- 著者
-
亀田 幸枝
- 出版者
- 金沢大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
目的;妊婦の出産に対する自己効力感を高める介入方略を考えるために,モデリングによる形成に焦点をあて,出産に対する自己効力感の形成プロセスを明らかにする。方法;総合病院で妊婦健診をうけ,経膣分娩を予定していた妊娠後期の妊婦9名(初産婦7名,経産婦2名)に振り返りによる半構成的インタビューを行った。面接内容は逐語録にし,質的帰納的に分析した。結果;モデリングの資源には,ピア・グループ,過去の出産体験の中の自己,助産師や医師などの専門家,パートナーがあった。妊婦の出産に対する自己効力感の形成には,【自己の身体能力への信頼】と【安心できる出産環境づくり】という2つのプロセスが見出された。【自己の身体能力への信頼】のプロセスは,モデリングとなる情報に対して「モデリング情報と自己との距離感の判断」を行い,「自分なりの対処方法の具体化と蓄積」を繰り返すという連続的なプロセスがあった。そこに影響していたのは"妊娠週数","妊娠経過の正常性","胎児の発育状態","生活パターン","専明家や周囲からの支持的関わり"があった。一方,【安心できる出産環境づくり】のプロセスでは,妊婦はモデリングの資源である助産師や医師などの専門家およびパートナーとの間で,「接近」と「自分への関心と承認の確認」という体験を繰り返し,「傍にいてくれる存在」と「緊急時の対応システム」を確認していた。そこに影響していたのは,"プロフェッショナルな雰囲気"や多忙でも笑顔で答えてくれるという"近寄りやすさ","妊娠・出産だけでない会話"があった。加えて,このような形成プロセスは,妊婦が出産に求める「母児の安全性」や「満足感」の優先性と強さに影響されることが示唆された。結論;本研究の結果は,出産に対する自己効力感への介入を考える際のアセスメント視点になると考える。しかしながら,総合病院に通院している妊婦と限定された対象からの結果であり一般化まではできない。今後,助産院で出産する女性など対象事例を積み重ねていくことと,量的に関連性を検証していく課題が残された。