著者
大槻 麻衣
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度は,空間型操作を支援するポストWIMP型インタフェースの内,実世界と同様の感覚で,実物体に対して仮想的な描画が可能な筆型デバイスの開発を行った.本年度は,複合現実空間では実物体も仮想物体も同等に扱えることに着目し,仮想物体を対象としたデバイスの開発を行った.仮想物体を対象とした場合,描画対象に穂先が接触する際に生じる穂先のしなりや反力が無く,描画感に乏しいという問題がある.これを解決するために,力覚および視覚フィードバック機構を備えた新たな筆型デバイスの開発を行った.具体的には,力覚フィードバック機構として把持部の一部が可動する機構を,視覚フィードバックとして穂先を任意の方向・強度でしならせることが可能な機構を備えた試作デバイスを作成し,研究室内で運用した.試作デバイスではこれらの機構を駆動させるのにソレノイドを用いていたが,駆動量が調節できず,十分な解像度が得られなかった.そのため,DCモータを用いたデバイスへと改良し,より現実に近い描画感提示を実現した.上記と平行して,「空間への入力」という広い観点から3次元複合現実空間における仮想物体の分解・観察に適した操作法に関する研究を行った.ここでは,多数のパーツで構成された複雑な仮想物体をジェスチャ操作によって部分的に分解し,手元でその詳細を観察するという作業を想定し,誤操作を回避可能,かつ,操作の快適性・応答の心地よさを向上させる手法を提案した.具体的には,実世界と同様の感覚で操作が行えるよう,磁石や接着剤のように,簡単には外れないが,意図的に力を加えることで外れる方法で接合された物体の挙動や応答を模したものとした.これらの成果は2010年9月のヒューマンインタフェースシンポジウム,翌年1月にMR分野の専門家が集うSIG-MRにて口頭発表を行った他,日本バーチャルリアリティ学会論文誌に学術論文として投稿した(現在査読中).
著者
平尾 和洋
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

研究完成年である2003年度については、2002年度までに行った(1)チョデ・カンポン・ロモマゴンカンポンの80年代以降の改善経過、(2)中心的建築家グループの活動内容、(3)現在の住民属性・行動観察・近隣関係・住宅改善意識調査の結果を踏まえ、a)全体の研究の取りまとめ・論文の完結・そのための再調査、b)今後の改善運動への指針の明確化、c)未だ曖昧であるロモマゴンとその協力者(以下RMGと呼称)の活動が現在の居住環境改善に如何に影響を与えたかを明らかにするための再調査、以上3点の作業を行った。具体的には下記の内容が03年度研究実績である。1.論文:2000以降の調査結果をチョデカンポンの概要、カンポン改善経過と住民属性、教育・コミュニティー活動と近隣関係、居住空間と改善意向の4つの観点から取りまとめ、日本建築学会計画系論文集に査読・発表した。査読過程で指摘をうけた、ロモカンポン調査結果とチョデ川流域カンポン全体調査のデータ比較を新に行い、ロモカンポンの空間・経済・就労・学歴面での貧困さ、ならびに今なお残存するアーバンインボリュージョンの特性をもっていることを明らかにした。2.改善活動指針:住宅の改善プロセスを類型化し住民意織との対応から、調理室・寝室・リビングの順に今後改善すべきことが明らかとなった。また集落としてのゴミ収集・トイレ整備が必要であることがわかった。3.RMGの活動に対する住民評価の実態:学歴・職業・モラル・治安面での改善影響のあるなしに関する全50世帯に対する対面式アンケートを実施した。その結果、治安と学歴改普でRMGの影響を7割以上の世帯が指摘していることがわかった。またモラル・職業改善についても4割以上の世帯に影響のあることを明らかにした。
著者
福間 良明
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、戦後沖縄の総合雑誌を可能な限り洗い出し、そこにおける戦争観の変容や位相差を検証することを目的として、進めてきた。戦後沖縄の雑誌メディアについては、これまでに系統的な整理すらなされていなかった。戦後の沖縄では、「うるま春秋」(うるま新報社・1949年発刊)や「月刊タイムス」(沖縄タイムス社・1949年発刊)、「世論週報」(沖縄出版社・1951年発刊)、「月刊沖縄」(月刊沖縄社・1961年発刊)など、多くの政治雑誌・総合雑誌が存在した。日本本土から週刊誌や総合雑誌が流入するなかで、これらの多くは淘汰され、その言説布置やメディア特性については、これまで顧みられることはなかった。本研究では、これらのメディア史を解き明かしながら、そこにおける戦争観の位相差や変容について、考察を進めた。
著者
