著者
山本 政儀 柏谷 健二
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ユーラシア大陸に位置するロシア・バイカル湖,モンゴル・フブスグル湖の長い堆積物コアーから読み取れる種々の指標は,過去から現在に至る環境変化を理解する有用な情報を提供する。本研究は,化学情報,特に化学化石の1つである地殻物質,天然放射性元素ウラン(U)・トリウム(Th)に着目し,それらの同位体測定を通じて,これら元素の堆積挙動,堆積年代への応用,さらに古環境解析に役でてることを目的とし、以下の成果を得た。1)フブスグル湖の最深部付近で掘削(2004年)した長さ81mコアーについて,表層から3cm毎に切断した試料のうち,約350試料についてU,Th同位体を測定した。^<238>U濃度(河川から流入する岩石・土壌由来Uを差し引いた残りのU成分:自生成U)深度分布パターンは,見掛け上酸素同位体ステージの変動とよく似たパターンを示した。この傾向は,バイカル湖の堆積物においても見出しており,温かい・湿潤期(自生成Uが多い)と寒冷・乾燥期(自生成Uが極めて少ない)指標になりうることを明らかにした。^<232>Thは,河川から流入する岩石・土壌の指標として有用である。2)幾つかの深度での堆積物の年代を^<234>U/^<238>U-^<230>T/^<238>U比を用いるアイソクロン法で決定した。3)自生成U濃度変動と気候変動との関連については,間氷期の温かい・湿潤期には湖内有機物生産量の増加,湖水への河川水による溶存Uおよび化学的風化を受けた土壌物質の供給量増加に,一方氷期は上記要因の減少によると考えられた。
著者
木村 春彦 南保 英孝
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究で明らかにしたことは、以下の機能の実現である。これらの機能を申請者がこれまで開発してきた独居老人介護システムに追加する。(1)交流眼電図による水平方向の眼球運動と随意性瞬目を用いた意思伝達支援装置の開発(2)顔画像間の濃度特徴を用いた表情認識 (3)可視光センサを用いた転倒検知システムの開発 (4)ニオイセンサを用いた独居老人宅の環境モニタリング (5)圧力センサを用いた通過人数の推定 (6)赤外線ポインティングデバイスの選択操作を支援するシステムの開発 (7)リモコン型操作デバイスと圧力分布センサを用いたPCの認証システム (8)植物生体電位を用いた人の振る舞い認知システムの開発
著者
戸水 吉信
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

学習指導要領の改訂に伴い,数学的な活用力を育てる授業のあり方についてこれまで研究をすすめてきた。本研究の目的および意義は,日常生活における身の回りの事象を数学的にモデル化し,数学的手法を用いてそれらの問題を解決する生徒の成功体験モデルを増やし,数学的な活用力を育てる授業モデルとして,データベース化をすすめることである。また,データベース化したものを冊子にまとめ,市内中学校へ配布すると共に,本校ホームページにアップすることで,より多くの数学指導者とそれらを共有し,さらによりよい授業のあり方について検討をすすめることができると考え,実践を行った。その実践内容は以下の通りである。(*)は,研究費で購入した電子黒板を用いた実践である。また,実践全般にわたって,研究費で購入したプリンタ・スキャナ複合機を用いて,生徒が書いたレポートの電子データベース化を行った。(1)6月単元「連立方程式」での実践買い物ゲームと問題づくり(2)8月データベースづくり(昨年度までの研究実践に基づいて)(3)9月単元「1次関数」での実践ダイヤグラムのシミュレーションと問題づくり(*)(4)10月単元「平行と合同」での実践デジタルカメラでの取材と電子データベース(*)(5)11月単元「平行と合同」での実践合同な黄金三角形づくりゲーム(6)1月単元「確率」での実践確率実験とシミュレーション(*)(7)2月単元「資料の活用」での実践問題解決型の課題設定の工夫これらの実践に,昨年度までの次の5つの実践を加えて,研究の成果を「数学的活用力を育てる授業のあり方~指導事例集~」という冊子にまとめた。(8)降雨時のトンネルの点検の必要性を,その降水量から正負の数を用いて解決する(9)等式の変形を利用して,まんじゅうの詰め方を考える(10)2次方程式を利用して条件にあった牛乳パックを作る(11)作図を用いて,鉄道建設の問題を解決する(12)相似な図形の性質を用いて,地図上の所要時間の問題を解決するこの冊子は金沢市内中学校に,5月の中学校数学教育研究会で配布する予定である。また,その冊子をPDF化したファイルを,本校数学科のページにアップした。
著者
菊地 晶裕
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

