出された社会心理学的応答と位置づけることができる。思想的に見れば、人間学的観点から定義された人間的本質(human essence)としての実存的二分性(existential dichotomy)の概念は、ハイデガーによるヒューマニズム批判に対する彼独自の回答として位置づけられ、ポジティヴな「生の技法(art of living)」を構想する準拠点ともなっている。またフロムは、ニヒリズム的状況が生み出す病理現象をネクロフィリア、ナルシシズム、サディズム等の一連の社会心理学的概念を用いることによって、その生成メカニズムを理論的、経験的に把握することができたといえる。フロムがこのように思想的、現実的にニヒリズムと積極的に対決した時期は、まさに現代におけるポストモダン的状況が広まり始めた60年代後半から70年代にかけてのことであり、フロム社会心理学は、その意味で現代社会に噴出するさまざまな暴力現象を解明するための社会学的理論枠組みをわれわれに提供とするものと結論づけることができる。
著者
周 萍
出版者
立命館大学
雑誌
アート・リサーチ (ISSN:13462601)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.65-81, 2011-03
著者
大惠 克俊
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

これまでに喉頭傷害や喉頭癌等により,声帯の音源としての機能を失った患者のための人工喉頭の開発に関する研究を行ってきた.この人工喉頭は音源に軽量小型な圧電発音体を使用しているが,その発生音は人間の声帯音とは異なる.そのためこの音源の音質向上に関する研究を行った.また,発声音の制御を行うことで音声の明瞭度を向上させることが可能であり,頚部の筋電位信号に着目し,その信号を用いた制御に関する研究を行った.
著者
大窪 健之 小林 正美 土岐 憲三 益田 兼房 寺田 佳高 石井 隆之 岡崎 風時
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

全国の木造の重伝建地区(国指定の町並み保存地区)は、地震火災による同時多発火災に弱い。しかし災害時に最も重要な役割を果たす住民が参加し、地区防災計画を定めた例は少数であった。このため、防災水利の整備事業の実施前、中、後、の段階別に地区を選定して住民ワークショップを実施し、図上防災訓練による想定と、発災対応型防災訓練による実践を試みた。得られた結果を総合することで、住民ワークショップの手法とその有効性を明らかにした。
著者
遠藤 保子 八村 広三郎 仲間 裕子 山下 高行 崔 雄 古川 耕平 松田 凡 高橋 京子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

舞踊人類学やアフリカの舞踊に関する研究動向を概観し、舞踊の最新の記録法としてモーションキャプチャを利用したデジタル記録を指摘した。アフリカで人類学的なフィールドワークを行いつつ、モーションキャプチャしたデジタルデータからアフリカの舞踊の特徴(多中心的な動作や性差による相違点等)を考察した。アフリカの舞踊の教材化について論じ、小学校高学年を対象にした開発教育のための教材(DVD、指導計画)を制作した。
著者
若菜 マヤ
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日常は「表現された秩序」だと唱えたミクロ社会学者、E. ゴッフマンの理論をH.ジェイムズの文学作品に重ね、ジェイムズ文学は現実の虚構性をリアルに描いたものだと*Performing the Everyday in Henry James’s Late Novels*(Ashgate, 2009)で主張。今度はジェイムズが高く評価したAusten、Wharton、G. Eliotの作品に同様の分析を行い、インティマシー(「親近感、近しさ」)をテーマに単著*Performing Intimacies of the Everyday*(仮) を書き上げ、英米の某学術出版社の外部審査用に準備中。
著者
赤堀 次郎 渡辺 信三
出版者
立命館大学
雑誌
社会システム研究 (ISSN:13451901)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-12, 2002-03-31