朝尾 幸次郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)日本語と英語を対応させたテキストをデータとして、日本語から英語を、英語から日本語を検索するパラレル・コーパスを構築した。構築したコーパスは日本国憲法、教育基本法など著作権がない公的なもののほか、『朝日新聞』の「天声人語」と「社説」、『エヌ氏の遊園地』(星新一)、『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子)など日英語でデータが得られるものである。(2)日英語で意味を対応させる方法として「最短一致の原則」を提案した。センテンスを単位に対応させてゆき、対応する意味のまとまりが最短になるように切り分ける方法である。(3)検索プログラムはコマンドラインから利用する研究用のものの他、Perl/CGIによりWebページから利用できる一般向けのものを開発した。テキストは両言語で対応がなされているものであれば、どのようなものでも利用可能な汎用パラレル・コーパス検索プログラムである。(4)パラレル・コーパスを用いた研究例として、「では」とthenの対応について調査を行った。「(それ)では」とthenは日英語で奇妙に入り組んでおり、これまでの辞書記述では十分でないことが知見として得られた。日本語で「(それ)では」と明示的に現れている場合でも英文テキストではそれが表に現れない場合が多い。英語でthenが用いられる場面ではそこに明確な根拠がある場合が多いようだ。(5)報告書ではパラレル・コーパス検索のさまざまな例を提示し、スクリプトを公開した。スクリプトには詳細な説明を付しており、改変を容易に行うことができる。報告書はスクリプトの解説と検索プログラムのマニュアルも兼ねている。(6)パラレル・コーパス関係で発表した成果を資料として添付した。
著者
周 〓生 仲上 健一 小杉 隆信
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.ポスト京都議定書における選択肢として、「法的数値目標」を特徴とする「京都方式」と自主的行動を特徴とする「非京都方式」が挙げられる。2.気候変動枠組みにおいては、「共通ではあるが差異のある責任」原則に基づき、世界全体を、(1)先進国(米国、日本等)、(2)中進国(韓国、メキシコ等)、(3)途上国(中国、インド等)の3地域に分け、参加形態も強制的(法的拘束力のある数値目標をもつ)、自主的、(法的拘束力のない数値目標を自主的設定する)、自発的(数値目標は持たないものの、自発的に削減方策を講じる)との3つの形態に分けることができる。3.一人当たりの排出権を同等にするための「総量規制下で一人当たりの均等な排出許容量」を世界各国に初期割当量として排出枠を配分し、排出権取引やCDMを活かせば、世界全体が公平で効率よく総量規制を実現する。また、この基準とモデル予測により、日本は2008年、韓国は2013年、中国は2020年から法的削減義務を負う時期を迎えると推測する。4.中国と周辺各国日本、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンとその他の地区と地域の8地域を対象とし、多目標、多変量、多制約且つ非解析的なアジアエネルギーシステムモデルを構築し、各地域、各部門のエネルギー生産、運輸、消費のバランス関係について最適化分析を行い、環境税及びCDMを導入した場合のエネルギー消費構造の予測、とCO_2、硫化物などの同時排出削減効果を分析した。5.本研究を通じて、温暖化対策に加えて、経済、環境、社会の調和が取れた持続可能で活力のある社会を形成していくための国境を越えた日中韓3国を含めた東北アジア低炭素社会共同体構想を提案する。このための要素課題と意義として、革新的低炭素技術の開発と既存技術の移転、低炭素化経済産業システムの創出とライフサイクルなど低炭素社会システムの変革、国際連携によるエネルギー・物質循環のエコデザイン、パイロットモデル事業を通じて、低炭素社会の実現可能性について先駆的に実証し、持続可能な低炭素社会への移行過程を具現化するロードマップの提示、アジア地域の低炭素社会建設を誘導する政策提言が求められる。
著者
下ノ村 和弘
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

生体の視覚系は,長年の進化の過程で獲得された独自のアーキテクチャを用いて,複雑な視覚情報を極めて効率的に処理している.本研究課題では,脳視覚野の神経細胞がどのようなメカニズムで奥行きを計算するかを説明するモデルに着目して,これをアナログおよびディジタル集積回路を用いて効率よく実装する方法を提案し,ロボットが環境認識を行うために不可欠な奥行き情報を実時間で計算する集積視覚システムを構築した.