セレノプロテインP(SeP)は糖尿病病態を形成するヘパトカインである。本研究ではSePの立体構造情報を基盤としてSeP阻害剤の候補化合物を見出すことを目標とした。結晶化を行うため、ヒト血漿から高純度に天然型SePを精製する手法の確立し、あわせて、システイン置換体SePの発現・精製手法も確立することが出来た。研究期間内に良質な結晶を得るには至らなかったが、ホモロジーモデリングからSePの立体構造モデルを提示することが出来た。また、骨格筋ではLRP1がSePの取り込み受容体として機能すること、骨格筋に取り込まれたSePは運動抵抗性を誘導する要因となっていることを解明することが出来た。
著者
宮島 昌克 清野 純史 能島 暢呂 鶴来 雅人 吉田 雅穂 池本 良子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

地震発生直後に管路に直接的な被害が無くとも急激な流量の増加と水圧の低下といった配水システムにおける異常事態に着目し,被害地震が発生した際にアンケート調査を大規模水道事業体に行った。さらに,この現象が貯水槽の水のスロッシングによる水位センサーの誤作動によるものであることを明らかにし,今後発生する巨大地震による長周期・長継続時間地震動が配水システムの異常挙動に与える影響を明らかにした。
著者
橋井 美奈子 樋口 善博 松川 茂 東田 陽博 東田 陽博 松川 茂
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

CD38は細胞内カルシウムイオン(Ca2+)上昇に働くセカンドメッセンジャーであるサイクリックADPリボース合成酵素としての働きを有する。質量分析によりCD38に結合するキナーゼ (PKと略) を見いだしたので、CD38により活性化する生理作用がPKの調節を受けるかを検討した。CD38発現細胞ではCa2+振動などCa2+シグナル増強作用がみられ、PK阻害によりこの効果は抑制された。よってCD38により増強する細胞内Ca2+シグナルにPKが関与していることがわかった。
著者
安達 正明 榎本 文彦 秋田 純一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

振動下にある垂直走査型干渉計の光路差変化をレーザでリアルタイムかつ高速高精度に計測する手法を開発し,変化情報を基に一定の位相変化終了後毎にLED光を瞬間点灯させ干渉縞を撮影した.この手法で計測した形状結果を分析しさらなる高精度化には点灯 & 露光中に加わる振動もその影響を補正する必要を見出し,露光中の光路差変化履歴を基に振動影響を補正して位相を抽出する方法も開発し,その効果を実験で確認した.
著者
正木 恵美
出版者
金沢大学
雑誌
Kanazawa English studies (ISSN:04497449)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.201-211, 1996-06
著者
小林 健太
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