近代経済学の発展に数学や,数理統計学は重要な役割を果たしてきたが,近年,数理ファイナンスと呼ばれる新しい金融の理論においては,確率解析学(Stocahstic calculus)という比較的新しい数学が基本的な方法を提供している.そこでは,市場の数学モデルとして,株式等の証券の価格の時間変化のモデルが確率過程として定式化され,確率微分方程式を中心とする確率解析の方法を用いて研究が行われている.確率過程を数学的に構成する方法はいくつかあるが,数理ファイナンスの理論においては確率微分方程式の理論が有用である.数理ファイナンスの理論において,市場の完備性を考察する際には,確率過程の与える情報系-「filtration」や,そのfiltrationに関するmartingale(と呼ばれる確率過程)全体の集合の構造を知ることが基本的に重要になるが,その集合=空間の構造を調べる方法としては,確率微分方程式の方法がもっとも優れているからである.本稿では,まず,その確率微分方程式の理論を概観する.とくにその「弱い解」と「強い解」の相違について注意を喚起し,「強い解」の存在についての新しい結果を述べる.この結果は確率的流れ(stochastic flow)を先に構成し,そこから確率微分方程式の「強い解」を与える,という点で既存の方法とは異なる新しい手法である.その新しい理論の数理ファイナンスへの直接の応用についてはいまだ研究成果は出ていないが,結びでいくつかの注意を喚起しておく.
著者
戸所 隆
出版者
立命館大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.研究地域は中規模中心都市の前橋・高崎地域(参考として名古屋市).2.ここ数年間のオフィス・スペース拡大は著しい. その理由は次の5点に集約できる. (1)機関投資家がオフィスビルを資金運用手段として利用. (2)地価高騰が地主や不動産業者に固定資産税対策などから遊休土地へのオフィスビル建設を促す. (3)ソフト化時代に対応した新業態オフィス機能の発生. (4)OA危機設置スペースの増大とソフト化時代に対応した設備をもつオフィススペース受容の増加. (5)新オフィスビル入居による企業イメージの向上.3.都心部では既存建物の新陳代謝・立体化でオフィススペース拡大が進み, 郊外でも前橋・高崎両都市の中間地区の関越自動車道前橋I・C付近での郊外型オフィスビル建設が多い.4.関越道・上越新幹線の開通は, 一面で東京へのおフィスかつどうの集中をうながしたが, 他面で関東と信越との分岐点・結節点に位置することから新規立地をうながし, 結果としてオフィス機能の新陳代謝が進んでいる.5.郊外立地オフィスは, 域外からの新規立地と都心部からの移転立地がある. オフィスの郊外化の要因は, 次の3点に集約できる. (1)系列企業のビルオーナーからの入居要請. (2)都心部の駐車場不測. 自家用車普及率が全国一でバス等公共輸送機関の弱体化した地域では, この問題が都市構造を変化させている. (3)東京や近県との結節性から関越道I・C付近への立地移動.6.潜在的にはオフィスの都心部への立地指向は強い. しかし上記要因から郊外立地が進展している. 特に前橋・高崎地域では, 群馬銀行の郊外移転など中核企業の郊外立地が, かかる動向に拍車をかけている. このため郊外の発達に比べ, 都心の業務街形成が, 他の同規模都市に比べて弱い.7.オフィス機能の都心と郊外の差はほとんどみられないが, 郊外の場合は単独でも立地しうる相対的に大きな企業が多い.8.一般性と特殊性の明確化が今後の課題.
著者
中島 淳 SHAFIQUZZAMAN MD
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

飲用地下水の砒素汚染は世界規模の環境問題であり、バングラデシュ、インド西ベンガル、中国、タイ、ベトナム等々で報告されており、バングラデシュだけでも4,000万人以上が汚染地下水を飲用しているといわれている。これまでの研究で、鉄酸化バクテリアと鉄を利用したハイブリッド型砒素除去フィルターを開発したが、今年度は、これまでの研究成果を発展させ、以下を明らかにした。(1)フィルターの適正な維持管理手法砒素除去装置をバングラデッシュの砒素に汚染された地域に設置し、その性能を1年以上調査した。雨季には使用を休止した家庭もみられたものの、1年後においても砒素除去性能が維持されていた。手によるフィルターの簡易洗浄だけで、1年間の運転は可能と考えられた。また、鉄網の使用期間は1年間程度であるといえる。(2)フィルターを用いた持続可能な水利用システムの構築現地のNGOおよびクルナ工科大学と議論をし、クルナ市郊外の農村住民を対象とした砒素除去フィルターの普及方法を検討した。その試みとして、現地NGOのトレーニングセンターを使用して、砒素除去フィルターの製作と使用および維持管理に関するワークショップを開催し、NGOのモビライザーを中心とした参加者が、フィルターを製作した。すべて現地の材料と施設で、砒素除去装置の製作が可能であった。また、砒素除去性能の信頼性を高めるために、妨害物質のシリカの影響についても検討したが、現地濃度は影響を与える濃度レベルにはなかった。