著者
冨田 美香
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、芸術・メディア・産業としての性格を持つ映画文化が20世紀の日本社会の形成にいかに作用したかという問題を明らかにすることを目的とし、その具体的な様相を日本のハリウッドと称される京都洛西地域社会の形成と日本映画史との関係に絞り、検証したものである。平成14年度は、京都洛西地域社会形成の過程と、そこから産み出された独自の映画文化との関係性を、京都を舞台に京都で作られた映画作品の中で現存する最古の作品『祇園小唄 絵日傘第一話 舞ひの袖』の分析から考察し、映画産業と京都社会との相互関係とともに、「京都」都市イメージが映画内的/外的作用によっていかに形成されていったかを実証的に研究した。そこで明らかになった点は、パノラマなどシネマトグラフ前史に遡る映画の始原的な視覚性が利用され、擬似観光体験から真の観光体験へと観客の経験の変容を促す都市への集客効果とともに、近代化された東京が失った鑑賞都市としての江戸の姿を、古都・京都の表象するメディアとして、映画が積極的に用いられていた、という点である。なお、これらの調査結果を資料画像も含めてデジタル化し,インターネット上で研究成果として公開する点についても、以下のURLで試行中である。URL:http://www.arc.ritsumei.ac.jp/cinema/index.html
著者
正木 宏長
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に続き、水道事業の民間化について研究を行った。日本では水道事業の民間化に際して、委託等の行政契約が用いられている。水道法に定めのない従来型業務委託のほかに、水道法による包括業務委託も存在する。こういった水道事業の委託手法について他の民間化の手法も取りあげつつ、その特徴と法律問題について研究した。研究の際には、委託契約を活用している自治体への実地取材を行い、自治体行政の現実を明らかにすることに努めた。研究の結果、水道事業において、広範な委託が行われていること、他に様々な手法で水道事業の民間化が行われていること、民間化に際して、自治体の規程や国の通達類が重要な機能を果たしているとの知見を得ることができた。現在水道の民営化の議論がなされているが、本研究は、このような議論に法学の面から貢献しうるものであると考える。また、委託契約の実態を明らかにすることで、行政契約の議論の充実にも寄与することができるだろう。成果は論文「水道事業の民間化の法律問題」として立命館法学に掲載が決定している。また、一昨年度の研究成果が、書籍『分権時代と自治体法学』のうちの「都市の成長管理と水道」として刊行された。これは、水道水給水拒否が都市の成長管理手法となっていることを比較法研究によりあきらかにするものである。
著者
東 自由里 リム ボン 大津留 智恵子 出口 剛 ジェイ クラパーキ 堀田 秀吾 イアン ホザック 米山 裕
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