非凸領域において有限要素法を用いて数値計算を行う場合,領域の非凸性によって厳密解の滑らかさが失われ,精度の良い数値計算が困難になるケースが多い.このような場合については,解の特異性を表現するような特異関数を有限要素基底に用いたり,非凸な角でメッシュを細かく切るメッシュリファインメントを用いたりすることによって精度を改善できることが知られている.これらの手法について,今までは数値実験結果からの経験則や収束のオーダーしか知られていなかったが,我々はいくつかの手法について厳密な誤差評価を与えることに成功した.これらの結果は精度保証付き数値計算への応用上も重要である.
著者
溝部 明男 銭 閑適 劉 晴暄 張 泓明 ガザンジエ
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大村英昭は「煽る文化」と「鎮める文化」という図式を提唱した。ある戦友会の参与観察と大村の図式に基づいて、戦友会とは、旧軍の将兵意識を鎮めるための一つの装置であると特徴づけた。戦友会のメンバーは、(1)過去の軍隊風振舞いの再現、(2)戦争体験の物語り、(3)戦死者の慰霊を通じて、彼らの軍隊体験を見直す共同作業に従事していると考えられる。軍隊体験の物語りの一つのタイプは、次のようなものである。出征を拒否することはできなかった。国を守るために戦った。戦死者は戦争の犠牲者である。英霊ではない。彼らの物語りの根底には、太平洋戦争は国を守るための戦いであった、という見方が横たわっているように思われる。
著者
安川 緑 藤原 勝夫 金子 周一 坂本 英之 三谷 徹 伊藤 喜久 小山 善子 染井 正徳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度の研究では、06,07年度の研究成果を基にITを活用した園芸療法の効果の詳細を検証した後、総合的見地から、ITの活用による園芸療法を適用した包括的地域ケアモデルを構築する予定であったが、当初の計画の変更を余儀なくされたため、下記の内容で研究を進めた。1)これまでに得られた園芸療法の研究データの分析を行い、園芸療法の知見を広く社会に還元すべく、論文作成及び投稿準備に充当した。現在、Japan journal of Nursing Scienceに「Effects of Horticultural Therapy for Aged Persons Receiving Home Care」を、また、老年社会科学に「サッケード反応様式からみた園芸療法の元気高齢者の前頭葉脳血流量の変化」を投稿するための準備作業に入っている。これらの論文では、在宅療養高齢者及び元気高齢者のそれぞれの課題に対して園芸療法が効果的に作用して、心身機能の維持・向上や老化予防に独自の効果をもたらすことが実証され、今後における地域高齢者ケアへの提言ともなっている。2)世界初の作業療法ハンドブック、「International Handbook of Occupational Therapy Interventions」(2009)に、「Horticultural Therapy for the Cognitive Function of Elderly People with Dementia」が所収された。このことにより、園芸療法が薬物に依拠することなく認知機能の回復をもたらし、認知症ケアとしての優れた側面を有すると共に、日常生活の活性化を促すための多種多様な可能性持ち合わせていることを世界のケア専門家に紹介し、園芸療法の普及に拍車をかける機会となった。なお、認知症者に対する園芸療法の種々のデータについては、引き続き分析を進め、International journal of geriatric Psychiatryをはじめ国際的学術誌への投稿を予定している。
著者
杉村 安幾子
出版者
金沢大学
雑誌
言語文化論叢 (ISSN:13427172)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-58, 2006-03-31
著者
小松田 沙也加
出版者
金沢大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-26