当該研究プロジェクトは、最終年度のため、研究代表者及び分担者はそれぞれ次の研究プロジェクトを視野にいれて研究活動を行った。研究代表の東は2005年5月にゲルニカ平和ミュージアム(スペイン)で開催された国際平和ミュージアム学会と国際博物館協会(ユネスコ本部、ICOM)の分科委員会である「公共に対する犯罪犠牲者追憶のための記念博物館国際委員会」(ICMEMO)との共催で行われた国際会議で発表する。ゲルニカではICMEMO委員会の会合も行われ、関連テーマを共有する欧州の特に館長を中心とした歴史博物館関係者たちとの学術的交流をもつ機会を得ることができた。国際会議での発表は、ゲルニカ平和ミュージアムの編集によって著書になることが決定している。3月は在外研究でフランクフルト大学に客員研究院として滞在中の分担者である出口剛司との研究会及びドレスデンの戦後復興事業の視察と資料収集のために、リム、東は渡欧し、現地での研究協力者たちと研究会を行った。ドレスデンは冷戦終結がするまで旧東ドイツ側に属する。そのため、旧西ドイツとは対照的に、最近になってようやく歴史を見直す動きがでてきている。ドレスデン在住のザクゼン記念財団の代表者、創設者でもあるノーバート・ハッセ博士の案内で、ハッセ氏の財団が運営しているいくつかの主要な歴史博物館視察することができ有意義な議論と意見交換を行った。尚、当該研究の研究成果は著書『負の遺産とミュージアム』(文理閣)にまとめることが決定している。また、英文の著書を出版する予定でもある。今年度も、これまでと同様に文献資料では得がたい貴重な学術的交流をフィールド・ワーク及び人的交流を積極的に行ってきたといえよう。
著者
横山 淳
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

1.背景我々の長期的な研究目標は,近年提案された第一原理手法である細胞動力学理論を人体の臓器器官に応用し,臓器の形態形成メカニズムや細胞の集団戦略を理論的に解明することである.特に,糖尿病との関連から実験的知見が豊富である膵臓細胞の組織形成をターゲットとする.その為にまず,細胞内エネルギーが一定に保たれるメカニズムを解明し,堅牢なエネルギー論に基づいたミトコンドリアのモデルを構築する.次に組織形成に向けた細胞間相互作用を担う情報伝達物資の,膵臓細胞における分泌・受容機構のモデル化を行う.2.結果(1)ミトコンドリアが細胞内ATP濃度を一定に保つメカニズムの有力な仮説のひとつであった"feedback control theory"は,激しく変わるATP需要に十分に耐えられないことが近年の理論研究から示されている.そこで我々はATP-ADP交換体の熱力学的平衡により細胞内ATP濃度が一定に保たれるという新しい仮設を提唱した.本仮説に基づいたモデルは,100倍以上変化するATP消費速度においてもATP濃度が一定に保たれ,かつミトコンドリア数の変動に対してもロバストであることが理論研究から認められた.本論文はJournal of Theoretical Biologyに投稿され,現在審査中である.(2)膵臓細胞の情報伝達物質の分泌・受容機構のモデル化として,フィックの法則を細胞膜の境界条件に応用した情報伝達物質分泌の新しい空間モデルを構築した.本モデルをテストケースとしてGnRH分泌細胞に応用したところ,情報伝達物質の拡散性が小さい方がより遠くまで情報を伝達できるという画期的な現象を発見した.これは拡散性が小さい程,分泌細胞の近くに情報伝達物質が滞留し,より細胞発火の閾値に近い状態を維持する為,僅かしか情報達物質が伝わらなくても細胞の発火を引き起こす為に起こる.本研究成果によりSociety for Mathematical Biologyからポスター賞が授与された.