これまで本研究では摂動角相関法[1]により、空気中での熱処理によって形成するZnO中の不純物AlとInの強い会合状態が真空中での熱処理により解離する現象を観測してきた。またこの局所構造変化が希薄な酸素濃度条件下での熱処理中に生じるZnOの酸素空孔形成に誘起される現象であることを見出した。平成26年度はこの局所構造変化の熱処理時間依存性を詳細に調べることにより、この反応の1123 Kにおける速度定数を見積もることができた。さらに同様の実験を異なる温度で行い、速度定数の温度依存性をみつもり、そこからZnOの酸素空孔形成の活性化エネルギーに相当する値を実験的に0.72(6) eVと見積もった。これは理論計算によって得られた酸素空孔形成エネルギーの値[2]が本実験結果と近い値を示すことからも強く示唆された。酸素空孔形成のエネルギーを実験によって見積もる手段は少なく,上記の結果は不純物をプローブとする摂動角相関法によって初めて得られた観測情報であるといえる。現在は試料の熱処理時の雰囲気条件を真空からアルゴンガスに変えて同様の実験を行い、圧力によるZnOの酸素空孔形成エネルギーの変化を調べている。また上記の研究成果をThe 5th Joint International Conference on Hyperfine Interactions and Symposium on Nuclear Quadrupole Interactions (HFI/NQI 2014) 、2014日本放射化学会年会・第58回放射化学討論会の国内外の学会にて報告し、それをまとめた論文がJournal of Applied Physics 誌、Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry誌にそれぞれ掲載された。[1] ホスト物質に放射性核種のプローブを導入し、プローブ位置での微視的な構造や性質を調べる分光法の一つ。本研究ではプローブに、ZnOのドナーである111Inを採用した。[2] F. Oba et al. Phys. Rev. B, 77, 245202 (2008)など
著者
渡會 兼也
出版者
金沢大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は高校物理の実験にハイスピードカメラ(以下、HSカメラと略す)を利用し、生徒が『観察』と同時に『測定』を行う教材の開発を目的としている。CASIOのデジタルHSカメラは1秒間に最大1000コマの動画撮影が可能である。現象を撮影しておけば、ゆっくり・何度も観察できるだけでなく、コマ送りによる位置測定も可能となる。HSカメラによる位置測定は映像から直接データを取得できるため導入が容易であり、本研究が今後のICT普及に重要な役割を果たす可能性がある。本研究では生徒が実験でHSカメラを使うことを主眼に置き、その様子や実験精度を調べた。生徒実験のテーマは①「物体の自由落下による重力加速度の測定」と②「力学台車の衝突による運動量の保存」の2つを設定した。①については、記録タイマーを使った班(6班)とHSカメラを使った班(2班)との実験を比較した。結果、記録タイマーの班の重力加速度は平均が8.06m/s^2であるのに対し、HSカメラの班の平均は8.70m/s^2になった。これはHSカメラの場合はテープと記録タイマーの摩擦を考慮しなくてよいため、精度が向上したと考えられる。②については、すべての班(10班)でHSカメラを使い、衝突における運動量の保存を確認した。実験は10%以下の精度で運動量の保存を確認できた班もあれば、比較的大きな誤差(20%~30%)を出した班もあった(割合は半々)。これは実験の最初に解析方法や誤差評価について生徒に周知が不十分であったことが一因であると考えている。解析の手法やその周知は今後の課題である。生徒の感想には、本研究のねらい通り「測定が簡単にできる」「何度もくり返し観察と測定ができる」等が多く挙げられた。一方で、「4~5人の班ではカメラの液晶画面が小さい」「視差による誤差評価が難しい」などの意見もあった。今後、視差による誤差が無視できる条件の提示等(例えば、物体のサイズを小さくする)も考える必要がある。現在は生徒実験による反省を元に実験の手順等を学会誌にまとめている。
著者
川崎 繁次
出版者
金沢大学
雑誌
高校教育研究 (ISSN:02875233)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.53-59, 2001-10

新学習指導要領において体育の領域及び内容についての改訂があり,従来の『体操』領域が『体つくり運動』となった。その内容として,『体ほぐしの運動』および『体力を高める運動』が示されている。今回の改訂では従来までの『トレーニング』的な要素を持った運動から,運動する楽しさを味わう事に重点が置かれ,自分や仲間の体の状態に『気づく』ということが目標の一つにあげられている。現代社会に生きる我々の生活様式は,慢性的な運動不足を生み,また,次代を担う子供達を見てもその活動や遊び方は以前のような活動的な遊びではなくなってきている。そのうえ,少子高齢化の波を受けて地域における子供達の交流なども減少し,ますます,運動している者とそうでない者の二極化が進んできている。そのような環境の中での学校体育の持つ意味は大きい。『運動=辛いもの』というイメージを払拭し,一人でも多くの生徒が『あっ楽しい』と思える時間を持つことが出来るような指導が望まれる。それは我々が子どもの頃に体験した『鬼ごっこ』『缶けり』『縄跳び』などの遊びの中にヒントがあるのではないかと思う。ある意味では『運動』=『遊び』,つまり,心身が開放されて楽しくなるということが大切なのではないだろうか。