著者
高橋 秀寿
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

三年度にわたって、時空間の変容の問題を歴史的に跡づけるために、ドイツにおける記念碑の変遷を追った。具体的には、ドイツにて記念碑に関する資料と文献を収集し、記念碑の撮影をおこなった。その成果として、有斐閣から出版された共著『ドイツ社会史』にて「ナショナリティ」の項目を執筆し、記念碑だけでなく、国民的祝祭、国民歌および国歌、国旗、国籍法、地理教科書などをテクストとして分析することによって、ナショナルな時空間の歴史的変遷の問題を論じた。また、『立命館言語文化研究』にて公表した「ホロコーストの記憶と新しい美学」では、80年代に試みられたホロコーストの記憶を新たな美学によって表象-記億しようとする新たな記念碑の取り組みを紹介した。さらに、2002年の4月に東京大学出版会より刊行された共著『マイノリティと社会構造』に「レイシズムとその社会的背景」と題して寄稿した論文にて、近年における極右勢力の動向を時空間の変容の問題から論じた。ほぼ同時期に柏書房より刊行された『ナチズムのなかの二〇世紀』における「ナチズムを、そして二〇世紀を記憶するということ」と題した寄稿論文においては、戦後におけるドイツ人の20世紀とナチズムの記憶の構造を分析し、その構造と変遷が記念碑においてどのように表現されているのかを論じた。そこではオイルショック以後の社会構造の変化がナチシムとホロコーストの記憶にとって重要な役割を果たしていることを明らかにした。立命館大学人文科学研究所編『現代社会とナショナル・アイデンティティ』に寄稿した「ナショナルな音楽・越境する音楽」では音楽と時空間の関連を近代化を問題としながら分析した。『ドイツ研究』35号に寄稿した「ドイツ人の脱ナショナル・アイデンティティ」では社会心理学的な分析を通して、ドイツ人のナショナル・アイデンティティの変容を分析した。また、2003年に刊行された『ナショナル・アイデンティティ論の現在』に寄せた論文では、ドイツ近代社会における記念碑の歴史的変遷とその美学的形象化の問題を、芸術表象論とかかわらせながら、時空間の変容の問題として分析してみた。
著者
柴田 史久 田村 秀行 木村 朝子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

可搬移動型複合現実感システムに適した幾何位置合わせ手法の研究開発を推進し,複数の幾何位置合わせ手法を状況に応じて切り替えて利用できるような機構を提案・実装した.また,可搬移動型機器を用いた複合現実感システムを構築するための機能分散型フレームワークを設計・実装した.これを利用することで,コンテンツの動きが同期したMR空間を同時に複数のモバイル機器で共有可能なMRシステムを構築できる.
著者
仲上 健一 小幡 範雄 周 〓生 高尾 克樹 中島 淳 竹濱 朝美 福士 謙介 加藤 久明 原 圭史郎 韓 驥 濱崎 宏則 李 建華 何 青 RAHMAN M. M. ISHRAT Islam GIASUDDIN Ahmed choudhury HASSAN Ahmadul FARHANA Ahmed REBA Paul
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

気候変動による水資源環境影響評価分析・適応策および統合的水管理に関する理論的研究を行い、水危機への戦略的適応策のフレームワークを構築した。アジア大都市圏(日本:琵琶湖流域、中国:上海市・太湖周辺地域、バングラデシュ:ダッカ市、メコン河流域諸国)における気候変動による水資源環境影響評価分析、気候変動への実態と課題を実証分析し、戦略的適応策の施策を体系化した。
著者
名西 憓之 荒木 努 山口 智広 金子 昌充 WANG Ke 城川 潤二郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

DERI法(DropletEliminationbyRadicalbeamIrradiation)を用いた高品質厚膜InN結晶成長技術を基盤として、InN系材料をベースとした電子・光デバイス実現へ向けたInNおよびInGaN混晶材料の結晶成長高品質化技術、厚膜化技術、ラジカルモニタリングによる組成制御技術、Mgドーピングによるp型伝導制御技術、InGaN系ヘテロ・ナノ構造作製技術、デバイス作製基盤要素技術の開発を実施した。
著者
森 道哉
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、環境政治という切り口から戦後の日本の政治過程を捉え直すことを目標とし、それに向けて理論志向の事例研究を積み重ねようとした。具体的には、T.J.ロウィによる政策類型論の再検討および事例研究の方法の探求を理論上の課題とし、その視角のもとで複数の事例の過程追跡を行うことを実証上の課題としたのである。結果として、共時的かつ通時的な観点から政治過程を記述するための方向性を示唆することができ、また、環境規制の問題としてのアスベストの管理に関する事例の分析を通じて「目標」の一端も明らかにできた。
著者
及川 清昭 槻橋 修 藤井 明 大野 秀敏
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は日本の都市空問における特徴のひとつである建物間の隙間に焦点を当て,隙間の定量化手法を提案し,市街地における隙間の面積と分布様態の特性を明らかにすることを目的としている。建物間の隙間は,建物配置図において半径rの円が掃過できない領域として定義する。円の直径が隙間の幅に相当する。隙間の領域を抽出する方法として,建物配置図を画像化(1画素50cm角)し,画像処理技法における図形の収縮(erosion)と拡大(dilation)という操作を援用する。すなわち,半径rの円に対応するディジタル図形によって建物平面を拡大し,その後収縮するという方法を用いる。これはモルフォロジーにおけるclosingと呼ばれる操作に相当し,画像処理の結果,隙間が抽出可能となる。この計量手法を東京都23区と大阪市24区における建物配置全体に適用し,以下のような知見を得た。(1)隙間率(グロスの面積比)は東京都においては,隙間の幅1.5mの場合は0.5%,幅2.5mでは1.4%,幅3.5mでは2.4%,大阪ではそれぞれ0.6%,1.3%,2.0%と計量された。局所的には10%を超える地域も多く,隙間の面積は市街地形成上無視し得ない量となっている。(2)隙間率と建物の密度指標(棟数密度・周長率・建蔽率)の値とは高い相関を示す。(3)隙間率の高い地域は,東京都ではJR山手線外周沿いに,大阪市ではJR大阪環状線外周沿いに環状に連担する。(4)隙間率の高い地域は住宅密集地域であり,人口密度が高く,緑被率は低い。震災対策重点地域とも重なり,都市の安全上の問題を抱えている。なお,本研究は数理的考察に加えて,隙間の生成過程について歴史文化的な面からも考察することを目的としていたが,建物配置に関する法令・慣習なとの資料をもとに若干の考察を加えるに留めた。また,隙間の利用状況に関する現地調査を行い,隙間のもつ機能についても検証した。
著者
大瀧 仁志 小堤 和彦 澤村 精治 谷口 吉弘 加藤 稔
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究報告は平成9年度から11年度にわたって文部省科学研究費補助金 (基盤研究A(2)、課題番号09304064)の交付をうけ、立命館大学理工学部化学科の教員を組織して実施された『迅速溶液X線回析法と分光光度法による亜・超臨界状態のイオンと蛋白質の溶媒和構造』に関する研究をまとめたものである。本研究では溶液X線回析法を用いて、常温常圧から超臨界状態までの水の構造を検討し、水は超臨界状態においても水素結合をしており、バルク状態で観察されるクラスターよりは小数の分子からなる小さなクラスターを形成しており、一方、気体類似の単分子状態の水分子も存在していることを示した。この結果は水の研究に大きな示唆を与えたもので、発表した印刷物や国際学会等における講演を通じて大きな反響がみられた。また蛋白質のペプチド結合に関するモデル物質としてしられているホルムアミドの構造についても溶液X線回析法とNMR法を併用して研究し、ホルムアミドの液体構造に関してリング構造かリニア構造かで長年論争があった問題に対して、リング構造とリニア構造の混合状態にあることを実験的に明確に示し、さらにそれぞれの部分構造の割合を算定し、リング構造は圧力によって、またリニア構造は温度の上昇とともに生成しやすくなることを明らかにした。超臨界水溶液中のMg^<2+>イオンの溶媒和構造についての溶液X線回析測定が現在進行中である。谷口と加藤はさまざまな蛋白質の温度、圧力変化についてFTIR法とラマン分光法を用いて研究し、蛋白質のホールディングに関する知見をえたほか、蛋白質のモデル物質としてハロゲノアセトンを用い、温度、圧力にともなうハロゲノアセトン周囲の水構造についていくつかの研究成果を発表した。また澤村は水溶液中の無機電解質の溶解度に対する温度・圧力効果のみならず、C_<60>のような新奇でかつ非電解質の有機溶媒に対する溶解度をさまざまな温度・圧力で研究し、結晶状態における分子の充填状況と溶媒中に分子状に分散している状態の相違を検討した。本研究では溶液X線回析法の測定時間を短縮し、反応中に直接X線散乱強度が測定できるような迅速溶液X線回析計を開発するために、溶液X線回析法では世界で始めてCCD (Charge Coupled Device)を既存の高温高圧溶液X線回析装置に設置し、その性能と解析法について検討を始めた。本装置が稼動すれば世界最初のCCD設置溶液X線回析迅速測定装置となる。上記のように、本研究は所期の目的に沿って顕著な成果をおさめるとともに、将来にむけて当該領域の発展に大きく寄与することができる展望をもつことができた。
著者
渡辺 公三 高村 学人 真島 一郎 高島 淳 関 一敏 昼間 賢 溝口 大助 佐久間 寛
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フランス人類学の定礎者マルセル・モース(1872-1950)はデュルケームの甥であり、フランス穏健社会主義の指導者ジョレスの盟友であり、ロシア共産主義の厳しい批判者であった。その人類学分野以外での活動もふくめて思考の変遷を、同時代の動向、学問の動向、学派(デュルケム学派社会学)の進展との関係を視野に入れて明らかにし、現代思想としての人類学の可能性を検討する。そのうえでモースの主要業績を明晰判明な日本語に翻訳する。
著者
森野 勝好 田中 裕二 岡野内 正 佐藤 誠 西口 清勝 米倉 昭夫 西沢 信善 田口 信夫 川原 紀美雄
出版者
立命館大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

本研究においては途上国経済論を専攻する研究者集団が共同して地域研究とテーマ別研究とを行い、その研究成果を統合する中で、本研究が掲げている研究課題に接近するという方法を採っている。本年度は、次の二つの研究を行なった。ひとつは、AALA途上諸国の飢餓・貧困・環境破壊の原因と因果関係を解明することに取り組んだ。そのために、アジア(フィリピン、ミュンマー)、中東、サハラ以南のアフリカ(南アフリカ)およびラテン・アメリカ(ブラジル)の国際比較研究をおこなった。他のひとつは、1990年代から21世紀にかけて日本が、AALA途上諸国が現在直面している飢餓・貧困・環境破壊という深刻な諸問題を解決する上で、果たしうる役割をODAを中心に考察した。昨年度の研究成果と今年度の研究成果を集め、本研究の取り纏めを行なった。その結果、途上国経済論の理論的研究((1)研究方法、(2)開発経済学の新動向、(3)多国籍企業と途上国、(4)一次産品問題と国際価値論、(5)国際援助政策論-日本のODAを中心にして)と現状分析((6)韓国-財閥の形成と展開、(7)フィリピン-債務危機と貧困、(8)ミャンマー-市場経済化への苦悩、(9)中東-都市化と人口移動、(10)ブラジル-従属的発展と環境破壊、(11)南アフリカ-インフォーマル・セクターの展開)とを有機的に結合した新たな研究成果を挙げることができた。なお、この研究成果は、森野勝好・西口清勝編『発展途上国経済論』(ミネルヴァ書房)として、1994年6月に刊行される予定である。
著者
藤原 信行
出版者
立命館大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

1.研究者(以後「私」とする)はまず,日常生活世界における自殺現象の統制・合理化活動の根幹をなす動機付与活動を,エスノメソドロジーにおける「カテゴリー分析」を参照に再検討した.その結果として当該活動が「再帰性」「文脈依存性」を特徴とする再現性のない「個性的な」活動であること,そしてその活動において「因果的説明」と「責任帰属」は相互補完的な関係にあり,分析上両者は不可分であることを確認した.2.次に私は近年自殺現象の統制・合理化活動に大きな影響を与えていると考えられる,自殺とその予防をめぐる精神医学的知識を「医療化」の観点から検討した.その際,当該年度においてはさしあたり,自殺対策のために公的機関が公表・発行している印刷物およびウェブ上での情報を検討の対象とした.その結果として,それらは「自殺対策の医療化」を象徴する印刷物・情報であること,そして自殺をめぐる責任帰属をより明確にし,それをめぐる争いを不可避なものとさせうる潜勢力を有している--誰が,いかような過失・不作為を犯したかを詳らかにする「マニュアル」としてはたらく--ことが明らかとなった.3.さらに私は,うつ病患者家族2名へのインタビュー調査も実施した.いずれの対象者も自殺とその危険因子であるとされるうつ病にかんする知識を欠いていた.当該知識の欠如は,自殺予防のためのうつ病患者の「見守り」にかんする負担をめぐる争いにおいて,当該知識を少しでも有する--精神保健専門職からみて「適切」か否かはともかく--者の状況定義や利害が優先される結果を招来していた.